斎藤真理子のレビュー一覧

  • 年年歳歳

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    「廃墓」「言いたい言葉」「無名」「近づくものたち」四つの短編からなる本書。登場人物の名前と関係は冒頭の人物図に詳しいが、忘れられないのはそのほかの名前の無い大勢の「スンジャ」達や韓国と日本の長きに渡る歴史。習慣や伝統と言ったちょっとしたエピソードに親近感を覚え、親世代への苛立ちや恐怖、いろんな感情で泣きたくなる。生き延びて著者のバトンを受け取った以上は、時代の記憶とキャンドルの灯を次世代へ渡していきたい。作家の言葉、訳者あとがきも含めて素晴らしい一冊。

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    2022年04月20日
  • 年年歳歳

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    植民地解放後、朝鮮戦争を経験し、苦難を背負い生きた世代。
    彼らの多くがスンジャ=順子という名前を持っていた。

    “従順”とか“順調”とか、そういう思いを込められていたのか、はたまた植民地時代からの流行りだったのか。

    彼女らと次の世代とが、語られる物語と語られない物語の間の余白に様々な思いを込め、それが読者の前に情念となり揺蕩う。

    ファンジョンウンはこの物語の中で決して声を荒げたりしない。

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    2022年03月27日
  • 声をあげます

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    「声をあげます」が抜群に面白かった。チョンセランと同時代に生きていることを、ハッピーに思う。高校生の頃、筒井康隆氏が大好きだったことを思い出した。SF、日本では懐かしい気のするジャンルだと思っていたけど、面白い。

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    2021年12月01日
  • 誰にでも親切な教会のお兄さんカン・ミノ

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    表紙とタイトルでほっこり系短編集なのかと思いきや、恥、羞恥心について胸を突かれるような物語たちだった。圧倒された。

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    2021年05月28日
  • アヒル命名会議

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    短編小説集には外れもあるけど、おもしろかった!
    珍しいサイズで珍しい横書きで進む、新世代価値観の物語。

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    2021年02月23日
  • 誰にでも親切な教会のお兄さんカン・ミノ

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    「イ・ギホの短編小説は一見とっつきやすいものが多い。だがその芯は意外に固い」と訳者解説にもあるとおり、とぼけたユーモアの漂う平易な文体でつづられていながら、厳しい倫理的な問いを突きつけてくる物語ばかり。それはこの短編集において作者が自分自身を、ひいては男性性を突き放す姿勢を貫いているからだと思う。
    「チェ・ミジンはどこへ」が特に良かった。電話越しの彼の非難の言葉は忘れられそうにない。

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    2021年01月22日
  • ディディの傘

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    「野蛮なアリスさん」「誰でもない」が大っ好きで今か今かと邦訳を待ち続けていた本作。読んでみると、これまでの作品と明らかにテイストが違う。テイスト?って言うのは適当じゃないか。例えば短編集の「誰でもない」は物語が太巻きだとすると最も米と具が詰まってておいしいところを、痛烈で切実なセンスで盛り付けてくれていたような作品だった。だが、本作は米粒一つぶ一つぶを確かめ疑いながら海苔に乗せてゆく様子を、読者もともに苦しみながら見守るようなそんな作品だ。ともに苦しむといっても、この作品は韓国の情勢、社会事情、街の様子、生活について実体験している人とそうでない人とでは入り込み方が違う。私にはその辺りに詳しくな

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    2020年10月02日
  • 誰にでも親切な教会のお兄さんカン・ミノ

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    とても面白かった!

    不甲斐なくて、情けなくて、矛盾に満ちていて。ほんと、ダメ男を描かせると巧いなあ、この人。パワフルな不甲斐なさが可笑しい。

    セットになっている『私を嫌悪することになるパク・チャンスへ』と『ずっと前に、キム・スッキは』は、シーラッハのようだとも思った。

    何かしてあげたいと思っているのに何も出来なかったり、こんなことしたら情けないと思うのにやってしまったり、人はだれでも矛盾を抱えている。完璧な人などいない。

    矛盾やダメさを見ないふりしないで、向き合うこと。
    不可能だと気づくこと。確かに、そこからしか始まらないよね。

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    2020年02月05日
  • 82年生まれ、キム・ジヨン

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    ネタバレ

    女子校出身、女性ばかりの職場で働いているからなのか女性だから損してると感じた経験は少ないけど自分が気づいていないだけで損をたくさんしているのかもしれない
    キムジヨンには幸せになってほしい

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    2026年05月01日
  • すべての、白いものたちの

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    ネタバレ

    2026/04/16 - 2026/04/17

    柔らかな綿でキュッと心を締め付けられるような苦しさと、まだ誰も踏み入れていない新雪のような静謐さがずっと交互にやってきて、ページを進める手を止めることができなかった。

    ハン・ガンの本はこれが初めてで、正直、このご時世にノーベル賞を獲った人が女性であり、アジア人であった、ということが読むきっかけだった。受賞で話題になった際に、すぐに購入したが、「韓国文学について知ってからのほうがいい」などの情報が多く、勝手に億劫になり、今まで読んでいなかった。

    しかし、読んでみたら、私にはとてもすんなり、まるで水が染み込むように心の中に文章や物語が溶けていっ

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    2026年04月27日
  • 光と糸

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    ノーベル賞の文学賞を得た韓国の韓江(한강)さんのエッセイ。光と糸はノーベル賞の受賞記念講演だそうだ。「菜食主義者」、「風が吹いている、行け」、「ギリシャ語の時間」、「少年が来る」、「別れを告げない」。のそれぞれを書きだした時の動機のような背景が書かれている。この本を読むことで韓江さんの思いを少しだけ感じられるのではないだろうか。

