上田早夕里のレビュー一覧
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ネタバレ著者初読。パイセン本。
上田早夕里『魚舟・獣舟』は、ページをめくるたびに“生き物としての人間”が静かに姿を現してくる、深い余韻を残す短編集だった。どの物語も独立した世界を持ちながら、共通して流れているのは、変わりゆく環境とそこに必死に生を繋ごうとする人々の確かな息づかいだ。
表題作「魚舟・獣舟」では、異形の存在と共に生きる海上民の姿が印象的で、未知の生命に抱く畏れと敬意が見事に交錯する。変容していく世界へ向き合う彼らの姿に、読者は“適応して生きる”という言葉の重さを思い知らされる。一方でそこには、厳しい現実を越えてなお、未来を切り拓こうとするしなやかな希望が宿っている。
「くさびらの道」や「小鳥の墓」といった作品では、人の心の脆さと強さが同時に描かれ、読後に深い静けさが残った。上田早夕里の筆は、苦しみや孤独すらもどこか透明な光の中に置き直し、人間の内側にある微細な感情を、丁寧にすくい上げていく。
全体を通して感じるのは、厳しい世界を描きながらも、人と世界が持つ“可能性”を信じる視線だ。それは強烈な設定や残酷さを中和するものではなく、むしろその奥底に沈む確かな人間性を、よりくっきりと浮かび上がらせる力となっている。
重厚な物語群でありながら、不思議な温度をもって心に染み渡る短編集。読後には、はるかな海の音が胸の奥で静かに響き続けるような、そんな深い読書体験が待っている一冊だった。 -
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幼いリラが言う。
「戦禍の風は、子供や大人の区別なくあらゆる人間を怪物に変える」
物語は第一次世界大戦の西部戦線、ドイツ軍の塹壕の中で無常感に蝕まれていたイェルクを、シルヴェストリ伯爵が拾う、リラという少女の護衛役とするために。
“国”とはいったいなんだろう。
どんな状態であっても、国の人のことを第一に考える……時には敵対する国の人を必要以上に憎んでまで。
必ずしも“戦争”という特殊な事態の中だけではなく、常日頃に思いがけなく顔を出す。
そして「経済」……人の世に巣作る魔物とは……
魔物以上に残酷な人間たちを救うために、イェルクたちは動き出す。
その手段が諜報活動って、俗人っぽく“魔物”らしくないところが現実的。
やがて戦いは止む、
でもまたさらに酷い戦いが始まる。
「人間であるとは、どういうことなのか」
魔物を通じて考える…… -
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ネタバレ<目次>
序章上海1945
第1章阿片の園ー上海1934
第2章田
第3章栄華
第4章交戦
第5章鵬翼
第6章詭道の果て
終章夢と枯骨
後記
2023/3単行本発行
2025/3/15第1刷(文庫)
P94(上海に戻る日本人の男が教えてくれた)
都会には、いいことばかりあるわけではない。
だが、未知の世界への渇望を抱いているなら、
思い切って心を解き放てと。
著者、上海三部作の第3弾。
この本の新聞広告を見て、3冊購入し順に読んで
いったもの。第1・生物兵器・感染症、
第2・和平工作、第3・麻薬取引
上海の旧フランス租界に住んでいたからわかる。
魔都というが、その感覚が。
怨念や情念が残っていて、人をひきずりこむ。
<覚書>
上海自然科学研究所
徐フイ区岳陽道320号、に今も現存
1931設立
霞飛路⇒今のワイ海中道
愛多利亜路⇒今の延安東路
上海租界
南京条約1842年にて
1870~日本人の進出、パスポート不要、最大10万人
共同租界の日本人居住区あり -
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ネタバレ<目次>
序章上海1931
第1章上海1939
第2章榛の花
第3章合議
第4章ミッション1
第5章ミッション2
第6章ミッション3
終章散花
2021/1単行本出版
2024/1/20第1版
著者上海3部作の第2弾本。和平工作活動。
第3弾の上海灯蛾の新聞広告を見て、著者のことを
知り、上海3部作と著者本人が言っている小説の文庫を
まとめて購入したもの。
P133大陸に渡ってきた日本人の大半は内地にいた頃と
同じ暮らし方をする。~中には「内地でやれないことを
やる」という、野望に燃え、傍若無人に振る舞う者も
少なくなかった。異文化に馴染もうとせず~
P162国同士はともかく、末端にいる庶民はもっと
えげつない動機で動いているぞ。和平工作に成功=
民族間の争いの消失ではない。
P336「日本人を」(信用したのでなく)あなたを
信用したのです。 -
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ネタバレ<目次>
序
第1章風根
第2章上海1943
第3章遺された言葉
第4章血と闇夜の城
第5章焦熱の地
第6章眩耀
第7章ベルリン市街戦前夜
第8章祈望
補記
2017/11単行本発行、直木賞候補
2019/11/17第1刷 文庫
2023/3/27第2刷
著者上海3部作の第1弾。
第3弾書籍の文庫化の新聞広告を見て、まとめて購入。
1930年代~1945の上海租界の上海自然科学研究所と
満州の生物兵器研究所が舞台。
生物兵器として開発した、ワクチンのない感染症を、
情報漏洩で各国の研究者が秘密裏に薬を作ろう
また、感染症をばらまこうという、話。
文庫本で500ページ。
2020のコビットの前に、この話が出ていたとは。
なぜ、SF作家である著者が上海租界に魅せられたか。
上海の旧フランス租界地区に住んでいたので、
思うところはいろいろある。。。。。
P424誰かが生物兵器だと宣言しない限り、世界的には、
R2Vは新種の伝染病にすぎないのです。
病気であればその情報は世界中で共有され、ごく普通に
治療薬の開発が始まります。~年単位の時間が必要です。
でも、特定の国家に情報を押さえらてしまうよりは、
ずっといいと思いませんか。
P426人は国家のためにあるわけではない。~世界中の
子供たちの将来をあなたはどう考えているのですか。
~科学者にとっての正道は、人そ幸せにすることだ、
死人の山を作ることじゃない。世の中を破壊すること
じゃない。~科学者としてのあなたの良心を信じて
いる。~科学を兵器として使うのではなく、本当の
幸せのたまに使ってほしい。