斎藤真理子のレビュー一覧

  • 年年歳歳

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    すばらしい小説だった。
    家族であろうと語られないこと共有されないことはその人個人の中に無限にあり、それは誰にも侵せない。朝鮮戦争の歴史と個人の歴史が交差して、それぞれ個人の、その人だけの人生が浮かび上がってくる。
    軽い物語ではないけれど、未来に開かれた小説だと思った。

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    2022年08月27日
  • 韓国文学の中心にあるもの

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    韓国社会が経験する苦難に作家はどう向き合い、そうして生まれる作品を読者はどう受容してきたか、の一端が見えてくる。

    また、1960年は日本と韓国にとって分水嶺だったんだな、と。市民運動の成功体験と失敗体験は、その後の両社会における主権者意識にも根深い影響を与えたことが、比較によって鮮やかにわかる。

    そして、知れば知るほど日本について、自分について考えることを余儀なくされる。韓国社会の痛みや苦しみを「よその国」の出来事とするには、日本の関わりはあまりに深い。
    個人的に物心ついたとき既に日本は経済大国だったし、それを享受してきた自覚もあるが、その発展の礎には隣国の悲惨な戦争が含まれ、その戦争が今

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    2022年08月11日
  • 誰にでも親切な教会のお兄さんカン・ミノ

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    ネタバレ

    チェ・ミジンはどこへ
    ナ・ジョンマン氏のちょっぴり下に曲がったブーム
    クォン・スンチャンと善良な人々
    私を嫌悪することになるパク・チャンスへ
    ずっと前に、キム・スッキは
    誰にでも親切な教会のお兄さんカン・ミノ
    ハン・ジョンヒと僕
    あとがき

    全編を通して迫ってくるリアルな"恥"とやるせなさ。読み進めながら私小説に近い作風なのかな?と思っていたので、あとがきが沁みた。

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    2022年08月06日
  • 年年歳歳

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    「廃墓」「言いたい言葉」「無名」「近づくものたち」四つの短編からなる本書。登場人物の名前と関係は冒頭の人物図に詳しいが、忘れられないのはそのほかの名前の無い大勢の「スンジャ」達や韓国と日本の長きに渡る歴史。習慣や伝統と言ったちょっとしたエピソードに親近感を覚え、親世代への苛立ちや恐怖、いろんな感情で泣きたくなる。生き延びて著者のバトンを受け取った以上は、時代の記憶とキャンドルの灯を次世代へ渡していきたい。作家の言葉、訳者あとがきも含めて素晴らしい一冊。

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    2022年04月20日
  • 年年歳歳

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    植民地解放後、朝鮮戦争を経験し、苦難を背負い生きた世代。
    彼らの多くがスンジャ=順子という名前を持っていた。

    “従順”とか“順調”とか、そういう思いを込められていたのか、はたまた植民地時代からの流行りだったのか。

    彼女らと次の世代とが、語られる物語と語られない物語の間の余白に様々な思いを込め、それが読者の前に情念となり揺蕩う。

    ファンジョンウンはこの物語の中で決して声を荒げたりしない。

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    2022年03月27日
  • 声をあげます

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    「声をあげます」が抜群に面白かった。チョンセランと同時代に生きていることを、ハッピーに思う。高校生の頃、筒井康隆氏が大好きだったことを思い出した。SF、日本では懐かしい気のするジャンルだと思っていたけど、面白い。

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    2021年12月01日
  • 誰にでも親切な教会のお兄さんカン・ミノ

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    表紙とタイトルでほっこり系短編集なのかと思いきや、恥、羞恥心について胸を突かれるような物語たちだった。圧倒された。

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    2021年05月28日
  • アヒル命名会議

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    短編小説集には外れもあるけど、おもしろかった!
    珍しいサイズで珍しい横書きで進む、新世代価値観の物語。

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    2021年02月23日
  • 誰にでも親切な教会のお兄さんカン・ミノ

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    「イ・ギホの短編小説は一見とっつきやすいものが多い。だがその芯は意外に固い」と訳者解説にもあるとおり、とぼけたユーモアの漂う平易な文体でつづられていながら、厳しい倫理的な問いを突きつけてくる物語ばかり。それはこの短編集において作者が自分自身を、ひいては男性性を突き放す姿勢を貫いているからだと思う。
    「チェ・ミジンはどこへ」が特に良かった。電話越しの彼の非難の言葉は忘れられそうにない。

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    2021年01月22日
  • ディディの傘

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    「野蛮なアリスさん」「誰でもない」が大っ好きで今か今かと邦訳を待ち続けていた本作。読んでみると、これまでの作品と明らかにテイストが違う。テイスト?って言うのは適当じゃないか。例えば短編集の「誰でもない」は物語が太巻きだとすると最も米と具が詰まってておいしいところを、痛烈で切実なセンスで盛り付けてくれていたような作品だった。だが、本作は米粒一つぶ一つぶを確かめ疑いながら海苔に乗せてゆく様子を、読者もともに苦しみながら見守るようなそんな作品だ。ともに苦しむといっても、この作品は韓国の情勢、社会事情、街の様子、生活について実体験している人とそうでない人とでは入り込み方が違う。私にはその辺りに詳しくな

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    2020年10月02日
  • 誰にでも親切な教会のお兄さんカン・ミノ

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    とても面白かった!

