あらすじ
舞台は昭和初頭の神楽坂。影の薄さに悩む大学生・甘木は、行きつけのカフェーで偏屈教授の内田榮造先生と親しくなる。何事にも妙なこだわりを持ち、屁理屈と借金の大名人である先生は、内田百間という作家でもあり、夏目漱石や芥川龍之介とも交流があったらしい。
先生と行動をともにするうち、甘木は徐々に常識では説明のつかない怪現象に巻き込まれるようになる。持ち前の観察眼で颯爽と事件を解決していく先生だが、それには何か切実な目的があるようで……。
偏屈作家と平凡学生のコンビが、怪異と謎を解き明かす。
感情タグBEST3
Posted by ブクログ
病室での内田先生のドッペルゲンガーとの邂逅は油断した。話しぶりに更に油断した。
甘木さんが内田先生のドッペルゲンガーに啖呵をきったのはかっこよかった。
宮子さん、そんな気軽にドッペルゲンガーに頼み事しちゃって。宮子さんのドッペルゲンガーも危ないと分かっててお手伝いしちゃって。対策出来てないけどちゃんと忠告は聞いているから危ないと怒るに怒れない。
百聞は一見にしかず。
怪異なら尚更だなと思ったり。
Posted by ブクログ
内田百間とそのお弟子さんがちょっと不思議な事件と遭遇するお話。文豪×ミステリとか文豪×妖っていうテーマで百間とは。シリーズ化して欲しいな! 百鬼園事件帖ってタイトルが『百鬼園随筆』から取ってるのは読み終わるまで気がつかなかった。こっちも読もう。
Posted by ブクログ
影が薄い大学生と偏屈で有名な大学教授のコンビが、遭遇する奇妙な出来事の謎を解く連作短編オカルトホラーミステリー。
物語は主人公の甘木という大学生の視点で描かれていく。
◇
大学生の甘木は午後の講義が終わった帰りに、夕食を摂ろうと行きつけのカフェに入った。
ここ●喫茶千鳥には週イチで来ている甘木だが、影が薄く存在感が希薄なため、未だに女給から馴染客として扱ってもらえない。
そんな自分を内心で嘆きながらふと隣のテーブルを見ると、そこには大学で見知った顔が口をへの字に結びギョロリとした目でアイスクリームを睨んでいる。偏屈で厳しいと評判の内田榮造教授だった。
( 第1話「背広」)※全4話。
* * * * *
名探偵役を務めるのが、百閒先生こと内田榮造です。
漱石山房のメンバーの中でも変人として知られた百閒は、独特の作風が特徴の作家で、優れた ( 変わった?)短編を多く残しています。
気が向かないことには関わろうとしない性格だったと伝わる百閒ですが、本作では門人には寛容だった漱石に似て目下の者に対する面倒見がよいという設定です。
作中の百閒は、主人公たちを助けようとして怪異に挑みます。
また、気難しい顔から一変したゴキゲンな顔で百閒がアイスクリームを味わうシーンがありますが、子どもじみたところがあったという百閒らしい描写だったと思います。
そのように登場人物から小道具、エピソードに至るまで、百閒ファンはもちろん漱石や芥川のファンも思わずニヤリとしてしまう構成になっています。
その他にも主要舞台となる「●喫茶千鳥」にもおもしろい物語を用意するなど、凝り性の三上延さんらしく、背景もよく考えられていました。
もっと書きたいのですが、ネタを割ってしまいそうなのでこのあたりで置いておこうと思います。
ところで、もし三上延さんが続編を考えていらっしゃるのならお願いがあります。
内田百閒先生の『ノラや』という随想が私は大好きで、不器用な先生が可憐な野良猫に愛情を注ぎ、愛猫を喪ってロス感に悲しむ様子には共感してしまいます。
そんな百閒先生の猫好きの一面を、ぜひ続編で描いてくださいませんか。
三上先生、編集者の方、どうかご一考ください。お願いします。
Posted by ブクログ
