上田早夕里のレビュー一覧
-
購入済み
独特の雰囲気がいい
魚舟獣舟から続く世界観に基づく独特の雰囲気がある作家。
この作品もその雰囲気を濃厚に持つ作品であるんが、終盤意外な展開もあって面白かった。
この作者の作品の中では最も面白い。
我々が「何物にも侵されない自分の心」「自由意志」と思い込んでいるものが、実はより上位の存在の道具に過ぎないのでは、
と考えさせらる作品であった。
-
Posted by ブクログ
SFならではの話の壮大さに、肚の座った登場人物の仕事への意気込みを感じる掛け合い、多くのプレイヤーを動かしながら全体の調和を取る構成力、全てのレベルが高いと感じた1冊です。
ただでさえヤバくなってる地球が更にヤバくなる!(語彙力ゼロ)という状況となった下巻における序盤のハイライトは、理不尽だったり絶体絶命だったり、とにかく酷い状況に立ち向かおうとする人の気高さだったと思います。
登場する3者がそれぞれ3様の行動を取るものの、その行動はどこまでも自分のためではなく、所属するグループであったり、それ以上に人類全体であったりを想うがための行動。
限界の状況における職業倫理、あくまで誇り高くあろうとする意思。相手を思いやろうとする心。熱くて泣ける良い展開でした。
(ただ、「厳しめ」のストーリー展開は、あぁラノベじゃなくてSFだったなぁと痛感しました。どこまでもロマンチックではあるのですが)
SFであるからこそできる思考実験だなぁと感じたのは、「人間に似た何か(遺伝子操作の果て)」と「異形の人間(知性ある生命体)」、どう区別をつけてどう順位をつける?ということ。
AIがより洗練を極めつつある社会において、実際の課題になることもあるんじゃないか。個人的にはSFは尖った未来予測だと思っているので、良い課題提起を貰ったなぁという印象です。
しかし、自分が海上民をデザインするんだったら、ネットワーク通信機能は絶対につけるなぁ。 -
Posted by ブクログ
ホントに面白いSF小説だった。これほど重厚で考えさせられるSFエンターテイメント大作を読ませてもらったのは久しぶり。
人類があと数十年で滅亡するかもしれないという状況で人々はどうやって生きるのか?
そんな究極の状態でも各国陣営は自分たちの利益をいかに守るか、そして自分たちがいかに生き延びるかということに汲々とする。
このお互いの腹の探り合いや政治的駆け引きの描写は行き詰まるものがある。
本書では日本はアメリカを中心とした国家連合ネジェスの中に含まれているが、いざという時にネジェスが本当に日本を救ってくれるかは分からないという状況。これは現在の日本の状況を皮肉的に描いているのだろう。
主人公である日本の青澄外交官のひたすら普通に人々を救うのだという生き方は共感できるし、他の官僚の「もう自分は十分に生きたから何もしないで死を迎える。その方が楽だ」という考え方もやむを得ないだろう。
ただ、青澄外交官に家族がいた場合はどうだろうか、ここまで自分を捨てて人に尽くすことができるだろうか。子供や孫に普通の生活をさせたい・・・普通の生活がダメなら、せめて生きながらえさせてやりたいと思うのが人間だろう。
ただ、それが人間の外観を失ってまでそうしたいかって考えると、う~ん、難しい。
地球環境が激変し、全人類が滅びた場合に備え、人間の元となる生物的な種を深海に仕込んでおいて、将来、地球環境が好転し、何百年後、何千年後、何万年後かに、その生物が進化していき、もう一度人間になるのを期待するとか・・・もう、壮大過ぎて・・・うっとりとしてしまう(笑)。
本書では地球環境激変開始までの40年くらいが端折ってあるが、そこは続編『深紅の碑文』『リリエンタールの末裔』で楽しもう。
それにしても「L計画」って凄まじい。人間をそんな風にしてしまうなんてね。
続編では青澄外交官やツキソメは出てくるのかな。人工知性体のマキのその後も気になる。オーシャンクロニクル・シリーズ、さらに楽しませてもらおう。 -
Posted by ブクログ
人類に壊滅的被害を与えたリ・クリティシャス後、海面が約250メートルも上がってしまった25世紀の地球が舞台。地球の地表の多くが海底に沈み、生き残った人間は、わずかに残った地表に暮らす陸上民と広大な海に暮らす海上民に分かれて暮らしていた。
海上に住む海上民は海上での生活に身体を適応させており、彼らは人間の遺伝子操作により生み出された「魚舟」と呼ばれる生物を海の上で人間が生活する空間として利用していた。
陸上民と海上民との対立やごく普通にAIを身体に埋め込んだ人間の生活、そして身体を遺伝子的に改造された海上民の魚舟での生活などが詳細に描かれており非常に面白い。将来あり得べき未来を今見てきたかのように描写されている。
