斎藤真理子のレビュー一覧

  • ギリシャ語の時間

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    久しぶりのハン・ガン。日本語で書いたんじゃないかと思えるくらい、訳もすばらしい。静かな色使いの美しい絵画のような言葉、文章、詩。
    韓国と日本は同じ東洋だから余計にそうなのか、私たち日本人に染み付いている感覚と韓国の人の感覚の根底は似ているんだなと感じたりもした。
    物語も静かに進行するんだけど、何よりも、心に情景が浮かび上がる、散文のような、短い言葉を組み合わせた文章、詩がずっと見ていたい絵画のようだった。

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    2026年08月27日
  • ギリシャ語の時間

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    ハンガンの長編を読んでみたいと思ってたんですが、
    なるほど、長編もこの感じなんですね。
    非常に詩的で、か細くも頑なな言葉の連なり。

    傷ついた人に、寄り添うというよりも経験的に知っているからこそ書ける言葉なのかなと感じた。

    主人公2人がようやく邂逅すると思える場面すら、
    会話が成立しているようには描かれず、
    それはそれぞれの障害があるからとは言え、
    その場に浮上する言葉ではなくて、
    各々の内側で想起される話で描いていく。
    本当に真摯に向き合うとこう見えるのかもしれないと感じた。

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    2026年08月25日
  • すべての、白いものたちの

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    この読後の余韻をどう表現したらいいのか…

    積くんが最近面白かった本として教えてくれたので手に取った1冊でした

    詩的で抽象的で寂寞感にあふれた、まさに“白”という色のイメージぴったりなひんやりとした本

    3つの章で構成される本著は、すべての章を読み終えた後、筆者本人によるあとがきと解説を読み終えることで完結する1冊のように感じました。

    1章でえがかれる詩的で美しい文章から2章へ入っていったときの違和感というか、どこか引っかかる感じ。この本自体が散文的で半分(?)エッセイっぽいという1章での印象がミスリードになってたなんて…。

    あまり言うとこの本の奥行きが狭まってしまうので、あとはみなさん

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    2026年08月24日
  • 私の女の実

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    私は今ハン・ガンを読んでいる。そう実感できる作家性は30年前から健在。
    現在の作品にも通底する過酷な運命を静めるまなざし。菜食主義者につながる表題作は特に印象的。

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    2026年08月22日
  • 声を出して、呼びかけて、話せばいいの

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    ネタバレ

    「ねぇ、ハンダ、お祈りってどうやってやるの?」
    ハンダは「声に出して、呼びかけて、話せばいいの」と簡単に答えた。<「死を愛するのをやめようか」>

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    2026年08月19日
  • 私の女の実

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    ネタバレ

    ハン・ガン・コレクション
    私の女の実

    著者:ハン・ガン
    訳者:斎藤真理子
    発行:2026年6月15日
    白水社
    初出:
    「私の女の実」 創造と批評(1997春号)
    「日暮れどきに犬たちはどんな気持ちだろう」 創造と批評(1999年夏号)
    「赤ちゃん仏」 文学と社会(1999年夏号) 第25階韓国小説文学賞大賞受賞
    「ある日彼は」 世界の文学(1998年夏号)
    「赤い花の中で」 作家世界(2000年春号)
    「九つの物語」 文学トンネ(1999年冬号)
    「白い花」 ハイテル文学館(1996年夏、インターネット)
    「線路を流れる川」1996年春号

    著者がノーベル文学賞に選ばれたのは2024年。本書

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    2026年08月18日
  • シリーズ「あいだで考える」 隣の国の人々と出会う 韓国語と日本語のあいだ

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    自分がk-popを好きになってから韓国に対する心の距離感は近くなったし日に日に縮まっているとも思うけどまともに韓国について読書を通じて知ろうと思ったことは少なかった。(おそらくこれが2か3冊目)

    韓国文学や詩の翻訳等でご活躍されてる著者の目線から韓国語(言葉、文字、声)について、全く堅苦しくない形で、韓国の歴史や韓国語の歴史にも触れながらわかりやすく書いてくれている。知識を得るために読む!という目的の本というよりかは、韓国や韓国語について興味がある人が手軽に読める本、なのに知識がかなり得られた。

