あらすじ
絶世の美女にして全身に百の眼を持つ妖怪・百目。彼女の探偵事務所は、妖怪と人間が共存する〈真朱の街〉にある。請け負う事件は、すべて妖怪がらみ。依頼人は、報酬を自分の寿命で払うのが決まりだ。助手の相良邦雄は、時々百目に寿命を吸われつつ、事件解決にこき使われる日々を送るのだが……。数多のもののけたちが跳梁跋扈する、妖怪ハードボイルド第1弾!
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Posted by ブクログ
妖怪が跋扈する<真朱の街>で探偵事務所を営む妖怪・百目は絶世の美女。ある事情からこの街に逃げ込んできた相良は、自身が巻き込まれた事件を契機に、依頼報酬は人の寿命という百目に時折命を吸われながらも探偵助手を務めている。
人と妖怪、呪いと最先端科学、自然の霊力とサイエンス・テクノロジーが融合した、魔除けの朱に染められ無数のお札を貼りこめた建物に囲まれたこの街は、かつては医療特区だった。その名残で、最先端医療技術の研究開発が行われていたりもする。
そんな街で、人と妖怪は奇妙な共存関係にあった。
勿論、悪い出会い方をすれば、喰われるのは人間なのだが。
そんな街で探偵家業を営む百目だが、人さえ喰えれば(文字通り肉体を貪るか、ちょっと優雅に寿命を吸うか)生きていける妖怪のこと、気が乗らない依頼は一切受けない。彼女が乗り出すのは、妖怪絡みの事件に限られる。
百目と相良が関わる五つの事件。
特に興味深く読んだのは第四話『炎風』。人が開発したヒューマノイド・ロボット<明日香>に恋をした妖怪かまいたち<風鎌>が、消えてしまった恋人の捜索を依頼してくる。
人ならざる者同士ながら、かたや古来の妖魔、かたや先端科学の申し子。人の心の奥底までも覗き込む百目が見出す、かれらの恋の行方とは。
相容れない存在同士が喰いつ喰われつしつつも、それぞれに滅びてしまわぬよう、ぎりぎりのラインで共存する<真朱の街>(それでも、人は呪力や科学力を駆使して妖怪を排除する道を諦めてはいないし、妖怪も隙あらば人を喰うけど)に生きながら、人であることをやめ妖怪側にたつのか、それとも人の世界へ立ち戻るのか、揺れ動く相良。
妖怪も妖怪で、人の科学技術を便利に使っていたり(百目なぞ、全身の目を隠すために人工皮膚を使っている)もするのが面白い。
余談だが、妖怪の跋扈するこの街で、相良が通う妖怪酒場のマスター・牛鬼が提供する"人間用おつまみ"は結構おいしそうである。
続刊が待ち遠しいシリーズとなった。
Posted by ブクログ
タイトルから想像されるようなオカルト・ミステリー要素だけの物語ではない。本書の著者はハードSFの名手である。SF要素がどうしても嫌いという場合には注意が必要だ。
本書の著者の短編集『魚舟・獣舟』に、第0話に当たる話(『真朱の街』)が掲載されている。内容としては相良が真朱の街に現れて百目と出会い、その助手となる経緯を描いた作品だが、未読でも本書を読むのに特に困ることはないように作られている。
プロローグとして読んでから本書に入っても良いし、本書を読んだ後に前日譚として読んでも良いと思う。
オーシャンクロニクルシリーズやデビュー作の『火星ダーク・バラード』、短編集に収録されている作品がどれも美しく、面白く、多彩だったので、本書の著者を良質なハードSF(+ 人間描写)作品を生み出す作家だと思っていたが、短編集の中にはSFテイストでありながらオカルト(ホラー?)じみた内容を含む作品も散見され「この路線も面白い!」と気になっていた。
そのうちの一つが独立して続き物となっていることを知り、読んでみたいと思っていた。
「(タイトルや帯にある文言のように)これは本当にファンタジーなのだろうか?」そう思いながら読み始めたが、1話の終盤で、『(妖怪が突如現れ、消えるような空間移動を実現するには)多次元と空間の謎を解明する必要がある』のような一節が前触れもなく挟まれたことで、「これはファンタジーとSFの境目を行ったり来たりする作品だ」と思いを改めた。
本書を読んでいるうちに、以前読んだ『イギリス怪談集』の編者あとがきの内容が思い出された。
そこには、『ミステリーは推理により合理化し、解決し、闇を白昼に戻す。幻想やオカルトはその反対で白昼を闇に置き戻し、超常のものの日常への関与・浸透を予感さす。前者は合理と日常の勝利であり、後者は堅固な合理と日常の崩壊であるが、その過程における不安と恐怖とを、ベクトルの方向は逆であっても、ともに共有することは注目されてよい』という、ミステリーとオカルトは根を同じくした背中合わせの存在である旨や、それらジャンル分けは『かつての優れた物語が含んでいた諸要素を純化して分業化したに過ぎない』というようなことが述べられていた。
この解説を「私がミステリーもオカルトも好きであることの理由が上手く分析・表現されているな」と感服しながら読んだ覚えがあるが、本書はこれと似た構造を感じられる作品であった。
