斎藤真理子のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
ネタバレ静かに、繊細に紡がれていく言葉が印象的だった。
主人公が捉えている景色や感覚、思考が、詩のようだった。
この小説は、章ごとに視点が入れ替わる。
女主人公のときは三人称、男主人公のときは一人称で書かれている。
手紙文で構成されている章があったり、詩が挟まったりもしている。
小説ってこんなに自由でいいんだ、と思い、視界が開けたような感覚になった。
話せなくなった女性は、これから先、話せるようになるかは分からない。
ギリシャ語講師の男性は、今後も少しずつ視力を失っていくだろう。
問題は解決されないまま残っている。
しかし、二人の人生は光に満ちていくのではないかと思える。
彼らが身体を触れ合わせて -
Posted by ブクログ
私は語学が好きで韓国語ものすごく面白いと思っているので、韓国語がどう面白いか、日本人に生まれた自分が韓国語/韓国とどう向き合うか〜みたいな内容が読めてとっても期待通りだった!
ハングルの歴史、文学史などを追いながら韓国の文字や言葉、文学について解説する本。言葉や文学の歴史は弾圧との戦いの歴史でもあるので、必然的に日本の植民地時代のことにも触れるし、それに続く朝鮮戦争、そして地続きの現在についても書かれている。
知らないままカルチャーを消費したくないな、隣の国のことをちゃんと知ってみたい、韓国語に限らず言葉そのものに興味がある方は期待してよいのではと思います。
そういう気持ちがなくても、韓国 -
Posted by ブクログ
本当に読んで良かった。
韓国についてずっと勉強してきたがこんなにわかりやすい本はなかったと思う。
文学についてだけではなく、それを理解するために必要な背景知識が以前より増えた。
韓国語を勉強すれば韓国文学を読めるようになるかなと安易に考えていたところもあったが、単に言語の壁を越えたとしても、日本と韓国の間にこれほどまでに大きな、考えないといけない、考えられるべきことがあることも忘れてはいけないなと思った。
どうして自分が韓国文学にこれほどまでに吸い込まれるのかを明らかにしてくれた本だった。いつか自分も行動できるときがきたら良いなと思う。
우리 안에 진정한 평화가 깃들기를.
-以下メモ-
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Posted by ブクログ
ハングルをぜんぜん勉強したことがないので、ちょっと頭に入りにくい部分もあったけれど、「詩」の章で、セウォル号事件で亡くなった高校生のために書かれた詩を読んで、涙がこみあげた。
「現代詩の激痛」という言葉の重さ。
まだまだ体験者が数多くいるぐらいの、近い過去に、たくさんの悲痛な事件がある韓国の現代史。つい先日の戒厳令騒ぎのとき、多くの市民が命をかける覚悟で国会前に集結したのも、そういう時代に戻してはいけないという強い意志が働いたからなのだろうな。
短くて読みやすい本なので、きっとまた読み返すと思うし、おなじく斉藤真理子さんの手になる『韓国文学の中心にあるもの』も、積んでいるのでちゃんと読みた -
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特に「火とかげ」が印象に残った。私も去年は茶碗を持つのもきついくらい両手が痛くて使えなかったから投影して読んでしまった(ハンガンさんもこれを執筆していたころ手が痛くてタイピングが出来なかったらしい)。画家の主人公は、事故で手に痛みが残り絵も描けなくなるし夫との関係もうまくいかなくなる。そんな彼女を支えてくれるものは、昔登山をした時偶然あった男性との記憶とQという画家の絵。記憶だけで残る男性と友人ソジンが繋がって、ソジンの子供が飼ってる前足を切断したトカゲからまた足が再生されていく描写で主人公に細い光が差し込みだすのがわかる。
トカゲの手が再生するように、最後、主人公は以前と違う手法で絵を描い -
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ネタバレ目次
・東方の三博士―犬入りバージョン
・自然礼賛
・タクラマカン配達事故
・エレベーター機動演習
・広場の阿弥陀仏
・シャーリアにかなうもの
・付録
作家Kの「熊神の午後」より
カフェ・ビーンス・トーキング―『520階研究』序文より
内面表出演技にたけた俳優Pのいかれたインタビュー
『タワー』概念用語辞典
たぶん初めて読んだと思うのですが、想像以上に面白かったです韓国SF。
974階建ての巨大なタワー国家「ビーンスターク」を舞台に繰り広げられる、緩くつながった連作短篇。
21階までは外国人も自由に出入りできる非武装地帯、22階から25階までが軍隊が占拠している「警備室」という名の -
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「「有事の際」という言葉は、非常なことが起きるときという意味だが、非常なことはいつも、日常の中に兆しを見せているんだとパク・チョベは言った。突然‥というものは、本当はそんなに突然ではないという話」d
登場人物や物語の流れが独特なリズムがあって油断していると見失いそうになってしまうのだが、註釈や時代背景として語られるキーワードに気が付くとバラバラだった記憶が一気にいろいろ繋がりだし、現実のニュース映像で見た場面が蘇ってくるような感覚がおもしろい。
『韓国文学の中心にあるもの』で紹介されていつか読もうと“積んで”おいた本なのだが、(衆議院選挙は終わったけれど米国の大統領選挙直前の)今、読むべきタ -
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ネタバレハン・ガン4冊目、菜食主義者に続いて読んだ中では好きかもしれない。ギリシャ語の時間も面白かったのだけど。
7つの短編集ということもあり、すらすら読んでしまった。エウロパ、左手も好きだったけれど、青い石、火とかげ、の二篇はさらに好きだった…。
「エウロパ」
僕とイナの"友情"について。僕はイナのことを愛しているし、女性の格好をして出歩くことをイナといる時にはできるといういくつもの設定で、エウロパというタイトルは僕でありイナなのだろうか?とまだ理解しきれていないところはあるのだけれど。
…僕は黙ってベッドに近づき、イナに短くキスをする。イナの唇から苦いタバコの匂いがする。彼女 -
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ハン・ガンの『別れを告げない』が良かったので、訳者の斎藤真理子さんの本を。
とても興味深い良い本でした。
ハングルについて、韓国語について、歴史について、文学について、分かりやすく書かれています。
文学や芸術は全てを内包していて、平等に存在していると改めて思いました。
韓国は詩の国だと知りませんでした。
日本とは詩人の在り方が違うのですね。比喩を使わなければ思いを公にできない時代が長かったから詩人は代弁者であり英雄。
詩は書かれた時代や詩人の境遇や立場を知らないと分からないのかも。
韓国語を日本語に翻訳する時の難しさの話に驚きました。
韓国語では複数形の「たち」が何にでもつくらしく、副詞