斎藤真理子のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
出会ってしまいました!!
小説という枠組みを越え
詩のようであり、祈りのようでもある
息を呑むほどに美しく静謐な文学世界_
この世界に存在する「白」という
色彩のなかに潜む
儚さや生と死の記憶にそっと触れたとき…
胸の奥にひんやりとした
けれど不思議と温かい一筋の光が
差し込んできたような感覚を覚えました
あまりの美しさにしばらく言葉を失い
幾重にも寄せては返す余韻が広がりました
この作品が紡ぎ出すのは
世界に散らばる「白いもの」をめぐる
かつてないほど純度の高い言葉たち…
生まれてまもなく、たった数時間で
この世界から去ってしまったという
著者の「かつていたはずの姉」の -
Posted by ブクログ
ハン・ガン作品から韓国文学に入り、こちらの作家も読むべしと聞いて読んだ。
どの短編も、大小様々の不幸に見舞われた人々の懸命に生きた物語が、淡々とした語り口で進んでいく。
ハン・ガン作品と比較することが適切かはわからないが、ハン・ガンさんが逃げようのない大きな不幸を描くのに対して、ファン・ジョンウンさんの不幸は直視を避けたり逃げたりできるくらいの大きさの不幸なだけに登場人物に選択肢があり、動けちゃうだけにその人間のありかたが湿度を持って立ち現れる感じがする。
淡々とした語り口の中に、どうしても胸に刺さる言葉が多く混ざってくる。共感できない主人公もたくさんいたが、どれも嫌いにはなれない痛さがある -
Posted by ブクログ
斎藤真理子さんの訳と解説が素晴らしかった。
−−−−−−−
“しばらくすると咽喉が乾いてきます。枕元に置いた水をーー深海のように落ち着きはらった冷水を飲みます。石英質の鉱石の匂いがして、肺腑に寒暖計を差し入れたように道ができるのを感じます。その冷ややかな曲線は、白紙の上に描こうとしたら描けるのかもしれません。”
“明日は一日、草花ばかり見て遊んで過ごそう、脱脂綿にアルコールを染み込ませてありったけの気苦労を拭き取ろうと、心に決めてみたりします。あまりに夢見がめちゃくちゃだからそんなことを思うのでしょう。草花が満開になる夢、原色版のグラビアの夢、絵本を読んでいるような楽しい夢を見たいの -
Posted by ブクログ
【人間が一番恐ろしい】
そもそもこの、済州島四・三事件のことを知らなかったから、まずネットで調べてから読んだ。独裁政治が人間に何をさせ、何を奪うのか。
戦争や権力の暴力というか圧力によって、人間が少しずつ崩れていくこともすごく恐ろしかった。
人が人を殺すのが戦争。それを正当化するのが独裁者。
国家の暴力によってどこにでもいる普通の人が少しずつ壊れていくことが怖くて悲しかった。
それと同時に、人は圧力の中で簡単に沈黙してしまうんだな、という不安というか恐怖のようなものも強く感じた。
だからこそ、独裁や暴力は絶対に繰り返してはいけないし、過去の悲劇を忘れずに考え続けることが大切だと思った。
『別れ -
Posted by ブクログ
不思議な、心の深い部分に届く詩だと思った。
おくるみ
なんだか不思議な温かいような当惑するような気持ちになった。
彼女
一人の子が成長し、女になって何度となく危機を迎えながら生き延びるという表現に涙が出そうになった。
自分も、まわりは成長を祝ってくれていたのだなと、そして、成人して様々な苦難があったが、乗り越えてここまでこれたなと思うと泣きそうになった。
翼
翼が透き通ってしまうだろう、蝶が蝶でないものになるのだろうが、なんとも言えない気持ち
白い骨
最後、不思議に安堵するのだったを、読んだら、気持ちがホッと和らいだ。
下の歯
規則正しい息の音にしばらく耳を傾けてながら
ということろ -
Posted by ブクログ
詩のような形をした、悲しくて冷たくて優しくて美しい小説。
私自身が過去に見たことのある景色が描写されていて、涙しながら読んだ。私のための小説だった。本当に出会えてよかった。作中に描かれた、決して自分では見たことのない景色も、まるで私の過去に存在したような気がしてくる、そんな愛しい1冊だった。
生も死も表すたくさんの美しい白色を見せてもらった。
掲載されたモノクロ写真も美しく、美術館のようだった。そしてこの美しく繊細な言葉たちを美しい日本語に翻訳した斎藤真理子さんも本当に素晴らしい。『すべての、白いものたちの』としたタイトルも見事すぎて唸ってしまった。
この先の人生でも、何度も読み返したい大 -
Posted by ブクログ
ネタバレ初めての韓国の小説。翻訳だからなのか、文化なのか、独特の文章だったけど、読みやすかった。アメリカ人作家の小説を読んだ時のことを思いだした。「国民の恋人」という表現は韓国らしいと思った。
十一分の一
退廃的で耽美的。生き返った恋人を束の間あたたかい時間が流れ(回想の中では恋人になったという確たるシーンがあるわけではなく、雰囲気と様子からそれを感じ取り、再開の時に思いがちゃんと通じ合っていた、となったのがまた良い)、すぐあとに地球はほろびてしまう寸前の状態であることが読者に明かされ、ゾッとさせられる。そこが怖くもあり耽美的なところなのかも。
ミミズの話の「リセット」は想像すると気持ち悪いけど、映 -
Posted by ブクログ
翻訳らしい短編集。何となくアーウィンショーを思い出した。一貫して痛みを伴う回復がテーマ。中でも「エウロパ」は印象的だった。主人公はトランスジェンダーの男性とライブハウスで歌うイナ。2人の夜の散歩の場面は秀逸。「火とかげ」は映画を観ているようだった。主人公は事故により両手とも効かなくなった画家。そして疲れきって絶望しているその夫。ある時友人の子供が飼っているトカゲがその両手を千切られてもまた生えてくる事を知る。
主人公が少しずつ希望を取り戻し生きていこうと決意してまた絵筆を取る過程が美しい。
全ての言葉が一遍の詩のような何とも言えない透明感に満ち溢れた一冊。