ファンタジーとSF、オカルトとSFには明瞭な境界線が引かれているわけではなく、入れ子になっているのだと感じる。作風によって科学がファンタジーに食い込んで解明したり、オカルトが科学を侵食したりするので境界は流動的でもある。普通の作品はどちらかに主体を置いて物語が展開されるので、この境界の侵犯は起きたとしても自然に、さりげなく行われるのだが、本書は敢えて境界領域に陣取って物語を進めていくので、科学技術とオカルトが大きく振れたり混在一体となって現れたりする。
第3話のようにミステリー・ホラー寄りの内容があったと思えば、次の第4話はSFを前面に押し出した導入になっている、という具合に、世界観は一緒ながら各話で表に出ている特色が異なっていたりもする。
本書に登場する妖怪達がなじみ深いためか、違和感なく妖怪という存在をオカルトだと思ってしまうのだが、”妖怪”を、”異星人”や”地球外の知的生命”に置き換えてみると、急に印象が変わり、近年のSFのど真ん中のテーマのひとつである「コミュニケーションはとれるのに全く分かり合えない地球外生命とのコンタクト」のお話となる。その手の作品は、ファーストコンタクトものとしてはもっともらしいと思う反面、どうしてもとっつきにくく難解な作品になりがちである。しかし、本書では”妖怪”という皮を被せることで親しみやすく、拒絶反応が出ずに難しいテーマに馴染んでいくようになっている。これはスゴイと思った。
また、著者は現代科学の延長線上にあるようなリアリティのあるSF設定が素晴らしいのはもちろんなのだが、人間の内面描写も巧みだと思っている。本作では、意思疎通はできるが非人間的な思考の妖怪達と対比することで様々な人間性を描き出しているようにも見える。
物語の内容としては、
第1、2話は相良の身の回りで起きる出来事からこの物語の世界の様子や主要なキャラクターの紹介をするような内容となっている。派手なアクションや駆け引きは無く、特に緊張する場面もなく、(相良の性格もあって)比較的淡々と話が進む。
第3話からはミステリーっぽい内容になり、妖怪の探偵業(?〉がはじまる。これまでのなんとなく抜けたコミカルな様相からホラーテイストを含んだ気味の悪い雰囲気が漂うようになり、科学だけでなくオカルト的知識も現れてくる。
第4話では一転、ロボットが現れて「SF!?」となる。この4話はオカルトとSFのハイブリッドだ。呪による防御が出てくる一方で、妖怪の力と呪の干渉では重力レンズが生じる。空間を自在に移動し、何も無いところから物を取り出すこともでき、それに対するエネルギーの収支も合っていない、一見デタラメに見える妖怪の力だが、それでも物理に制約されうる存在だとわかるシーンだと思っている。
第4話自体のテーマ「高度に発達したプログラムは心を持っていると言えるのか」というのはSFのみならず、実在の科学の分野でも問題として取り扱われている事柄である。このロボットの問題を妖怪の意識から見るというのは面白い。他に類を見ない発想ではないか。
最後の第5話は百目も相良も登場しない、播磨遼太郎の物語。播磨を50代くらいの人物かと思っていたので意外に若くて驚く。この話はオカルト的なアクションが山盛りだが、その舞台は真朱の街のほか、人工浮島が浮かぶような近未来のSF世界。ロボットが存在し、無線通信も完備の未来世界で陰陽師が呪や式神を当たり前のように操って活躍する、ちょっと常識外れの組み合わせだ。ともすれば浮いてしまいそうなアンバランスな状況を著者の優れた筆致で違和感を生じさせていない。
本書では何も解決せず、謎と因縁を残して次巻へ続いていく。
Posted by ブクログ
とにかく読みやすい。文章がうまいので一気読みしてしまった。
登場人物(?登場妖怪か)もキャラがたっていて異形のものとしてとてもおもしろかった。
百目のヒューマンモードが「冷たい感じの美女」、これが百個の目が開くとき、背筋がザワッとするなんともいえない気持ち悪さがいいです。
個人的に「イズナ」ファミリーがお気に入り。
Posted by ブクログ
表紙に騙されてはいけない本。全身に百の目をもつ妖怪、百目が探偵事務所を開いているのは、妖怪と人間が共存する「真朱の街」。請け負う仕事はすべて妖怪がらみで、人間の助手を一人雇っている。この頼りない助手が狂言回しかと思ったらそうでもないようだ。なにせ探偵が妖怪、相手も妖怪だから事件も解決したようなしないような…と思ったらどうやら最後の一編が今後の展開における重要なプロローグのようだ。どう転がるのか誰が味方で敵なのか、そもそも敵味方があるのか続きが楽しみです。
Posted by ブクログ
〔Ⅰ〕妖怪という生命体が存在し、かつ妖怪じみた人間を作り出せるくらい科学技術が発展した世界、真朱の街という設定を構築していくSFでもある。ケレン味のない淡々とした記述もSFっぽい。そこらへんが奇妙でおもしろい。
〔Ⅱ〕理や思考形態が異なるので怖い存在ではあるが、シンプルで意外に気のいい妖怪たち。やっぱり本当に怖いのは人間?