2023年出版。249ページ。タイトルと表紙の挿絵から、想像を広げ過ぎると結果的に肩透かしを食う事になるかも。昭和の始めから、遡って大正末期に掛かる時期としてのお話し。時代背景に深く突っ込んでいない分、読み易いとも言えるし、現代との境が曖昧になってしまう感じもある...。けれど、それらを差し引いても面白かった。おどろおどろしさは余り強調されていないが、想像してみれば大いに不気味だ。「見えてしまう者」、「見ることが死に繋がる」などは、中々に気色が悪く興味深かった。本格怪奇モノを期待する人には薦めない。
Posted by ブクログ
内田百閒をモデルに、彼とその教え子が遭遇する不可思議な事件・怪異との出会いを描いていく連作集。メインとなる怪異はドッペルゲンガーなのだが、これがとても面白く活きている。確かに、ドッペルゲンガーに会うと死ぬと言われているが、ドッペルゲンガー側はどうなるのか。そして、自分以外のドッペルゲンガーに会うとどうなるのか。そこにひとつの解釈・設定を持って世界観ができている。
日本の文化と西洋の文化が丁度混ざり合う時代を舞台に、現か夢か、虚構か真か分からないものが混ざり合う日常を読んでいて、ぞっとするような、どきどきするような、期待と恐怖の入り混じる心持ちで読んだ。やはり明治・大正時代への憧れは尽きない。
Posted by ブクログ
怪異。ミステリー。
影の薄い学生と少し個性の強い教授の物語。
影の薄い学生、甘木が色んな怪異に出会っていき、話に惹き込まれた。ありえないことばかりだけど、面白い。
Posted by ブクログ
ほんのりと怖くて、
ほんのりと儚く、
ほんのりと切ない。
大正ロマン×怪異譚。
相性のいいことこの上なし。
カツレツにポークチャップ、カレーライス。
不純喫茶の不味いコーヒーも何となく味わってみたくなる。
凄く、脳内で映像化しやすい文章と言う点も魅力的。
ドッペルゲンガーと対峙していく場面は、
どこかジャンプの漫画を読んでいるような気分にもなった。バトルシーンの緊張感、そして高揚感が手に汗を握らせる。
Posted by ブクログ
極端に印象が薄い学生の甘木が、大学の教授である内田榮造(内田百間)と親密になったことで、様々な怪異にまきこまれていく。
このタイトルをみても、ピンと来なかった私が、内田百間にとても興味を持つようになった。「百間先生邂逅百間先生図」が物語の中で持つ意味が、怪異的で少し怖くもあったが、どんどん興味が湧いてきた。芥川龍之介や夏目漱石などの文豪とも親交があったようで、物語への興味が増した。
一話から三話までの怪異もほどよい感じで、第四話の「春の日」が、この物語をうまくまとめていたように思う。今後またなにか起きそうな感じもした。
読後、こういう感じの小説もおもしろいな、と思った。いろんな出会いがあるから、読書は楽しい。
Posted by ブクログ
ビブリア古書堂の著者による文豪×怪異ミステリー。主人公の大学生、甘木と内田百間が出会うところから始まる摩訶不思議な出来事は想像よりは怖くなく楽しく読めた。ドッペルゲンガーの話は不気味で恐怖だけどその怖さを芥川龍之介が緩和してくれてるようで友情を感じる。内田百間って、偏屈でこだわり屋で借金だらけで笑ってしまうところも多いのにどことなく魅力的で作品を読んだことがないのが残念。夏目漱石や芥川などの蘊蓄も楽しくて芥川が書いた百間の絵も興味深かった。こんな怪異に巻き込まれるのはごめんだけど昔は不思議がいっぱい。
Posted by ブクログ
怪異譚。
CGとか駆使して怖がらせてくる系PG12指定映画ですら怖くて直視出来ないお子ちゃまオバハンの私には、これくらいの怖さでちょうどいいくらい。
三上延さん、聞いた事のあるお名前だなと思っていたら、ああ、ビブリア古書堂の。お久しぶりです。相変わらず文学に造詣が深くていらして。
Posted by ブクログ
昭和初期の神楽坂が舞台。存在感の無さに悩む大学生、甘木くんと、偏屈な大学教授、内田先生は、行きつけのカフェーで同席したのを機に親しくなる。先生の背広を間違えて着てしまった甘木くんは、何故か怪異に遭遇するようになり、内田先生とともにその謎に迫っていく。
