斎藤真理子のレビュー一覧

  • ディディの傘

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    「野蛮なアリスさん」「誰でもない」が大っ好きで今か今かと邦訳を待ち続けていた本作。読んでみると、これまでの作品と明らかにテイストが違う。テイスト?って言うのは適当じゃないか。例えば短編集の「誰でもない」は物語が太巻きだとすると最も米と具が詰まってておいしいところを、痛烈で切実なセンスで盛り付けてくれていたような作品だった。だが、本作は米粒一つぶ一つぶを確かめ疑いながら海苔に乗せてゆく様子を、読者もともに苦しみながら見守るようなそんな作品だ。ともに苦しむといっても、この作品は韓国の情勢、社会事情、街の様子、生活について実体験している人とそうでない人とでは入り込み方が違う。私にはその辺りに詳しくな

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    2020年10月02日
  • 誰にでも親切な教会のお兄さんカン・ミノ

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    とても面白かった!

    不甲斐なくて、情けなくて、矛盾に満ちていて。ほんと、ダメ男を描かせると巧いなあ、この人。パワフルな不甲斐なさが可笑しい。

    セットになっている『私を嫌悪することになるパク・チャンスへ』と『ずっと前に、キム・スッキは』は、シーラッハのようだとも思った。

    何かしてあげたいと思っているのに何も出来なかったり、こんなことしたら情けないと思うのにやってしまったり、人はだれでも矛盾を抱えている。完璧な人などいない。

    矛盾やダメさを見ないふりしないで、向き合うこと。
    不可能だと気づくこと。確かに、そこからしか始まらないよね。

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    2020年02月05日
  • すべての、白いものたちの

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    まるで詩集のような、散文といった方が良いのかな。これは小説なのか。
    各セクションごとに余白のページが設けられ、その演出がより小説というよりは散文集の印象を与える。
    透明感があり、静かな文章。白という言葉のためか、静かな冬の日を連想させる。余白は余韻のためにあるのかな。白い静寂な時間を堪能してから次へ進むような。映像的な文章。

    最初は「私」という章で、作者の過去の記憶かと思わせる、産まれてすぐ亡くなった姉について。次章「彼女」はその姉についての文書と推測されるので、記憶ではなくて創作なのだと思う。姉の存在についてが事実なのかは不明。後書にもなかったと思う。
    亡くなった姉が主軸としてあるので、静

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    2026年01月21日
  • すべての、白いものたちの

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    初めは「詩集なのか?この一冊で作者は何を言いたいんだろう?」と理解できず読み進めていたが、読んでいくうちに“私”と“彼女”の存在を何となく認識し、またあとがきなどの文章で作品が描かれた経緯、意図が記されていて、なるほどと納得した。

    文量はかなり少なく余白の多い作品なので、二週目三週目と読んで思うままに考え、感じたいと思う一冊だった。

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    2026年01月18日
  • 光と糸

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    ハン・ガンはずっと何かに苦しんでいる。世界をより良くするため、世界から苦しみを取り除くため、自分も血を垂れ流しながら戦っている。だからなのか、彼女が書く文章はどこか寂しい感じがする。世界を諦めたいけれど、諦めきれていない。どうして世界はこんなにも美しい。そう問い続けている。8歳の時に書いたという詩に心打たれた。その年齢だからこそ書ける詩。その年齢の子が書いたからこそ大人の心を揺さぶる。

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    2026年01月17日
  • すべての、白いものたちの

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    読み終わった後、不思議な感覚だった。
    解説に書いてある通り、形式は詩の様な、でも何となく物語の様な、読むというより歩くという表現がしっくりくるような。
    なんだか、読んでる間ずっと静かさを感じることができた。

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    2026年01月12日
  • 光と糸

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    ハン・ガンさんの著書を読むと強く感じることがある。
    言葉が生きていて、自分の身体の内部に浸透すると。
    言葉を読まされているのではなく、読み進めたいと欲する感覚はなかなか味わえない。

