斎藤真理子のレビュー一覧

  • 翼~李箱作品集~

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    ネタバレ

    戦前ないし戦争中に日本で学び日本で逮捕されて獄中で死亡した詩人である。それほど学生が読んでいるとは思えないし、教科書に訳詩が掲載されたこともないであろう。
     韓国もこの詩人は日本に宣伝していないのかもしれない。

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    2025年10月23日
  • ギリシャ語の時間

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    詩の素晴らしさに出逢わせてもらい星5。
    この本を通して教えてもらったこと。↓


    詩においては“美しい”とは、そのものの(あるものや事柄)について良さを表さない。台無しにする言葉でもある。
    “美しい”と言う一言はかけがえのなさを表せる。唯一無二のそのものの様子やあらゆるどんな比喩を失うほどの完璧さを表すのだけれど。それ故にディテールや本来持つ個性を表現しないが故に大切な物を同時に失わせてる。

    そこにこの言葉の素晴らしさと残酷さと完璧さが表現できる。とても深い想いを巡らせられている言葉だと感じました。

    光に彩色色彩が。その様な表現の様。
    ですが、私は“美しい”を知っています。

    とても大切な

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    2025年10月09日
  • シリーズ「あいだで考える」 隣の国の人々と出会う 韓国語と日本語のあいだ

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    ネタバレ

    ハングルの文字を手がかりに韓国の歴史を説明している。イテウォンの事故についてはほんの僅かしか言及していないが、セウォル号の座礁事故では船長も船員も非正規雇用者であることは日本では報道されていない。また訓民正音については日本の井上角五郎の新聞でハングルを広めた役割は書かれていないものの、ハングルが使われるまでの中国語を使う役人の説明は詳しい。(従軍)慰安婦や朝鮮戦争での米軍相手の慰安婦やベトナムでのタイガー部隊やライダイハンは意図的に避けられている。また、日韓併合前の奴隷制度について書かれていないのは文学としての記録がないためであったのかもしれない。韓国における詩の重要性を認識することができるで

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    2025年10月08日
  • 年年歳歳

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    家族それぞれの話だが、家族がテーマではない。韓国の歴史の中で生きた「無名の人たち」の深い有りようを詩的に綴られ、その詩的さ故にシンプルで美しいのに哀しみが重く伝わり…忘れられそうに無い。訳者の後述の解説にも糸口を教えてもらった。
    スンイルの人生は大きな時の山を飲み込み続けて来たのだろう。
    私もあなたも皆、人生にゴールなどなくそれぞれの時を飲み込んでいるのだと感じた。

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    2025年10月06日
  • 声を出して、呼びかけて、話せばいいの

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    苦しい。けれど傷を見せてくれるように紡がれる言葉から目が離せない。私は幸運なことにとても死と暴力から遠い人生を今のところ歩んでいる。本当に大切な人を失ったことがまだなく、自分自身も一度も死にたいと思ったことがない。だからこそ、こうして身近な死をたくさん経験して、失いながらも生きる言葉にしてくれていることが本当にありがたい。


    何より、「カッコの多い手紙」を読んで以降、ずっと猫のジュンイチのことが気がかりだった。
    この本の目次を開いて、ジュンイチが先に眠ってしまったことを察して、まだ本文を一文字も読んでいないのに泣いた。最後の方の、恐らくジュンイチとの別れについて書かれているであろう箇所を読む

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    2025年10月05日
  • 韓国文学の中心にあるもの

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    今まであまりにも韓国の本を読んでこなかったので、この国の文学の歴史はどのようなものなのかを知りたくて手に取った。
    第1章で、読んだことのある本「82年生まれキム・ジヨン」について書かれていたが、まずその本の解釈が私はあまりにも浅かったのだということに気づかされた。
    この本は2016年に韓国で出版されているが、第2章以降、歴史をさかのぼって韓国文学が紹介されている。
    文学はそれが書かれた時代の影響を受けるものなので、韓国の歴史がかなり深く説明されている。
    例えば第2章では、2014年に起きたセウォル号沈没事故の詳細が書かれており、この事故が韓国人に与えた影響の深さがよく分かった。
    当時のことは覚

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    2025年10月03日
  • 別れを告げない

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    ネタバレ

    背中がゾゾゾとなるほどの、すごい読書体験だった。

    雪国出身なのと、著者の描写の巧みさで、雪景色が手に取るように想像できた。

    思いが強ければ、同時に遠くにも存在できる……認知できていないだけで、確かにそうなのかもしれない。

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    2025年09月30日
  • フィフティ・ピープル[新版]