    ハングルの成り立ちについてかるーくは知っていたけど、言葉(マル)や声(ソリ)については知らない

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    2026年08月16日
  • すべての、白いものたちの

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    なんとなくわかるようでむずかしい、後書きがあったことで理解ができた部分もあり助かった。
    読み終わりは確実に残る余韻に不安と安心がまざってざわりとするが、祈りによるものか、あたたかく血の通った希望みたいなものも私の中に置いていった。

    うつくしいものほどこわい。
    美術館に置かれたそれぞれの白い展示を次々に見て歩く、名残惜しいけど歩みを進める、そんな感覚でページを進め、すぐに読み終わった。
    においや感触すらも伝わってくるような言葉選びと作者の柔らかでやさしい思考がつまっている。

    自分がこの世に生きていること、そんな偶々の出来事、わかっていても生活に注目して見落としている祈りや問いかけ。
    日々のあ

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    2026年08月14日
  • 私の女の実

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    詩人の言葉で綴られた短篇集は、その一篇一篇が「九つの物語」だけでなく、長めの詩のよう。
    哀しみの通奏低音はあるものの、必ずしも哀しいわけではなく、色のない痛みみたいなものがある。
    同じ経験など一つとしてないのに、読み終えて自分自身が身を削ぐような経験をしたように思う。
    「誰がどうしてどうなった」という物語には収まらない展開は形自体も詩のよう。
    比較的初期の中・短篇集ということで、「菜食主義者」を出すまでもなく、のちのハン・ガン作品の萌芽を感じられて、それも嬉しい。
    最初のあいさつやあとがきに作者の謙虚で控えめな人柄がうかがわれて、親しみを感じるし、桜庭一樹の解説も斎藤真理子による訳者あとがきも

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    2026年08月14日
  • 別れを告げない

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    何か不思議な小説だなと思った。勿論、この小説を貫く骨格は1948年の「済州島4・3事件」とそれに伴う南側の警察、軍、右翼組織による多数の一般市民無差別虐殺。
    最初は、キョンハが見た悪夢から「済州島4・3事件」の真相、真実を描き、人間の愚かさ、残虐性をこれでもか言うぐらい強調するのかと思って読んでいたが、第1部は親友のインソンの頼みで吹雪の済州島へ行って小さなインコを助けようとする話。そこでは、「済州島4・3事件」に関わる虐殺の話は重要ではあるが、主要な話ではない。しかしキョンハの猛烈な吹雪の中でインソンの家を目指す描写は、キョンハの思い出と悪夢、インソンの治療と思い、そして吹雪の中でバスを待つ

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    2026年08月13日
  • 82年生まれ、キム・ジヨン

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    私は80年生まれ。
    その頃の韓国、日本も同じだったと思う。
    兄弟で差別をされたことはなかったから韓国の方が女性に関する問題は深刻だったのか。
    まだそう言った考えも残ってるんだろうなぁ。

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    2026年08月10日
  • すべての、白いものたちの

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    一度目読んだときは物語なのか、詩の連作なのか混乱もありつつ、表現の美しさに、そして読み続ける中で、言葉で表現できない死と生の深みを文章に惹き込まれた。
    作者のあとがきを読んで再読すると、物語として見える世界が確立され、それぞれの章での主人公での視覚で物語を味わえる。
    いやはや深い。他の作品も読みたくなりました。

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    2026年08月08日
  • 82年生まれ、キム・ジヨン

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    差別の問題が個人の倫理観の問題ではないということを突きつけられる。
    善人、悪人という二項対立で物事を単純に切り分けることはできない。特に流動性の高い現代において、普遍的にみえる価値観というのは少なくなっている。気がする。

