斎藤真理子のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
ハン・ガン作品から韓国文学に入り、こちらの作家も読むべしと聞いて読んだ。
どの短編も、大小様々の不幸に見舞われた人々の懸命に生きた物語が、淡々とした語り口で進んでいく。
ハン・ガン作品と比較することが適切かはわからないが、ハン・ガンさんが逃げようのない大きな不幸を描くのに対して、ファン・ジョンウンさんの不幸は直視を避けたり逃げたりできるくらいの大きさの不幸なだけに登場人物に選択肢があり、動けちゃうだけにその人間のありかたが湿度を持って立ち現れる感じがする。
淡々とした語り口の中に、どうしても胸に刺さる言葉が多く混ざってくる。共感できない主人公もたくさんいたが、どれも嫌いにはなれない痛さがある。
「上流には猛禽類」主人公の若さゆえの残酷さに、彼女の言葉には冷たい手で心が掴まれた気持ちになる。
「誰も行ったことがない」実子の死に疲弊した夫婦がそれぞれの傷つきを持ち出して知らない国を心許なく旅をしている姿には、一触即発の危うさがありずっと目が離せなかった。
物語の見せ方のうまい作家だと感じた。すごい感性。 -
Posted by ブクログ
斎藤真理子さんの訳と解説が素晴らしかった。
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“しばらくすると咽喉が乾いてきます。枕元に置いた水をーー深海のように落ち着きはらった冷水を飲みます。石英質の鉱石の匂いがして、肺腑に寒暖計を差し入れたように道ができるのを感じます。その冷ややかな曲線は、白紙の上に描こうとしたら描けるのかもしれません。”
“明日は一日、草花ばかり見て遊んで過ごそう、脱脂綿にアルコールを染み込ませてありったけの気苦労を拭き取ろうと、心に決めてみたりします。あまりに夢見がめちゃくちゃだからそんなことを思うのでしょう。草花が満開になる夢、原色版のグラビアの夢、絵本を読んでいるような楽しい夢を見たいのです。それができるなら夢を説明する爽やかな詩をさらさらと書き、七ポイントの小さな活字で配置するのもいいでしょう。”
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Posted by ブクログ
【人間が一番恐ろしい】
そもそもこの、済州島四・三事件のことを知らなかったから、まずネットで調べてから読んだ。独裁政治が人間に何をさせ、何を奪うのか。
戦争や権力の暴力というか圧力によって、人間が少しずつ崩れていくこともすごく恐ろしかった。
人が人を殺すのが戦争。それを正当化するのが独裁者。
国家の暴力によってどこにでもいる普通の人が少しずつ壊れていくことが怖くて悲しかった。
それと同時に、人は圧力の中で簡単に沈黙してしまうんだな、という不安というか恐怖のようなものも強く感じた。
だからこそ、独裁や暴力は絶対に繰り返してはいけないし、過去の悲劇を忘れずに考え続けることが大切だと思った。
『別れを告げない』というタイトルは、「忘れない」ということなんだろうなと思う。
ハン・ガンさんは先の『少年が来る』でも国家の暴走を静かに批判していたけれど、この悲劇を韓国だけのことではなく、全世界の人たちのこととして書いているんだと感じた。
そう考えると、日本も決して無関係ではないし、今の社会の中にも少しずつ不安を感じることがある。
「戦争反対」という声が上がること自体に怖さを感じるのは、それが当たり前ではない状況に近づいているのかもしれないと思うから。
二度と同じような悲劇を繰り返さないためにも、もっと歴史を知らないといけないし、まじめに考えないといけないなと痛感した苦しい読後感でした。
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Posted by ブクログ
ネタバレ初めての韓国の小説。翻訳だからなのか、文化なのか、独特の文章だったけど、読みやすかった。アメリカ人作家の小説を読んだ時のことを思いだした。「国民の恋人」という表現は韓国らしいと思った。
十一分の一
