斎藤真理子のレビュー一覧

  • 別れを告げない

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    ハンガン自身がこの作品を「究極の愛の小説」とし、「光がなければ光を作り出してでも進んでいくのが、書くという行為」と語っていて、歴史の闇から目を逸らさず、そこに生きた死者の姿を描き、光を照らし出そうとする彼女の覚悟に胸を打たれる。
    痛みを引き受け、光を作り出す、それは確かに彼女の作品に共通するものであり、ノーベル文学賞受賞にふさわしい。

    彼女と同じ時代に生きて、彼女の作品に触れられること、本当に嬉しく思う。

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    2026年06月21日
  • フィフティ・ピープル[新版]

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    短編のようで短編ではない。分厚いけど、毎日少しずつ読み進めていった。後半2回くらい泣いた。ハ・ゲボムとチョン・ダウンの話。

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    2026年06月12日
  • すべての、白いものたちの

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    ハン・ガンさんの二冊目。
    まず、タイトルに惹きつけられた。
    真っ白な「ハヤン」でなく、生と死の寂しさをたたえた白い色「ヒン」の物語。散文詩の研ぎ澄まされた言葉の中に著者の痛みを感じた。

    1 私
    2 彼女
    3 すべての、白いものたちの

    おくるみ、産着、タルトック、霧・・と白いものたちの65の短編が綴られる。

    「産着」は哀しみと痛みを感じる一編。
    人里離れた官舎に住んでいた父と母。
    たった一人で赤ん坊を産んだ母の「しなないで しなないでおねがい。」悲痛な叫びが聞こえてきた。

    選び抜かれた言葉で情景が紡がれる。
    たとえば「波」の一編。
    遠くから走ってくる冬の海が迫り、高く

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    2026年06月06日
  • ギリシャ語の時間

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    ノーベル文学賞受賞のハン・ガン氏による長編小説。言葉を失った女性と視力を失いつつある男性との魂の物語。ハン・ガン氏の根底のテーマであるトラウマと蘇生。そこに社会性を反映させ、詩的な物語を紡ぐ。とにかく言葉の表現が凄い。普段組み合わせない動詞と名詞を配置し、横たわる情景や感情を的確に表現する。物語のあらすじや意味するところは難解だが、不思議と心に迫ってくる作品。

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    2026年06月04日
  • ギリシャ語の時間

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    読んでいる最中は少しとっつきづらく、難しいと感じる場面もあった。しかし、読み進めるうちに、いつの間にか静謐な世界に引き込まれていく不思議な作品だった。

    ハン・ガンさんの文章は非常に練り上げられており、一つひとつの表現に深い思索が感じられる。その繊細な言葉の積み重ねが、この作品ならではの魅力だと思った。

    派手な展開を楽しむというよりも、言葉や登場人物の心の動きを静かに味わう作品だと感じた。

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    2026年06月06日
  • ギリシャ語の時間

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    本作のテーマは「言葉」。わたしたちは何気なく言葉を発したり文字を打ったりするが、言葉というものの重みがずっしりと感じられた。

    物語は視力を失いつつある古典ギリシャ語の先生と、言葉を失ってしまった受講生の女性が軸になる。人生で傷ついた人たちが、冷たい雨が降りしきる中、そっと肩を寄せ合うような様子が浮かぶ。ハッピーエンドではない。ただバッドエンドでもない。わからないもの、わかりあえないもの、わかりたくないものが曖昧かつ混沌に混じり合うこの世界を包み、読者に提示している。

    前編を通して静かな詩のような文章で構成されており、訳者の斎藤真理子さんの力も相まって、プロットをを一字一句しっかりと味わいた

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    2026年06月01日
  • すべての、白いものたちの

