上田早夕里のレビュー一覧
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面白かった。
核研究の重要な秘密を持った科学者ウェズリーが隠れるチベットに、終戦を迎え帰国出来るはずの道雄は坂木により強引に捜索に駆り出された。
中国成都から標高4000メートルを超える剣山を超える難関の描写が生々しく、加えて国民党軍、共産党軍、アメリカ軍が三つ巴のようにウェズリーを奪還しようとする場面には緊張感があり肉体的な痛さを感じる。
戦後も謂れなき命令で戦争を継続強いられる側と、富を収奪しアメリカ軍や政治家と優雅に暮らす谷野の対比が、理不尽であるだけに坂木や道雄に気持ちが寄っていく。
核を持つ危険性など場面は戦後2年目でありながら、現代の立場からも納得できる作者の想いが伝わる熱い言葉に、敗戦の8月に読んだ本書は深く心に残る一冊だった。
虐げられる人間が生き残るために、殺人を必要とする戦争の無慈悲を痛感させられた。 -
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ネタバレ京都に近い播磨國に、安倍晴明と戦った蘆屋道満の子孫であるという2人の兄弟がいた。2人は地方で庶民のために働く、法師陰陽師である。(中央で政としての陰陽師とは異なる)兄の律秀は医学に長けており、弟の呂秀は薬草園の世話をし、兄を手伝いながら暮らしている。律秀は優秀な医師であったが、妖を見ることができるのは、なぜか弟の呂秀のみ。
呂秀は、蘆屋道満の式神であった赤鬼を得て、「あきつ鬼」と名付けた。
呂秀は妖の力を借りながら、兄律秀と共に人々を助けていく。
式神を暴れさせて事件を解決させる痛快な妖怪退治の話かと思ったら、そんな荒唐無稽なだけの、薄っぺらい話ではなかった。
ある時は山神の頼みを聞き、荒ぶる亡霊を相手に、激しい戦いを繰り広げる。いやこの時は式神もかなりの力を発揮するが。
「人は鬼のできぬことをする。鬼は人のできぬことをする」
とあきつ鬼は言う。人の持つ心と、式神の力が、バランスよく発揮された、なかなか深いお話になっていると思う。
登場人物たちのその後がとても気になるが、続編があるのでそれも楽しみに読みたい。 -
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ネタバレ短編、中編集。
どれもこれもしんみりと、泣きたくなるような、それでいてSF度が濃い目でまさに射抜かれたという感想です。
現実的な部分を踏襲しつつ、超非現実的な近未来(?!)でしかも、歴史をキチンと捉えつつ、読者の知識や記憶や想像力を熱く厚く、刺激を与えるこの一冊、私の記憶と記録に残る本となりました。
「龍たちの裔、星を呑む」の中の一節、「龍の悠久の命と比べれば、人類の命は、日の出と共に葉の上から消えてゆく朝露に似たものだった。」という表現に納得。私達人類は朝露と同じ。
SFファンタジーというか、超歴史もので人間よりも人間臭いひとつひとつ。短編集扱いしているのがもったいない!!
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難しいけど、読んで良かった。
満州事変は歴史で教わったけど、
そこに生きる人々に想いを馳せることが出来たのは、紛れもなくこの物語に出会えたから。
当然のことだけど、満州と呼ぶことになる前から住んでいる人々がいて、後から移り住んだ軍人ではない日本人がいて、両者は交流をしながらその時代を生きていた。
フィクションではあるけれども史実に基づいて描かれたところが多いそうで、その当時の国籍関係ない人々の想いに胸を打たれました。
あとは何より、上海の繁華街の描写がうまいこと。
時折出てくる上海料理の描写も食欲をそそられました。
どの時代の人も、美味しいものを糧に生きていたんだなと思ったり。
面白かったです。 -
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上田早夕里『上海灯蛾』双葉文庫。
初読みの作家。非常に読み応えのある1934年の上海租界を舞台にした歴史ノワール小説だった。
日本帝国陸軍が中国に侵攻し、満州国を建国し、さらに中国本土で支配を強めようとしていた時代。日本陸軍も中国軍も共に阿片で得た利益を軍事費に回そうと躍起になっていた。その隙間を埋めるかのように青幇をはじめとする有象無象が阿片の利益に蟻のように群がる。
阿片という麻薬に人生を翻弄される日本人と中国人。所詮、長い歴史の中では僅か一瞬の出来事であるが、バタフライ・エフェクトの如く未来を少しだけ変えたのかも知れない。
日本人はロシアのウクライナ侵攻を非難しているが、かつては軍部に支配された日本も中国をはじめとするアジア諸国に侵攻していたことを忘れてはいけない。さらに悪いことに、日本は侵攻した国で人体実験や略奪や凌辱、阿片の売買など悪行の数々を行なっていたのだ。
本作ではそんな時代背景の中、中国の秘密結社である青幇に取り込まれた日本人青年の数奇な運命が描かれる。
1934年の上海。成功を夢見て日本からこの地に渡って来た青年の吾郷次郎は共同租界で小さな雑貨店を営んでいた。ある日、原田ユキヱと名乗る謎の女性が次郎の店を訪ねて来て、阿片煙膏と芥子の種を売りたいと持ち掛けた。
次郎は伝手を辿り、阿片煙膏と芥子の種の取引きを行おうと上海を支配する青幇の一員である楊直に渡りを付けるが、これを切っ掛けに裏社会の奥深くへと踏み込んでいく。
芥子の栽培を巡り、次郎は楊直に取り立てられ、義兄弟の契を結び、黄基龍という中国名を貰う。次郎は芥子畑の管理を任され、原田ユキヱが持ち込んだ『最』という最高品質の芥子の種は青幇に莫大な利益をもたらし、楊直は組織の幹部に取り立てられる。
本体価格1,100円
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Posted by ブクログ
評価は文句なしの星5「以上」。
なぜ星が5つまでしかないのか!と
理不尽に怒ってしまうほどの作品です。
山﨑豊子さん、高村薫さんを彷彿させ、
いやそれ以上かと思わせてくれる
戦時中の闇を描いた超大作と言えよう。
膨大な資料と取材を元に描き出した
人間たちのドラマは作者の魂の叫びか
魂を削るかのような圧倒的な力を宿し
作品の中に凝縮されている。
とはいえ、これは読む人を選ぶ作品だな
というのもまたしかり。
日本の歴史観も影響するし、
エンタメが好まれる昨今の風潮、
戦争を想像できない世代との意識格差など、
これは万人には理解できないなぁと。
でも、である。
省略の美学とも言える
淡々とした文章なのに
ここまで人の感情を深く描けるのかと。
美辞麗句で飾った文章、
修飾し過ぎることで
深い感情を描いていると勘違いしている文章が
いかに世間に溢れているかを
自分自身も改めて認識させられた。
あーー、書きたいことがたくさんあり過ぎる。
それくらい凄い作品だった。
最後に、少しだけ内容の感想を…。
自ら選んだ道を、時代や、他人の責任にしない。
そして、自分の存在を許してくれる人が
1人でもいるなら、私たちは生きていて良いのだ。
戦時中だろうが、現代であろうが
人間の本質は変わらないのだなと。
さらに、考えることを辞めた時点で
人は人でなくなるのだなと。
これだけの本にこの後、どれくらいの冊数を
読破したら出会えるのか、想像したら
ちょっとぐったりしてしまったので
感想もこの辺で笑