上田早夕里のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
ある時から急に街中に現れるようになった、イソギンチャクのような頭を持つ妙な生物。不思議で美しい曲を奏でる「それ」は、見る間に増えていった。
美しい歌声を持つ「それ」は人々を魅了してゆくが、亜紀は彼らが引き換えに人間から大切な何かを削り取ろうとしているような不快感を覚えていた(表題作)
SFを中心にホラーやファンタジー味のある10作を収録した短編集。
何処にもいないような異形の存在や未知の生物、人間に近いような人工知性などを本当にあるようなリアリティで描いていて、私たちが実際に住む世界とは全く違うのに没入感が高いです。イソギンチャクのような奇妙な生物が歌う繁華街、幼馴染の背後に蠢く赤い手、凶暴な泥棲生物の犇めく泥の海。大切な故人の情報を取り込ませたメモリアル・アバターなど、話によって変わる情景が、どれもありありと想像できます。
個人的に気に入ったのは、表題作の『夢みる葦笛』と大地を埋め尽くす冥海とそこに住む泥棲生物から逃れ、古い時代の建造物をロープと滑車で繋いで暮らす地上の住民たちの話『滑車の地』。
機械的な印象の強いSFというジャンルですが、描かれるのはどの話でも「人間とは何か」を問いかけるようなヒューマンドラマ。ゆるゆると滅亡に向かっていくような、ディストピア風の世界の中で、それでも確固たる意志と鮮やかな希望を持つ主人公たちが印象的でした。
SFといってもハードすぎず、世界観も分かりやすくて読みやすいですし、幻想的で寂しくも美しい話ばかりなので、SF初心者さんにもおすすめしたいです。 -
Posted by ブクログ
華竜の宮を読もうと思い、こちらを先に読むと世界観がわかりやすいということで読みました。私にとっての初の上田早夕里作品です。
※著者の上田先生いわく、「魚舟や獣舟という生物がなぜ存在するのか、その誕生史が、最も詳しく、コンパクトにまとめられている作品」とのことです。
この短編を読み終わった後、すぐに華竜の宮を読みましたが、独特な世界観が頭に入ってきやすく、先に読んでいてよかったなと思いました。
また、この短編集の最後の作品である小鳥の墓はかなりのボリュームがあります(火星ダークバラードの登場人物の過去の話です)。こちらが書籍のタイトルでも良かったのでは…。
小鳥の墓は私のとても好みに合っており、監視社会とは何だろうと考えさせられる作品でした。
華竜の宮や、火星ダークバラードを読もうかなと思っている方は是非ご一読を。