斎藤真理子のレビュー一覧

  • 82年生まれ、キム・ジヨン

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    ネタバレ

    大変読みやすく、面白いと言う表現は語弊があるけどとても満足度の高いものでした。作品全体を覆う閉塞感はジヨン氏のものなのか。時々涙が出そうになるくらい辛かった。最後の数行の仕掛けは秀逸で、救いの無さに思わずうおーっと声がでた。女性の社会的地位の低さは日本も似たところはあるだろう、だけど慣れてしまって気づかないことがどんだけあるだろう。
    救いはジヨン氏のお母さんが学歴もない中、家庭を切り盛りし商売を成功させ、アホボンな旦那に一撃かますとこ。ほんとカッコよかったね!

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    2025年06月09日
  • 影犬は時間の約束を破らない

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    冬眠小説は素晴らしい。私が他にぱっと思いつくのは「ラピスラズリ」と「ムーミン谷の冬」ぐらいだけど。
    平易な一人称の文体がするっと身に馴染むようでいて、しかし私の頭からでは絶対に出てこないだろう言葉が出てくるたび、そのずれが世界に立体感や余白を生み出していく。例えば「言葉は怖くて、言葉は楽しい。脳は素晴らしく、私は脳がほんとに好きだ。」とか、他にも色々。解説で「誤差を含めて泡立てたようなふっくらした質感」と表現されているのがしっくりくる。ただ文章を読んでいるだけで心地よく、じんわりと回復していくような作品。

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    2025年06月04日
  • 回復する人間

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    登場人物たちはみな生きることに大層疲れている。生きていくことはなんて困難なことだろうと思った。それでも人間は回復する力がある。静かだが確かな力が。きっと自分にもあるんだと信じたい。自信はないけど。
    最後まで燃える心臓、フンザ、「黄色い模様のヨンウォン」など、主人公たちに力を与えるものがみな印象的で美しくとても素敵だった。ハン・ガンの文章はいつも映像が頭に浮かぶ。静寂で美しい時間だった。

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    2025年05月30日
  • 誰でもない

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    8つの短篇集。
    韓国文学の、社会問題を描くのに深刻に重くなりすぎないタッチが好きなのですが、この作品は重苦しくなりそうなギリギリの読後感。
    淡々と語る後の不穏な余韻。
    老い、家族、雇用、労働者‥向き合って、描き出しているのがぐっと響きます。

    特によかったのが、
    『笑う男』。
    心にずしんと響きます。
    誰にでもある一瞬の選択、
    とっさの行動が導く結果。
    それが予期せぬ不幸を招いた時、ずっとその後悔を抱えて生きていくことになる怖さ。
    その選択を一瞬で正しいものを選んだり、とっさに正しい行動ができるようにするためには、日々正しい行動や思考をを積み重ねて、心に余裕がないとできないような気がします。

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    2025年05月30日
  • 影犬は時間の約束を破らない

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    冬眠する人とそれを見守るガイドの話
    冬眠する人を見守りながら自分の人生や生活と向き合いつつ、淡々と毎日を過ごすガイドたちの時間がとてもひっそりと静かで心地良い。不思議とこれを読むと良く眠れる気がする。眠ることと散歩することを意識的にして物事を深く考えたり考えなかったりする時間を取りたくなったし、たまに読み返したくなるだろうなという本。寒い国出身の人が生み出す文章は淡々と静かでどこか切なくて好きだなと思う

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    2025年05月26日
  • 82年生まれ、キム・ジヨン

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    話題の本なのでチェック。読みやすいのであっという間に読み終えられると思う。

    韓国の物語ではあるが、日本とそう変わらないと思う。そして、ここでキム・ジヨンの遭遇する苦難はこのように“わざわざ文章化して発表されなければ「あたりまえ」とか「仕方ない」で片付けられるような透明なハードルであろう。

    俺は男だが、彼女らのことを追体験するように没入できた。

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    2025年05月06日
  • タワー

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    超超大型のマンション?というシチュエーションのアイデアがまずすごい。ありそうでなかった。
    そのシチュエーションを生かした短編ストーリーも、それぞれ角度が違って面白い。
    ディテールが細かく作られているのがよくわかる。
    読む人の想像力を掻き立てられて面白かった。