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    著者の生に関する人々。両親、姉、弟、自身との関係について。生後すぐに亡くなった姉についての物語が描かれています。姉が生まれたときの両親、その死に対しての両親。異国の地を歩きながら、姉がその地で生きた場合について思いを巡らせ、そして姉が生きていたら自分は生まれていなかっただろう不思議ともいえる確率について考え、読者もまた考えさせられるものがあります。それらを考えるのに、白いものにまつわる話から、一つ一つの話を結びつけていって、その独特の解へと辿り着くようになっています。エッセイのようにバラバラに感じる文章になっているので取っ付きにくいのかと読み始めると、ちゃんと全てがつながっていて、そしてそれぞ

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    2026年05月24日
  • 82年生まれ、キム・ジヨン

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    韓国って日本に似てる。だけど、30年くらい後だと思う。男尊女卑とかは昔からの流れだろうけど、その意識から脱却するのに日本より遅れていると思う。
    今から10年前の時代を描いている章があったけど、その頃日本は子供を産まないのか、いつできるのか等の質問は既にご法度だったし。個人でも組織でも国でも、やはり余裕が無いと変わっていくこと、変化には対応しずらいのかなと思った。旧態のままでいることにしがみつくというか。
    後は、韓国のそれぞれの家庭があまりに男系を重視する日常過ぎて、気づかないうちに文化にまでなってしまっていたのにも驚きだと思う。

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    2026年05月22日
  • 別れを告げない

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    太平洋戦争後に韓国のチェジュ島で発生した虐殺事件をテーマに、サバイバーとなった女性の娘インソンとその友人キョンハ(本書の主人公)が島の過酷な歴史と被害に遭った家族の痛みを辿る物語。
    これまで読んだものの中で、こんなにも寒くて痛くて、深い悲しみを感じた小説は他にない。本当に。

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    2026年05月10日
  • 増補新版 韓国文学の中心にあるもの

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    初めて韓国に行ったので、旅行のお供に連れて行った。とても良いお供だった。
    改めて朝鮮半島の近現代の壮絶な歴史に触れ、それを下地にして成り立っている韓国文学の底力みたいなものを感じた。

    考えてみると韓国の民主化は80年代でつい最近のこと。それまで植民地時代、朝鮮戦争、軍事独裁政権…と苦難が続いた。日本に主権を奪われた植民地時代だけでなく、同じ民族同士で殺し合った朝鮮戦争、国が市民に銃を向けた独裁時代があった。
    私はいつも中国の近現代をみるとその凄まじさに圧倒されそれを乗り切ってきた人民たちに敬意を持ってひれ伏したくなるのだけれど、そしてそんな中国の陰に隠れてきたかもしれないけど、朝鮮半島もかな

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    2026年05月06日
  • 82年生まれ、キム・ジヨン

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    ネタバレ

    女子校出身、女性ばかりの職場で働いているからなのか女性だから損してると感じた経験は少ないけど自分が気づいていないだけで損をたくさんしているのかもしれない
    キムジヨンには幸せになってほしい

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    2026年05月01日
  • すべての、白いものたちの

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    ネタバレ

    2026/04/16 - 2026/04/17

    柔らかな綿でキュッと心を締め付けられるような苦しさと、まだ誰も踏み入れていない新雪のような静謐さがずっと交互にやってきて、ページを進める手を止めることができなかった。

    ハン・ガンの本はこれが初めてで、正直、このご時世にノーベル賞を獲った人が女性であり、アジア人であった、ということが読むきっかけだった。受賞で話題になった際に、すぐに購入したが、「韓国文学について知ってからのほうがいい」などの情報が多く、勝手に億劫になり、今まで読んでいなかった。

    しかし、読んでみたら、私にはとてもすんなり、まるで水が染み込むように心の中に文章や物語が溶けていっ

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    2026年04月27日
  • 光と糸

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    ノーベル賞の文学賞を得た韓国の韓江(한강)さんのエッセイ。光と糸はノーベル賞の受賞記念講演だそうだ。「菜食主義者」、「風が吹いている、行け」、「ギリシャ語の時間」、「少年が来る」、「別れを告げない」。のそれぞれを書きだした時の動機のような背景が書かれている。この本を読むことで韓江さんの思いを少しだけ感じられるのではないだろうか。

