【感想・ネタバレ】リリエンタールの末裔のレビュー

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ネタバレ

オーシャンクロニクルシリーズの3冊目(?)。
シリーズについての下調べをしていなかったので、購入時はこれがシリーズ最初の長編だと思っていたが、読んでみると短編集で、『華竜の宮』よりも後の発表だったようだ。
ということでシリーズとしては華竜の宮が最初の長編だった。

公式にはつながりが明言されていない短編の作品群だが、どれも海・近来の(有機的な)テクノロジーが印象的な作品で、それぞれがオーシャンクロニクルシリーズの「同じ時間軸の別の時期の前日譚なのでは?」と思わせるものが多かった。
感想を書くのが半年以上後になったので、詳細は忘れてしまっているが「作者の感性が優れている」、「この感性が好きだなぁ」と何度も思ったのは強く印象に残っている。
作中の人物の心の機微がすばらしく描写されており、リアリティを持たせることが難しい近未来のSFも上手く描き出されている。

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2024年04月18日

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オーシャン・クロニクルシリーズの「リリエンタールの末裔」を読みたかったのがきっかけ。嬉しい誤算だったのは、どの短編作品も掛け値なしに面白かったこと。個人的にはオールタイムベスト級である。また、「リリエンタールの末裔」や「幻のクロノメーター」は男が一生をかける夢や仕事についての物語であり、単純な行動ではあるが男としてこのような生き方に共感を覚える。特に「幻のクロノメーター」については、途中から登場する一つの石が人類の文明を変えてしまうようなものになり、自分の想像をはるかに越える展開にセンス・オヴ・ワンダーを感じた。ずるいくらい楽しませる作品である。

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2017年11月20日

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異形物と独特の世界観が融合してる、作者の持っている一つの世界がここにある感じ。真似のできない独創性という言葉がとても似合う

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2014年02月22日

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文句なしに、読書の快楽を味わわせてくれた中編集でした!感想長いぞ!

表題作「リリエンタールの末裔」は、至福の長編「華竜の宮」の前日譚。半生をかけて、翼を手に入れることを望んだ青年は、いつか宇宙へゆく技術の一端を担うことになるのか。彼の人生の先には大きな災厄が待っているのだけれど、まだその予兆は遠く、希望の予感を残す好編。

「マグネフィオ」。なんだか梶尾真治のクロノスを思い出した。SFと恋愛って、なかなか相性が難しいと思うんだけど、クロノスも本作も成功例のひとつだと思う(最高傑作は当然「夏への扉」) 。
恋した女性は自分の親友を選び、決して自分を選びなおすことはなかった…。まあそれだけの話なんだけど、ここに副脳と感覚データのデバイス化を突っ込んでくるのが、上田早夕里の凄いところ。で、この世界の延長には「華竜の宮」が…?

「ナイト•ブルーの記憶」。ダイバーの自分には、うらやましい限りの共感覚現象。ギンガメアジとバラクーダのトルネードが、その無数の鰭が水を掻く音を、肌で聴く快感…うおー、味わってみたい‼︎ …で、海の粘着物被害が広がりつつあるこの世界も、やがては「華竜の宮」へと…?

「幻のクロノメーター」。ひとりの英国人女性が、自分の半生を航海用時計の開発秘話にからめて語る、魅力的な中編。ところどころに挟みこまれる未来的な描写が、私たちの生きる時代より先の物語だと思わせるのに、読み終えてみればなんと19世紀!というパラレルワールドストーリー。

「自分たちが作りあげたものが、まるで命を持った生き物のように動き出すーあの瞬間の感動を知る生物である限り、私たちはいろんなものを作り続けることをやめないでしょう。安全なものも危険なものも、見境なしに作り続ける。それは人間の罪であり、同時に素晴らしさでもあると思うわ」
「いつの時代だって技術自体に罪はない。悪い使い方しかできないのだとすれば、それは人間が愚かだというだけのことよ。圧倒的な技術力を誇りながら、それを社会の幸せのために使えず、自分たちが滅びる方向にしか使えないのならー大勢の人間を苦しめ、不幸にし、ただのひとつも解決法を見出せないならばーそれは、ただただ、人間がそれまでの存在だというだけのことでしょう」

