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Posted by ブクログ
オーシャン・クロニクルシリーズの「リリエンタールの末裔」を読みたかったのがきっかけ。嬉しい誤算だったのは、どの短編作品も掛け値なしに面白かったこと。個人的にはオールタイムベスト級である。また、「リリエンタールの末裔」や「幻のクロノメーター」は男が一生をかける夢や仕事についての物語であり、単純な行動ではあるが男としてこのような生き方に共感を覚える。特に「幻のクロノメーター」については、途中から登場する一つの石が人類の文明を変えてしまうようなものになり、自分の想像をはるかに越える展開にセンス・オヴ・ワンダーを感じた。ずるいくらい楽しませる作品である。
Posted by ブクログ
テーマは可視化、ないしは具現化かな、と、読みしなにはおもっていた。
民族の誇りを内包した背中の鉤腕をフルに利用した飛翔。脳の機能障害を補完するためにうみだされた、水盤上に脳波で描かれる磁石の花を見せる装置。無人探査機の触覚と感覚を超えて身体的にシンクロした科学者。天体と同レベルの精度でときを刻む時計を世に送り出す職人の生涯。
繊細で美しい機械を媒介に、感情や思い、願いを増幅させる人間たち。その具現化がここで追い求められたテーマであり、その中心を担うのが人間の叡智たる科学でありマシンであろう、そんなふうに読み進めていた。
すべてを読み終えて振り返ると、それら、物語のど真ん中に据えられたはずのマシンたちは実は一様に脇役であることに気づく。実際にマシンで実現したいものは、対人間であればいともたやすく日々のなかに埋没される感覚だったり、人間が創り出した虚栄心や競争だったり。マシンで補強してまで希求する人間の欠乏感が、すべての根っこなのかもしれないと。
喪うから、求める。
喪うことができるのはそもそも存在していたからであるが、関係や感情、思いを元に戻し得るかの問いは物理と違って常に質量保存の法則が及ぶべくもない。しいていえば可塑性・可逆性の問題であるはずなのだ。だがここにでてくる登場人物たちはみな一様に、とにかく足りないパーツを埋めればなんとかなる、と、単純な足し算を律儀に繰り返す。あるものはひたすらに時計を作り、あるものは死にゆくものを触り、という具合に。
科学をベースにしながらも上田作品が繊細でしなやかなのはおそらくは、そのせいであろう。優美に詳細に生み出された科学の粋を尽くしたマシンたちは、あえて人への随意性を要件とされずに、人に柔らかにおもねる。
さいごの短編は、ことさらに丁寧に読んでいただきたい。実際の人知と科学に、人とのつながりとファンタジーを詰め込んだ、まさに白眉。
硬質な骨組みにしなやかな肉をまとった、優しいマシンたち。
そうか科学はこんなにも、甘やかでいとおしい、あたしたちの隣人、だったんだ。
Posted by ブクログ
―――彼は空への憧れを決して忘れなかった。
長篇『華竜の宮』の世界の片隅で夢を叶えようとした少年の信念と勇気を描く表題作ほか
18世紀ロンドンにて航海用時計の開発に挑むジョン・ハリソンの周囲に起きた不思議を描く書き下ろし中篇「幻のクロノメーター」など
人間と技術の関係を問い直す傑作SF4篇。
長編SF「華龍の宮」を書いた上田 早夕里の短編集
表題作の爽やかな雰囲気好きやなー読んでて澄みきった空気吸ってるような感じやった。
人の心を「見る」装置にまつわる「マグネフィオ」は一転切ない雰囲気やったな。
白乙一が好きな人にはいい感じやと思う。話の構成とかアイデアが似てる。
人と機械が深くつながる未来を描いた「ナイト・ブルーの記録」は描写が詩的で非常に鮮やかやった。
伝記のようなSFのような「幻のクロノメーター」もなかなか素敵。
実在の人物を取り入れつつ、仕掛けもうまく機能してる
世界全体が降ってくるんです。私の上に。
Posted by ブクログ
今まで、読む機会を逸していた作者の作品で、華竜の宮の評判が良いのは分かっていたが、読めていなかったので、こちらが初読になった。同じ世界観で描かれた表題作は、長編を読んでいなくても素直に読むことができ、良くある、分かっている人にしか分からないという狭隘な世界でなく、単独作品として十分に楽しめる。その他の作品もSFの体裁を取りながら、人間が主役で、そのために世界観を構築しているので、実に読みやすい。テーマは技術と人間との関係で、近い将来、人と機械の在り方が融合に近づいていくであろう世界で、それでも人間は人間なのだという話が良い。他の作品も読みたくなったのは久しぶりである。
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