あらすじ
困難な時代においても、深宇宙研究開発協会は人類の記録と生命の種を系外惑星に送り込もうと計画していた。その理念に共感した星川ユイは協会で働き始めるが、大量の資源を必要とする宇宙開発は世間から激しい非難を浴びる。 ユイは支援を求めて青澄に会いに行くが……苛烈を極める物資争奪戦、繰り返される殺戮、滅亡を意味する環境変化――いくたびの難事を経てなお、信念を貫いて生きる者たちを描破した比類なきSF巨篇。解説/渡邊利通
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Posted by ブクログ
1を解決するために2を無くす。そうすると2と共存関係にあった3は快く思わない。
現実も様々な原因や現象が複雑に絡み合っており、この問題はこうすれば解決するという単純な道筋はないのだと感じました。
また、自分の信念が揺らぎそうになる時、それをどうしたら保つことが出来るのか、それが出来る人は強い人であり、でもそれは側から見ると滑稽にも映ります。
人それぞれ千差万別の考え方がある中で、多様性を重んじ、簡単に物事を解決しようとしない青澄さんを尊敬します。
Posted by ブクログ
下巻も読み応えがある世界でした。人の業は深い。
人類滅亡が避けられない未来がやってくるのを知りながらも、分断と闘争はなかなか止められないないというのが…血塗れの「深紅の碑文」という言葉が重くのしかかりました。
陸・海・空をそれぞれ、青澄・ザフィール・ユイという登場人物が中心になって描かれていました。
青澄は救援活動、ザフィールはラブカでの陸との闘争、ユイはアキーリ号を宇宙へ放つ、というそれぞれの闘いは悲しい結末や消息不明にもなったけど、それでも、アキーリ号出発は救いでした。青澄は脳内で見てたんだな…再読で、意識不明中だったのに気付きました。副脳凄い。
連作で続編も構想されているようなので楽しみです。
「反対意見を持つ者を社会から排除したり、力ずくで叩き潰したりするような真似は、どこの誰にもさせてはなりません。それこそが、あの闘争から私たちが学び、最後まで担うべき仕事ではないでしょうか」…今の状況に重なる気がするので覚えておきます。
Posted by ブクログ
様々な登場人物の生きた軌跡から、人間としての愛情豊かな生活が窺われ、未来人も
やはり私たちと同じ人間だということが感じられる。
どうぞ、25世紀の皆さんもこのつらい時代を生き抜いてください。
Posted by ブクログ
大河ドラマって子供のころは親が満てたから一緒に観てたけど、まぁ永らく観てなくって、でも一年を通して見続けると思い入れも出てきて、最後はけっこうぐっとくるのかな、と思ったり。
この話はけっこう長い時代を語っているから、読み切った後で似たような感慨があるような。
ああ、頑張ったよなぁ、って。
こういう感覚ってもしかして年を取らないと分からないのかもね。
子どもの頃ってあれじゃん、年を取ってやり切って、なんてのが想像できないし。まぁ人によるか。
一番気に入ったのは、出てくる人たち、いちいち不器用というか、華々しくすごい解決策が出てぱーっと解決したりとかはなくて、頑固で、一途で。
自身を振り返れば、どうでも良いところで頑固だったり、大事なところで妥協したり。
はー、もうちっと頑張ってみるか、と思ったのであった。
Posted by ブクログ
ありがとうございます。
興奮して先を早く知りたくてよくやってしまう飛ばし読みもせず、我慢して読んで良かった。
ものの見方、芯をもっての柔軟な思考、といった、磨きたいものの磨き方のヒントを得ていると思う。
刺激がたっぷりのエンタメで、されど考えさせる。いいじゃないですか。
そういえば、「つながり」が、一読者としてうれしかったなあ。
Posted by ブクログ
「獣舟・魚舟」『華竜の宮』「リリエンタールの末裔」そしてこの『深紅の碑文』と続いてきたオーシャン・クロニクルシリーズですが、そこにはSFの面白味が詰まっているといっても過言ではない気がします。
アンドロイドや遺伝子改変といったテーマは、どこまでが人間なのか、どこからが人間ではないのか、といった古くからあるテーマを、より深く追求しているように思われます。
技術が進んだ上での戦闘兵器の発達、地球の陸地の多くが海に沈んだことによる海上民と陸上民との紛争は、人間の業の深さを考えさせられます。
SFとしての壮大な世界観をバックに、そうしたテーマをしっかりと浮かび上がらせていくのです。
そして、世界観の面白さや、倫理面だけにとどまらないのがこの作品のすごいところ!そこに住む人の生き様も、世界観に負けず劣らず濃密に描かれています。シリーズを通して、濃密に世界観が構築されただけあって、そこに生きる人々の生き様もより濃く描けるようになったのだと思えます。
救援活動を続ける青澄。海上民としての誇りを胸に突き進むザフィール。そして宇宙という夢に希望をつなげようとするユイ。それぞれが全く違う道を突き進んでいるのに、いずれの生き様にも説得力があり、そしていずれも、長編一作品くらいのドラマがある。これもまた、すごいことだと思います! そして、それを通して、過酷な世界に負けない人間の熱意や夢の部分にも光を当ててくれるのです!
設定負けもせず、世界観を丹念に描き切り、そしてそれぞれの人間ドラマも熱い!
本当にSF史に残るシリーズだってといっても、過言ではないと思いました!
Posted by ブクログ
華竜の宮のラストでコピー・マキが言った「彼らは全力で生きた。それで充分じゃないか」と
マキの「(アキーリ号にコピー・マキを乗せるという)それを選択なさったのはあなたです。これだけで、もう充分ではありませんか」が重なって泣いた。
結局作中でプルームの冬はこなかった。
陸と海が手を取り合うとか、全く綺麗に物事が進まなくてもどかしい。リアル。でも、実際には絶対にそうなるだろうな。海と陸にわかれてなくても世界中が一丸になって、みたいな想像出来ない。
Posted by ブクログ
戦いをやめて欲しい陸と、鬱憤を晴らしたい海と、憧れと情熱で目指すのを諦めない空。
深紅の碑文ってそういうことかというのを物語内で説明されるまで分からなかった~。
まだ終わりにはすっきりしないとこもあるなと思っていたら今後中短編くらいでシリーズの続きが出るようで楽しみ。
他にも読んでいないお話があるので是非読みたい。
マキみたいなアシスタントが欲しー
Posted by ブクログ
人の業の深さを感じる作品。
前の作品では人一人殺すことすら躊躇していた青澄さんでしたが、彼の一生もまた血の深紅に染まってしまいました。なぜザフィールが今の彼に最後まで心を許さなかったのか少し分かるような気がします。立派な人であることに、変わりはないのですが。
未曾有の危機を前にしたとき、人はどのように振る舞うのか…。多くの人に読んでもらいたい作品です。高潔な理想だけでは人は救えないということ、理想を実現するためには綺麗なままでは生きられないということを思い知らされます。