いちエンジニアとして、エリーの述懐も、理学と工学の相入れなさもよくわかるわー。ものを作り出すことって、ヒトにとって快楽なんだよね。知識欲って底なしで、個人としても種としても、求めずにはいられない。いつかそれが人類を滅ぼしちゃう日が来るんだろうか…もう来てたりして。

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2014年02月10日

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短篇集。

* リリエンタールの末裔
空を飛ぶことを夢見て、たくさん働いてお金を貯めてグライダーを買うお話。裏のテーマは差別とかそういう感じのもの。リリエンタールとはハンググライダーの考案者。

* マグネフィオ
事故でなくなった人の心の動きを可視化したいという話。恋愛もの。ちょっと純粋すぎるかも。別に磁性化流体を使わなくてもディスプレイでも良いじゃんと思わないこともない。

* ナイト・ブルーの記録
海洋無人探査機を脳インタフェースで操縦しますよ。探査機を使っていたら、自分の手足のように感じてきましたよ。という話。

* 幻のクロノメーター
天文学と時計職人の話。途中から宇宙生物?らしきものが現れる。

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2014年01月07日

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頭の中にサッと青いイメージが広がるSF短編集。

1本目は、差別が黙認される窮屈な社会の中まっすぐに空を目指し、力強く未来の希望を見つめる表題作。最初はファンタジー色が強いのかな?と思い、取っつきづらく感じたけれど、世界観に明確なビジョンがあってすんなりと話に入り込めた。

2本目は、人工感覚データの取引も目前となった時代、主観的感覚の価値が揺らぎ始めることが予感されるからこそ、苦しみも悲しみも全て手放すまいとする話。登場人物はみんな、自分の思うとおりに生きて、十分に欲張って…それなのに全然満たされていないように見えるのが、辛かった。
そんな感覚でさえも、かけがえのない大切なものとして抱きしめる姿は切ない。

3本目は、拡張した感覚で受け取る「海の手触り」の美しさと、感覚に付随する意識の変容、そして“人間性に縛られる人間”の姿がもどかしくも愛おしく描かれる話。これがすごく好き。
感覚の増幅って、こわいけど、すごく魅力的だ。人間はどこまで行けるんだろうと、ワクワクする。

4本目は、航海用の精密な時計づくりに人生をかけた男…を、見守り続けてきた観測者のお話。
実際の話に、ちょっと突飛にさえ感じるファンタジー要素を組み入れた不思議な話だった。
技術を磨き続ける人間の格好良さが、じわじわと胸に迫ってくる。

全編通して、「技術と共に生きる人間」が、確かなディテールで感じられて、読み応えがあった。こういうSF読みたいなあ、と思っていたんだ。

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2013年11月28日

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テーマは可視化、ないしは具現化かな、と、読みしなにはおもっていた。

民族の誇りを内包した背中の鉤腕をフルに利用した飛翔。脳の機能障害を補完するためにうみだされた、水盤上に脳波で描かれる磁石の花を見せる装置。無人探査機の触覚と感覚を超えて身体的にシンクロした科学者。天体と同レベルの精度でときを刻む時計を世に送り出す職人の生涯。

繊細で美しい機械を媒介に、感情や思い、願いを増幅させる人間たち。その具現化がここで追い求められたテーマであり、その中心を担うのが人間の叡智たる科学でありマシンであろう、そんなふうに読み進めていた。

すべてを読み終えて振り返ると、それら、物語のど真ん中に据えられたはずのマシンたちは実は一様に脇役であることに気づく。実際にマシンで実現したいものは、対人間であればいともたやすく日々のなかに埋没される感覚だったり、人間が創り出した虚栄心や競争だったり。マシンで補強してまで希求する人間の欠乏感が、すべての根っこなのかもしれないと。

