【感想・ネタバレ】百鬼園事件帖のレビュー

\ レビュー投稿でポイントプレゼント / ※購入済みの作品が対象となります
レビューを書く

感情タグBEST3

Posted by ブクログ

 影が薄い大学生と偏屈で有名な大学教授のコンビが、遭遇する奇妙な出来事の謎を解く連作短編オカルトホラーミステリー。

 物語は主人公の甘木という大学生の視点で描かれていく。
          ◇
 大学生の甘木は午後の講義が終わった帰り、夕食を摂ろうと行きつけのカフェに入った。
 ここ●喫茶千鳥には週イチで来る甘木だが、影が薄く存在感が希薄なため、未だに女給から馴染客として扱ってもらえない。
 そんな自分を内心で嘆きながらふと隣のテーブルを見ると、そこには大学で見知った顔が口をへの字に結びギョロリとした目でアイスクリームを睨んでいる。偏屈で厳しいと評判の内田榮造教授だった。
      (第1話「背広」)全4話。

      * * * * *
 
 名探偵役を務めるのが、百閒先生こと内田榮造です。
 漱石山房のメンバーの中でも変人として知られた百閒は、独特の作風が特徴の作家で優れた ( 変わった?)短編を多く残しています。

 気が向かないことには関わろうとしない性格だったと伝わる百閒ですが、本作では門人には寛容だった漱石に似て目下の者に対する面倒見がよいという設定です。作中の百閒は、主人公たちを助けようとして怪異に挑みます。
 また、気難しい顔から一変したゴキゲンな顔で百閒がアイスクリームを味わうシーンがありますが、子どもじみたところがあったという百閒らしい描写だったと思います。

 そのように、登場人物から小道具、エピソードに至るまで、百閒ファンはもちろん漱石や芥川のファンも思わずニヤリとしてしまう構成になっています。

 その他にも、主要舞台となる「●喫茶千鳥」にもおもしろい物語を用意するなど、凝り性の三上延さんらしく、背景もよく考えられていました。

 もっと書きたいのですが、ネタを割ってしまいそうなのでこのあたりで置いておこうと思います。

 ところで、もし三上延さんが続編を考えていらっしゃるのならお願いがあります。
 百閒先生の『ノラや』という随想が私は大好きで、不器用な先生が可憐な野良猫に愛情を注ぎ、愛猫を喪ってロス感に悲しむ様子には共感してしまいます。
 そんな百閒先生の猫好きの一面を、ぜひ続編で描いてくださいませんか。

 三上先生、編集者の方、どうかご一考ください。お願いします。

0
2023年11月21日

Posted by ブクログ

百閒好きには最高な贈り物でした!!

古書を知り尽くす著者だから、イメージを壊さないで文豪たちを登場させてくれる。

アイスクリームを食べる、車窓を眺めるシーンと想像するだけでわくわくするあの偏屈ものの大先生が浮かんでくる。

是非、シリーズ化して欲しい。
こんどは列車にのって、異世界を旅するとか。

0
2023年10月12日

Posted by ブクログ

この小説は内田百閒の好きな方ならとても楽しめると思います。
私は芥川龍之介や夏目漱石が出てくるくだりは面白く読めましたが百閒は積読中なので、面白さがいまひとつわからなかったと思います。
百閒とは怪異や亡くなった人の話を書かせると上手い作家だということでした。


第一話 背広
昭和の初め関東大震災が起こった八年後、市谷の私立大学に通う甘木は食事も出す喫茶店でドイツ語学部教授の内田榮造と出会います。
その時、甘木は友人の青池に借りた背広を着ていましたが、女給の宮子の間違いで榮造の着てきた背広を着せられて帰宅します。すると甘木はおかしな夢を見ます。
それを聞いた青池は…。
果たして内田榮造は漱石の門下の内田百閒でした。青池にはとあるたくらみが浮かんだのです。

第二話 猫
甘木と内田先生は宮子のカフェでときどき会うようになり、そこに青池も加わりました。
カフェ千鳥には新しく若い女給の春代が入ってきました。
甘木は大人しい春代に魅かれて病気で店を休んだ春代を宮子と一緒に見舞いにいくことになります。
百閒先生は「おかしな娘には気をつけなさい」といいますが、果たしてその意味は…。
これもまたちょっと不思議な話です。

第三話 竹杖
甘木はステッキをつき、和服の男に出会います。
その男に甘木はどこかで会ったことがあるような気がしますが最初は誰なのかわかりません。
でも次第に、その男の正体がわかってきます。
内田先生は『山高帽子』という芥川龍之介との思い出を小説にしていました。
その男は亡くなった芥川龍之介のドッペルゲンガーだったというお話です。
ドッペルゲンガーとは自分とそっくりの分身でそいつと顔を合わせると死んでしまいます。
内田先生にはドッペルゲンガーがとり憑いていたのです。