    不甲斐なくて、情けなくて、矛盾に満ちていて。ほんと、ダメ男を描かせると巧いなあ、この人。パワフルな不甲斐なさが可笑しい。

    セットになっている『私を嫌悪することになるパク・チャンスへ』と『ずっと前に、キム・スッキは』は、シーラッハのようだとも思った。

    何かしてあげたいと思っているのに何も出来なかったり、こんなことしたら情けないと思うのにやってしまったり、人はだれでも矛盾を抱えている。完璧な人などいない。

    矛盾やダメさを見ないふりしないで、向き合うこと。
    不可能だと気づくこと。確かに、そこからしか始まらないよね。

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    2020年02月05日
  • ギリシャ語の時間

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    話すことができない女性と、視力を失いつつある男性。二人はギリシャ語教室で、生徒と教師として出会う。

    二人は身体的な喪失だけでなく、それぞれの人生で大切な人を失った痛みも抱えている。

    ボルヘスやギリシャ哲学に詳しければ、この作品の構造やモチーフをもっと深く読み解けたのだろう。例えば古典ギリシャ語の「中動態」は、二人と彼らを取り巻く世界との関係性を考える上で重要な鍵になっているように思えた。残念ながら私にはそこまでの知識はなく、その奥行きを十分に味わい切れたとは言えない。まるでアトリビュートを知らずに西洋絵画を鑑賞しているような、もどかしさも残った。

    最終章の番号は「0」。そこには、喪失を抱

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    2026年07月25日
  • 優しい暴力の時代

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    同時代に生き、価値観も家族感も日本とよく似ていて、非常に親近感が湧きました。
    厳しい環境の中登場人物は皆必死で生きていて、それが繊細に描写されています。とても人ごとには感じない。
    しかしチョンセというシステムはなかなか大変そうだなぁ…

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    2026年07月19日
  • 私の女の実

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    95年から00年にかかれたというハンガンの短編集。

    後の長編につながるのかな、と思わせるものもないではないけども、それぞれの短編単体で、悲鳴や痛みにに似た輝きを秘めている。

    あのとき辛かったな、苦しかったな。
    そんなことを思い出しながら読み終えた時、桜庭一樹のあとがきの一文がこころに残る。

    “傘をさしていないハンガンは今日もまた誰かの傍らで共に雨に濡れている”
    日本の雨も冷たいが、私達にはハンガンの本がある。

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    2026年07月18日
  • 82年生まれ、キム・ジヨン

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    韓国から日本へ、現代フェミニズム全盛に繋がる一大ムーブメントを巻き起こした話題作。韓国の伝統的な家父長制に翻弄される女性の姿を克明に描き出し、これまで光を当てられることのなかった苦しみと痛みを暴く。一方で男性に課される責務や責任を意図的に排除している節があり、手放しに称揚することもまた難しい一作。

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    2026年07月13日
  • 誰でもない

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    生々しい不安と不満、絶望。現実に疲弊しているのに、本の中でもまたそれにあてられてぐったり。誰でもない、この人たちは私。
    知っている感情を認知することも読書の意味であるはずなのに、本作にはただ疲弊してしまい、「すでに知っている現実をわざわざ突きつけられることに=読書 に、意味なんてあったっけ?」とすら思わされてしまった。(褒め言葉)

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    2026年07月12日
  • すべての、白いものたちの

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    はっきりした言葉が書かれているわけではないけれど、読み始めから終わりまで、ずっと白い、冷たい、部屋の中にいる気持ちになる。
    作者自身もずっとこのような気持ちだったのだろうか。自分が生まれなかったかもしれないとか、姉と比べてしまうこととか。
    私は姉の立場なので余りピンとこないが、お姉ちゃんがいることが羨ましくもあったり(実際にいたのだから)、想像することもあるのかと思う。
    22歳で一人で出産したと言っていた。私と同じような歳で、そんな壮絶な出来事を味わっていることに自分の弱さを感じる。私の悩みがちっぽけに思えた。息を吸って、吐いて、好きなことをして、本を読んで、人と話せること。それだけで十分生き

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    2026年07月06日
  • ギリシャ語の時間

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    理解しようとすると難しい。
    長い長い詩と思って読んだ。
    最後に彼らが交わし合うなにかがとても美しかった。

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    2026年06月29日
  • サハマンション

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    章によって主人公も時代も違うから、あれ?どうだっけ?コレはいつの話だっけ?って少し混乱してしまう。
    だけどページをめくる手は止められない。

    サハマンションに集まる人は貧困を抱えて差別の対象にもなっているけど、それぞれに人として感情があって生活もある。サハマンションで産まれた子供たちは幸せに大きくなっているだろうか?ウミはどうなるんだろう?トギョンはどこに行った?章ごとに描かれている人たちの延長が知りたいと思った。

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    2026年06月25日
  • 回復する人間

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    絶望の淵で、わずかな光が見えるような見えないような。

    今作で完全に彼女の虜になった。
    翻訳もやはり素晴らしい。

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    2026年06月21日