喪うから、求める。

喪うことができるのはそもそも存在していたからであるが、関係や感情、思いを元に戻し得るかの問いは物理と違って常に質量保存の法則が及ぶべくもない。しいていえば可塑性・可逆性の問題であるはずなのだ。だがここにでてくる登場人物たちはみな一様に、とにかく足りないパーツを埋めればなんとかなる、と、単純な足し算を律儀に繰り返す。あるものはひたすらに時計を作り、あるものは死にゆくものを触り、という具合に。

科学をベースにしながらも上田作品が繊細でしなやかなのはおそらくは、そのせいであろう。優美に詳細に生み出された科学の粋を尽くしたマシンたちは、あえて人への随意性を要件とされずに、人に柔らかにおもねる。

さいごの短編は、ことさらに丁寧に読んでいただきたい。実際の人知と科学に、人とのつながりとファンタジーを詰め込んだ、まさに白眉。


硬質な骨組みにしなやかな肉をまとった、優しいマシンたち。

そうか科学はこんなにも、甘やかでいとおしい、あたしたちの隣人、だったんだ。

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2013年07月14日

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久しぶりにSFを読みました。かつ、上田さんの作品は初めてです。

裏表紙の解説に載っているように、人間と科学技術の関係性、在り方について書かれた短編集で、考えさせられました。どの作品も論理的に組み立てられていて読みやすかったです。登場人物も、技術やモノづくりに熱心に関わっており、興味深く面白い作品集でした。

次は表題作「リリエンタールの末裔」の舞台となった長編『華竜の宮』を読んでみたいと思います。

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2013年06月30日

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―――彼は空への憧れを決して忘れなかった。
長篇『華竜の宮』の世界の片隅で夢を叶えようとした少年の信念と勇気を描く表題作ほか
18世紀ロンドンにて航海用時計の開発に挑むジョン・ハリソンの周囲に起きた不思議を描く書き下ろし中篇「幻のクロノメーター」など
人間と技術の関係を問い直す傑作SF4篇。


長編SF「華龍の宮」を書いた上田 早夕里の短編集

表題作の爽やかな雰囲気好きやなー読んでて澄みきった空気吸ってるような感じやった。

人の心を「見る」装置にまつわる「マグネフィオ」は一転切ない雰囲気やったな。
白乙一が好きな人にはいい感じやと思う。話の構成とかアイデアが似てる。

人と機械が深くつながる未来を描いた「ナイト・ブルーの記録」は描写が詩的で非常に鮮やかやった。

伝記のようなSFのような「幻のクロノメーター」もなかなか素敵。
実在の人物を取り入れつつ、仕掛けもうまく機能してる




世界全体が降ってくるんです。私の上に。

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2012年12月30日

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大規模海面上昇以後、リ・クリティシャス。睡蓮の花が水面の上でまるで咲いているように構築された海上都市、ノトゥン・フル。その上空を風を探し、上空気流に乗り、グライダーで自由を摑んだ鳥のように大空に向かい両翼を広げ滑空する様は、青年チャムの信念と勇気がどこまでもどこまでも続いている青という青の中で尊厳であり美麗である。
大空に憧れを抱く者、大空に思いを馳せる者、全てリリエンタールの末裔である

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2012年10月05日

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全編が技術をテーマにしている作品です。
表題の「リリエンタールの末裔」では、主人公は多くの理不尽な困難にあう立場にあるものの、それでも悩みながら苦しみながら、でも最後には笑って進むだろうと感じた作品でした。
爽やかな読後感のもののほか、テーマである技術に対して考えさせられるものもあるのでぜひ読んでみてください。

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2012年08月02日

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今まで、読む機会を逸していた作者の作品で、華竜の宮の評判が良いのは分かっていたが、読めていなかったので、こちらが初読になった。同じ世界観で描かれた表題作は、長編を読んでいなくても素直に読むことができ、良くある、分かっている人にしか分からないという狭隘な世界でなく、単独作品として十分に楽しめる。その他の作品もSFの体裁を取りながら、人間が主役で、そのために世界観を構築しているので、実に読みやすい。テーマは技術と人間との関係で、近い将来、人と機械の在り方が融合に近づいていくであろう世界で、それでも人間は人間なのだという話が良い。他の作品も読みたくなったのは久しぶりである。

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2012年07月27日

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上田早夕里さん、初読みです。
しっかりしたSFが読みたいと思って手に取りました。

短編集ですが、どれもいい。外れなしでした。
全編に女性らしさが感じられるとっても優しく、心が温かくなる物語。でもちゃんとサイエンスしていて、現実?とも思えるような書き込み(「幻のクロノメーター」は実在した人が出てくるから余計に思う)これはものすごく面白い小説だ。

次は「リリエンタールの末裔」の舞台となった『華竜の宮』を絶対に読むぞ!