第四話 春の日
内田先生の元教え子で笹目や多田と同期の伊成の話。
内田先生には自分の怪異のせいで伊成が亡くなったと思い伊成の実家のいなり屋を訪れています。
甘木も狐に化かされていなり屋で迷子になってしまいます。
内田先生は伊成のドッペルゲンガーに未来の話を聞き、伊成は病気で亡くなったのだと諭されます。

0
2023年09月22日

Posted by ブクログ

ネタバレ

昭和初期の神楽坂が舞台。存在感の無さに悩む大学生、甘木くんと、偏屈な大学教授、内田先生は、行きつけのカフェーで同席したのを機に親しくなる。先生の背広を間違えて着てしまった甘木くんは、何故か怪異に遭遇するようになり、内田先生とともにその謎に迫っていく。

短編集ではあるけど、順番に読んでかないとダメなやつ。最初はまあまあ怖いかな、という感じなのが、読み進むうちにどんどん怖さが増してきて…。ドッペルゲンガーの話でヒェ〜となり、若くして亡くなった伊成くんの話では悲しみも加わって、胸が締め付けられる。

私は内田百閒を名前くらいしか知らなくて、読み終わってから調べてみた。偏屈で借金大王で、鉄オタで…夏目漱石に師事し、芥川龍之介とも交流があったという。物語の中でもそういう事には触れているので、彼のひととなりを知ってから読むとより面白いのではないだろうか。

甘木くんは、そんな内田先生と良いコンビだ。途中、ある理由から疎遠になってしまうけど、また元鞘に納まってから話は終わる。続きがあったら、ぜひ読みたい。

ノスタルジーを感じるブックデザインも良き。

0
2024年05月05日

Posted by ブクログ

なかなか、読み進まなかったのだけど、内容は面白かった。内田百間さんって、こんな感じだったのだろう。
鉄ちゃんだったことに反応

0
2024年02月18日

Posted by ブクログ

少しホラー、怪奇譚。でも怨念や怨嗟といった類ではない。大正から昭和初期の世俗や街並みも丁寧に記述されてとても楽しく読めた。途中まで読んでやっと内田百閒先生って人実在していたような・・・?ってぐらい何も知らずに読んだけれど内田先生の著書がどういうものなのか興味がわいた。

0
2024年02月03日

Posted by ブクログ

怪異な現象がいろいろ出てきて、でも人間的な温かさもあって、不思議な味わいの良い本でした。
たまたまだけど最近大正時代が舞台になっている小説を読んでいて、ちょっと妖しい世界が似合う魅力的な時代だと感じました。

0
2024年01月05日

Posted by ブクログ

ネタバレ

悪くはなかった。
内田百間の帽子や背広がイメージしづらい。表紙の絵も違う気がする。筆者のビブリアシリーズと異なり、現代を描いたものではないから、私の脳内では映像化が難しかった。
性格もよくわからず。
ドッペルゲンガーとの対決は、ちょっと呆気ない感じ。

0
2023年12月24日

Posted by ブクログ

内田百閒と学生の甘木(影の薄い)が不思議な、そして身のすくむような体験をしていくミステリーというよりホラーでした。
交流のあった夏目漱石や芥川龍之介の名前も出てきて昭和初期の匂いも感じる小説でした。
いくつか気になる小説のことにも触れているので、それも読んでみたいです。
とても面白かったです。

0
2023年12月15日

Posted by ブクログ

内田百聞が大学でドイツ語の先生をしている頃、印象の薄い学生、甘木と知り合いになり、事件というほどでもないような怪異がおこる作品。内田百聞を知らないと面白さ半減以下です。
夏目漱石の弟子であり、芥川とも交流のあった内田百閒。物語にも、かの文豪たちが登場します。どんな形で出てくるかは読んでのお楽しみ。
背広
内田百問の背広と甘木が友人から事情あって借りた背広が入れ替わる。そこが甘木の内田先生との親交の始まりであり、怪異の入り口だった。

コーヒーがまずいが出す料理は結構うまい行きつけの喫茶の給仕が具合が悪い。しかし彼女から受ける印象は人によって極端に違うようなのだ。
竹杖
百聞先生邂逅百聞先生図という知人からもらった上手くはない不思議な絵。その絵と百聞先生が抱えている秘密は密接にかかわっていた。
春の日
百聞先生から距離をおかれた甘木。しかし、以前百聞先生と親しくしていた学生の影がちらついて、二人はまた近づくことになる。