退廃的で耽美的。生き返った恋人を束の間あたたかい時間が流れ(回想の中では恋人になったという確たるシーンがあるわけではなく、雰囲気と様子からそれを感じ取り、再開の時に思いがちゃんと通じ合っていた、となったのがまた良い)、すぐあとに地球はほろびてしまう寸前の状態であることが読者に明かされ、ゾッとさせられる。そこが怖くもあり耽美的なところなのかも。
ミミズの話の「リセット」は想像すると気持ち悪いけど、映画のようなスケールの大きい話が読み応えあった。
メダリストのゾンビ時代恋人は結局ゾンビになってしまったけれど最後に主人公は助かる予感を残し、物語は終わる。あるワンシーンを切り取った印象深い終わり方だった。冬眠とか、ありそうだし、好きな人から倒していく、でもあの人は最後に取っておいたというのもありそう。
SFジャンルは多分ほぼ初めて読むけど、宇宙、科学、の印象があったがありえないけどあるかもしれない一つの世界という感じで想像できてしまうし近くにこんなこと起こるかもって思えた。
表題の声をあげます。は理不尽な場面設定なのに、ずっと優しい世界だった。 -
Posted by ブクログ
翻訳らしい短編集。何となくアーウィンショーを思い出した。一貫して痛みを伴う回復がテーマ。中でも「エウロパ」は印象的だった。主人公はトランスジェンダーの男性とライブハウスで歌うイナ。2人の夜の散歩の場面は秀逸。「火とかげ」は映画を観ているようだった。主人公は事故により両手とも効かなくなった画家。そして疲れきって絶望しているその夫。ある時友人の子供が飼っているトカゲがその両手を千切られてもまた生えてくる事を知る。
主人公が少しずつ希望を取り戻し生きていこうと決意してまた絵筆を取る過程が美しい。
全ての言葉が一遍の詩のような何とも言えない透明感に満ち溢れた一冊。 -
Posted by ブクログ
7〜8年ぶりの再読。
育児にまつわる辛かった経験を慰めてもらったようでもあり、いやいやまだまだ全然終わっていないし慰めきれてもいない思いもあり、でもみんな自分の辛さをどうにかして発露するために、対照的な生き方のひとを悪く言うんだよね、みんな生きるの辛いんだよねって思ったりもした。
私自身は、やって当たり前とみなされている家事育児を夜遅くまで1人でこなし、夫も子供たちも非協力的、実の母は私の出産3年前に他界、離れて暮らす父は頼れず、同じく遠距離の義両親には「自分さえ良ければそれでいいのか。都会暮らしは愚の骨頂」とか言われていたりとにかくなんでも1人でやってるけど、もはや徳を積めるだけ積んで、いつかものすごく楽しくて幸せなことを1人だけで享受しよう、その日が来るのが待ち遠しい、と祈るような日々を送っている。その日のために自分や周囲の健康を祈り、己を磨く、ただそれだけ。
この本を再び手に取ったきっかけは、韓ドラにもK-POPにも全くハマっていないのに、ちゃんみなさんとHANAが好きなだけで韓国にめっちゃ興味が湧いて、Duoringoで韓国語をやり始めたら止まらなくなり、韓国自体のことをもっと知りたくなったこと。
楽しいからもっと他の本も読みたいし、知的好奇心が止まらないー! -
Posted by ブクログ
仕事用に読んだのですが すばらしかった
斎藤真理子さんのボイスがまたグッときます
北朝鮮から自由を求め故郷を出てゆく
16歳の3人の子どもたちを描く。
ソル、クァンミン、ヨルム
ソル
貧しくも愛のある家庭
何度も脱北を試み捕まっては脱走を繰り返してきた。最後の日、姉さんが信頼できるブローカーだと教えてくれた電話番号に頼って行ってみると…内モンゴルの花嫁に売られてしまう…
クァンミン
サッカー選手を目指す男の子。この国では何不自由ない裕福な暮らし。
父親は体制側の役人で、優遇されている
母親は夫に隠れて脱北のために動いており、息子を自由にしたいと考えているが…
ヨルム
父親が病気で働けず貧しいくらし。小さな頃は押し入れの中で過ごした。
しかし聡明で頭がよく、双子の姉は自分を犠牲にしてヨルムを学校に行かせてくれた。
初めて出会った神父の助けでまた脱北を試みる…
そんな3人が最終的に同じブローカーの元に集まって……
「もう、自分で選んだんじゃない世界はいらないよ。」
この言葉が胸に残る
私たちだって同じだ…