上田早夕里のレビュー一覧
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「『人間である』とは、どういうことなのか。おそらく人間は、常にそれを己自身に向かって問い続けていなければ、容易に、人でないものに変わってしまうのだ」
かのワラキア公ヴラド3世の血を受けて、不死となった「伯爵」以下の魔物の目を通して描かれる、第一次大戦。庶民の窮乏など知ったことかで、戦争の継続を選ぶドイツの上層部には歴史と分かっていても怒りが募るが、2022年4月現在、似たようなことがリアルタイムで起きてるからなあ。ヒロインのリラが伯爵に、「私たち、美味しいパンと寝床があれば、それだけ充分なのに」と言うのだが、これはもちろん「どうして」と続く。ホントにどうしてなんだろうね。 -
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面白かったです。前作「華竜の宮」のラスト、〈大異変〉が起こるのがわかってから実際に起こるまで人類はどう生きたか。今回も圧倒されました。
限られた資源の奪い合いで陸上民から海上民への攻撃はさらに厳しくなってるし、それに対抗する〈ラブカ〉という武装勢力も登場して世界は暴力と混沌を極めています。
外交官を辞めて救援団体を経営している青澄も、年取ったけど熱い。宇宙船への出資を断ったの凄かったけど、これ確かマキが乗ってなかったかな…って思いました。
ユイとマリエの友情も好きです。このグループは良いなぁ。
ツェン・リー怖い。でもタイフォンを失ったのでこうなったのも一つあるかもと思わなくもない。デュレー会長 -
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人類を含む全ての生物が絶滅する程の危機を前に、人類は何ができるのか。
それでも、自分たちが生き残る為に他は犠牲にするという政治闘争や連合間権力闘争に明け暮れる政府に対して、青澄やツェン・タイフォン上尉の姿勢が心に残りました。上尉と月牙の最期悲しかった。
避けられない絶滅に、人間であることを捨ててルーシィとなって魚のようになる人もいる。それでも生き延びられないかもしれない。
マキのコピーを含む人工知性体は宇宙へ。彼らは地球で生物が生き延びたかを知ることはないだろうけど、「彼らは全力出生きた。それで充分じゃないか。」という言葉はこの物語の締めくくりに相応しい救いでした。
プルームテクトニクス理論 -
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ホットプルームによる海底隆起で海面が250メートル以上上昇し、広大な海域が広がる世界。
人々はわずかな土地で暮らす〈陸上民〉と、海上生活に適応し、居住する〈魚舟〉を自ら生み出せる〈海上民〉とに分かれて生きている。
一度滅びかけても、陸上に残った陸上民はかつての国家の代わりに連合を作って、覇権争いが激しくてどっと疲れます。中心人物として描かれる青澄と、彼に関わる人たちがもがきながらもなんとかして陸上民も海上民も助けたい…となっているのが尊いです。気持ちの良い人たち。
ツキソメも気高くて好きです。魚舟、いろいろなのがいてどんな感じなんだろう…サンショウウオっぽい魚のようですが大きいので。歌うのもい -
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主人公の青澄さんの熱い志に心動かされる作品です。こんな外交官がいたらいいのになと思います。
また、とても印象に残っているのは、国家間を跨いだ組織であるNODEが、あらゆる国家に政治的に深く干渉し、支配していると言っても過言ではないような行動をしていたこと。この組織は、世界中のエリートが結集して成立したものということでしたが、実社会でも、GAFAが将来的にこうならないとも限らず、読んでいてなんだか薄ら寒い感じがしました。
発表された当時は震災のことを配慮し、刊行にあたって注意されていたこともあったそうですが、今はこの作品のワクチンのことがより注目されそうです。少し前の作品ですが、次にどうなるのか -
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ラブカのお話。
救援団体の理事長青澄、ラブカのリーダーザフィール、宇宙船を作る夢を持つユイの目線。
シガテラが食い詰めた人々の強盗団で、ラブカは食い詰めた人々を救うために強奪行為するテロリストみたいな感じ?
一回読んだけど、ものすごい時間がかかってしまい、モブが誰だっけこの人といちいちなってしまったので、読み終わって下巻読む前にもう一度読みました。
大異変ほどじゃあないけれど、コロナで買い占め~みたいなの思い出したり。
買い占めするから家族の物資が手に入らない~→輸送会社襲う。の流れまで現実はいかなくて良かった。
次は忘れないうちに下巻読まなきゃ。