    エッセイや詩、ノーベル文学賞受賞記念講演事の言葉達。
    冒頭からの過去作への制作過程や心情を知ると、間違いなく全部読みたくなります。
    ハン・ガンさんが人に対する愚かさや残酷さを考え絶望すると同時に、それでも美しさや愛を考え希望を探して生きていることに心うたれました。

    過去を想い知ることで、今を生きる喜びや意味を見つけたくなりました。
    ハン・ガンさんの綴る言葉には温かさと冷たさが混じっていて、闇がないと光もないのだ

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    2026年01月09日
  • すべての、白いものたちの

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    ネタバレ

     小説というよりは、小説とエッセイの間のような書き方で、文章が詩のような自由で優しい感じを受けました。
     最初22歳の女性と25歳の男性の子がハン・ガンさんの姉だということがわからなく、そのまま読み進めてしまいました。あとになって姉だということに気づいて、衝撃を受けました。初めの方に書いてあった「おくるみ」の所がかわいそうという感情を持ちました。
     ソウルからポーランド・ワルシャワに移り住む前と後で「白い」ものについて、いろいろと表現しておりました。「白い」といってもいろんな種類の「白」があるという事が書いてあってなるほどなぁ、て思いました。「「少年が来る」という小説を書き終えた後、しばらくど

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    2026年01月07日
  • すべての、白いものたちの

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    ネタバレ

    この物語は、生と死を「白いもの」によって表現している作品だと感じた。ここで描かれる白は、決して掴むことのできないもの、手に入らないものの象徴である。そこに確かに存在しているようで、実際には触れられない。あったのかもしれないし、なかったのかもしれない。目で見ているのか、それとも見えていないのかさえ判然としない。その曖昧さそのものが、この作品における「白」なのだと思う。

    白は単独では強く主張しない。黒い目、木々の陰影、赤い血といった明確な色があるからこそ、白はかえって浮かび上がり、私たちはそれを「見る」あるいは「感じる」ことができる。白とは、何かが欠けている状態であり、周囲の色によってのみ、その

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    2026年01月05日
  • 別れを告げない

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    現実と非現実が入り混じり、景色や空間、人の仕草が美しく描かれると同時に、済州島の悲惨な事件の残酷な様子が細かく書かれ、独特の静謐な世界観を味わいました。
    この作家さんの本はクセになります。

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    2025年12月31日
  • すべての、白いものたちの

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    邦題の付け方がいい(原題を直訳すると「白い」(ただし連体形活用)なのだそう)。
    「小説」らしいが、1~数ページで終わる散文の束+途中に挟まれる写真(写真は、韓国語版とも英語版とも異なるものだそう)で、散文詩集のような体裁にも見える。私自身の読後感としては、文芸作品というよりも、言葉多めの現代アート作品の鑑賞に近いものを感じた。

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    2025年12月30日
  • 別れを告げない

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    ノーベル文学賞受賞作家のハン・ガン氏による済州島四・三事件をテーマにした作品。
    ハン・ガン氏の文章は静謐で無機質な広い空間に置かれた美術館のオブジェのような印象を受ける。現実と幻想の境界線を曖昧にし、共感による痛みにより自己をバラバラにし昇華し再生し物語を紡ぐ。
    愚かさと哀しみに満ちた済州島四・三事件を決して忘れず哀悼を終わらせず語り継ぐという強い意志とともに、本作品の物語の本質は女性ふたりの繊細な感性の重ね合わせにあると思う。

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    2025年12月22日
  • 光と糸

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    ネタバレ

    ハン・ガンのノーベル賞講演スピーチ、詩と日記をまとめたもの。

    ノーベル賞受賞時の講演のスピーチは、これまでの作品に触れ、その時々で何と向き合ってきたかが明らかになるもの。若干、ストーリーのラストに触れている作品もあるのでネタバレ注意。

