斎藤真理子のレビュー一覧
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フェミニズム小説として評判になっていたのは知っていたので購入だけはしておいたが、ようやく読むことができた。
解説にもあるとおり、確かにこの本を読めば、「これは、まさに私の話です!」と多くの女性が共感したことも納得できる。「男性と女性の扱いがこんなに違うのはなぜ」、「どうして私がこんな目にあうの」というように、家庭、学校、就職、職場、結婚、出産といった人生の様々な場所やステージにおいて、偏見や差別を受けてきたのだろう。
82年生まれのキム・ジヨンに対して、自分は60年代前半生まれの男性。本書に書かれている「性の鑑別と女児の堕胎が大っぴらに行われていた」という韓国の状況ほどではないが、自分の子ども時代には、男の子を生んで嫁としてやっと一人前と言われていたり、学校の生徒会長や学級委員長がほぼ男子だった時代だった。成人の頃やっと均等法が施行されるなどしたが、女性が責任ある仕事を任されることは少なかったし、職場や接待の飲み会の場ではお酌の役割りを振られたりセクハラする人間も当たり前にいる時代で、本書に描かれていることのほとんどが「日本も当時はそうだったなあ」と思えることばかりだ。今考えると信じられないようなことなのだが、女性の嫌な思いというものを実感できていなかったし、自分がそのような状況を少しでも変えるために何かしたということもない。
制度的には男女差別的な取扱いは少なくなっているのだろうが、形になっていない差別や多くの男性が持っているだろう無意識な偏見というものはきっとあちこちにあるのだろう。
女性にとっては勇気を与え、男性にとっては自らの意識や態度に自己反省を迫る一冊だと思う。 -
Posted by ブクログ
今ではすっかりリゾート観光地として有名な済州島。80年弱前のその島で、怖ろしい虐殺事件が起こっていたことをうかがわせる影はまるで無いように見えてしまう。
けれどそうではなく、実際に今もなお数知れないほどの遺体が土の下や海の底に埋もれたままで、縁者を探す人、真実を求める人たちがいる。そのことを、この本を通じて、そしていくらか調べることで、きっとほんのわずかにすぎないだろうけれど知った。知れて、良かったと思った。
私小説に近い体裁で綴られる二人の女性の物語の現在では、しんしんと重苦しく雪が降り続ける。あらゆる生命の活動を抑えつけるような圧迫感のある静かな雪は、一方であたたかな命を持つ頬では他愛なくほどけていのちをつなぐ水と化す。
冷たく沈んだおびただしい数の生命の苦悩を鎮め、春が来れば自ずから溶けて生物たちに恵みを与える、そんな雪のひそやかな祈りと鎮魂が込められた、細やかな筆致のさえわたった作品だった。 -
Posted by ブクログ
母国である観光ではその名を冠する賞も樹立されているほどの評価を受けている李箱さんの作品集。全体的に厭世的で無気力な雰囲気が漂っている作風で、この世を俯瞰しているかのような達観した思考を持った主人公が多かったです。
話の流れはどれも不明瞭かつ難解だと感じましたが、左記も登場人物の各々が、自己の殻に閉じこもって一人この世の実質を思考し続けた末の結果なのかなと考えました。
表題にもなっている「翼」においては収録作の中では最も理解しやすい話だと感じており、また相当な感動を受けました。左記作品を読むためだけに買ってもおつりが来ると私は思いました。
本作の約1/3ほどは作者である李箱さんの解説に費やされています。非業の死を遂げた天才作家の一生を読み、人生の大筋を頭に入れた状態で作品群の生い立ちに思いを馳せるのも悪くないと思いました。
人生に孤独感を感じている方や、同様に厭世的な考えをお持ちの方には是非読んでいただきたいです。自分以外にも今生にどうしようもない諦めを持っている人間がいて、如何様に物事を捉えているのかを知ることが出来ますので、非常に大きな感銘を受けることが出来ると思います。 -
Posted by ブクログ
この本は、訳者あとがきに書かれているとおり、ノーベル文学賞受賞記念講演「光と糸」を含む受賞関連の文章三つと、単行本未収録の詩と散文、そして庭仕事を通しての暮らしと心境を綴った「北向きの庭」と「庭の日記」から成っています。
韓国のつらい歴史に対しての疑問と葛藤、そして愛についても考え、悩み、自分と向き合いながら小説が完成するまでの葛藤の日々がこの本に綴られていました。
彼女が八歳のときに書いた一編の詩の始まりで、感性豊かな子どもだったこともわかりました。かわいいハングルの直筆の写真もありました。
「庭の日記」では彼女が庭の木々を慈しむ日々が書かれていました。表紙の写真も、ハン・ガンさん自身が撮られたものだそうです。光が当たっている部分に、木々を慈しむ気持ちが表れています。
訳者によると、この本のキーワードは「つながり」だそうです。過去に目を向け、また同じ過ちを繰り返さないようにというハン・ガンさんの思いが、彼女の文章で多くの人をつなげるひとつになるような気がしました。
小説とは違ってすぐに読めてしまいますが、大切に読んでいきたくなる本でした。ハン・ガンさんがこれまでに書いた長編小説を読んでみたくなる本でもありました。
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ハン・ガンさんの著書を読むと強く感じることがある。
言葉が生きていて、自分の身体の内部に浸透すると。
言葉を読まされているのではなく、読み進めたいと欲する感覚はなかなか味わえない。
エッセイや詩、ノーベル文学賞受賞記念講演事の言葉達。
冒頭からの過去作への制作過程や心情を知ると、間違いなく全部読みたくなります。
ハン・ガンさんが人に対する愚かさや残酷さを考え絶望すると同時に、それでも美しさや愛を考え希望を探して生きていることに心うたれました。
過去を想い知ることで、今を生きる喜びや意味を見つけたくなりました。
ハン・ガンさんの綴る言葉には温かさと冷たさが混じっていて、闇がないと光もないのだろうと感じた。