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    人生の中の最悪な日、誰かの生死にまつわるような出来事、走馬灯の中に出てくるような、そんなシーンをめぐる50人のストーリー。
    それが少しずつ繋がっていったりする。

    かなりの読み応えがあり、心がずっしり重くなる感じがした。

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    2025年09月27日
  • ギリシャ語の時間

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    以下、ネタバレ含みます。




    最初の三分の一くらい、視点の切り替わりが分からなくて、書かれているものが分からなくて、読み飛ばすように急いでしまった。

    合わなかったかな、と思いかけて。
    ギリシャ語講師が、登山とスイスに訪れるくだりを読みながら、夏目漱石の『門』を思い出した。

    彼は、そこに救いを求めていたのだろう。
    けれど、もともと、救いなんて、誰かが与えるものではないのかもしれない。
    かと言って、自分で見出せるものでも、ないのかもしれない。

    「中動態」という表現がしっくりくる。
    することと、されることで、分かたれない世界。

    そこで、私自身の立ち位置が決まったのか、エンディングに向けて

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    2025年09月24日
  • 別れを告げない

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    冒頭では、これが済州四・三事件につながるなんて思いもしなかった。
    とかエラそうに書いてるけど、済州四三事件とかまったく知らなかったし。こんなに近い国なのに。
    小説本編にも注意書きは多いが、「訳者あとがき」はほぼこの事件の経緯、解説。
    本編より細かい字でみっしり。情報量とその内容の深刻さ、残酷さに圧倒された。
    となるとウィキペディアとか見ちゃうよね。でまたドシッとくる。
    タイトル「別れを告げない」は、作品中では映画のタイトルとして出てくるけど、「哀悼を終わらせない」という意味だと著者がはっきり述べているそう。
    幻想的な場面展開も詩人ならではかな。
    さすがノーベル文学賞受賞されただけある。
    斎藤真

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    2025年09月14日
  • 別れを告げない

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    舞い散る雪が、死者たちの頬にうっすらと積もり、白く覆ってゆく。
    等しく生者の頬にも降る雪は、刺すような痛みの感覚を残して、溶け去ってゆく。

    痛みと熱が生の証というならば、死は痛みの喪失と引き換えに、無限の沈黙の中に消えるということなのか。
    いや、例え肉体が凍りつき、もはや唇は閉ざされたままだとしても、死者には消えぬ痛みの記憶が残っている。
    死者には、語るべき言葉がある。
    だから、別れを告げない。

    雪は溶けて海へと流れ、空に昇って雲となり再び一ひらの雪片として地上へ戻ってくる。
    過去と未来は循環し、死と生は共にある。
    そんな地点ををつなぐのは、悲しみと嘆きの言葉だけじゃない。
    「あなたにはわ

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    2025年09月13日
  • ギリシャ語の時間

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    一度読んだだけでは到底理解は出来ない。
    視力を失っていくギリシャ語講師(男)の回想と
    ある時から言葉を発することが出来なくなったギリシャ語受講生(女)の回想が続いて行く。
    冒頭と結末が同じなので二人がいかに交わっていくのかという話ではあるのだが、恋愛模様とは全く違う。
    哲学論と詩のような文体が入ることにより、物語より深い不思議な体験を味わえる。
    始めはそれが、読みにくいし、全く理解出来ず苦痛だったのが、慣れとともに心地良くなり次第には独特な言葉の禅体験をしたような晴れやかな気持ちになっていた。
    傷を抱えた者が世の中に馴染めず、かといって落としどころを見つけて合わせて生きていくのも苦しい。
    二分

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    2025年09月12日
  • 回復する人間

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    読みながら少したじろぐ。なぜハン•ガンさんは、異郷のゆかりもない僕に対して、抱え込んだ孤独を、疼き続ける痛みを告白するのかと。
    僕には、受け止めるだけの度量も、分かち合う優しさもないというのに。

    だが、彼女は決して弱音を吐いて、己の傷や悲しみを嘆き訴えているのではなかった。
    むしろ、誰からも助けの手が差し伸べられなく、独りで耐えるしかない痛みに押し潰されたときでさえも、消え去ることのない強さが人の内には秘められている、そう静かに告げていたのだ。


    人は自らの意志で、身体や生活を律して前へ進んでいるいると思い込んでいるけれど、果たしてそうだろうか。
    心がたとえ悲しみを求めていても、
    理性が抑

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    2025年09月04日
  • 声をあげます

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    何度も本を抱きしめたくなるほど、自分にとって最高の本になった!
    よりリアルなストーリーや描写が好きという人にとってはあまりハマらないかもしれないが、
    チョンセランの描くSF世界が好きすぎる、、!
    一見、ありえない変な世界なのだが
    読み進めていくとどれも『あれ、でもこれって現実とそんなに遠い話ではないのかもしれない』という気がしてくる。
    そしてどれも過酷な希望を持ちづらい世の中に置かれた時の主人公の心の動きというかモノの捉え方や、その心情を伝えてくれる心のセリフがすごく良い。
    タイトルも使うワードや比喩がすごくセンスがあって好き。。

