〔01〕妖怪を科学的にとらえると…祓うとは、穢れとは。結局のところ、その追究がこの作品のひとつの軸。
〔02〕播磨遼太郎の思惑は…妖怪をも喰らう「濁」を祓うこと。
〔03〕百目はあくまでも「見る」ことに特化した妖怪であり、その本質を見極めようとする。それ以外の欲求はない。何に対しても距離を置き、冷たい。邦夫にはそれが心地よい。百目は主人公にはなり得ない妖怪だ。
〔04〕戦いを避けるため忌島抗一と相良邦雄はそれぞれ播磨遼太郎の過去を探る。
〔05〕人間と妖怪の争いは人間が謙虚になり妖怪という存在を認めるしかないが人間はすでに一線を越えてしまっているかもしれないと海老谷一蔵は危惧している。
■真朱の街についての簡単な単語集
【暁日技研/あかつきぎけん】明日香を作ったメーカー。
【阿伽鴇島】播磨遼太郎が子供の頃滞在していた、荒々しい自然の残る島。
【明日香】ヒューマノイドの試作品。風鎌は彼女によって満たされ執着した。
【小豆洗い】有名妖怪。わりと気がいい。
【綾藻/あやも】九尾の狐。妖怪楼閣で料亭宿を営んでいる。
【イイズナ】小妖怪。使い魔などにされることが多い。
【イタビの老翁】阿伽鴇島を古くから見守っているイヌビワに宿った神。
【牛鬼】妖怪酒場のマスター。正体は牛鬼。かなり強い。妖怪の行き場を提供している。酒場にいる間は邦雄を守ってくれている。播磨遼太郎に負けたことがあるようだ。
【海老谷一蔵/えびや・いちぞう】対妖怪用の武具を作る。吉野の山奥の刀鍛冶の里みたいなところにいる。播磨遼太郎の武具はこの人の作。
【円環区】真朱の街の外部五キロくらいは妖怪が出てくる遊び場になっているので住宅は全戸事故物件扱いで家賃が安い。
【大いなるもの】妖怪たちと繋がっている存在のようだ。
【大鋸/おおが】刑事部捜査第一課課長。洒脱だが腹に一物ありそうなタイプ。
【大嶋和麿/おおしま・かずま】邦雄の友人。人間。見える人で、拝み屋になった。
【太田祐子】円環区の住人。行方不明の息子を探している。
【風鎌/かぜかま】カマイタチ。最も大きな刃を持つ。人間の女にモテる。
【カマイタチ三兄弟】長兄は辻風、次兄は風鎌、末弟は薬壺(くすつぼ)。
【神】《神様が祟ると妖怪よりも怖いわ。起こせる災害の規模が違うもの》p.68
【カミナシ神社】街にひとつだけある神社。妖怪が出現するようになって神主が逃げ出した。そのとき神様もいなくなったという噂だが正月三が日は縁日が出てたこ焼きも食べられる。ついでに寺も一軒残っており鐘の音が妖怪を追い払えると信じている住職が鐘楼に高出力スピーカーを据え付けていて街中に鐘の音が響く。
【鴉ノ御子/からすのみこ】播磨遼太郎の式神。財布も握っている。
【忌島抗一/きじま・こういち】生活環境課第五係刑事。魔除けのため本名の文字を変えている。言葉によって妖怪の能力を一部制限できることを教えてくれた。牛鬼とタメを張れそうないかつい外見とは異なり血を見るのが嫌いで事務仕事など頭脳労働をしていたいタイプ。しかし妖怪がチカラをふるった痕跡を察知できる特殊能力を持っている(妖怪対策課から逃げ出したい忌島は警察内でも内緒にしているが)。《昼行灯でありたいというのが忌島の願いだった。》(p.168)。妻の規子と娘の萌がいる。夫婦仲はいいようだ。かつて一度死んだが医療特区である真朱の街の技術力で記憶の欠落もなく生き返った。
【勤労】妖怪には勤労という概念がない。金銭が必要ないし物々交換で成り立っているようだ。牛鬼などはそれで回らない人間社会は劣っていると感じているようだ。百目のようにいちおう事務所を営んでいるような場合でも特に働きたいと思っているわけではない。基本的にはおもしろそうだからやってるだけ。
【薬壺/くすつぼ】カマイタチ三兄弟の末弟。薬師。
【邦雄/くにお】相良邦雄。人間。視点役。とあるできごとの後百目の助手として働くことになった。どうやら彼の寿命は美味らしい。脳科学者だったが能力的にはたいしたことはなかった。とはいうものの科学技術には詳しいので百目には有用。
【小鬼】忌島にかかわりのある存在。「人間は誰でも宙ぶらりんだ。あんただけじゃない」第二巻p.221。「いま目の前にいる人間や妖怪、そこに横たわる事象を愛したり憎んだりすればいい。その気持ちこそが〈おまえ自身〉であって、本物のおまえや偽物のおまえなんて、はなから、どこにもありはしないんだ。」第二巻p.223。
【相良邦雄/さがら・くにお】→邦雄
【紫桜/しおう】警察が開発した銃。播磨遼太郎の呪がかかっている。最初に忌島が持つことになった。これが使われたときが、曲がりなりにも成立している妖怪と人間の共存が壊れるときかもしれない?