    その変化に合わせて社会のあり方もアップデートしていかないといけないのだが、実際問題そんなに早く変わっていくわけもない。
    社会が人間の集団なのであれば、それらを作るのは個々人の心、しかし個々人の心は社会構造によって形成されているからだ。
    個々人の心と社会構造は、お互いに制約と促進という関係で結ばれている。であれば、個々人の心の変化が社会構造に制約されることによって差別というも

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    2026年08月02日
  • すべての、白いものたちの

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    白いものをめぐる短い文章の連なりが、生と死、喪失、祈りへと静かにつながっていく。はっきりとした物語ではないのに、一つひとつの言葉が胸の奥に沈み、読み終えてもしばらく余韻が消えなかった。多くを語らないからこそ、読む人自身の記憶や感情が入り込む余白がある。

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    2026年07月29日
  • ギリシャ語の時間

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    話すことができない女性と、視力を失いつつある男性。二人はギリシャ語教室で、生徒と教師として出会う。

    二人は身体的な喪失だけでなく、それぞれの人生で大切な人を失った痛みも抱えている。

    ボルヘスやギリシャ哲学に詳しければ、この作品の構造やモチーフをもっと深く読み解けたのだろう。例えば古典ギリシャ語の「中動態」は、二人と彼らを取り巻く世界との関係性を考える上で重要な鍵になっているように思えた。残念ながら私にはそこまでの知識はなく、その奥行きを十分に味わい切れたとは言えない。まるでアトリビュートを知らずに西洋絵画を鑑賞しているような、もどかしさも残った。

    最終章の番号は「0」。そこには、喪失を抱

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    2026年07月25日
  • 優しい暴力の時代

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    同時代に生き、価値観も家族感も日本とよく似ていて、非常に親近感が湧きました。
    厳しい環境の中登場人物は皆必死で生きていて、それが繊細に描写されています。とても人ごとには感じない。
    しかしチョンセというシステムはなかなか大変そうだなぁ…

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    2026年07月19日
  • 私の女の実

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    95年から00年にかかれたというハンガンの短編集。

    後の長編につながるのかな、と思わせるものもないではないけども、それぞれの短編単体で、悲鳴や痛みにに似た輝きを秘めている。

    あのとき辛かったな、苦しかったな。
    そんなことを思い出しながら読み終えた時、桜庭一樹のあとがきの一文がこころに残る。

    “傘をさしていないハンガンは今日もまた誰かの傍らで共に雨に濡れている”
    日本の雨も冷たいが、私達にはハンガンの本がある。

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    2026年07月18日
  • 82年生まれ、キム・ジヨン

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    韓国から日本へ、現代フェミニズム全盛に繋がる一大ムーブメントを巻き起こした話題作。韓国の伝統的な家父長制に翻弄される女性の姿を克明に描き出し、これまで光を当てられることのなかった苦しみと痛みを暴く。一方で男性に課される責務や責任を意図的に排除している節があり、手放しに称揚することもまた難しい一作。

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    2026年07月13日
  • 誰でもない

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    生々しい不安と不満、絶望。現実に疲弊しているのに、本の中でもまたそれにあてられてぐったり。誰でもない、この人たちは私。
    知っている感情を認知することも読書の意味であるはずなのに、本作にはただ疲弊してしまい、「すでに知っている現実をわざわざ突きつけられることに=読書 に、意味なんてあったっけ?」とすら思わされてしまった。(褒め言葉)

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    2026年07月12日
  • すべての、白いものたちの

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    はっきりした言葉が書かれているわけではないけれど、読み始めから終わりまで、ずっと白い、冷たい、部屋の中にいる気持ちになる。
    作者自身もずっとこのような気持ちだったのだろうか。自分が生まれなかったかもしれないとか、姉と比べてしまうこととか。
    私は姉の立場なので余りピンとこないが、お姉ちゃんがいることが羨ましくもあったり(実際にいたのだから)、想像することもあるのかと思う。
    22歳で一人で出産したと言っていた。私と同じような歳で、そんな壮絶な出来事を味わっていることに自分の弱さを感じる。私の悩みがちっぽけに思えた。息を吸って、吐いて、好きなことをして、本を読んで、人と話せること。それだけで十分生き

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    2026年07月06日