上田早夕里のレビュー一覧
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(上下巻あわせた感想です)
舞台は地殻変動による海底隆起によってほとんどの陸地が水没してしまった25世紀の世界。人類は陸地に暮らす「陸上民」と、海での暮らしに適した身体となった「海上民」に分かれ、それぞれの社会を形成していた。
日本政府の外交官・青澄と、彼のアシスタントである人工知性体マキは、陸上民と海上民の間で深まる対立の仲裁に奮闘するが、近い将来地球に訪れる更なる危機が、彼らの運命を大きく変えていく、という物語である。
陸地が海に沈みゆくお話としては小松左京『日本沈没』や映画『ウォーターワールド』がすぐに思い浮かぶけど、SFの設定という点ではこれら先行作を凌駕している印象で、細部まで練 -
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昨年からちょっとずつ読み進めて、1月に読み終えてたのに感想書かずに放置状態。
第一次世界大戦中、床屋さんから従軍し、死の淵で怪しきものに出会い半分人で亡くなったドイツ人のお兄さんが、人でありながら妖に育てられたポーランド人の少女の護衛となりやがて本物の妖になる。
世界史知識が中学生レベルで止まってるものの、色々あの時代興味深いわ。
更にその妖ことシルヴェストリ伯爵が妖になったきっかけがワラキアの串刺し公ヴラド3世とか、なんというかほんと個人的にご縁を感じます。(結局その辺りの歴史が好きなんだなあという。皆川博子先生とか、佐藤亜紀先生とか)
2023年3冊目。 -
Posted by ブクログ
生態系の頂点に立った人類にとって、最大の敵は細菌、ウイルス。
これを兵器として開発するという愚かさ、実現しない理由は「兵器として実用するためには治療方法を確立して秘密にしておかなければならない」ということ。
実はこれがものすごく経済的に負担がかかるから、というのが文中にも描かれている。
これまで、旧日本軍731部隊などのドキュメントがあっても、正直、よくわからない恐ろしさがまとわりついている感じだった。
ところが、2020年のコロナウイルスで世界は「パンデミック」を経験した。
これで、もう、脅威は目の前に直接イメージされた。
物語の舞台となったのは、満州事変から太平洋戦争終戦までの上海な -
Posted by ブクログ
ネタバレ晴明様特集をしていた『オール讀物』2022年8月号を既読だったので、純粋に初読だった作品は『哪吒太子』くらいだったかもしれない。
他も上記のものを読んでいると既視感のある作品だったし。
それでも、一冊で様々な方の晴明様、もしくは陰陽師話が読めるのはお得である。
そして、改めて夢枕獏先生の晴明様と博雅様の抜群の安心感と安定感が身に染みるという。
個人的にはやはりこの二人を見たいと思ってしまうので、他の作家さんが書かれた話でも二人が出てくるとつい思い入れが。
ゆえに『耳虫の穴』と『博雅、鳥辺野で葉二を奏でること』は特にお気に入りである。
第三者視点から見るとあの二人はああ見えるのかと思えたのもよ -
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人間と人間じゃないものの境界線とは何か
ここは、圧倒的な世界が広がる、地球と人類の未来。
それは、いまあるものがない世界。
でも、確かに現在の環境破壊からシミュレーションした未来の地球の姿……。
遺伝子操作による生物科学的人類の変容
人工知能補助による機械工学的人類の変容
そんな世界を舞台に、ひとりの辺境の外交官が、陸上民と海上民の対立、不思議な海上民の“オサ”をめぐる各国の思惑の狭間で、自己の意思を貫こうとする。
ちょっとした地球の動きであっという間に死滅していく生き物のはかなさ。
他の生物が環境変化に対して自然に淘汰や変化していく中、人間だけが自らの力でもがき足掻く……。
そこが功