上田早夕里のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
上田早夕里さんの短編集。ジャンルで言えばSFホラーということになるのかな。
やはり、表題の『魚舟・獣舟』と『くさびらの道』が良かった。
読後に感じる一抹の喪失感とちょっと背中が寒くなるような感じ。嫌いじゃない。
この短編集の全体の雰囲気として遺伝子操作された人間が普通に暮らし、アンドロイドが人間の代わりに危険な仕事をし、そのような中でも妖怪や異形の者が当たり前のように存在する。非常にダークな未来観でありながらも何となく古風な日本の雰囲気も醸し出している。映画『ブレード・ランナー』のような猥雑な感じでもなく、すべてがクリーンで管理された未来都市とまでは行かない。このどっちつかずなリアルな雰囲気、すごく好きですね。
上田早夕里さんの著書はかなり前に『火星ダーク・バラード』を読んだ記憶があるのだけれど全然覚えていない。本書の約半分を占める中編の『小鳥の墓』が『火星ダーク・バラード』の前章譚らしいのでいつかもう一度読んでみよう。
次は、『魚舟・獣舟』の世界観が引き継がれている『華竜の宮』をじっくり読んでみたい。 -
Posted by ブクログ
『ひとつだけ断言できることがある……。いまの姿を保っているからこそ人間だ、これが人間の最も理想的な形なのだ、という価値観は、これからの時代、幻想に過ぎないわ。
もちろん、思考は身体の形状に影響される。体の形が変化すれば、感受性も考え方も、すべてがいまのままではいられないでしょう。でも、一個の生物としては、だから何だという気もするの。人間は、他の生物と比べたとき、たいしたことをしたわけじゃない。唯一、宇宙に行けた生物だ ー とは言えるけれども、外に出たから偉いというわけでもない。
何もしないで滅びるというのも、もしかしたら、生物の在り方として自然なのかもしれないわね。でも、そう思いつつも、私は、やっぱり家族のことを考えてしまう。人間も生物の一種である以上、生きる道を、簡単に捨ててはいけないのではないかと……。』
人類の営みレベルで迫る危機と地球規模で迫る危機。上巻で材料は揃ったので、下巻が楽しみ。 -
Posted by ブクログ
最凶の妖怪”濁”との決戦を描くシリーズ完結編。
妖怪といえば自分が思い浮かべるのは「ゲゲゲの鬼太郎」と「地獄先生ぬ~べ~」です。前者は鬼太郎のユーモラスな仲間たちの姿が楽しく、ぬ~べ~はぬーべーや生徒たちの掛け合いと比しての、妖怪たちの怖さが印象的でした。
百目シリーズに登場する妖怪たちは、どちらかというと鬼太郎に近い感じ。人間の味方というわけではないものの、利益とそれが自分にとって楽しいかどうかを考え、気ままに生きる姿は、鬼太郎の歌に近いものがあるような気がします。
そんな妖怪たちが人間たちと手を結び、妖怪を喰らう濁と戦うわけですが、その段になっても、それが面白そうかどうかも考慮している姿が、妖怪らしいなあ、と思います。
そして、1巻、2巻の伏線を回収しつつ、最終対決に向かいます。SF的なタイムスリップと、陰陽師や祓いの概念を含み、事態が決着に向かっていきます。古来の日本の概念とSFの概念が組み合わさるのは、このシリーズならでは!
そして、播磨の過去、邦雄の過去からの脱却もからめてストーリーは進行します。そうした人間ドラマも読みどころです。
いろんな要素が詰め込まれた作品でしたが、最終的にはしっかりとまとめあげられた三部作だったと思います。