斎藤真理子のレビュー一覧

  • すべての、白いものたちの

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    多くを語らず、読者に深い思考を促す小説。
    詩のようであり、エッセイのようでもある。
    生後2時間で亡くなった姉への追悼、そして、自らの生を亡き姉に貸し与える。

    平野啓一郎さんの解説を読んで、こういう意図だったのかと思い知る。
    再読することで、作品の深みがよりいっそう伝わってくる。

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    2025年10月31日
  • 声を出して、呼びかけて、話せばいいの

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    感情や体の感覚まで手放して、生きなければならなかった__家族という地獄の中を。
    彼女が強く欲した"愛"と"死"が切実に鋭利な言葉で綴られていた。このヒリヒリとした感覚は自分の痛みに繋がったからなのか。無数の傷を抱え私たちは生きていく、死に向き合うことは生に向き合うことと等しい。

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    2025年10月26日
  • フィフティ・ピープル[新版]

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    ビリヤードみたいだった。
    ある人がある人にぶつかって、その人が今度は別のあるにぶつかって、の繰り返し。人がある場所にいるのは、別の誰かにぶつかったからで、それはまた別のある人が、、、と考えると、今自分は膨大な人と人がぶつかり合った軌跡の延長線上にいるのだ、と壮大な気持ちになった。
    赤の他人の51人は本人たちも知らないところで互いに影響を及ぼしあっている。他人だけど他人じゃない、誰も気づいていないし見えないけれどそこには確かに連帯があるのだと思った。

    ということは、見知らぬ誰がが困っていたとして、それは周り回って自分に繋がるかもしれない、と思った。「個人の問題は社会の問題」というフレーズを思い

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    2025年10月25日
  • 翼~李箱作品集~

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    ネタバレ

    戦前ないし戦争中に日本で学び日本で逮捕されて獄中で死亡した詩人である。それほど学生が読んでいるとは思えないし、教科書に訳詩が掲載されたこともないであろう。
     韓国もこの詩人は日本に宣伝していないのかもしれない。

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    2025年10月23日
  • すべての、白いものたちの

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    【これは散文なのか、小説なのか】感情の底の底にある、目に見えないなにかまでを自分の外に吐き出して、そのまま読み手の心を掴んでしまうのがハンガン。彼女には狂気的に美しい彼女だけの文体があり、わたしは構成だけを真似して同じように世界を描こうと試みるのだけれど、光と陰のコントランスはあんな風に絶妙にならないし、不均衡なのにエモーショナルな世界なんてまったく真似できない。死ぬまでにいつかこんな文章書けるといいな、と思いつつ、今日も本を開いてはため息と共に閉じる。

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    2025年10月10日
  • ギリシャ語の時間

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    詩の素晴らしさに出逢わせてもらい星5。
    この本を通して教えてもらったこと。↓


    詩においては“美しい”とは、そのものの(あるものや事柄)について良さを表さない。台無しにする言葉でもある。
    “美しい”と言う一言はかけがえのなさを表せる。唯一無二のそのものの様子やあらゆるどんな比喩を失うほどの完璧さを表すのだけれど。それ故にディテールや本来持つ個性を表現しないが故に大切な物を同時に失わせてる。

    そこにこの言葉の素晴らしさと残酷さと完璧さが表現できる。とても深い想いを巡らせられている言葉だと感じました。

    光に彩色色彩が。その様な表現の様。
    ですが、私は“美しい”を知っています。

    とても大切な

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    2025年10月09日
  • シリーズ「あいだで考える」 隣の国の人々と出会う 韓国語と日本語のあいだ

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    ネタバレ

    ハングルの文字を手がかりに韓国の歴史を説明している。イテウォンの事故についてはほんの僅かしか言及していないが、セウォル号の座礁事故では船長も船員も非正規雇用者であることは日本では報道されていない。また訓民正音については日本の井上角五郎の新聞でハングルを広めた役割は書かれていないものの、ハングルが使われるまでの中国語を使う役人の説明は詳しい。(従軍)慰安婦や朝鮮戦争での米軍相手の慰安婦やベトナムでのタイガー部隊やライダイハンは意図的に避けられている。また、日韓併合前の奴隷制度について書かれていないのは文学としての記録がないためであったのかもしれない。韓国における詩の重要性を認識することができるで