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    2025年08月28日
  • ギリシャ語の時間

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    中動態。プラトンのイデア論。使われていない言葉のギリシャ語(言葉の古層の比喩か)。目が見えなくなる男性。言葉を失った女性。若き日の初恋の破綻(男性)。裁判で負け子どもを手放す(女性)。ドイツから韓国に、母親と妹との別離、距離を隔てた地での親友(男性を愛している?)の死(男性)。ドイツでは異物としての視線にさらされる(男性)。その二人はソウルのカルチャースクールのギリシャ語講座で教え・教えられる関係にある。

    なんという複雑に錯綜した構造の小説だろう。執筆に2年間かかったのも頷ける。

    離別を経験し、見えなくなり、発声ができなくなっているからこその出会い(溶け合い)。

    そして、この二人を描写し

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    2025年08月05日
  • 本の栞にぶら下がる

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    国も時代も横断した作品たちの比較批評が面白かった
    自国の古典作品をイカゲームのサブタイトルに問い入れたり韓国ってかっこいいな

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    2025年08月03日
  • シリーズ「あいだで考える」 隣の国の人々と出会う 韓国語と日本語のあいだ

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    著者は多くの朝鮮文学作品の翻訳者なので、興味を持って本書を手に取った。二つの文化の間で微妙に揺れたり、風が吹いたりするのを感じる、絶妙な心持ちを描いていて、その表現力に唸らされる。しかし本書はそれだけにとどまらず、朝鮮と日本の複雑な歴史関係を史実に沿って書いている。正直言って、ここまで関係の深い国だとは思わなかった。隣の国なのだから、知っていて当たり前なのに。ここに両者の複雑な関係が見え隠れする。本書を読めば、もっともっと朝鮮が好きになりることは間違いない。巻末のお勧め本のリストも嬉しい。

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    2025年08月01日
  • 回復する人間

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    ネタバレ

    肉体に受ける血の流れる傷の他に、罪悪感や後悔や喪失感も紛れもない傷。
    この本に収録されている七編の主人公や登場人物たちほどでなくとも、それらの傷は多くの人にあると思う。
    もちろん、私にも。
    読んでいて、登場人物たちの傷と共に自分の古い傷を改めて意識する。
    登場人物たちはたとえば表題となっている「回復する人間」ではタイトルどおり傷から回復するのだろうか?
    どうやって?
    目が離せなくなる。
    だが、彼らは必ずしも回復するわけではない、と私は思う。

    ただ、登場人物たちは自らの傷との向き合い方、折り合い方を通して私たちがそれぞれ持つ傷に寄り添う。
    傷を抱えたわたしに寄り添う。
    それは同じような痛みを感

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    2025年07月26日
  • ギリシャ語の時間

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    視力を失いつつあるギリシャ語講師と言葉を話すことができなくなってしまった女性。
    どちらもコミュニケーションにあってほしい機能が損なわれつつあったり、損なわれている。
    だが、目が見え、言葉を話すことができるからといって、わたしたちは互いを本当に理解し合えているのだろうか。
    その意味で、ギリシャ語講師もギリシャ語を学ぶ女性も他人ではない。
    繊細で美しくたおやかなハン・ガンの詩人の言葉で描かれるそれぞれの置かれている状況や胸のうち。
    それをたどりつつストーリーを追えるのはどこか贅沢なことに思える。
    問題は何一つ解決したわけではないし、二人もやはり分かり合えているわけではない、たぶん。
    にもかかわらず

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    2025年07月17日
  • シリーズ「あいだで考える」 隣の国の人々と出会う 韓国語と日本語のあいだ

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    ハン・ガンの『すべての、白いものたちの』を読んで、韓国語にとても興味を持った。”この本を読んで”というよりもっと初めの段階、”このタイトルを読んで”興味を持ったといった方が正しい。

    『隣の国の人々と出会う』は、『흰(ヒン)』の訳を『すべての、白いものたちの』とした翻訳者・斎藤真理子さんの著書である。正直なところ、翻訳についてのいろいろを知ることができるかな?と思っていたのだが、それは私の一方的な希望で、この本には、朝鮮の歴史的背景や日本との関係性、そしてそれらを踏まえての言語・文学などについて多く書かれていた。

    あとがきに、「シナモン抜きの水正果(スジョングァ)になってしまい反省している」

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    2025年07月06日