〔Ⅲ〕近い将来、なにやらとんでもないことが起こるらしい。その中心にいるのは播磨遼太郎? 紫桜と忌島? 案外邦雄やったりして?
■百目についての簡単な単語集
【暁日技研/あかつきぎけん】明日香を作ったメーカー。
【阿伽鴇島】播磨遼太郎が子供の頃滞在していた、荒々しい自然の残る島。
【明日香】ヒューマノイドの試作品。風鎌は彼女によって満たされ執着した。
【小豆洗い】有名妖怪。わりと気がいい。
【イイズナ】小妖怪。使い魔などにされることが多い。
【一ツ輪の姐さん】子供に執着する妖怪。邦雄が保護していた少女とともに消失し、この事件で邦雄は百目と出会った。《そう遠くない将来、とんでもない未来がやってくる。》と言った。(p.54)
【牛鬼】妖怪酒場のマスター。正体は牛鬼。かなり強い。妖怪の行き場を提供している。酒場にいる間は邦雄を守ってくれている。播磨遼太郎に負けたことがあるようだ。
【海老谷一蔵/えびや・いちぞう】対妖怪用の武具を作る。吉野の山奥の刀鍛冶の里みたいなところにいる。播磨遼太郎の武具はこの人の作。
【円環区】真朱の街の外部五キロくらいは妖怪が出てくる遊び場になっているので住宅は全戸事故物件扱いで家賃が安い。
【大いなるもの】妖怪たちと繋がっている存在のようだ。
【大鋸/おおが】刑事部捜査第一課課長。洒脱だが腹に一物ありそうなタイプ。
【大嶋和麿/おおしま・かずま】邦雄の友人。人間。見える人で、拝み屋になった。
【太田祐子】円環区の住人。行方不明の息子を探している。
【風鎌/かぜかま】カマイタチ。最も大きな刃を持つ。人間の女にモテる。
【カマイタチ三兄弟】長兄は辻風、次兄は風鎌、末弟は薬壺(くすつぼ)。
【神】《神様が祟ると妖怪よりも怖いわ。起こせる災害の規模が違うもの》p.68
【カミナシ神社】街にひとつだけある神社。妖怪が出現するようになって神主が逃げ出した。そのとき神様もいなくなったという噂だが正月三が日は縁日が出てたこ焼きも食べられる。ついでに寺も一軒残っており鐘の音が妖怪を追い払えると信じている住職が鐘楼に高出力スピーカーを据え付けていて街中に鐘の音が響く。
【鴉ノ御子/からすのみこ】播磨遼太郎の式神。財布も握っている。
【忌島抗一/きじま・こういち】生活環境課第五係刑事。魔除けのため本名の文字を変えている。言葉によって妖怪の能力を一部制限できることを教えてくれた。牛鬼とタメを張れそうないかつい外見とは異なり血を見るのが嫌いで事務仕事など頭脳労働をしていたいタイプ。しかし妖怪がチカラをふるった痕跡を察知できる特殊能力を持っている(妖怪対策課から逃げ出したい忌島は警察内でも内緒にしているが)。《昼行灯でありたいというのが忌島の願いだった。》(p.168)
【勤労】妖怪には勤労という概念がない。金銭が必要ないし物々交換で成り立っているようだ。牛鬼などはそれで回らない人間社会は劣っていると感じているようだ。百目のようにいちおう事務所を営んでいるような場合でも特に働きたいと思っているわけではない。基本的にはおもしろそうだからやってるだけ。
【薬壺/くすつぼ】カマイタチ三兄弟の末弟。薬師。
【邦雄/くにお】相良邦雄。人間。視点役。とあるできごとの後百目の助手として働くことになった。どうやら彼の寿命は美味らしい。脳科学者だったが能力的にはたいしたことはなかった。とはいうものの科学技術には詳しいので百目には有用。
【相良邦雄/さがら・くにお】→邦雄
【紫桜/しおう】警察が開発した銃。播磨遼太郎の呪がかかっている。最初に忌島が持つことになった。これが使われたときが、曲がりなりにも成立している妖怪と人間の共存が壊れるときかもしれない?
