斎藤真理子のレビュー一覧

  • ギリシャ語の時間

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    ネタバレ

    ひとひらの雪片が地に降りる前に雨となり、泥濘みを生じる。
    雪の美しさは、-イデアは、雨や泥濘みとなって失われたのか?

    この問いへの答えとして、僕らは円環を見いだすだろう。
    プラトンが説く絶対的な美や善、理想や光の存在とは違う。
    消滅と薄暮の中にある世界。それは絶望でも欠落でもなく、儚くともあるがままの生だ。
    それは何度でも新しく生まれる世界とも言えるだろう。


    彼女を取り巻く世界との繋がりと意味が消えてゆくとき、彼女の中から言葉という記号も消えてゆく。
    沈黙の中で、彼女は古典ギリシャ語という、美と真理を精緻に表現しようとした到達点であり、そして消えていった言語に触れる。
    古典ギリシャ語が彼

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    2026年08月16日
  • 光と糸

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    小説かと思ったら散文集だった、エッセイ、寄稿文、講演録、詩、庭日記etc. 内省的だけどひとりよがりではない淡泊なトーンがとても良い。わたしやっぱりハンガン好きかも

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    2026年08月16日
  • 言葉の森のかくれんぼ

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    良い往復書簡。わたしは隣の国のことを何も知らない…真摯にことばに書に世界に向き合う2人の質問投げ掛け合いがぐっときて、心に染みて、こんな言葉で表せるのかと感動する内容でした

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    2026年08月14日
  • すべての、白いものたちの

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     こんな小説もあるんだなと思った。
    しろいものを集めて、それを基調として、独自の静謐な世界を創り出すことに成功している。
     生死の交わるところに生があるということ。
     この小説の独自性は卓越していると感じたし、他のハン・ガン作品も読んでみたいと感じさせられた。
     韓国の作品を読むのは、少年の頃に読んだ「ネギを植えた人」以来だったが、文学性の高い素晴らしい作品だった。

     韓国では、死者に着せる装束を寿衣と呼ぶというのが、印象に残ったが、国語辞典を調べたら、普通に載っていた。スルメをアタリメというのと同じ発想なのだろうか。

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    2026年08月10日
  • 82年生まれ、キム・ジヨン

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    読んでいるときずっと辛かった。。私もこれ以上男性に悪いイメージを持ちたくなくてあえて考えないようにしていたテーマだったので。ショッキングだけど、読むのが止まらないような本だった。。

    私の親も、「女は稼げないから結婚して男に稼いで貰わないと」とか言う。あと、私が趣味で何か料理を作ると、祖母に「これでいつでもお嫁に行けるね」と言われたりもする。これは世代の価値観だからしょうがない、と受け流している。
    私はそう言われるたび、「自分で生きていくために稼ぐしお嫁に行くために料理していない」と心で言う。

    特に印象的だったのが、女性は結婚、出産で失うものがあるけど、男性はあくまで「手伝い、メインで稼ぐ側

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    2026年08月07日
  • すべての、白いものたちの

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    エッセイでありながら、まるで美しい詩のように読まれた。

    個人的な記憶が異国の集団記憶と重なり、生と死、そして「いきること」への普遍的な思索へと広がっていく展開が素晴らしい。時折立ち戻って吟味したくなるような表現が、要所に宝石のように散りばめられている。ある日突然、世の中の喧騒から一歩離れて読みたくなる、そんな一冊だ。

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    2026年07月22日
  • すべての、白いものたちの

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    この蒸し暑い梅雨時期に読む感じじゃなかった、ずっと冬だった。
    短編というより散文詩のような、白いものと亡き姉にまつわる短い物語が続きます。

    原書がどんな感じかわからないけど、訳者の言葉の選び方にいろいろ想像が広がって流し読みできない感じ。じっくり読み返し。
    平野啓一郎氏の解説を読んで、さらにまた読み返すことになりました。そういうことだったのかぁ。

    冷たくてひたすら静かな雰囲気。図書室で借りたのですが、手元に持っていたくなりました。

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    2026年07月18日
  • すべての、白いものたちの

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    著者が亡き姉に思いを馳せ白いものを挙げていくお話

    死者を悼み、静けさの中で白と向き合う
    読んでいると美術館を歩いている気持ちになる

    夏に韓国に行くからきっとまた読む

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    2026年07月15日
  • 別れを告げない

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    原著は2021年発行。日本語訳は白水社から2024年4月に刊行。架蔵本は2025年12月刊の第17刷。訳者は斎藤真理子。
     
     偏頭痛と胃痙攣に苦しみ、自らの遺書を書くために生きていると感じていた作家・キョンハのもとに、しばらく連絡を取り合っていなかった友人・インソンからの連絡が届く。故郷の済州島で小さな木工所を営んでいた彼女は、作業中に誤って2本の指を切断、何とか接合手術には成功したが、入院中は3分に一度、神経を殺さないため、接合した指を腐らさないために指を針で刺し続ける必要がある。彼女を見舞ったキョンハは、インソンのたっての頼みで、彼女が家に残してきた小さなインコ「アマ」が生きているかを確

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    2026年07月04日
  • 82年生まれ、キム・ジヨン