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    2025年05月05日
  • シリーズ「あいだで考える」 隣の国の人々と出会う 韓国語と日本語のあいだ

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    韓国文学へのガイドは、多くの場合、日本と朝鮮という2つの国の関係から語られることが多いが(もちろんそれは必要不可欠なことだ)、この小さくて美しい本で、斉藤真理子さんは、朝鮮の人たちが使う言葉を差し出しながら、その奥深さへと導いていく。話し言葉の「マル」、書き言葉である「クル」、そしてその奥から聞こえてくる「ソリ」、声。
    植民地支配や軍事政権によって本心を語るための言葉を奪われ、大量死さえ重ねられてきた集合的歴史をもち、個々の身体においても容易に言葉にしがたい痛みを負ってきた隣の国の人たちが、だからこそ自らの手に取り戻そうと格闘してきた「マル」「クル」「ソリ」。それを表現しようとするのが韓国文学

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    2025年05月04日
  • 回復する人間

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    短編集。
    明るくなる前に
    回復する人間
    エウロパ
    フンザ
    青い石
    左手
    人とかげ

    危うさと脆さ、ギリギリのラインに立つ人、どの作品にも痛みがあり苦しい。でも、なんだろうか。生への思いが強く静かに届いてくる。

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    2025年05月02日
  • 未来散歩練習

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    「来てほしい未来を思い描き、手を触れるためには、どんな時間を反復すべきなのか。」
    ふわふわとしていて不思議で、読んでいるとコーヒーを飲みたくなるし、美味しいものを食べたくなるし、散歩に行きたくなる。散歩をしながら、過去とつながっている今、今とつながっている未来、私はどんな未来を練習しているのかと考えたくなる。現状に満足できていなくても未来には希望を持つことができるようになりそうな気がした。

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    2025年04月13日
  • 回復する人間

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    ネタバレ

    初めての韓国文学で、初めてのハン・ガン。
    静謐な文体。読むうちに心が沈黙して、無我の境地になる。喪失からの静かな、みずからはそれと気づかないほどの細い細い糸のような回復。希望がほんのりと差し込んでくる。
    「時間とは流れるものではないのかもしれない」(p.141「青い石」)
    「私たちももともとはああだったけど、そのあとにいろいろプログラムされて、本来の状態を忘れて暮らしてるんじゃないかと思うわ」(p.261「火とかげ」)
    失ったものは取り戻せないけれど、それを置いてきた時間にいつでも戻れる。そこから回復の一歩を踏み出す。

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    2025年04月09日
  • 誰でもない

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    ホラーじゃないのに読んでいるとゾワゾワとする。人間の仄暗い部分をずっと見せられているようでずっと居心地が悪いのに、懐かしい故郷の景色を見ているようでもある。

    登場人物たちの後悔や失望が滲み出ていて、その描写が素晴らしかった。

    大切な人を大切に出来なくなりそうな時に読んで欲しい短編集。

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    2025年03月27日
  • シリーズ「あいだで考える」 隣の国の人々と出会う 韓国語と日本語のあいだ

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    韓国とは切っても切れない縁なので(個人的に)読んでみました。


    「あいだで考える」というシリーズの中の1冊で
    必ずしも国と国とか、言語とか限られてるわけではなく
    今回はたまたま「韓国語と日本語のあいだ」について著者の経験や考えや感じたことが書かれてありました。


    著者は韓国文学を日本語に翻訳している翻訳者でもあって
    言葉選びや韓国語に対する視点はとても新鮮でした。
    最初この本を読もうと思ったときは分厚い本で、お堅い本なんだろうな...と予想していたのですが(失礼ですね)、
    そんなことはまったくなく、途中素敵なイラストもあって読みやすかったです。

    私も韓国語と日本語のあいだに立たされること

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    2025年03月22日
  • ギリシャ語の時間

