斎藤真理子のレビュー一覧

  • 別れを告げない

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    今ではすっかりリゾート観光地として有名な済州島。80年弱前のその島で、怖ろしい虐殺事件が起こっていたことをうかがわせる影はまるで無いように見えてしまう。

    けれどそうではなく、実際に今もなお数知れないほどの遺体が土の下や海の底に埋もれたままで、縁者を探す人、真実を求める人たちがいる。そのことを、この本を通じて、そしていくらか調べることで、きっとほんのわずかにすぎないだろうけれど知った。知れて、良かったと思った。

    私小説に近い体裁で綴られる二人の女性の物語の現在では、しんしんと重苦しく雪が降り続ける。あらゆる生命の活動を抑えつけるような圧迫感のある静かな雪は、一方であたたかな命を持つ頬では他愛

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    2026年02月03日
  • 翼~李箱作品集~

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     母国である観光ではその名を冠する賞も樹立されているほどの評価を受けている李箱さんの作品集。全体的に厭世的で無気力な雰囲気が漂っている作風で、この世を俯瞰しているかのような達観した思考を持った主人公が多かったです。
     話の流れはどれも不明瞭かつ難解だと感じましたが、左記も登場人物の各々が、自己の殻に閉じこもって一人この世の実質を思考し続けた末の結果なのかなと考えました。
     表題にもなっている「翼」においては収録作の中では最も理解しやすい話だと感じており、また相当な感動を受けました。左記作品を読むためだけに買ってもおつりが来ると私は思いました。
     本作の約1/3ほどは作者である李箱さんの解説に費

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    2026年01月31日
  • 声を出して、呼びかけて、話せばいいの

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    なかなかの地獄一家のお生まれ。でも冷静に自分の感情を分析して、飲み込まれないようにサバイブする能力に長けていると思った。命のやりとりをあまりにも身近に経験しているからこそ研ぎ澄まされていく芯みたいなものを感じる。

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    2026年01月31日
  • 光と糸

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    この本は、訳者あとがきに書かれているとおり、ノーベル文学賞受賞記念講演「光と糸」を含む受賞関連の文章三つと、単行本未収録の詩と散文、そして庭仕事を通しての暮らしと心境を綴った「北向きの庭」と「庭の日記」から成っています。

    韓国のつらい歴史に対しての疑問と葛藤、そして愛についても考え、悩み、自分と向き合いながら小説が完成するまでの葛藤の日々がこの本に綴られていました。

    彼女が八歳のときに書いた一編の詩の始まりで、感性豊かな子どもだったこともわかりました。かわいいハングルの直筆の写真もありました。

    「庭の日記」では彼女が庭の木々を慈しむ日々が書かれていました。表紙の写真も、ハン・ガンさん自身

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    2026年01月28日
  • すべての、白いものたちの

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    まるで詩集のような、散文といった方が良いのかな。これは小説なのか。
    各セクションごとに余白のページが設けられ、その演出がより小説というよりは散文集の印象を与える。
    透明感があり、静かな文章。白という言葉のためか、静かな冬の日を連想させる。余白は余韻のためにあるのかな。白い静寂な時間を堪能してから次へ進むような。映像的な文章。

    最初は「私」という章で、作者の過去の記憶かと思わせる、産まれてすぐ亡くなった姉について。次章「彼女」はその姉についての文書と推測されるので、記憶ではなくて創作なのだと思う。姉の存在についてが事実なのかは不明。後書にもなかったと思う。
    亡くなった姉が主軸としてあるので、静

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    2026年01月21日
  • すべての、白いものたちの

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    初めは「詩集なのか?この一冊で作者は何を言いたいんだろう?」と理解できず読み進めていたが、読んでいくうちに“私”と“彼女”の存在を何となく認識し、またあとがきなどの文章で作品が描かれた経緯、意図が記されていて、なるほどと納得した。