【真朱の街/しんしゅのまち】元は医療特区で他所では使えない医療技術を駆使することができた。妖怪が出現したとき朱色のビルで囲み封印しようとしたが不可能だった。しかし妖怪たちは好んでこのエリアで暮らしている。そうして人間と妖怪が駆け引きをしながら共存する街となった。忌島は思う《誰も何かを育てようとしない街。》第二巻p.192。
【吸取虫/すふ】かって人間たちが研究していた機器。それが付喪神化して百目が人間から情報を聞き出す使い魔として使役している。
【諏訪原】真朱の街のある県の県警警察署長。
【生活環境課第五係】真朱の街は県警の管轄だが、この第五係だけは警視庁の直轄。通称「妖怪対策課」(マルヨウ)。
【濁/だく】播磨遼太郎のライバル? 百鬼夜行絵巻の最後に登場する妖怪。妖怪すら喰らう。
【たたらの主】溶鉱炉の管理をしている妖怪。水木しげるのぬりかべみたいな見た目。妖怪図鑑なんかでは「一本だたら」と書かれたりしているがその呼称を嫌っている。
【辻風/つじかぜ】カマイタチ三兄弟の長兄。伝承では人間を転ばせる役らしいが。
【特殊安全対策課】生活環境課第五係を解散し警察が立ち上げた対妖怪課。通常はこれまで通り「妖怪対策課」(マルヨウ)となるだろう。課長には心ならずも忌島が選ばれた。
【那美】播磨遼太郎の中学時代の友人。恋人に近かった。三線の名手。
【人間】テクノロジーを自由に操れる。良くも悪しくも節操がない。脳と電脳を直接つなぎ、肉体も変わりつつあり妖怪とあまり差がなくなってきている。
【鵺】妖怪酒場の常連。
【ぬらりひょん】有名妖怪。ある場所に期間限定でやってくる。欲望を持つことこそが人間だと邦雄に言った。それは邦雄の心に届いた。
【播磨静次郎】遼太郎の養父であり拝み屋の師匠。
【播磨遼太郎】マスター(牛鬼)が探している人間。蘆屋道満の一派である民間の拝み屋。妖怪を殲滅しようとしているようだ。《妖怪を滅するのは筋違いだぞ、播磨。人間こそ、お前の真の敵であるはずだ……》p.295
【一ツ輪の姐さん】子供に執着する妖怪。邦雄が保護していた少女とともに消失し、この事件で邦雄は百目と出会った。《そう遠くない将来、とんでもない未来がやってくる。》と言った。(p.54)
【火取魔】人間から火を奪って楽しむ。たたらの主か守り刀の複製をもらった。
【百目】妖怪探偵。探し屋。絶世の美女。正体は百目鬼。妖怪に金銭は縁がないが、邦雄の寿命の美味しさに執着し金銭で助手としての報酬を払うことにした。その代わり困りごとがあったときには少しばかりの寿命をもらう。全身に目を出現させ異空間を通して遠方まで見ることが可能。戦闘力はゼロ。牛鬼の探しびとを探す約束で荒事は任せている。基本的には妖怪絡みの出来事しか引き受けない。
【ぶよ丸】播磨遼太郎が子供の頃親しかった妖怪。
【マスター】→牛鬼
【皆月翔華】本名、清夏:きよか。日本舞踊の名手。かつて救ってくれた播磨遼太郎を愛し猛烈アタックをかけた。
【妖怪】人間の寿命を食うが、肉体も食う。諏訪原いわく《妖怪とは〈人間と環境との接点に生じる何か〉だ。》第二巻p.54。ある程度賛同できる。妖怪は自然や周囲のメタファーかもしれない。妖怪に善悪はなく常に自分だけの理屈で動くので、妖怪にとっても人間にとっても制御や協力は難しい。
【妖怪酒場】マスターは牛鬼。
【妖怪楼閣】行きたいと望まないと見ることも当然行くこともできない。妖怪たちと濃密につきあいたい人間が来ている。何日でも滞在できる。危険ではある。内部では空間がねじ曲がり時空が伸び縮みしている。
【雷鈷/らいこ】獅子のような妖怪。播磨の味方。
【鰐川/わにかわ】播磨遼太郎に仕事を依頼する仲介屋。
【輪入道】強力な妖怪。一ツ輪の姐さんとは旧知だった。自分もまたそろそろ消えてもいいかとも思っているようだ。