    あとはガーデニング日記。それすらも美しい文章笑。

    ボリュームの割には…と思わなくもないが、未訳の初期作品の邦訳なども予定されているとのことで、非常に楽しみ。

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    2025年12月21日
  • 82年生まれ、キム・ジヨン

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    全人類に読んでほしい、特に男性に。
    最初から最後までしんどくて、生きてくのがうんざりする内容。この主人公でマシな方らしいので、もっと大変な目に合っている女性がかなりいるのかと思うと言葉が出ない。
    出てくる女性が皆かっこいい。

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    2025年12月19日
  • 別れを告げない

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    やっと読めたノーベル賞作家。とはいえ、最初に気になったのは受賞前のフリスタで、そこから読みたいとは思っていた作品。煽り調子の訳でなし、目まぐるしい展開があるのでもないんだけど、なんだかページを繰る手が止まらず、どんどん先を読まされる。題材選定やら、それに合う文体やら、諸要素が重なってのことだと思うんだけど、なかなかその正体が見えない。そんなちょっとしたモヤモヤも含めての文学なのかもしれないけど、言語化しにくいものだけに、得意とか好きになりにくいのかもしれない。文学を味わうにおいての自身の課題。

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    2025年12月19日
  • 光と糸

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    ハンガンのノーベル文学賞受賞スピーチ他、詩や庭にまつわるエッセイ等まとめた一冊。

    「過去が現在を助けることはできるか? 
    死者が生者を救うことはできるのか?」

    いつか答えは出るのかな。

    この美しい本を書店で手に取った時、通りかかった親子が「ギリシャ語の時間」を買って行くのを目にした。

    糸は繋がってる。

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    2025年12月19日
  • すべての、白いものたちの

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    ものすごく静謐で、読んでいると自分の体も本と一緒に音のない場所に沈んでいくかのような感覚があった。なるべく静かな場所で、できれば冬読むのがおすすめ。
    小説というよりは詩集に近く、映像が頭に浮かんでくるので、美術館で白にまつわるインスタレーションを見ているようでもある。
    特に雪の描写が多かった印象。今年から雪国に引っ越したので、ハン・ガンさんの紡ぐ美しく真摯な言葉を通してこれから雪や冬を感じられるというのは嬉しいことだ。外を歩く時、たまにはイヤホンを外して、自分でも五感を働かせて繊細に世界を感じてみたいとも思った。
    物語の構造?仕掛け?はあとがきを読んでからわかったのだけど、文学でしか表現できな

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    2025年12月09日
  • 82年生まれ、キム・ジヨン

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    ネタバレ

    韓国の小説にはいつも出会ったことがない言葉が書いてあって驚かされる

    本文より
    「〜子供をを産む母親には、痛みもしんどさも死ぬほどの恐怖も喜んで受け入れて勝ち抜けというのである。それが母性愛であるかのように。母性愛は宗教なんだろうか。天国は母性愛を信じる者のそばにあるのか。」

    あとがきより
    「キム・ジヨンさんは今も、ましにもならず悪くなりもせず、何かを選択することもそこを去ることもせず、問いかけもしないし答えもしません。答えを探すのは、小説の外を生きていく私たちの役目であるようです。」
    これ、どの小説に対しても同じこと言えるじゃんって、慄いた

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    2025年11月25日
  • すべての、白いものたちの

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    作家として親として妹として書かれたエッセイのようであり、亡き姉をその身に宿すためのフィクションでもある、とても不思議な小説だった。
    切実ながら白く爽やかでもあるその読後感は唯一。

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    2025年11月24日
  • 別れを告げない

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    韓国済州島というと観光地としてのイメージしかありませんでした。韓国の歴史、済州の歴史を知ってこそこの作品を理解出来るのだろうと思います。この作品の底流に流れるもの、シンシンと降り積もりつづく雪は単に空から降り積もっているのみならず、心の中にも積もり続けているんだろう。

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    2025年11月21日