三上延のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
ネタバレ栞子さんと五浦君の古書ミステリ5冊目。古書としては珍しくマンガが登場する。
手塚治虫の「ブラック・ジャック」である。
作品についてだけではなく、手塚治虫本人についてもさまざまなことが分かってとても面白かった。こんなふうにこの物語で取り上げられると、すぐに読みたくなって困る。
謎解きの依頼を持ってきたのは、栞子さんの親友、滝野リュウの後輩の真壁菜名子だった。彼女の両親は二人とも手塚治虫のファンで、母親は結婚する時に自分の蔵書の一部を持ってきた。そのせいで家には重複している本も多い。ところが、その中で手塚治虫の『ブラック・ジャック』が何冊か無くなっているのに気付いた。どうやら、弟の慎也が持ち出したらしい。菜名子は彼に問い質したが、慎也は持ち出した理由もどこにあるのかもいっさい答えてくれないという。
栞子さんがもつれた糸を解きほぐしていくと、どうやら菜名子たちの母が五年前に癌で亡くなった時の事が関係しているらしい。慎也とともに病床に駆け付ける父が取ったある行動。それが彼の心を捻じ曲げてしまっているようなのだ。五浦君と栞子さんは彼女たちの祖母に話を聞くことにするが……。
今回も本を偏愛する人たちとそうでない人たちとの間に生じる誤解が描かれていて、読んでいて胸が痛んだ。特に、結婚を反対した娘に家を出ていかれた母親、つまり菜名子と慎也の祖母・波江の言葉が印象に残った。
心ばかりの嫁入り道具に鏡台と箪笥を持たせたのだが、狭い新居にはスペースが無く、そのせいで娘は愛する本の大部分を実家に残していくことになった。そして、怒った父親はそれらをすべて棄ててしまうのだ。
どうしてあの時、自分は本棚を買ってあげなかったのだろう。そうしたら娘は大切なものを失くさずに済んだのに。自分たちには、そうたくさんの時間が残されていたわけではなかったのに。
孫が生まれて、娘夫婦とは和解できたけれど、このことはずっと忘れないと彼女は言っていた。
人生の変転で大切なものを失う人たちは少なくない。けれども、せめてそんな風に胸を痛めてくれる人がそばにいるなら、どんなに心が安らぐだろうか。
大切なものを、同じように大切に思ってくれる人がいること。そんな人と出会えること。それらはなんと難しいことだろうと、この物語を読んでいると思うのだ。
なので、この巻の最後に五浦君が放ったセリフには拍手を送った。次巻ではさらに過酷なトラブルが待っているみたいだが、このスピリッツできっと乗り越えてくれると思う。
おめでとう! -
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ネタバレ栞子さんと五浦君の古書ミステリ4冊目。今回は長編である。
一冊丸ごと「江戸川乱歩」の謎であった。ミステリ好きの方々の話に触れていると、あまりにも頻繁に出てくるため、古書価値が付くような時代の作家とは思っていなかった。なんと明治生まれの方だったのか。
太宰治や夏目漱石よりも身近に感じていたのだが、乱歩にももちろん収集家がいて百万円以上の値が付くものがある。物語は、そんな貴重なコレクションを残して亡くなった人の遺品をめぐる謎である。
コレクションの持ち主が、まるで乱歩の描く人物のようにいくつもの顔を隠しているのが面白かった。隠された顔を栞子さんたちがひとつひとつ探していく様子も、まるで探偵小説のようだった。そういえば、ある意味本当に『探偵小説』なのだが。
冒頭に登場する篠川智恵子のインパクトが強すぎて、いったいどうなってしまうんだろうと感じたのだが、始まってしまえばいつもの謎解き。栞子さんと五浦君の距離が少しずつ近づいているのも良い感じ。
ただ、中盤に出てくる、篠川智恵子に対する文香の台詞がとても重かった。
『無理に帰ってこなくてもいい』『会いたいとは思っているけど、もう必要としてない』『連絡もしてこなくて顔も出さないなら、そのうち会いたいとも思わなくなる。そうなったら、もうこの家には入れない』
普段、陽気にしているキャラクターだけに、本当に重い言葉だった。それに対して、智恵子は許しを請う言葉を何も口にしない。
本を偏愛する人々の中で、今回は特に人との関係性を放棄している人が多かったような気がする。だからこそ、結末の栞子さんの決断にはほっとした。彼女がこれからどんな選択を積み重ねるのか、最後まで見ていきたい。 -
Posted by ブクログ
タイトル見て借りましたが、『ビブリア古書堂の事件手帖』シリーズの作家さんだとは気付かず…。
同潤会アパートというと表参道だと思っていたので代官山だったっけ?と思って調べたら15カ所もあったんですね。
関東大震災の後、日本初の鉄筋コンクリート造りの集合住宅として建築された同潤会アパート。代官山にある同潤会アパートメントで暮らした四世代70年の家族の歴史が描かれています。
年代を追うごとに中心人物が子供から孫、そして曾孫の代に変化して行きますが、それと共に建物も歴史を積み重ね、あんなに近代的だと言われていた建物も老朽化が進み、取り壊わされてしまいますが、そこに暮らした家族の思いの強さにジーンときました。特に竹井光生がどんな思いでこのアパートを新居に決めたのかがわかった時はうるっと来ました。
関東大震災に始まり阪神大震災まで登場するこのお話。日本は本当に大きな地震が起こる国であるという事を改めて思い知らされる事となりました。 -
Posted by ブクログ
ネタバレビブリア古書堂の事件手帖シリーズは好きで、今作もとても面白かった。
ただ、扉子シリーズになってから登場人物に思慮にかける短慮な言動をする人が増えたなーと感じます。
前巻では、樋口恭一郎の母、樋口佳穂が最終的には恭一郎に相続されるはずの本を燃やしてしまい仲違いするのですが、「いや当たり前だろ」としか思わない。
少なからず恭一郎は杉尾康明(実父)とも交流があったわけで、理由はあれど、恭一郎の実父の大切なものを燃やしたら、そりゃ息子に距離取られるに決まってるでしょ。
今回の巻でも、扉子と圭の仲違い関連の話があるのですが、扉子も親友の親族をいきなり疑いすぎだし、圭も親友に対して言葉強すぎ。
子どもだからという点を加味しても、ちょっと短絡的じゃない?と感じてしまいました。
少し気になる点のもありますが、もちろんシリーズ通してとても面白いので次の話も楽しみにしています。