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    ネタバレ

    最後の最後に突き落とされるような感覚があった。だからカタルシスを期待していてはいけないんだと思う。この本の帯にK-POPアイドルの名が並んでいること、この本が売れている現実があることが、まだ希望の光なのかもしれない。
    言葉悪いけど言わせてほしい、本当に、本当に、本当にクソみたいな世界だ。これでも「マシなほう」なんだから本当にクソだ。
    ジヨンの言葉は、それを発する者が「ジヨンではない誰か」になったら回りに受け止められた。だけどすぐに「具合が悪い」扱いにされた。この描写がつらい。

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    2026年06月27日
  • 光と糸

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    彼女の問いは、世界の片隅の誰かやわたしと同じで、彼女が言うように、言語が糸となり、そんなわたしたちをつなぐ。
    世界の、何もかもが異なる誰かとも、確実につながっているのだと実感するとき、まさに他者は自分の鏡であり、あなたはわたしで、わたしはあなたなのだとも理解する。
    それはどれほど心強いことだろうか。

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    2026年06月21日
  • 別れを告げない

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    忘れたくない読書になった。
    人間が人間でなくなること。
    どんなにかすかでも生命は生命であること。
    私たちの想いや存在は決して理屈でわかるだけのものでないこと。
    至高の愛の物語だし、鎮魂の物語だし、人の本質にどう触れるかという物語だし、死に限りなく近づく物語だった。
    最後の炎の表現は希望の明かりの例えのように思えた。

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    2026年06月18日
  • すべての、白いものたちの

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    白という色について、詩集のようにさまざま描かれています。韓国の本なのに、やたらと心にスッと入ってくる。また、読み返したい本です。

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    2026年06月14日
  • すべての、白いものたちの

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    すごいなぁ。なぜ白いものを説明しているだけなのに世界が地球を超えて宇宙に広がっていく感覚があるんだろう。ネットフリックスもSNSも何もいらないくらい世界は美しいものに溢れているしそれだけでエンタメ。そこに生きている私たちも不完全でも美しい。読書しているのに瞑想しているような感覚。これからもずっと読み返したい。

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    2026年06月11日
  • すべての、白いものたちの

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    出会ってしまいました!!

    小説という枠組みを越え
    詩のようであり、祈りのようでもある
    息を呑むほどに美しく静謐な文学世界_

     

    この世界に存在する「白」という
    色彩のなかに潜む
    儚さや生と死の記憶にそっと触れたとき…
    胸の奥にひんやりとした
    けれど不思議と温かい一筋の光が
    差し込んできたような感覚を覚えました

    あまりの美しさにしばらく言葉を失い
    幾重にも寄せては返す余韻が広がりました

     

    この作品が紡ぎ出すのは
    世界に散らばる「白いもの」をめぐる
    かつてないほど純度の高い言葉たち…

    生まれてまもなく、たった数時間で
    この世界から去ってしまったという
    著者の「かつていたはずの姉」の

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    2026年06月07日
  • 光と糸

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    訳者あとがきに取り上げられていた、静かにしていたい、という言葉が響いた。光は届いているし、糸も繋がっている。

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    2026年06月06日
  • 誰でもない

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    ハン・ガン作品から韓国文学に入り、こちらの作家も読むべしと聞いて読んだ。
    どの短編も、大小様々の不幸に見舞われた人々の懸命に生きた物語が、淡々とした語り口で進んでいく。
    ハン・ガン作品と比較することが適切かはわからないが、ハン・ガンさんが逃げようのない大きな不幸を描くのに対して、ファン・ジョンウンさんの不幸は直視を避けたり逃げたりできるくらいの大きさの不幸なだけに登場人物に選択肢があり、動けちゃうだけにその人間のありかたが湿度を持って立ち現れる感じがする。

    淡々とした語り口の中に、どうしても胸に刺さる言葉が多く混ざってくる。共感できない主人公もたくさんいたが、どれも嫌いにはなれない痛さがある

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    2026年06月06日
  • 増補新版 韓国文学の中心にあるもの

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    読み応えがありすぎて時間がかかってしまった。
    歴史や事件に即して読書案内をしてもらえる心地いい体験ができた。
    読みたい本リストが膨れ上がっていく・・・!

    なぜ、私は今まで、隣の国の歴史をこんなに知らなかったのか。
    なんでこんなに無関心でいたのか。
    その理由にちょっと近づけた。

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    2026年06月02日
  • 「なむ」の来歴

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    語学にしていいのか随筆なのかどっちかな。関東大震災後の虐殺の話、治安維持法の話、朝鮮戦争の話、帰国事業の話、重い話が続くのに。恨の話。隣だけど大きく違う。沖縄の話。これも隣。日本では、の話。アメリカーの話。
    短いものの方が長いものより好き。やはり詩の人なのかなあ。

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    2026年05月21日
  • 82年生まれ、キム・ジヨン

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    この物語には女性の誰もが実感できる悩みや苦しみが描かれている。

    フェミニズムとは男性と敵対するために存在するのでは決してない。
    生物学上どうしようもない不平等さに対して、互いに同じ熱量で、納得のいくまで話し合うための主義だ。

    だから男性の皆様にもこの本をぜひ手にとっていただきたい。
    SNS上で繰り広げられる匿名の論争ではなく、著者が勇気を持って発表したこの物語と対話することで、フェミニズムについて考えてみてほしい。

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    2026年05月18日