斎藤真理子のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
ネタバレ晴眼者という言葉も、墨字という言葉も、私は知らずに今まで生きてこられた。
「墨字の状態が常識だから、それをそうと呼ぶ必要もなく、それがあまりに当然だから、私たちはそうと自称することさえしない。」
人生において、知っている事よりも知らない事が遥かに多く、知らないことを知りたいという意思が無ければ、それは永遠に知らないまま。
「私たちが常識について語るとき、それは何らかの考えを述べるというより、まさにそれを考えていない状態に近い」「常識的にはね、と言う瞬間、それは何てしょっちゅう、なんにも考えていない状態」「それは固まってしまった思い込み」
これまで生きてきた社会と時間に育てられた考え方や物 -
Posted by ブクログ
大げさにではなく、いままで抱いていた戦後のイメージが180度変わった。
通り一遍の韓国の歴史の本も読んでいたけれど、韓国と日本とでは、経験してきた歴史やそこから見える景色がこんなに違うのかと愕然とした。
この先、ドラマを見たりアイドルが兵役に行ったりするたびに、きっと本書の内容を思い出すと思う。
戦後、朝鮮特需や韓国への罪悪感とともに戦後を乗り越えてきたという日本人の姿は、ヘイト渦巻く現代には見えなくなってしまっているけれど、たしかにもう少し昔の人たちは日本の戦争責任や反省をもっと普通に口にしたり書いたりしていた気がする。ごく最近読んだ茨木のり子さんのエッセイでも、日本が朝鮮を植民地化してい -
Posted by ブクログ
韓国社会が経験する苦難に作家はどう向き合い、そうして生まれる作品を読者はどう受容してきたか、の一端が見えてくる。
また、1960年は日本と韓国にとって分水嶺だったんだな、と。市民運動の成功体験と失敗体験は、その後の両社会における主権者意識にも根深い影響を与えたことが、比較によって鮮やかにわかる。
そして、知れば知るほど日本について、自分について考えることを余儀なくされる。韓国社会の痛みや苦しみを「よその国」の出来事とするには、日本の関わりはあまりに深い。
個人的に物心ついたとき既に日本は経済大国だったし、それを享受してきた自覚もあるが、その発展の礎には隣国の悲惨な戦争が含まれ、その戦争が今 -
Posted by ブクログ
「野蛮なアリスさん」「誰でもない」が大っ好きで今か今かと邦訳を待ち続けていた本作。読んでみると、これまでの作品と明らかにテイストが違う。テイスト?って言うのは適当じゃないか。例えば短編集の「誰でもない」は物語が太巻きだとすると最も米と具が詰まってておいしいところを、痛烈で切実なセンスで盛り付けてくれていたような作品だった。だが、本作は米粒一つぶ一つぶを確かめ疑いながら海苔に乗せてゆく様子を、読者もともに苦しみながら見守るようなそんな作品だ。ともに苦しむといっても、この作品は韓国の情勢、社会事情、街の様子、生活について実体験している人とそうでない人とでは入り込み方が違う。私にはその辺りに詳しくな
-
Posted by ブクログ
ものすごく静謐で、読んでいると自分の体も本と一緒に音のない場所に沈んでいくかのような感覚があった。なるべく静かな場所で、できれば冬読むのがおすすめ。
小説というよりは詩集に近く、映像が頭に浮かんでくるので、美術館で白にまつわるインスタレーションを見ているようでもある。
特に雪の描写が多かった印象。今年から雪国に引っ越したので、ハン・ガンさんの紡ぐ美しく真摯な言葉を通してこれから雪や冬を感じられるというのは嬉しいことだ。外を歩く時、たまにはイヤホンを外して、自分でも五感を働かせて繊細に世界を感じてみたいとも思った。
物語の構造?仕掛け?はあとがきを読んでからわかったのだけど、文学でしか表現できな