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2023年05月12日

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「オーシャンクロニクル」シリーズの短編、
「リリエンタールの末裔」を含むSF短編集です。

目的はもちろん、「リリエンタールの末裔」
海上都市で働く山の民の話です。これも良かった。それぞれに生活があるよね~。

リリエンタールの末裔★×4
マグネフィオ★×2
ナイトブルーの記憶★×4
幻のクロノメーター★×4

な感じ。
「ナイトブルーの記憶」に関しては、「オーシャンクロニクル」に関係あると言ってももイイ内容だと思いました。

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2023年03月25日

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SF。短編集。
とても面白いだけに、もう終わるの…と、物足りなく感じてしまう。
一番ページ数の多い「幻のクロノメーター」が一番好き。泣いた。
表題作も爽やかな青春SFという感じで読後感が良い。
他「マグネフィオ」「ナイト・ブルーの記録」

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2021年01月26日

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the novel linking another his. his fantasy word stay difficult a little bit. he has a gloomy personality? i have been deep reading, cos' feel fun?

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2014年12月25日

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 記憶と感覚を強く印象着けるSF短編。
 最後の「幻のクロノメータ」のイメージの豊かなことはすばらしい。この長さであるからこそ輝く設定なんだろうけれども、読み終えるのがもったいないと思ってしまった。

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2014年11月29日

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SF短篇集。一人称の問わず語りも三人称の記述もあり。独自の世界観の中でのストーリーを読者に押し付けることなく説明する文章力が秀逸。脳内ビジュアルを生成してくれる。

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2013年11月27日

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テクノロジーへの強い憧れと悲哀が詰まった短編集です。
孤独とひきかえに手に入れた、機械によって拡張された感覚がもたらす美しくて驚きに満ちた世界。
『ナイト・ブルーの記憶』が一番好きです。
感じたことのない感覚や見たことのない世界を自分の想像の中で経験することができる・・・SFの楽しさを再確認しました

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2013年10月04日

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上田早夕里さんのSF作品はこれが始めて。

全てがものづくりに通じている。
夢がありそれでいてどこか切ない、そんな話たち。異世界のようで私たちの世界にも通じている。逆に現世のようでどこかちがう。不思議な感覚になる。

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2013年06月12日

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収録の短編4本、どれも面白かった。
冒頭から3篇はキーワード、とは違うけれど、花のモチーフが印象的なところで出てきたように思った。睡蓮の形の水上都市、心の動きを視覚化させる磁力の花、脳の中に開く記憶という名の一輪の花。どれも儚く、それ故に美しい。
最後の「幻のクロノメーター」だけ少し毛色が違うように感じたのは、これだけが書き下ろしの新作だったからなのか。
前に『華竜の宮』を読んだ時にも思ったけれど、作者の“人という生き物”に対する視線が愛情があるところがとても好きだと思う。

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2013年04月22日

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ネタバレ

この著者の本を読むのは、このリリエンタールの末裔が初でしたが、読み終わってみるとかなり良作だったと感じます。本の中は、短編で別々のストーリーで構成されていますが、その一つ一つがストーリーの中に吸い込まれていくような魅力があったので、一読で最後まで読んでしまいました。
いくつかの話で構成されている本書の中でも、タイトルにあるリリエンタールのように空を飛びたいと夢を持ち実現させようとする少年の話に、なつかしさと元気をもらえたと感じます。
また、元気がもらいたい時に読んでみようと思います。