短編集ではあるけど、順番に読んでかないとダメなやつ。最初はまあまあ怖いかな、という感じなのが、読み進むうちにどんどん怖さが増してきて…。ドッペルゲンガーの話でヒェ〜となり、若くして亡くなった伊成くんの話では悲しみも加わって、胸が締め付けられる。
私は内田百閒を名前くらいしか知らなくて、読み終わってから調べてみた。偏屈で借金大王で、鉄オタで…夏目漱石に師事し、芥川龍之介とも交流があったという。物語の中でもそういう事には触れているので、彼のひととなりを知ってから読むとより面白いのではないだろうか。
甘木くんは、そんな内田先生と良いコンビだ。途中、ある理由から疎遠になってしまうけど、また元鞘に納まってから話は終わる。続きがあったら、ぜひ読みたい。
ノスタルジーを感じるブックデザインも良き。
Posted by ブクログ
少しホラー、怪奇譚。でも怨念や怨嗟といった類ではない。大正から昭和初期の世俗や街並みも丁寧に記述されてとても楽しく読めた。途中まで読んでやっと内田百閒先生って人実在していたような・・・?ってぐらい何も知らずに読んだけれど内田先生の著書がどういうものなのか興味がわいた。
Posted by ブクログ
怪異な現象がいろいろ出てきて、でも人間的な温かさもあって、不思議な味わいの良い本でした。
たまたまだけど最近大正時代が舞台になっている小説を読んでいて、ちょっと妖しい世界が似合う魅力的な時代だと感じました。
Posted by ブクログ
悪くはなかった。
内田百間の帽子や背広がイメージしづらい。表紙の絵も違う気がする。筆者のビブリアシリーズと異なり、現代を描いたものではないから、私の脳内では映像化が難しかった。
性格もよくわからず。
ドッペルゲンガーとの対決は、ちょっと呆気ない感じ。
Posted by ブクログ
内田百閒と学生の甘木(影の薄い)が不思議な、そして身のすくむような体験をしていくミステリーというよりホラーでした。
交流のあった夏目漱石や芥川龍之介の名前も出てきて昭和初期の匂いも感じる小説でした。
いくつか気になる小説のことにも触れているので、それも読んでみたいです。
とても面白かったです。
Posted by ブクログ
内田百聞が大学でドイツ語の先生をしている頃、印象の薄い学生、甘木と知り合いになり、事件というほどでもないような怪異がおこる作品。内田百聞を知らないと面白さ半減以下です。
夏目漱石の弟子であり、芥川とも交流のあった内田百閒。物語にも、かの文豪たちが登場します。どんな形で出てくるかは読んでのお楽しみ。
背広
内田百問の背広と甘木が友人から事情あって借りた背広が入れ替わる。そこが甘木の内田先生との親交の始まりであり、怪異の入り口だった。
猫
コーヒーがまずいが出す料理は結構うまい行きつけの喫茶の給仕が具合が悪い。しかし彼女から受ける印象は人によって極端に違うようなのだ。
竹杖
百聞先生邂逅百聞先生図という知人からもらった上手くはない不思議な絵。その絵と百聞先生が抱えている秘密は密接にかかわっていた。
春の日
百聞先生から距離をおかれた甘木。しかし、以前百聞先生と親しくしていた学生の影がちらついて、二人はまた近づくことになる。
Posted by ブクログ
どこか気味の悪い空気感とノスタルジックな雰囲気とどこか掴みどころのないキャラクター性で繰り広げられる会話が独特な世界観を作り出していて面白かった。
Posted by ブクログ
昭和初期の神楽坂。行きつけの喫茶店で教授・内田榮造と知り合い甘木。 先生と行動するうちに徐々に得体の知れない怪奇現象に巻き込まれるようになる甘木。 『ビブリア古書堂の事件手帖』の作者さんだからもう少し軽いかと思ったら割としっかりした怪奇現象だった。 面白かったし、もっと読んでみたいな。
Posted by ブクログ
<目次>
略
<内容>
ネタバレ!
