あらすじ
1943年、魔都・上海。ひとりの科学者の絶望が産みだした治療法皆無の細菌兵器。その論文は分割され、英・仏・独・米・日の大使館に届けられた。手を取り合わなければ、人類に待っているのは、破滅。世界大戦のさなかに突きつけられた究極の選択に、答えはでるのか? 第159回直木賞候補作
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Posted by ブクログ
難しいけど、読んで良かった。
満州事変は歴史で教わったけど、
そこに生きる人々に想いを馳せることが出来たのは、紛れもなくこの物語に出会えたから。
当然のことだけど、満州と呼ぶことになる前から住んでいる人々がいて、後から移り住んだ軍人ではない日本人がいて、両者は交流をしながらその時代を生きていた。
フィクションではあるけれども史実に基づいて描かれたところが多いそうで、その当時の国籍関係ない人々の想いに胸を打たれました。
あとは何より、上海の繁華街の描写がうまいこと。
時折出てくる上海料理の描写も食欲をそそられました。
どの時代の人も、美味しいものを糧に生きていたんだなと思ったり。
面白かったです。
生物兵器の恐ろしさを知る
戦時中の細菌兵器を巡る小説。
作り利用する側と止めようとする側。それぞれの立場や信念がぶつかったり、作用し合いながらうねっていく。面白かった。
Posted by ブクログ
評価は文句なしの星5「以上」。
なぜ星が5つまでしかないのか!と
理不尽に怒ってしまうほどの作品です。
山﨑豊子さん、高村薫さんを彷彿させ、
いやそれ以上かと思わせてくれる
戦時中の闇を描いた超大作と言えよう。
膨大な資料と取材を元に描き出した
人間たちのドラマは作者の魂の叫びか
魂を削るかのような圧倒的な力を宿し
作品の中に凝縮されている。
とはいえ、これは読む人を選ぶ作品だな
というのもまたしかり。
日本の歴史観も影響するし、
エンタメが好まれる昨今の風潮、
戦争を想像できない世代との意識格差など、
これは万人には理解できないなぁと。
でも、である。
省略の美学とも言える
淡々とした文章なのに
ここまで人の感情を深く描けるのかと。
美辞麗句で飾った文章、
修飾し過ぎることで
深い感情を描いていると勘違いしている文章が
いかに世間に溢れているかを
自分自身も改めて認識させられた。
あーー、書きたいことがたくさんあり過ぎる。
それくらい凄い作品だった。
最後に、少しだけ内容の感想を…。
自ら選んだ道を、時代や、他人の責任にしない。
そして、自分の存在を許してくれる人が
1人でもいるなら、私たちは生きていて良いのだ。
戦時中だろうが、現代であろうが
人間の本質は変わらないのだなと。
さらに、考えることを辞めた時点で
人は人でなくなるのだなと。
これだけの本にこの後、どれくらいの冊数を
読破したら出会えるのか、想像したら
ちょっとぐったりしてしまったので
感想もこの辺で笑
Posted by ブクログ
破滅の王
すごい作品でした。
静かに、だが圧倒的な力で
迫りくる作品に
ただただ声をあげるしかできません。
最初から最後まで
一字一句に込められた力、表現力、また文章の美しさを堪能できる
これほどまでの作品に出会えたことを嬉しく思います。
夫の積読が気になり、予備知識なく読み始めて
惹かれた理由に納得。
子どもの頃に父の本棚に隠すようにあった731部隊の書物を夢中で読んだ頃が甦り、
幼い日に戻るように今回も夢中で
そして決して読み逃すまいと読み進めていました。
おそらく、今後の読書生活の中でも間違いなく上位に入る作品です。
☆5ではなく☆10をつけます。
Posted by ブクログ
初めて500ページもある小説を読んだかもしれない。
登山をしているかのような本でした…
歴史・科学の知識のない私ですが、ハラハラドキドキもので非常に楽しめました!
読み始めた時どうなるかと思ったww
そして登場人物の多い作品ですが、関係のわかりやすい一覧がついていたのは助かりましたw
すぐに忘れちゃうからなぁ〜
この中でも灰塚少佐が好きでしたが、「消息不明」という事で物語終わっちゃってザンネン…生きてたと思っときます!!!