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2013年01月20日

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短編集。何より美しい表紙に釣られた。
表題作の前向きさが眩しく、再度表紙を見返すことに。
短編集として作品ごとに星をつけたいくらいですが、表紙と表題作だけなら確実に五つ星です。

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2012年05月01日

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ネタバレ

「リリエンタールの末裔」★★★
「マグネフィオ」★★★
「ナイト・ブルーの記録」★★★
「幻のクロノメーター」★★★

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2023年08月31日

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300ページで四篇の短編集
表題作は、『華竜の宮』から続く上田早夕里さん独自の未来世界を描いたもの。
海上都市民と山岳民族の軋轢のなかで、「空を飛ぶ」という憧れに向けて進む主人公の強さが印象的。この世界は次に第4作『深紅の碑文』へつながる。

その他の短編で、お気に入りは
「ナイト・ブルーの記憶」
人と機械(AI)の結びつきを、SF風ではなく心理的アプローチから神秘的な世界へとつなげている。

表題作以外の3作品にはハッピーエンドもバッドエンドもない、淡々としたエンディングではあるが、不思議な余韻を味わうことができた。

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2023年03月06日

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続けて上田作品を読みすぎたか、刺激が本来感じるよりも低かったかも。
共感するには時間がほしいか。

いよいよ深紅の碑文へ。

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2018年12月15日

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リリエンタールの末裔ってタイトルがかっこいい。夢を叶えるために、理不尽な差別を受けながらも、自分の生活を強い意志でやり通して行く姿は勇気をくれる。けど、この差別や暴力のシーンこそが本を飛び出て最もリアリティがあって苦しい。考えさせられる。短編で終わってしまうのがもったいないな。この先チャムはどうなるの?知りたい。他の短編も突飛な設定ながら、人間の心の深いところをくすぐる内容。華竜の宮のハラハラドキドキ感に比べると、ちょっと物足りなかった。

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2013年09月03日

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4作収録の短編+中編集。

「リリエンタールの末裔」
爽快な飛行SF。「華竜の宮」というより「魚舟・獣舟」と同世界の物語。背中に生えた第二の腕だとか、出稼ぎの民族だとかのガジェットもあるが、何はなくとも空を飛ぶこと、飛行の爽快さが身をもって伝わってくる。何もかもはなまる満点とはいかないけれども、若さゆえの未来への展望を感じる物語だった。

「マグネフィオ」
これもよかった。三角関係と事故による脳の損傷がテーマ。美しいだとか一途だとか、そういう清廉潔白さはないけれど、ないからこそ心に訴えるものがある。

「ナイト・ブルーの記録」
これもいい。「音を肌で聴き、肌で海の味を知るような感覚」こそセンス・オブ・ワンダーだ。

「幻のクロノメーター」
これ一つだけちょっと方向性が違かった。航海用時計の開発に全てを賭けた時計職人の話。少しSFっぽいところもあるが、基本は伝記みたいな感じ。

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2012年12月15日

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短編が4作のオムニバスで、どの作品も技術と人との関わりを中心に描かれていますが、中でも経度測定のための高性能な時計であるクロノメーターの開発者ジョン・ハリソンを題材とした『幻のクロノメーター』を(地図好きとしては)特にお勧めしたいところ。
ハリソン家に仕えた家政婦視点で物語が展開していき、途中からSF的要素も混じってくるのですが、なにせ史実のハリソン氏自体が幾分神がかった才能を持っているが故に、フィクションがうまく絡み合ってこないのが惜しいところでしょうか。どことなく伝記物を読んでいるような、そんな気分にもさせられました。

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2012年09月11日

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人の技術に関する短・中篇集。
ただ技術的なギミックというよりは人と技術のかかわりや価値観についての話が中心です。

話的に面白かったのは「幻のクロノメーター」。話としてのカタルシスには欠けますが、安定して読んでいけます。

印象に残ったのは「マグネフィオ」。オプティミズムな作品の中で、唯一これだけが異端的に見えました。
この短編に出てくる登場人物は誰一人として、客観的に見れば幸せではありません。けれど、そんな中で技術に縋り、幸せを見出そうとしているところがとても印象的でした。

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2015年04月10日

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