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    2026年04月21日
  • すべての、白いものたちの

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    初めてハン・ガン氏の本を読みました。綺麗な文章と静謐な世界に引き込まれていきました。姉と兄を亡くし、母の悲しみを背負って生きている主人公。その母も亡くし、孤独感と優しさが淡々と語られる文章の中から伝わって切なくなりました。他の作品も読んでみたいと思いました。

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    2026年04月11日
  • 82年生まれ、キム・ジヨン

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    82年生まれ、キム・ジヨン

    著者:チョ・ナムジュ

    子育て中に異常行動が表れた1人の女性患者のカウンセリング記録という形で進行していく小説。

    過去から現在に至るまでの韓国社会における女性差別の実態を告発するかのような内容で、フェミニズム本のような読み味だった。

    出生、進学、就職、所得、結婚、育児
    様々な点においての男女格差を極めて普遍的に描いており、その普遍さが薄い膜のように作品を纏い、とても不気味で恐ろしいものに感じた。

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    「でもさ、ジヨン、失うもののことばかり考えないで、得るものについて考えてごらんよ。親になる事がどんなに意味のある、感動的なことかをさ。それ

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    2026年04月11日
  • ギリシャ語の時間

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    文字が美しかった。言葉が洗練されていた。だからこそ、ちょっと難しかったし、それが美しさを際立たせてると思ったし、面白かった。
    人と言葉をまぜまぜしてる2人が可愛かった。じぶんでも何言ってんのかわからん。

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    2026年04月10日
  • すべての、白いものたちの

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    決して読むのが難しい本では無い。ただ、小説というには詩的すぎるし、詩というには小説的で、何かまだ名前のついていないジャンルの文学を読んでいる不思議な感覚。そして、だからこそ新しいのだと思いました。それは作者のレンズ(といえば良いのか分からないが)のピントもそうで、具体的とも抽象的とも言えない、ぼんやりとした写真のような描写が続く。そしてそのボケ感というのが景色に対しても心情に対しても効いていて、結果、テーマとも接着しているという妙技。読み終わって思わずははぁと唸ってしまいました。

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    2026年04月07日
  • 「なむ」の来歴

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    韓国文学に興味があり、斎藤さんの訳本をいくつか読んでいたが、本書を読み、言葉やその背景にある歴史とその傷などを丁寧に扱う方だと再認識した。文中の引用や紹介している本たちも気になる。いつでもより深い興味を開かせてくれる方。

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    2026年04月04日
  • 曇る眼鏡を拭きながら

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    斎藤真理子さん曰く「編集は世界を作ること、翻訳は世界を歩くこと」。他人の世界を丁寧に歩いてこられたお二人だからこそ、言葉の扱い方/拾い上げ方、お互いの書簡の読み取り方が、とんでもなく細やかで心地よい。

    「塩食いの会」「ヴィーヴァ!藤本和子ルネサンス、ヴィーヴァ!」などのパワーワードが頻出する、藤本和子とリチャード・ブローティガン(わたしは文字のタトゥーを入れるとしたら、『アメリカの鱒釣り』の一節にしようと思っているので)の話を筆頭に、各々が担当された作家やお二人の育児話など、読み応えがありすぎる。

    あと、わかってはいたけれど、読みたくなる本の話題がドカドカ出てきて、リストがパンクしそう。

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    2026年04月03日
  • 「なむ」の来歴

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    特に好きなのは、三章「言葉と言葉の間で」。
    同じような年頃なので、「わかる、わかる」と思うところも多かった。
    静かで、鋭い。
    この本に出てくる詩を声に出して読んでみた。いい。
    若い時はわからなかった詩の良さが、わかるようになった・・気がする。

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    2026年04月02日
  • ギリシャ語の時間

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    海外文学、翻訳作品に縁遠く、シドニィ・シェルダンの超訳ものまで遡らないと読んだ記憶がないです。
    翻訳作品は日本語が硬く感じてしまいリズムで読めないので苦手意識があります。
    ところが、この作品はその日本語の硬さが登場人物の孤独を際立ててとても冷たく感じマッチしているように感じました。
    最後二人の体温を感じる場面へのグラデーションの美しさと速度に映画を観ているような気持ちになりました。
    韓国ドラマはたまに観ますが文学は初めて触れたかもしれません。
    なんと美しい文章なんでしょう。
    少し難解なところもありますが「これぞ文学」という作品のひとつかもしれません。
    海外文学といえば欧米が舞台の作品を多く目に

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    2026年03月29日
  • すべての、白いものたちの

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    生まれて2時間で亡くなってしまった姉、誰も助けが来ない状況で、独りで姉を出産し看取った母。
    死と生が混在する、冷たく、美しく繊細な、詩のような一冊。
    共感して読むには鋭すぎて、一定の距離を保ったまま読んだ。
    「死なないで」「死なないで」
    何度も出てくるこの言葉が昇華される時は来るのだろうか。
    この小説はレクイエムなんだろうなあ。
    ポカめいた春に読む本ではなかったな。
    静かな、雪の降る音しかしない、寒い冬の日に読むべき本だった。

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    2026年03月28日