0
2023年11月14日

Posted by ブクログ

どこか気味の悪い空気感とノスタルジックな雰囲気とどこか掴みどころのないキャラクター性で繰り広げられる会話が独特な世界観を作り出していて面白かった。

0
2023年11月12日

Posted by ブクログ

ビブリアの著者が送る新しい世界
主人公は甘木という影が薄い大学生
この大学生が大学でロシア語を教えている教師と怪異な体験をする
あなたはもう一人の自分と遭遇したらどうしますか?と私ならキャッチフレーズをつけてしまうかな
ドッペルゲンガーを題材にしたお話

ただ少し残念なことに・・・これ続編があるの?って感じで終わっている
できたらまた続編書いてほしい


もうちょっと喫茶店での鬼気迫るシーンが見たかった。

0
2023年11月11日

Posted by ブクログ

内田百閒を巡っての怪異の短編集4篇
芥川龍之介のドッペルゲンガーとの邂逅の場面など怖いけれど温かみがありしみじみ良かった。全編の内田百閒の先生としての人柄がリアルに描かれていて、怪異現象も含めとても面白かった。

0
2023年11月05日

Posted by ブクログ

「謎を解き明かす」というより「怪異譚」。怪異譚の連作の印象です。
序盤は☆3ぐらいかな、と思って読んでいたのですが、話の重ね方が好感だったので思ったより楽しめました。
あと、恥ずかしながら内田百閒を知らなかったので勉強になりました。

0
2023年10月27日

Posted by ブクログ

私立の大学生・甘木は、顔立ちはそこそこ整っているが、これといって特徴がない故に人の記憶に残らない。そんな甘木を覚えていてくれたのは、大学のドイツ語部の教授・内田。行きつけのカフェでバッタリ会った縁で交流を持つ事に。そこから不可思議な事が甘木の周りで起き始めて…

ちょっと軽いホラーミステリーみたいな感じでした。文学の偉人がチラホラ出ていて、中々興味深かったです。

そして、内田と師弟関係となった甘木が次はどんな事件に巻き込まれるのか、シリーズ化希望です。

0
2023年10月22日

Posted by ブクログ

ほう…今度は内田百閒ときましたか!

と、ホクホクするも、ちゃんと読んだことないんだよな、百閒…(^◇^;)スミマセン。

いや、面白いとは聞いているんでね、ええ、うちの父親とかにね…川上弘美さんも好まれていたりするので、読んでみたいとは常々思ってはいるんだけど、なかなかね…。

ところで「偏屈作家と平凡学生のコンビが、怪異と謎を解き明かす」なんて紹介だし、ちょっとのどかな感じで読み進めていたら、そんじょそこらのホラーよりゾゾッときたし!!

いやぁ、楽しかったです!!!
内田百閒、今度こそ読んでみないとだなぁwww

0
2023年09月22日

Posted by ブクログ

面白かった。内田百閒が大学でドイツ語を教えていた時代に、学生と怪奇に巻き込まれるという内容の連作短編で、背筋が少しゾッとするような話たちだけれど、とても面白かった。今よりも建物の内も外も暗く(暗がりの多い)、自然が身近だった時代―昭和初期―の雰囲気も話に非常に合っていて、良かった。
私は内田百閒は随筆しか読んだことがないのだけれど、ゆったりおおらかで愛嬌があって味のある…というイメージそのままの百閒先生で登場するのも、面白かった。
昔、宮部みゆきさんがよく超能力者(異能力者)が登場するお話を書いていた時、あまりに描写がリアルに感じられて、宮部さんの近くに超能力者(異能力者)が実在するのではと思っていた(今も思っている)。なので、百閒先生は霊能力が強くて実際に色々不思議な体験をしたからそれを基に怪奇ものを書いたのでは、という発想からこういう話が生まれたのかなと思うと、すごく納得がいく。
著者の三上さんはビブリア古書堂の著者でもあると読み終わって気付いた。私は当作の方が好きかもしれない。

0
2024年02月09日

Posted by ブクログ

面白かったけど、今までずっと百間先生の色んな文章を読み散らしてきたから、知り合いのおじさんがドラマに出演して台詞言った感あった。「やだおじさんちょっと、あんなこと言ってるよwwwかっこいいじゃんwwwヒィ」みたいな。
芥川とか太宰はこういうのいっぱいあるだろうけど、百間先生自体が物語の登場人物になるのってあんまりない気がする。純粋に嬉しいです。
百間先生の、亡くなった方々との思い出を書いた文章を再読したくなった。