Posted by ブクログ
<目次>
序
第1章風根
第2章上海1943
第3章遺された言葉
第4章血と闇夜の城
第5章焦熱の地
第6章眩耀
第7章ベルリン市街戦前夜
第8章祈望
補記
2017/11単行本発行、直木賞候補
2019/11/17第1刷 文庫
2023/3/27第2刷
著者上海3部作の第1弾。
第3弾書籍の文庫化の新聞広告を見て、まとめて購入。
1930年代~1945の上海租界の上海自然科学研究所と
満州の生物兵器研究所が舞台。
生物兵器として開発した、ワクチンのない感染症を、
情報漏洩で各国の研究者が秘密裏に薬を作ろう
また、感染症をばらまこうという、話。
文庫本で500ページ。
2020のコビットの前に、この話が出ていたとは。
なぜ、SF作家である著者が上海租界に魅せられたか。
上海の旧フランス租界地区に住んでいたので、
思うところはいろいろある。。。。。
P424誰かが生物兵器だと宣言しない限り、世界的には、
R2Vは新種の伝染病にすぎないのです。
病気であればその情報は世界中で共有され、ごく普通に
治療薬の開発が始まります。~年単位の時間が必要です。
でも、特定の国家に情報を押さえらてしまうよりは、
ずっといいと思いませんか。
P426人は国家のためにあるわけではない。~世界中の
子供たちの将来をあなたはどう考えているのですか。
~科学者にとっての正道は、人そ幸せにすることだ、
死人の山を作ることじゃない。世の中を破壊すること
じゃない。~科学者としてのあなたの良心を信じて
いる。~科学を兵器として使うのではなく、本当の
幸せのたまに使ってほしい。
Posted by ブクログ
日本が満州事変から第二次世界大戦に突き進む時代に中国本土で細菌兵器が開発されつつあった、ということは事実だったのだろう。兵器と治療薬は必ずセットであるべき、そう考える人と世界滅亡も辞さないという急進的な考えの人との間の世界レベルの鬩ぎ合いは非常にスリリングだが、この複雑な勢力図、人間関係、国家間の駆け引きを果たして自分はどれだけ感じ取ることができたのだろう。
著者の上海ものを読むのは2作目だが今回も読者の力量を試されて、途轍もなく大きなストーリーの中に飲み込まれてしまった。もっとリアルに感じたい、いや感じたくはないか。この時代より今はいい時代と言えるのだろうか、などと思う自分が情けなくなる。
科学者の宮本、諜報機関の灰崎の友情が美しくも悲しい。
Posted by ブクログ
生態系の頂点に立った人類にとって、最大の敵は細菌、ウイルス。
これを兵器として開発するという愚かさ、実現しない理由は「兵器として実用するためには治療方法を確立して秘密にしておかなければならない」ということ。
実はこれがものすごく経済的に負担がかかるから、というのが文中にも描かれている。
これまで、旧日本軍731部隊などのドキュメントがあっても、正直、よくわからない恐ろしさがまとわりついている感じだった。
ところが、2020年のコロナウイルスで世界は「パンデミック」を経験した。
これで、もう、脅威は目の前に直接イメージされた。
物語の舞台となったのは、満州事変から太平洋戦争終戦までの上海など中国大陸はまさに激動の大舞台。日本人として、また科学者として大陸で最近の研究をするものも無関係ではいられなくなる。
究極の細菌兵器「キング」、その開発者は日本人研究者。
敵も味方も見境なく、文字通り“死滅”する、なぜ、そんなものを「兵器」として使うのか?
人としての葛藤、弱さはもうあたりまえの状況で、何を選択すれば正しい道なのかもわからない。
最終的に、科学者の開発した「原子力」が日本を終戦に追い込む。
この力もいまだにコントロールできているとは言い難い。
なぜなら、それを使っているのは「破滅の王」たる人類自身であるから……。
Posted by ブクログ
第二次世界大戦下で開発された生物兵器通称”キング”。生物学者の宮本は奇縁によりキングの治療薬を開発に携わることになる。治療薬の完成はすなわち生物兵器としての完成を意味する。各国が生物兵器を狙う中、宮本が科学者として下す決断とは・・・・。歴史的な出来事を中心としたフィクションなのだがリアリティを感じさせる情景描写、登場人物の心理的な葛藤が緻密に描かれている。
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読んでいて、同作者の「華竜の宮」、「深紅の碑文」と遠藤周作の「海と毒薬」が、脳裏をかすめた。激化する日中戦争。上海を主な舞台に。<キング>とよばれる未知の細菌をめぐる人間たちのドラマ。医学とは、科学者とは、戦争とは。それらを問うている。
Posted by ブクログ
解説にもあったが、森村誠一の「悪魔の飽食」を思いだした。戦時中は何が正義で、人間の尊厳はしっかり個々人が意識しないとゴミのようになっていくのだなと感じた。
細菌戦の恐怖は、コロナでちょっと想像ができるが(恐怖のレベルが全く違うかもしれない・・・)ものすごく恐ろしい。
上田早夕里さん、こういう小説も書けるんだ。才能ってすごいですね。
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フォローしている方の評価が高いので、読んでみましたが、とにかく難しかったです。
様々な用語が飛び交ってて、読み終えるのに時間を用しました。
早くこれをサラッと読みこなせるようになりたいものです。
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『上海灯蛾』が面白かったので、上海三部作と言われる第一作目を読んでみたけど、『上海灯蛾』よりずいぶん読みにくかった。主要な人物のエピソードをもっと掘り下げて読みたかった。
Posted by ブクログ
SF作家の上田さんが「戦争と科学」をテーマに掲げて挑んだ歴史長編。「上海灯蛾」が出たばかりの上海租界三部作の第1弾で、直木賞候補にもなった。冒頭で731部隊が絡む話だと分かるが、前振りがちょっと長い。細菌兵器をめぐる諜報戦が展開される中盤以降も派手さはなく、ノンフィクションを読んでいるようだった。でも戦争小説はそれでいい。
Posted by ブクログ
満州を統治していた日本の研究所
へ希望を持ち科学者として渡航した宮本。
戦時下とは思えない研究所での平穏な日々
同僚の六川や中国人研究者との交流は
宮本の研究への刺激となっていった。
そんな日常から一転友人の六川が失踪
してしまう。
宮本の人生も戦火に巻き込まれ、思っても
居ない戦争がもたらした人間の狂気の渦に
巻き込まれて行く。
一度、人の手に武器となる物が渡って
しまうと人間はそれを使って正義を唱え
要とするが、それは諸刃の剣でもある。
正義なのか悪なのか、戦争はそれさえも
凌駕してしまう。
Posted by ブクログ
第二次世界大戦を舞台にした、細菌兵器の製造と研究者の在り方をめぐる物語。
なかなか物語の流れを掴めなかったけど最後まで読みたいと思うぐらいには面白かった。
Posted by ブクログ
科学と倫理について考えさせられました
歴史の勉強にもなります
ただ、ストーリーにはあまりのめり込めなかったです
冒険小説のようなストーリーなのに、主人公がまったく活躍しないのが痛いですね
片方は研究者でしょうがないですけど、これではダブル主人公にした意味があまりなかったかと