斎藤真理子のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
ものすごく静謐で、読んでいると自分の体も本と一緒に音のない場所に沈んでいくかのような感覚があった。なるべく静かな場所で、できれば冬読むのがおすすめ。
小説というよりは詩集に近く、映像が頭に浮かんでくるので、美術館で白にまつわるインスタレーションを見ているようでもある。
特に雪の描写が多かった印象。今年から雪国に引っ越したので、ハン・ガンさんの紡ぐ美しく真摯な言葉を通してこれから雪や冬を感じられるというのは嬉しいことだ。外を歩く時、たまにはイヤホンを外して、自分でも五感を働かせて繊細に世界を感じてみたいとも思った。
物語の構造?仕掛け?はあとがきを読んでからわかったのだけど、文学でしか表現できな -
Posted by ブクログ
ネタバレ韓国の小説にはいつも出会ったことがない言葉が書いてあって驚かされる
本文より
「〜子供をを産む母親には、痛みもしんどさも死ぬほどの恐怖も喜んで受け入れて勝ち抜けというのである。それが母性愛であるかのように。母性愛は宗教なんだろうか。天国は母性愛を信じる者のそばにあるのか。」
あとがきより
「キム・ジヨンさんは今も、ましにもならず悪くなりもせず、何かを選択することもそこを去ることもせず、問いかけもしないし答えもしません。答えを探すのは、小説の外を生きていく私たちの役目であるようです。」
これ、どの小説に対しても同じこと言えるじゃんって、慄いた -
Posted by ブクログ
短編集の題名「誰でもない」という短編は収録されていません。冒頭に「誰でもない、をなんでもない、と読み違える」と書かれています。「誰でもないから、みんなのことでもある」って意味合いでしょうか。
『上京』
語り手の女性は、恋人のオジェとその母といっしょに田舎の唐辛子畑に行った。値上がりする都会の生活費、何でも安いけれど人がいない田舎。韓国経済の悪循環。
オジェはソウル暮らしに疲れ、田舎に移住しようかと考えていたが、田舎でしっかり根を下ろすほどの確固たる決意もない。
『ヤンの未来』
語り手の女性は、就職難から契約職員として何度か転職し、その時はビルの地下の書店で働いていた。ある時店に来た女子高生 -
Posted by ブクログ
私はまさにジヨンと同世代だ。国は違えど、日本もほぼ同じである。私たちの世代は男性優位の環境から男女平等の環境への変化の中を生きてきた。
だからどちらのメリット、デメリット、生きづらさがわかる世代なのである。
今の若い人たちは昔の男尊女卑の強い世界を知ってほしい。私たちの世代が生きづらさに気づいて立ち上がり、今の比較的男女平等の世界を作り上げたことを知ってほしい。
60代以上のかたには、男性優位の世界での女性の生きづらさを共有したいし、あなたがたが安定に暮らすために私たちの世代が犠牲になったことも知ってほしい。
本当は世の男性に読んでもらいたいけど、果たして共感を得られるのだろうか。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ「愛」についてのお話。
翻訳者の力もあるのだろうけど、表現が独特で文章が美しかった。
こちらでありあちらでもあり、この世でありあの世でもあり、現実であり夢でもあり、今であり過去でもある。象徴的に使われている(あとがきより)鳥や雪のように、寄るべなくふわりふわりと行きつ戻りつしながら話は進む。
私は映画で光州事件や軍事政権をちらりと知るだけだったので、済州島四・三事件はもちろん知らず、あまりの惨事に驚いたけれど、韓国人ならみんな知っているはずなので、事件の衝撃性はこのお話のメインではないんだよね。
兄の遺骨は見つからず、鳥も死んでたし、物語はちっともうまく進まないんだけれど、いろんな人が語る -