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    2026年04月21日
  • すべての、白いものたちの

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    初めてハン・ガン氏の本を読みました。綺麗な文章と静謐な世界に引き込まれていきました。姉と兄を亡くし、母の悲しみを背負って生きている主人公。その母も亡くし、孤独感と優しさが淡々と語られる文章の中から伝わって切なくなりました。他の作品も読んでみたいと思いました。

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    2026年04月11日
  • 82年生まれ、キム・ジヨン

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    82年生まれ、キム・ジヨン

    著者:チョ・ナムジュ

    子育て中に異常行動が表れた1人の女性患者のカウンセリング記録という形で進行していく小説。

    過去から現在に至るまでの韓国社会における女性差別の実態を告発するかのような内容で、フェミニズム本のような読み味だった。

    出生、進学、就職、所得、結婚、育児
    様々な点においての男女格差を極めて普遍的に描いており、その普遍さが薄い膜のように作品を纏い、とても不気味で恐ろしいものに感じた。

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    「でもさ、ジヨン、失うもののことばかり考えないで、得るものについて考えてごらんよ。親になる事がどんなに意味のある、感動的なことかをさ。それ

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    2026年04月11日
  • ギリシャ語の時間

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    文字が美しかった。言葉が洗練されていた。だからこそ、ちょっと難しかったし、それが美しさを際立たせてると思ったし、面白かった。
    人と言葉をまぜまぜしてる2人が可愛かった。じぶんでも何言ってんのかわからん。

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    2026年04月10日
  • すべての、白いものたちの

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    決して読むのが難しい本では無い。ただ、小説というには詩的すぎるし、詩というには小説的で、何かまだ名前のついていないジャンルの文学を読んでいる不思議な感覚。そして、だからこそ新しいのだと思いました。それは作者のレンズ(といえば良いのか分からないが)のピントもそうで、具体的とも抽象的とも言えない、ぼんやりとした写真のような描写が続く。そしてそのボケ感というのが景色に対しても心情に対しても効いていて、結果、テーマとも接着しているという妙技。読み終わって思わずははぁと唸ってしまいました。

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    2026年04月07日
  • 「なむ」の来歴

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    韓国文学に興味があり、斎藤さんの訳本をいくつか読んでいたが、本書を読み、言葉やその背景にある歴史とその傷などを丁寧に扱う方だと再認識した。文中の引用や紹介している本たちも気になる。いつでもより深い興味を開かせてくれる方。

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    2026年04月04日
  • 曇る眼鏡を拭きながら

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    斎藤真理子さん曰く「編集は世界を作ること、翻訳は世界を歩くこと」。他人の世界を丁寧に歩いてこられたお二人だからこそ、言葉の扱い方/拾い上げ方、お互いの書簡の読み取り方が、とんでもなく細やかで心地よい。

    「塩食いの会」「ヴィーヴァ!藤本和子ルネサンス、ヴィーヴァ!」などのパワーワードが頻出する、藤本和子とリチャード・ブローティガン(わたしは文字のタトゥーを入れるとしたら、『アメリカの鱒釣り』の一節にしようと思っているので)の話を筆頭に、各々が担当された作家やお二人の育児話など、読み応えがありすぎる。

    あと、わかってはいたけれど、読みたくなる本の話題がドカドカ出てきて、リストがパンクしそう。

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    2026年04月03日
  • 「なむ」の来歴

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    特に好きなのは、三章「言葉と言葉の間で」。
    同じような年頃なので、「わかる、わかる」と思うところも多かった。
    静かで、鋭い。
    この本に出てくる詩を声に出して読んでみた。いい。
    若い時はわからなかった詩の良さが、わかるようになった・・気がする。

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    2026年04月02日