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    一読しただけでは理解が及ばず、ユリイカの特集を読み再読。でもやっぱり難しかった。
    二人の主人公はそれぞれ、言葉を失い、視力を失いつつある。私には本の最後、二人の物理的な距離は重なり合ったものの、心の距離が縮まることがないのではと感じられた。ギリシャ語講師は言葉を失った女を理解しないままだし、女はやっと言葉を取り戻したばかり。今後女が言葉を尽くしたとして、ギリシャ語講師は女を視力を失ったその目で見ようとするだろうか。私はそうは思わない。初恋の相手に綴った手紙のように想いが一方的で、簡単に過去を美化してしまうから。
    どうしてこの物語がハン・ガンにとって「生きていくということに対する、私の最も明るい

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    2025年03月14日
  • 優しい暴力の時代

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    親切な表情で傷つけあう人々の時代
    本の中に80年代〜90年代の韓国の歴史(民主化、IMF危機)が刻まれており、格差社会の深刻化を知ることができる
    三豊百貨店事故の話を読むとセウォル号沈没事故のことを思い出し、多くの家族、親友などの尊い命が亡くなっていったことを忘れてはならない

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    2025年02月09日
  • ギリシャ語の時間

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    喪失とは。
    失って得るものがあり、気付くこともある。また、生きていくとは同時に失っていくことでもある。

    夜の森を歩けば目は役に立たず、視覚以外の全てを研ぎ澄ますだろう。
    愛が失われていくなら、より繊細にそれを伝えるだろう。

    突然奪われ失うこともある。そこでは何が得られ何を気付くことごできるのか? その喪失には、回復と再生が必要になるはずだ。まずは手探りでその糸口を探さなければならないのだろう。

    それは時間、時だったり、熱だったり…

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    2025年02月08日
  • 回復する人間

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    「火とかげ」に圧倒された。途中出てくるTears In Heavenのエピソード知らなかったので、改めて聴いて心に沁みた。「左手」だけ他の作品と違った作風だったが、先が気になりグングン読んだ。どの作品も人が傷つき回復する様が丁寧に描かれていた。自分が辛い時に読んだらきっと、もっとハマると思う。そんな時、この本を思い出して、また読みたいと思う

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    2025年01月25日
  • 回復する人間

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    繊細だけれどとても鋭い、傷ついたり傷つけたりしてしまいそうな文章。そんな文章でしか書けない傷や悲しみ苦しさ、人生がある。それらの殆どの人生、物語には最後に光がさす、希望が垣間見える。前に進めるように開いた小説たち。それらは回復を促すように書かれたのかもしれない。
    だけれど、ある短編の登場人物が「私を回復させないで欲しい」と願うように、残しておきたい傷や忘れるべきではない悲しみ苦しさもある。回復とは忘却にも近い。傷や悲しみ苦しさを忘れないために書き残された、そんな風にも思えた。
    回復も忘却も、時間を使って人生が行使する必要な力だ。だけど、それに抗うように傷を悲し

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    2025年01月11日
  • 優しい暴力の時代

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    習慣で寄った本屋でなんとなく選んだ短編集が完璧にClassicだった。これは本当に凄いと思った。という体験を以前にもしたことがある、と思い出す。あのときも同じ本屋で同じ出版社、同じ翻訳者の文庫本を買ったのだった。電車で読み始めた最初の頁でこれは読みたかった本だ、と“分かった”ときの喜びも同じだったように思う。

    帰り道の終点駅のホームで読んだ最初の一編の最後のページ、そこに書かれた印象的な涙を読んで、泣きそうに、いや、彼と同じように「まだ起きていないできごとと永遠に起きないできごとを思い浮かべて」泣きたいと思った。
    物語られる幾つもの人

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    2025年01月11日
  • ギリシャ語の時間

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    目が見えないこと、言葉が話せないこと。
    それは死に半分くらい足を浸しているようなものだろう。
    深い深い森の中にひとり生きているようなものだろう。

    決して他人が理解できるものではない。
    ("そんなに簡単なことではありません")
    闇の深さを、底に何かが横たわっていることを
    かすかに伺い知れるのみ。

    出会いとはすれ違いのことなのかもしれない。
    面と向かってすれ違うことが出会うということなのかもしれない。
    あなたは私の過去を知らない。私もあなたの過去を知らない。
    ぼんやりとした暗闇の輪郭をなぞる。
    触れ合うとは理解し合うことではないのだと初めて思った。
    輪郭に触れる、輪郭を形成

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    2025年01月05日