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    2025年10月08日
  • 年年歳歳

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    家族それぞれの話だが、家族がテーマではない。韓国の歴史の中で生きた「無名の人たち」の深い有りようを詩的に綴られ、その詩的さ故にシンプルで美しいのに哀しみが重く伝わり…忘れられそうに無い。訳者の後述の解説にも糸口を教えてもらった。
    スンイルの人生は大きな時の山を飲み込み続けて来たのだろう。
    私もあなたも皆、人生にゴールなどなくそれぞれの時を飲み込んでいるのだと感じた。

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    2025年10月06日
  • すべての、白いものたちの

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    死んだ姉と兄、今生きている自分。作者自身の過去をもとにした死と再生の散文小説。
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    ノーベル文学賞をとったハン・ガンさんの本、初めて読みましたが、これには胸を打たれました。
    もう初っ端からどくどく血が流れるような傷を見せてくる。
    死と破壊、生と再生を、ものすごく澄み切った筆致で、針のように鋭い言葉で、詩のような文章で、読者の心を刺して刺して刺しまくる。
    読んでいて胸に迫る内容と美しい文章が暴れ回って大変でした。ハン・ガンさんの本はほかにも読んでみようと思っているのですが、ちょっと次に手を伸ばすのを躊躇するような切れ味と重さでした。

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    2025年10月06日
  • 声を出して、呼びかけて、話せばいいの

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    苦しい。けれど傷を見せてくれるように紡がれる言葉から目が離せない。私は幸運なことにとても死と暴力から遠い人生を今のところ歩んでいる。本当に大切な人を失ったことがまだなく、自分自身も一度も死にたいと思ったことがない。だからこそ、こうして身近な死をたくさん経験して、失いながらも生きる言葉にしてくれていることが本当にありがたい。


    何より、「カッコの多い手紙」を読んで以降、ずっと猫のジュンイチのことが気がかりだった。
    この本の目次を開いて、ジュンイチが先に眠ってしまったことを察して、まだ本文を一文字も読んでいないのに泣いた。最後の方の、恐らくジュンイチとの別れについて書かれているであろう箇所を読む

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    2025年10月05日
  • 韓国文学の中心にあるもの

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    今まであまりにも韓国の本を読んでこなかったので、この国の文学の歴史はどのようなものなのかを知りたくて手に取った。
    第1章で、読んだことのある本「82年生まれキム・ジヨン」について書かれていたが、まずその本の解釈が私はあまりにも浅かったのだということに気づかされた。
    この本は2016年に韓国で出版されているが、第2章以降、歴史をさかのぼって韓国文学が紹介されている。
    文学はそれが書かれた時代の影響を受けるものなので、韓国の歴史がかなり深く説明されている。
    例えば第2章では、2014年に起きたセウォル号沈没事故の詳細が書かれており、この事故が韓国人に与えた影響の深さがよく分かった。
    当時のことは覚

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    2025年10月03日
  • 別れを告げない

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    ネタバレ

    背中がゾゾゾとなるほどの、すごい読書体験だった。

    雪国出身なのと、著者の描写の巧みさで、雪景色が手に取るように想像できた。

    思いが強ければ、同時に遠くにも存在できる……認知できていないだけで、確かにそうなのかもしれない。

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    2025年09月30日
  • 82年生まれ、キム・ジヨン

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    一冊に詰められたメッセージと情報量が多すぎて一回じゃ受け取りきれない。
    今置かれている環境が過去の女性たちが闘い続けてくれた結果だということが身につまされた。
    私も次の世代がより生きやすくなるように何か残せたらいいな。

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    2025年09月27日
  • フィフティ・ピープル[新版]

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    人生の中の最悪な日、誰かの生死にまつわるような出来事、走馬灯の中に出てくるであろう、シーンをめぐる50人のストーリー。
    それが少しずつ繋がっていったりする。

    かなりの読み応えがあり、心がずっしり重くなる感じがした

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    2025年09月27日
  • すべての、白いものたちの

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    ノーベル文学賞を受賞したハン・ガン女史の作品。
    構成は3章から成り、ファインフォトを掲載しながら抒情的な散文詩が次から次へ綴られる。

    1章:私
    「私」が生まれる前に、母は初産で女の子を産んでいた。
    母は人里離れた官舎で、誰の助けも呼べずに8ヶ月の未熟児の娘を産んだ。
    激しいつわりに耐えながら、母は白い絹布で産着を縫い合わせて準備していた。
    その産着を生まれたばかりの娘に着せ、産声もなく産まれ出てきた娘に「お願い、死なないで、死なないで」と呼びかけ続ける。
    「死なないで」の呼び掛けに、娘は数度だけ束の間瞼を開くのだが、力無く閉じてしまう。
    そして母親の必死な願いも虚しく、誕生から2時間後に娘は