ドッペルゲンガーに関するお話。ただ内田百閒がどのように関わったのかは結論が出ていない。百閒先生にもドッペルゲンガーは付いてくるが、他の人物よりも強靱なようだ。不思議な感覚でお話は終る。理論的な解決策は出てこない…
Posted by ブクログ
面白かった。内田百閒が大学でドイツ語を教えていた時代に、学生と怪奇に巻き込まれるという内容の連作短編で、背筋が少しゾッとするような話たちだけれど、とても面白かった。今よりも建物の内も外も暗く(暗がりの多い)、自然が身近だった時代―昭和初期―の雰囲気も話に非常に合っていて、良かった。
私は内田百閒は随筆しか読んだことがないのだけれど、ゆったりおおらかで愛嬌があって味のある…というイメージそのままの百閒先生で登場するのも、面白かった。
昔、宮部みゆきさんがよく超能力者(異能力者)が登場するお話を書いていた時、あまりに描写がリアルに感じられて、宮部さんの近くに超能力者(異能力者)が実在するのではと思っていた(今も思っている)。なので、百閒先生は霊能力が強くて実際に色々不思議な体験をしたからそれを基に怪奇ものを書いたのでは、という発想からこういう話が生まれたのかなと思うと、すごく納得がいく。
著者の三上さんはビブリア古書堂の著者でもあると読み終わって気付いた。私は当作の方が好きかもしれない。
Posted by ブクログ
面白かったけど、今までずっと百間先生の色んな文章を読み散らしてきたから、知り合いのおじさんがドラマに出演して台詞言った感あった。「やだおじさんちょっと、あんなこと言ってるよwwwかっこいいじゃんwwwヒィ」みたいな。
芥川とか太宰はこういうのいっぱいあるだろうけど、百間先生自体が物語の登場人物になるのってあんまりない気がする。純粋に嬉しいです。
百間先生の、亡くなった方々との思い出を書いた文章を再読したくなった。
Posted by ブクログ
内田百閒(閒の字は作中では敢えて間で表記)先生を探偵役に、甘木という内田先生の教え子の目を通して不思議な世界を描く。
内田百閒と言えば「ノラや」のイメージが強すぎて猫好きな先生なのかと思っていたら、取っつきにくい怖そうな先生として描かれている。
食べることが大好きだがこだわりがあり、整理整頓が好きで、ドイツ語教師としては鬼のように恐れられていて、だが一方で常に借金を抱えていてそこはルーズで。
何よりも不思議な世界とずっと関わってきていて、内田先生の周囲では人死が多い。
漱石先生、内田先生の教え子たち、そして芥川龍之介。
芥川龍之介が描いたという『百閒先生邂逅百閒先生図』という不思議なタイトルの不思議な似顔絵。
こういうものがあるとは初めて知ったが、その解釈がまた面白い。
これをこのような不思議な事件に発展させるというのはさすが作家さんだと感心。
読後調べたら、甘木という主人公の名前は『百鬼園随筆』にも度々登場するらしい。
この辺りも作家さんの遊び心が感じられて楽しい。
また内田先生と芥川龍之介との親交の深さも感じられて興味深かった。
背広、猫、竹杖…様々なモノが起点となって始まる、ちょっと怖くて不思議な世界。
そこに引き込まれて時には命を落とす者もいるが、甘木は意外にも強い。
彼の、人の印象に残りづらい平凡な容貌と、優しくも粘り強い性格が内田先生を助けている。
一人で異世界と闘ってきた内田先生の変化も楽しい。
作中に出てきた内田先生の『冥途』やタイトルにも使われている『百鬼園随筆』にも興味が出てきた。そのうちに読んでみたい。
Posted by ブクログ
文豪×怪異×ミステリーと帯にあったので、怪異にまつわる事件を解決していく話なのかなと思ったら、実際は謎解き要素はほとんどなく怪異とかファンタジーとかそちらの色合いが強かった。
内田百閒、芥川龍之介が好きな私にはグッとくる場面も多くて良かった。いろいろ読み返したくなる。とくに『山高帽子』。
主人公の甘木くんとの師弟関係も良く、切なさと温かみがある終わり方も好き。
まだ続けられそうではあるので、続編がもしでたら読んでみたい。
Posted by ブクログ
「ビブリア古書堂の事件手帖」シリーズの三上延。今作は、推理物というよりはオカルト•ホラーです。
内田百閒(1889〜1971)は、アンソロジーに収められた短編をいくつか読んだくらいで、私は馴染みがない。黒澤明の映画「まあだだよ」の人、という印象が強い。
主人公の甘木は大学でドイツ語の講義を受けている内田教授と近しくなる。そのきっかけとなったのは教授が着ていた背広で、それはかつて内田教授が師事していた"ある人物"の形見分けの品だった…。
「背広」「猫」「竹杖」「春の日」の4話連作です。どれもじわじわと恐怖感が増していく感じの物語で、楽しんで読めました。
"証拠を積み重ね、推理をもとに真犯人を追う"的な『事件帖』ではありません。推理物でもS Fでもなく、あくまでオカルトです。…「オカルトとUFOはS Fの敵!」という"コアなS Fの人"には合わないだろうなぁ(笑)