0
2024年01月17日

Posted by ブクログ

内田百閒(閒の字は作中では敢えて間で表記)先生を探偵役に、甘木という内田先生の教え子の目を通して不思議な世界を描く。

内田百閒と言えば「ノラや」のイメージが強すぎて猫好きな先生なのかと思っていたら、取っつきにくい怖そうな先生として描かれている。
食べることが大好きだがこだわりがあり、整理整頓が好きで、ドイツ語教師としては鬼のように恐れられていて、だが一方で常に借金を抱えていてそこはルーズで。
何よりも不思議な世界とずっと関わってきていて、内田先生の周囲では人死が多い。
漱石先生、内田先生の教え子たち、そして芥川龍之介。

芥川龍之介が描いたという『百閒先生邂逅百閒先生図』という不思議なタイトルの不思議な似顔絵。
こういうものがあるとは初めて知ったが、その解釈がまた面白い。
これをこのような不思議な事件に発展させるというのはさすが作家さんだと感心。

読後調べたら、甘木という主人公の名前は『百鬼園随筆』にも度々登場するらしい。
この辺りも作家さんの遊び心が感じられて楽しい。
また内田先生と芥川龍之介との親交の深さも感じられて興味深かった。

背広、猫、竹杖…様々なモノが起点となって始まる、ちょっと怖くて不思議な世界。
そこに引き込まれて時には命を落とす者もいるが、甘木は意外にも強い。
彼の、人の印象に残りづらい平凡な容貌と、優しくも粘り強い性格が内田先生を助けている。
一人で異世界と闘ってきた内田先生の変化も楽しい。

作中に出てきた内田先生の『冥途』やタイトルにも使われている『百鬼園随筆』にも興味が出てきた。そのうちに読んでみたい。

0
2023年12月16日

Posted by ブクログ

文豪×怪異×ミステリーと帯にあったので、怪異にまつわる事件を解決していく話なのかなと思ったら、実際は謎解き要素はほとんどなく怪異とかファンタジーとかそちらの色合いが強かった。

内田百閒、芥川龍之介が好きな私にはグッとくる場面も多くて良かった。いろいろ読み返したくなる。とくに『山高帽子』。

主人公の甘木くんとの師弟関係も良く、切なさと温かみがある終わり方も好き。
まだ続けられそうではあるので、続編がもしでたら読んでみたい。

0
2023年12月07日

Posted by ブクログ

「ビブリア古書堂の事件手帖」シリーズの三上延。今作は、推理物というよりはオカルト•ホラーです。
内田百閒(1889〜1971)は、アンソロジーに収められた短編をいくつか読んだくらいで、私は馴染みがない。黒澤明の映画「まあだだよ」の人、という印象が強い。

主人公の甘木は大学でドイツ語の講義を受けている内田教授と近しくなる。そのきっかけとなったのは教授が着ていた背広で、それはかつて内田教授が師事していた"ある人物"の形見分けの品だった…。
「背広」「猫」「竹杖」「春の日」の4話連作です。どれもじわじわと恐怖感が増していく感じの物語で、楽しんで読めました。
"証拠を積み重ね、推理をもとに真犯人を追う"的な『事件帖』ではありません。推理物でもS Fでもなく、あくまでオカルトです。…「オカルトとUFOはS Fの敵!」という"コアなS Fの人"には合わないだろうなぁ(笑)

0
2023年11月23日

Posted by ブクログ

実在する人物が登場しているので背景も知りたくなり検索しながら読んでしまうと時間がかかります。

主人公は影の薄い甘木という学生。ドイツ語の内田先生と親しくなるにつれて、怪異に遭遇してしまい、、、。

最近多い怪異や妖ものかと思いきや、大正から昭和という時代背景もありスピード感よりもジワジワくる薄気味悪さを感じる怪異物でした。

0
2023年11月15日

Posted by ブクログ

独特な読後感だった。百鬼園って内田百閒のことだったんだと知る。読み手に色んな知識があれば、繋がるところがあって、もっと楽しめたかな。

0
2023年10月21日

Posted by ブクログ

ネタバレ

舞台は昭和初期。大学生の甘木が、変わり者の内田教授と親しくなる。
そこから怪異な出来事に巻き込まれ始める。
夏目漱石、芥川龍之介、ドッペルゲンガー…
怪異物は好きでたまに読むけど、ちょっと不思議なテイストだった。

0
2023年10月13日

Posted by ブクログ

『ビブリア古書堂の事件手帖』の三上延の作品.推理小説ではなく怪奇小説で,従来作とは毛色が違う.推理小説ファンとしてはちょっと不満が残る.

0
2023年09月14日

「小説」ランキング