上田早夕里のレビュー一覧
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妖怪探偵・百目シリーズの二作目。前作で意味深に登場した拝み屋播磨遼太郎の話と、妖怪や人間を喰う妖怪”濁”のエピソードが中心となります。
このシリーズが始まった当初は百の目を持つ美女の妖怪の百目と人間の助手が事件を解決していく連作短編ものかな、と思っていたのですが、全巻の終盤あたりからそうした雰囲気は薄れ、
濁によって引き起こされる妖怪と人間の世界の危機や関係性を描いたスケールの大きな物語になってきました。
妖怪と人間の関係性の描き方や対立の構図や妖怪楼閣など、このシリーズだからこそ読める世界観も面白く、そこにSF的設定や哲学観が付加されることで、上田さんでしか書きえないシリーズになっています。
播磨の過去や決意のエピソードが非常に印象的。主人公の座を交換してもいいレベルの過去の濃さです(笑)。
次作がいよいよ濁との対決になりそうな感じです。人間たち、妖怪たちと思惑も観念もバラバラな彼らが濁とどう向かい合うのか、とても楽しみです。 -
Posted by ブクログ
妖怪が跋扈する<真朱の街>で探偵事務所を営む妖怪・百目は絶世の美女。ある事情からこの街に逃げ込んできた相良は、自身が巻き込まれた事件を契機に、依頼報酬は人の寿命という百目に時折命を吸われながらも探偵助手を務めている。
人と妖怪、呪いと最先端科学、自然の霊力とサイエンス・テクノロジーが融合した、魔除けの朱に染められ無数のお札を貼りこめた建物に囲まれたこの街は、かつては医療特区だった。その名残で、最先端医療技術の研究開発が行われていたりもする。
そんな街で、人と妖怪は奇妙な共存関係にあった。
勿論、悪い出会い方をすれば、喰われるのは人間なのだが。
そんな街で探偵家業を営む百目だが、人さえ喰えれば(文字通り肉体を貪るか、ちょっと優雅に寿命を吸うか)生きていける妖怪のこと、気が乗らない依頼は一切受けない。彼女が乗り出すのは、妖怪絡みの事件に限られる。
百目と相良が関わる五つの事件。
特に興味深く読んだのは第四話『炎風』。人が開発したヒューマノイド・ロボット<明日香>に恋をした妖怪かまいたち<風鎌>が、消えてしまった恋人の捜索を依頼してくる。
人ならざる者同士ながら、かたや古来の妖魔、かたや先端科学の申し子。人の心の奥底までも覗き込む百目が見出す、かれらの恋の行方とは。
相容れない存在同士が喰いつ喰われつしつつも、それぞれに滅びてしまわぬよう、ぎりぎりのラインで共存する<真朱の街>(それでも、人は呪力や科学力を駆使して妖怪を排除する道を諦めてはいないし、妖怪も隙あらば人を喰うけど)に生きながら、人であることをやめ妖怪側にたつのか、それとも人の世界へ立ち戻るのか、揺れ動く相良。
妖怪も妖怪で、人の科学技術を便利に使っていたり(百目なぞ、全身の目を隠すために人工皮膚を使っている)もするのが面白い。
余談だが、妖怪の跋扈するこの街で、相良が通う妖怪酒場のマスター・牛鬼が提供する"人間用おつまみ"は結構おいしそうである。
続刊が待ち遠しいシリーズとなった。 -
Posted by ブクログ
テンポよく、最後まで面白く読めた。
ラストの台詞はあとがきによると物議をかもしたように見受けられるが、それができる精一杯なのだと私は腑に落ちた。
ツキソメやタイフォンといった魅力的な人物をはじめ、設定も豊富に盛り込まれておりこれで何冊も書けるんじゃないか、というところを惜しみなく詰め込んでいて、でも個人の人生すべてには言及しないために、主役が全体(群像劇ということではない)であることが見えやすくなっているのかもしれない。ミドルネームもほとんど説明がないので、唐突に話題に出てくる感じがするが、あまり触れないのは他者との関係構築の形を限定しないためなのだろうか。
何にせよ久しぶりに面白い本を読んだ!関連作品もぜひ読みたい。