上田早夕里のレビュー一覧
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ネタバレ30歳を過ぎてからSFを読み始めた。
コアなSFファンの方は10代にドハマりする方が多いので、かなり遅咲きなほうではある。
さらには読み進めていくうちに気付いたことがある。
基本、女流作家しか受け付けない。
なぜかはよくわからないのだが、女流SF作家の本がいちばん読みやすい。男性作家でも好きな作家さんもいるんだけど、読むとよきにつけ悪しきにつけものすごく消耗が激しい。
もちろん、「女流」といったところで、さまざまなスタイルの人がいるわけで、一概にそれでくくるのは無理があるとしても、である。
そんななかで、上田 早夕里氏は気にはなっていたがなかなか手が出なかった作家さんであった -
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大河ドラマって子供のころは親が満てたから一緒に観てたけど、まぁ永らく観てなくって、でも一年を通して見続けると思い入れも出てきて、最後はけっこうぐっとくるのかな、と思ったり。
この話はけっこう長い時代を語っているから、読み切った後で似たような感慨があるような。
ああ、頑張ったよなぁ、って。
こういう感覚ってもしかして年を取らないと分からないのかもね。
子どもの頃ってあれじゃん、年を取ってやり切って、なんてのが想像できないし。まぁ人によるか。
一番気に入ったのは、出てくる人たち、いちいち不器用というか、華々しくすごい解決策が出てぱーっと解決したりとかはなくて、頑固で、一途で。
自身を振り返れば、ど -
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オーシャン・クロニクルシリーズの「リリエンタールの末裔」を読みたかったのがきっかけ。嬉しい誤算だったのは、どの短編作品も掛け値なしに面白かったこと。個人的にはオールタイムベスト級である。また、「リリエンタールの末裔」や「幻のクロノメーター」は男が一生をかける夢や仕事についての物語であり、単純な行動ではあるが男としてこのような生き方に共感を覚える。特に「幻のクロノメーター」については、途中から登場する一つの石が人類の文明を変えてしまうようなものになり、自分の想像をはるかに越える展開にセンス・オヴ・ワンダーを感じた。ずるいくらい楽しませる作品である。
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『交渉というのは価値観の異なる他者との対話だ。だから、ときにはまったく解決がつかない場合もある。どこまでいっても平行線にしか見えないことも……。
けれども、それに対して知恵を絞り、言葉を絞り、体力を絞って、両者が進むべき道を模索しなさい。その行為は、人間が最も知的である瞬間なんだよ。
たとえその場で、どれほど乱暴な、どれほど感情的な言葉が飛び交ったとしても、最後まで決してあきらめるな。間接的な効かせ方とはいえ、言葉は暴力を止められることもある。それを忘れてはいけない。』
人類滅亡が迫る中、言葉の力だけで平等で人々が安心できる社会を築こうとする青澄の行動原理に共感はできないけれども、共感で -
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「獣舟・魚舟」『華竜の宮』「リリエンタールの末裔」そしてこの『深紅の碑文』と続いてきたオーシャン・クロニクルシリーズですが、そこにはSFの面白味が詰まっているといっても過言ではない気がします。
アンドロイドや遺伝子改変といったテーマは、どこまでが人間なのか、どこからが人間ではないのか、といった古くからあるテーマを、より深く追求しているように思われます。
技術が進んだ上での戦闘兵器の発達、地球の陸地の多くが海に沈んだことによる海上民と陸上民との紛争は、人間の業の深さを考えさせられます。
SFとしての壮大な世界観をバックに、そうしたテーマをしっかりと浮かび上がらせていくのです。
そ -
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『華竜の宮』以降、外交官を辞め、救援団体”パンディオン”を設立した青澄誠司。パンディオンの活動領域は広がりつつあるものの、後の大災害への不安から物資不足気味となり、それに端を発した陸上民と、陸の政治に不信感を持つ海上民との軋轢は、ますます広がりつつあった。青澄はそうした事態の改善のため、様々な人物や組織に働きかけるが……
上巻までを読んだ感想を端的に表すなら、圧倒されっぱなし!
世界のほとんどが水没し、陸地で暮らす人々と、海上で暮らす人々とに分かれた未来の世界。それにさらに、遺伝子操作やAI、兵器、そして、来たるべき大異変など様々なSF要素を盛り込んだ「魚舟・獣舟」『華竜の宮』でしたが -
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ネタバレ文句なしに、読書の快楽を味わわせてくれた中編集でした!感想長いぞ!
表題作「リリエンタールの末裔」は、至福の長編「華竜の宮」の前日譚。半生をかけて、翼を手に入れることを望んだ青年は、いつか宇宙へゆく技術の一端を担うことになるのか。彼の人生の先には大きな災厄が待っているのだけれど、まだその予兆は遠く、希望の予感を残す好編。
「マグネフィオ」。なんだか梶尾真治のクロノスを思い出した。SFと恋愛って、なかなか相性が難しいと思うんだけど、クロノスも本作も成功例のひとつだと思う(最高傑作は当然「夏への扉」) 。
恋した女性は自分の親友を選び、決して自分を選びなおすことはなかった…。まあそれだけの話な