【真朱の街/しんしゅのまち】元は医療特区で他所では使えない医療技術を駆使することができた。妖怪が出現したとき朱色のビルで囲み封印しようとしたが不可能だった。しかし妖怪たちは好んでこのエリアで暮らしている。そうして人間と妖怪が駆け引きをしながら共存する街となった。
【吸取虫/すふ】かって人間たちが研究していた機器。それが付喪神化して百目が人間から情報を聞き出す使い魔として使役している。
【生活環境課第五係】真朱の街は県警の管轄だが、この第五係だけは警視庁の直轄。通称「妖怪対策課」。
【濁/だく】播磨遼太郎のライバル?
【辻風/つじかぜ】カマイタチ三兄弟の長兄。伝承では人間を転ばせる役らしいが。
【人間】テクノロジーを自由に操れる。良くも悪しくも節操がない。脳と電脳を直接つなぎ、肉体も変わりつつあり妖怪とあまり差がなくなってきている。
【鵺】妖怪酒場の常連。
【ぬらりひょん】有名妖怪。ある場所に期間限定でやってくる。欲望を持つことこそが人間だと邦雄に言った。それは邦雄の心に届いた。
【播磨遼太郎】マスター(牛鬼)が探している人間。蘆屋道満の一派である民間の拝み屋。妖怪を殲滅しようとしているようだ。《妖怪を滅するのは筋違いだぞ、播磨。人間こそ、お前の真の敵であるはずだ……》p.295
【百目】妖怪探偵。探し屋。絶世の美女。正体は百目鬼。妖怪に金銭は縁がないが、邦雄の寿命の美味しさに執着し金銭で助手としての報酬を払うことにした。その代わり困りごとがあったときには少しばかりの寿命をもらう。全身に目を出現させ異空間を通して遠方まで見ることが可能。戦闘力はゼロ。牛鬼の探しびとを探す約束で荒事は任せている。基本的には妖怪絡みの出来事しか引き受けない。
【マスター】→牛鬼
【妖怪】人間の寿命を食うが、肉体も食う。
【妖怪酒場】マスターは牛鬼。
【鰐川/わにかわ】播磨遼太郎に仕事を依頼する仲介屋。
【輪入道】強力な妖怪。一ツ輪の姐さんとは旧知だった。自分もまたそろそろ消えてもいいかとも思っているようだ。
Posted by ブクログ
妖怪ミステリーなんでしょうか?さほどマニアックな妖怪は出てこないのでとっつきやすい。作者さんの華竜の宮が大好きでこちらも読んでみたけど、こちらは”ハヤカワSF”でなくて、”講談社ノベル”って感じ。
Posted by ブクログ
上田さんの作品は、「華竜の宮」を最初に手に取り、次にこの本を読みました
最初に読んだ作品からは、妖怪のイメージは難しいですね…嫌いではないですけど
第1巻のこの本は、あくまでも2巻目の布石的な位置づけ?
正直、主人公が誰なのか、私にはよく分かりません(苦笑)
多分、2巻目以降で色々と解き明かされていくのでしょう
楽しみです
Posted by ブクログ
探偵ものかと思ったら妖怪ものでした。ミステリというか伝奇もの。上遠野浩平のソウルドロップシリーズと似たようなテイストを感じました。あまり共通点はないと思いますが。3部完結のようなので一気に読んじゃおう。
Posted by ブクログ
うーん、微妙だなぁ。
連作短編集かと思ったら、続きモノで、話は次巻以降に続くらしい。
1巻だけ読むと、妖怪と人間の関係がイマイチ絡まなくて、物足りなさや裏切られ感が残るんだけど、2巻目以降はどうなるんだろうか。
どちらにしても、続編に手を出すのは、二の足を踏むな。
Posted by ブクログ
人間と妖怪が共存する街で起こる、不可思議な事件を、人生に絶望した普通の人間相楽くんをワトソン役に、絶世の美女の姿を持つ妖怪探偵百目が鮮やかに解決〜、ナンテコトデハなかった。
世界が大きく壊れていく?未来を示唆しながら、一編ずつ話が進むにつれて、妖怪の生き方がとても自然に見えてくるから不思議。
1巻だけでは、SFらしい面白さがまだまだ出てこないので、2巻まですぐ読もう!
