上田早夕里のレビュー一覧
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最凶の妖怪”濁”との決戦を描くシリーズ完結編。
妖怪といえば自分が思い浮かべるのは「ゲゲゲの鬼太郎」と「地獄先生ぬ~べ~」です。前者は鬼太郎のユーモラスな仲間たちの姿が楽しく、ぬ~べ~はぬーべーや生徒たちの掛け合いと比しての、妖怪たちの怖さが印象的でした。
百目シリーズに登場する妖怪たちは、どちらかというと鬼太郎に近い感じ。人間の味方というわけではないものの、利益とそれが自分にとって楽しいかどうかを考え、気ままに生きる姿は、鬼太郎の歌に近いものがあるような気がします。
そんな妖怪たちが人間たちと手を結び、妖怪を喰らう濁と戦うわけですが、その段になっても、それが面白そうかどうかも考 -
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妖怪探偵・百目シリーズの二作目。前作で意味深に登場した拝み屋播磨遼太郎の話と、妖怪や人間を喰う妖怪”濁”のエピソードが中心となります。
このシリーズが始まった当初は百の目を持つ美女の妖怪の百目と人間の助手が事件を解決していく連作短編ものかな、と思っていたのですが、全巻の終盤あたりからそうした雰囲気は薄れ、
濁によって引き起こされる妖怪と人間の世界の危機や関係性を描いたスケールの大きな物語になってきました。
妖怪と人間の関係性の描き方や対立の構図や妖怪楼閣など、このシリーズだからこそ読める世界観も面白く、そこにSF的設定や哲学観が付加されることで、上田さんでしか書きえないシリーズになっ -
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妖怪が跋扈する<真朱の街>で探偵事務所を営む妖怪・百目は絶世の美女。ある事情からこの街に逃げ込んできた相良は、自身が巻き込まれた事件を契機に、依頼報酬は人の寿命という百目に時折命を吸われながらも探偵助手を務めている。
人と妖怪、呪いと最先端科学、自然の霊力とサイエンス・テクノロジーが融合した、魔除けの朱に染められ無数のお札を貼りこめた建物に囲まれたこの街は、かつては医療特区だった。その名残で、最先端医療技術の研究開発が行われていたりもする。
そんな街で、人と妖怪は奇妙な共存関係にあった。
勿論、悪い出会い方をすれば、喰われるのは人間なのだが。
そんな街で探偵家業を営む百目だが、人さえ喰 -
Posted by ブクログ
テンポよく、最後まで面白く読めた。
ラストの台詞はあとがきによると物議をかもしたように見受けられるが、それができる精一杯なのだと私は腑に落ちた。
ツキソメやタイフォンといった魅力的な人物をはじめ、設定も豊富に盛り込まれておりこれで何冊も書けるんじゃないか、というところを惜しみなく詰め込んでいて、でも個人の人生すべてには言及しないために、主役が全体(群像劇ということではない)であることが見えやすくなっているのかもしれない。ミドルネームもほとんど説明がないので、唐突に話題に出てくる感じがするが、あまり触れないのは他者との関係構築の形を限定しないためなのだろうか。
何にせよ久しぶりに面白い本を読んだ