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    2025年09月24日
  • 別れを告げない

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    冒頭では、これが済州四・三事件につながるなんて思いもしなかった。
    とかエラそうに書いてるけど、済州四三事件とかまったく知らなかったし。こんなに近い国なのに。
    小説本編にも注意書きは多いが、「訳者あとがき」はほぼこの事件の経緯、解説。
    本編より細かい字でみっしり。情報量とその内容の深刻さ、残酷さに圧倒された。
    となるとウィキペディアとか見ちゃうよね。でまたドシッとくる。
    タイトル「別れを告げない」は、作品中では映画のタイトルとして出てくるけど、「哀悼を終わらせない」という意味だと著者がはっきり述べているそう。
    幻想的な場面展開も詩人ならではかな。
    さすがノーベル文学賞受賞されただけある。
    斎藤真

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    2025年09月14日
  • 別れを告げない

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    舞い散る雪が、死者たちの頬にうっすらと積もり、白く覆ってゆく。
    等しく生者の頬にも降る雪は、刺すような痛みの感覚を残して、溶け去ってゆく。

    痛みと熱が生の証というならば、死は痛みの喪失と引き換えに、無限の沈黙の中に消えるということなのか。
    いや、例え肉体が凍りつき、もはや唇は閉ざされたままだとしても、死者には消えぬ痛みの記憶が残っている。
    死者には、語るべき言葉がある。

    だから、別れを告げない。
    雪は溶けて海へと流れ、空に昇って雲となり再び一ひらの雪片として地上へ戻ってくる。
    過去と未来は循環し、死と生は共にある。
    そんな地点ををつなぐのは、悲しみと嘆きの言葉だけじゃない。
    あなたにはわた

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    2025年09月13日
  • ギリシャ語の時間

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    一度読んだだけでは到底理解は出来ない。
    視力を失っていくギリシャ語講師(男)の回想と
    ある時から言葉を発することが出来なくなったギリシャ語受講生(女)の回想が続いて行く。
    冒頭と結末が同じなので二人がいかに交わっていくのかという話ではあるのだが、恋愛模様とは全く違う。
    哲学論と詩のような文体が入ることにより、物語より深い不思議な体験を味わえる。
    始めはそれが、読みにくいし、全く理解出来ず苦痛だったのが、慣れとともに心地良くなり次第には独特な言葉の禅体験をしたような晴れやかな気持ちになっていた。
    傷を抱えた者が世の中に馴染めず、かといって落としどころを見つけて合わせて生きていくのも苦しい。
    二分

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    2025年09月12日
  • 回復する人間

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    読みながら少したじろぐ。なぜハン•ガンさんは、異郷のゆかりもない僕に対して、抱え込んだ孤独を、疼き続ける痛みを告白するのかと。
    僕には、受け止めるだけの度量も、分かち合う優しさもないというのに。

    だが、彼女は決して弱音を吐いて、己の傷や悲しみを嘆き訴えているのではなかった。
    むしろ、誰からも助けの手が差し伸べられなく、独りで耐えるしかない痛みに押し潰されたときでさえも、消え去ることのない強さが人の内には秘められている、そう静かに告げていたのだ。


    人は自らの意志で、身体や生活を律して前へ進んでいるいると思い込んでいるけれど、果たしてそうだろうか。
    心がたとえ悲しみを求めていても、
    理性が抑

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    2025年09月04日
  • 82年生まれ、キム・ジヨン

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    K-POPアイドルが好きだ。男女問わずかっこいい。
    発祥国の韓国への憧れがある。未だ訪れたことはない。
    文化的で華やかな一面を第三者として享受している。
    でも、本書のような暗い影を知ることは韓国という国の本質的な理解には必要だろう。

    主人公のキム・ジヨンは私より少し上の世代。ほぼ同じ時代を過ごしてきた彼女が受けている社会からのネバっとした抑圧・無自覚な蔑み。10代-30代の中でそれぞれの年代に起こる確かな違和感。男性優遇、私生活と仕事、出産と育児。あからさまな表層的な差別があるのではなく、受け入れるしかないだろうという雰囲気によってなし崩し的に選択肢を失う。

    昔話ではなく現在進行形の問題。

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    2025年08月30日