Posted by ブクログ
妖怪がほとんどを占める街。
そこの一角で『探偵』をしている人の
助手を務めている主人公。
連続短編になっているので読みやすいですが
これの前身は別の本に入ってる模様。
読んでいなくても十分読めますが、所々にある説明が
その話が暗いような救いがないような…?
主人公は人間ですが、周囲は当然妖怪だらけ。
思考回路の切り替えが早すぎて見事ですが
妖怪だから、でこちらの切り替えも終了。
知っている習性を持っていることから、読んでいて
相手の素性はなんとなく把握できます。
有名どころが出ている、とか?w
しかし主人公は無気力です。
そして事件は妖怪にとっての無事解決であり
人間にとっては解決した? 程度。
温度差のギャップがすごいですが、読んでいると
こんなものか、という納得が。
なので、納得あるハッピーエンドが欲しいなら
止めておいた方がよろしいかと。
所で、拝み屋との関係は何なのでしょう?
街に住む妖怪達と、の関係は分かったのですが
その時、いなかったのですよね…。
別件?
Posted by ブクログ
SFチック。仲良しで和気あいあいな妖怪物語ではなく、ダークな雰囲気が漂っている。百目と相良二人の契約もシビア。
「魚舟・獣舟」を先に読めばもっと世界に入りやすかったかも。
まだ序章という感じ。今後の展開が楽しみ。
Posted by ブクログ
「真朱の街」その後の短編連作。
妖怪と人間が共存する未来の世界。
ありきたりな要素にもさすがの世界観。
彼らのストーリーよりもラストの播磨遼太郎に釘付け。
Posted by ブクログ
妖怪と人間が共存する“真朱の街”
妖怪と人間が共存する時代設定としては、江戸時代や平安時代がよく使われますが、この本の時代設定は近未来。しかも「見る」ことに長けた妖怪が人捜しをする探偵小説。
京極夏彦さんの人の記憶が見える探偵を妖怪にしてしまった感じ。他にない新しい設定の小説だ。
平安時代や江戸時代は社会が安定し、文化が発展した時代だが、さてこの本で設定された社会は、どうなのだろう。
まだまだ社会やこの社会で生きる人々のわずかな断片しか見えないので、この後、断片がどのように繋がって全体が見えてくるのか楽しみ。
Posted by ブクログ
妖怪が跳梁跋扈するようになった元医療特区の実験都市〈真朱の街〉、オカルトとサイエンステクノロジーが雑じり合う都市を舞台にした連作短編集。同著者の短編集「魚舟・獣舟」収録の「真朱の街」に連なる作品となっている。作中で言及はあるものの「真朱の街」が収録されていないのは残念。
相反する要素が混然となっている舞台設定が一番の特徴だと思うのだが全編にわたってそれを前面に押し出しているわけではないようだ。ハードボイルドと銘打っているようだがメインの探偵役たちには残念ながらその雰囲気は感じられなかった。拝み屋など気にいった登場人物もいるので、今後舞台設定をより活かした特異な話が紡がれていくことを期待したい。
Posted by ブクログ
『獣船・魚船』に収録された短編「真朱の街」のその後を描いた連作短編。
続編ものとなっていますが、邦夫がなぜこの街にやってきて百目の助手を務めるようになったかは、これだけ読んでも分かるように書かれています。
妖怪が多数登場する作品で、SF作品の多い上田さんの作品群の中ではちょっと異色な感じもありますが、作品から浮かんでくる問いかけ、というものは共通しているものも多いと思います。
序盤の短編は近未来の設定なのに、SF要素が少なくてちょっと寂しかったのですが、四話目の「炎風」は妖怪、人間、ヒューマノイドが登場しこの世界観でしか描けないような物語になっていて面白かったです。
そして本のタイトルにも〈1〉とあるように、今後この妖怪と人間が共存する未来世界に大きなことが起こることを示唆され物語は閉じました。こういう世界観の作品は唯一無二だと思うので次巻が楽しみです。