主要な登場人物は、海面上昇のため日本列島ではなく日本群島になってしまった日本政府の外交官の青澄誠司、海上民であり海上船団の女性オサで高齢であるも年を取らない謎の女性ツキソメ、そして海上民出身で異形の姿をした海上警備隊の隊長ツェン・タイフォンの三人を中心に話が進んでいく。
本書は、海面上昇後の過酷な地球環境や病潮(やみしお)と呼ばれる謎の疫病との戦い、人間を補佐する知的生命体(AI)の利用状況など、科学的にもリアルに描写しながら、過酷な運命を生き抜く人間の生き様を描いた一級のエンターテイメント作品として楽しめる。
ストーリーテリングも非常に巧妙で興味深い。物語の内容が非常に重厚でページ1枚1枚に込められた情報量が多いのでサクサク読めるという物語ではないが、ページを繰る満足感が非常に高い。
このような過酷な状況の中、地球にさらなる危機が訪れ、全人類が絶滅する可能性が極めて高いとの研究結果が出される。
人類に止める手立ては無く、宇宙へ人間を脱出させるような技術はすでに過去のものなり、今は無い。人類は座して死を待つだけなのか・・・。
以下、下巻、期待度MAX。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ30歳を過ぎてからSFを読み始めた。
コアなSFファンの方は10代にドハマりする方が多いので、かなり遅咲きなほうではある。
さらには読み進めていくうちに気付いたことがある。
基本、女流作家しか受け付けない。
なぜかはよくわからないのだが、女流SF作家の本がいちばん読みやすい。男性作家でも好きな作家さんもいるんだけど、読むとよきにつけ悪しきにつけものすごく消耗が激しい。
もちろん、「女流」といったところで、さまざまなスタイルの人がいるわけで、一概にそれでくくるのは無理があるとしても、である。
そんななかで、上田 早夕里氏は気にはなっていたがなかなか手が出なかった作家さんであった。
しかし、先日読んだ火星ダーク・バラードが面白かったので、そのスピンオフ的な作品が載っている「魚舟・獣舟」を読むことにした。
上田氏の著作は、設定の「ハード」な部分とキャラクターたちの情緒的な「ソフト」な部分が、いい塩梅なんだと思う。
たぶん、男性作家の場合は前者にやや偏りがちに感じるんだと思う。
表題作の「魚舟・獣舟」も面白かったけど、いちばんキたのは「くさびらの道」。
これは、久々に読んでよかったと感じるより、ヤバかった。
なんでしょうね。
短編ながらもかなりパンチが効いていて、菌とホラーとSFの相性をまざまざと見せつけられた、っていうか、、、
ヤバい。これはヤバい。
映画秘宝が青春の友だったB級映画大好きな元ダンナにいわせると、「つまり、マタンゴやね」ということらしい。
でかい捕食動物に食べられるのももちろんいやだけど、内側から食い荒らされていくのももちろん、コワい。
でも、キノコが菌糸を伸ばして繁殖していくさまが、浸食を思わせるのか、菌に食われゆく人体というイメージは「ざらっ」とした手触りが残る。
ちょっと異色なホラーが読みたい、という人にはおススメです。 -
Posted by ブクログ
大河ドラマって子供のころは親が満てたから一緒に観てたけど、まぁ永らく観てなくって、でも一年を通して見続けると思い入れも出てきて、最後はけっこうぐっとくるのかな、と思ったり。
この話はけっこう長い時代を語っているから、読み切った後で似たような感慨があるような。
ああ、頑張ったよなぁ、って。
こういう感覚ってもしかして年を取らないと分からないのかもね。
子どもの頃ってあれじゃん、年を取ってやり切って、なんてのが想像できないし。まぁ人によるか。
一番気に入ったのは、出てくる人たち、いちいち不器用というか、華々しくすごい解決策が出てぱーっと解決したりとかはなくて、頑固で、一途で。
自身を振り返れば、どうでも良いところで頑固だったり、大事なところで妥協したり。
はー、もうちっと頑張ってみるか、と思ったのであった。 -
Posted by ブクログ
オーシャン・クロニクルシリーズの「リリエンタールの末裔」を読みたかったのがきっかけ。嬉しい誤算だったのは、どの短編作品も掛け値なしに面白かったこと。個人的にはオールタイムベスト級である。また、「リリエンタールの末裔」や「幻のクロノメーター」は男が一生をかける夢や仕事についての物語であり、単純な行動ではあるが男としてこのような生き方に共感を覚える。特に「幻のクロノメーター」については、途中から登場する一つの石が人類の文明を変えてしまうようなものになり、自分の想像をはるかに越える展開にセンス・オヴ・ワンダーを感じた。ずるいくらい楽しませる作品である。