    文量はかなり少なく余白の多い作品なので、二週目三週目と読んで思うままに考え、感じたいと思う一冊だった。

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    2026年01月18日
  • 光と糸

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    ハン・ガンはずっと何かに苦しんでいる。世界をより良くするため、世界から苦しみを取り除くため、自分も血を垂れ流しながら戦っている。だからなのか、彼女が書く文章はどこか寂しい感じがする。世界を諦めたいけれど、諦めきれていない。どうして世界はこんなにも美しい。そう問い続けている。8歳の時に書いたという詩に心打たれた。その年齢だからこそ書ける詩。その年齢の子が書いたからこそ大人の心を揺さぶる。

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    2026年01月17日
  • すべての、白いものたちの

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    読み終わった後、不思議な感覚だった。
    解説に書いてある通り、形式は詩の様な、でも何となく物語の様な、読むというより歩くという表現がしっくりくるような。
    なんだか、読んでる間ずっと静かさを感じることができた。

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    2026年01月12日
  • 光と糸

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    ハン・ガンさんの著書を読むと強く感じることがある。
    言葉が生きていて、自分の身体の内部に浸透すると。
    言葉を読まされているのではなく、読み進めたいと欲する感覚はなかなか味わえない。

    エッセイや詩、ノーベル文学賞受賞記念講演事の言葉達。
    冒頭からの過去作への制作過程や心情を知ると、間違いなく全部読みたくなります。
    ハン・ガンさんが人に対する愚かさや残酷さを考え絶望すると同時に、それでも美しさや愛を考え希望を探して生きていることに心うたれました。

    過去を想い知ることで、今を生きる喜びや意味を見つけたくなりました。
    ハン・ガンさんの綴る言葉には温かさと冷たさが混じっていて、闇がないと光もないのだ

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    2026年01月09日
  • すべての、白いものたちの

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    ネタバレ

     小説というよりは、小説とエッセイの間のような書き方で、文章が詩のような自由で優しい感じを受けました。
     最初22歳の女性と25歳の男性の子がハン・ガンさんの姉だということがわからなく、そのまま読み進めてしまいました。あとになって姉だということに気づいて、衝撃を受けました。初めの方に書いてあった「おくるみ」の所がかわいそうという感情を持ちました。
     ソウルからポーランド・ワルシャワに移り住む前と後で「白い」ものについて、いろいろと表現しておりました。「白い」といってもいろんな種類の「白」があるという事が書いてあってなるほどなぁ、て思いました。「「少年が来る」という小説を書き終えた後、しばらくど

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    2026年01月07日
  • すべての、白いものたちの

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    ネタバレ

    この物語は、生と死を「白いもの」によって表現している作品だと感じた。ここで描かれる白は、決して掴むことのできないもの、手に入らないものの象徴である。そこに確かに存在しているようで、実際には触れられない。あったのかもしれないし、なかったのかもしれない。目で見ているのか、それとも見えていないのかさえ判然としない。その曖昧さそのものが、この作品における「白」なのだと思う。

    白は単独では強く主張しない。黒い目、木々の陰影、赤い血といった明確な色があるからこそ、白はかえって浮かび上がり、私たちはそれを「見る」あるいは「感じる」ことができる。白とは、何かが欠けている状態であり、周囲の色によってのみ、その

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    2026年01月05日
  • 別れを告げない

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    現実と非現実が入り混じり、景色や空間、人の仕草が美しく描かれると同時に、済州島の悲惨な事件の残酷な様子が細かく書かれ、独特の静謐な世界観を味わいました。
    この作家さんの本はクセになります。

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    2025年12月31日
  • すべての、白いものたちの

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    邦題の付け方がいい(原題を直訳すると「白い」(ただし連体形活用)なのだそう)。
    「小説」らしいが、1~数ページで終わる散文の束+途中に挟まれる写真(写真は、韓国語版とも英語版とも異なるものだそう)で、散文詩集のような体裁にも見える。私自身の読後感としては、文芸作品というよりも、言葉多めの現代アート作品の鑑賞に近いものを感じた。

