上田早夕里のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
とにかく壮大!
日本SF大賞受賞作で、遠い未来の地球を舞台にした、人類の生き残りを賭けた物語です。人間って何なんだろう、生きる意味って何なんだろう、ということを(上巻にして既に)考えさせられます。
冒頭のプロローグは2017年が舞台。この時点で豆腐は合成プロテイン製になるほど異常気象の影響が出ているのですが、本編の舞台はなんと25世紀。
わずか数ページで4世紀飛ぶというこのダイナミズム。この間に地球は大きく変貌し、海底が隆起して多くの陸地は水没し、辛くも生き残った人類は陸上民と海上民に(見た目もライフスタイルも)分かれ、変わらないものはと言えば日本(まだあった!)の政治のドロドロ感とノロマさ -
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Posted by ブクログ
上田早夕里さんの短編集。ジャンルで言えばSFホラーということになるのかな。
やはり、表題の『魚舟・獣舟』と『くさびらの道』が良かった。
読後に感じる一抹の喪失感とちょっと背中が寒くなるような感じ。嫌いじゃない。
この短編集の全体の雰囲気として遺伝子操作された人間が普通に暮らし、アンドロイドが人間の代わりに危険な仕事をし、そのような中でも妖怪や異形の者が当たり前のように存在する。非常にダークな未来観でありながらも何となく古風な日本の雰囲気も醸し出している。映画『ブレード・ランナー』のような猥雑な感じでもなく、すべてがクリーンで管理された未来都市とまでは行かない。このどっちつかずなリアルな雰囲気 -
Posted by ブクログ
『ひとつだけ断言できることがある……。いまの姿を保っているからこそ人間だ、これが人間の最も理想的な形なのだ、という価値観は、これからの時代、幻想に過ぎないわ。
もちろん、思考は身体の形状に影響される。体の形が変化すれば、感受性も考え方も、すべてがいまのままではいられないでしょう。でも、一個の生物としては、だから何だという気もするの。人間は、他の生物と比べたとき、たいしたことをしたわけじゃない。唯一、宇宙に行けた生物だ ー とは言えるけれども、外に出たから偉いというわけでもない。
何もしないで滅びるというのも、もしかしたら、生物の在り方として自然なのかもしれないわね。でも、そう思いつつも、私