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    2025年12月30日
  • 別れを告げない

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    ノーベル文学賞受賞作家のハン・ガン氏による済州島四・三事件をテーマにした作品。
    ハン・ガン氏の文章は静謐で無機質な広い空間に置かれた美術館のオブジェのような印象を受ける。現実と幻想の境界線を曖昧にし、共感による痛みにより自己をバラバラにし昇華し再生し物語を紡ぐ。
    愚かさと哀しみに満ちた済州島四・三事件を決して忘れず哀悼を終わらせず語り継ぐという強い意志とともに、本作品の物語の本質は女性ふたりの繊細な感性の重ね合わせにあると思う。

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    2025年12月22日
  • 光と糸

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    ネタバレ

    ハン・ガンのノーベル賞講演スピーチ、詩と日記をまとめたもの。

    ノーベル賞受賞時の講演のスピーチは、これまでの作品に触れ、その時々で何と向き合ってきたかが明らかになるもの。若干、ストーリーのラストに触れている作品もあるのでネタバレ注意。

    あとはガーデニング日記。それすらも美しい文章笑。

    ボリュームの割には…と思わなくもないが、未訳の初期作品の邦訳なども予定されているとのことで、非常に楽しみ。

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    2025年12月21日
  • 82年生まれ、キム・ジヨン

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    全人類に読んでほしい、特に男性に。
    最初から最後までしんどくて、生きてくのがうんざりする内容。この主人公でマシな方らしいので、もっと大変な目に合っている女性がかなりいるのかと思うと言葉が出ない。
    出てくる女性が皆かっこいい。

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    2026年01月24日
  • 別れを告げない

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    やっと読めたノーベル賞作家。とはいえ、最初に気になったのは受賞前のフリスタで、そこから読みたいとは思っていた作品。煽り調子の訳でなし、目まぐるしい展開があるのでもないんだけど、なんだかページを繰る手が止まらず、どんどん先を読まされる。題材選定やら、それに合う文体やら、諸要素が重なってのことだと思うんだけど、なかなかその正体が見えない。そんなちょっとしたモヤモヤも含めての文学なのかもしれないけど、言語化しにくいものだけに、得意とか好きになりにくいのかもしれない。文学を味わうにおいての自身の課題。

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    2025年12月19日
  • 光と糸

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    ハンガンのノーベル文学賞受賞スピーチ他、詩や庭にまつわるエッセイ等まとめた一冊。

    「過去が現在を助けることはできるか? 
    死者が生者を救うことはできるのか?」

    いつか答えは出るのかな。

    この美しい本を書店で手に取った時、通りかかった親子が「ギリシャ語の時間」を買って行くのを目にした。

    糸は繋がってる。

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    2025年12月19日
  • 82年生まれ、キム・ジヨン

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    ネタバレ

    韓国の小説にはいつも出会ったことがない言葉が書いてあって驚かされる

    本文より
    「〜子供をを産む母親には、痛みもしんどさも死ぬほどの恐怖も喜んで受け入れて勝ち抜けというのである。それが母性愛であるかのように。母性愛は宗教なんだろうか。天国は母性愛を信じる者のそばにあるのか。」

    あとがきより
    「キム・ジヨンさんは今も、ましにもならず悪くなりもせず、何かを選択することもそこを去ることもせず、問いかけもしないし答えもしません。答えを探すのは、小説の外を生きていく私たちの役目であるようです。」
    これ、どの小説に対しても同じこと言えるじゃんって、慄いた

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    2025年11月25日
  • 別れを告げない

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    韓国済州島というと観光地としてのイメージしかありませんでした。韓国の歴史、済州の歴史を知ってこそこの作品を理解出来るのだろうと思います。この作品の底流に流れるもの、シンシンと降り積もりつづく雪は単に空から降り積もっているのみならず、心の中にも積もり続けているんだろう。

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    2025年11月21日