上田早夕里のレビュー一覧
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ネタバレ<目次>
序
第1章風根
第2章上海1943
第3章遺された言葉
第4章血と闇夜の城
第5章焦熱の地
第6章眩耀
第7章ベルリン市街戦前夜
第8章祈望
補記
2017/11単行本発行、直木賞候補
2019/11/17第1刷 文庫
2023/3/27第2刷
著者上海3部作の第1弾。
第3弾書籍の文庫化の新聞広告を見て、まとめて購入。
1930年代~1945の上海租界の上海自然科学研究所と
満州の生物兵器研究所が舞台。
生物兵器として開発した、ワクチンのない感染症を、
情報漏洩で各国の研究者が秘密裏に薬を作ろう
また、感染症をばらまこうという、話。
文庫本で500ページ。
2020のコビ -
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ネタバレタイトルから想像されるようなオカルト・ミステリー要素だけの物語ではない。本書の著者はハードSFの名手である。SF要素がどうしても嫌いという場合には注意が必要だ。
本書の著者の短編集『魚舟・獣舟』に、第0話に当たる話(『真朱の街』)が掲載されている。内容としては相良が真朱の街に現れて百目と出会い、その助手となる経緯を描いた作品だが、未読でも本書を読むのに特に困ることはないように作られている。
プロローグとして読んでから本書に入っても良いし、本書を読んだ後に前日譚として読んでも良いと思う。
オーシャンクロニクルシリーズやデビュー作の『火星ダーク・バラード』、短編集に収録されている作品がどれも -
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「この世に存在しないものを、まるで在るかの如く魅力的に創造する……。これは、とてつもなく手間とセンスがいるんだよ。」_p197小鳥の墓
映画監督の父が息子に言った台詞ですが、小説家である上田早夕里さんが創作活動において目指すところなのだろうと感じました。
どの作品も設定がよくわからないままその世界に放り込まれてはじめは少し読みにくいなと思うのですが、読み進めるうちにだんだんと魚舟や幽霊や妖怪が当たり前に存在する世界に入り込んでいくような感覚でした。まさに"この世に存在しないものを在るかの如く創造する"ことに長けた作者だと思いながら読んでいたので、その思惑を感じ取れていた -
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日本が満州事変から第二次世界大戦に突き進む時代に中国本土で細菌兵器が開発されつつあった、ということは事実だったのだろう。兵器と治療薬は必ずセットであるべき、そう考える人と世界滅亡も辞さないという急進的な考えの人との間の世界レベルの鬩ぎ合いは非常にスリリングだが、この複雑な勢力図、人間関係、国家間の駆け引きを果たして自分はどれだけ感じ取ることができたのだろう。
著者の上海ものを読むのは2作目だが今回も読者の力量を試されて、途轍もなく大きなストーリーの中に飲み込まれてしまった。もっとリアルに感じたい、いや感じたくはないか。この時代より今はいい時代と言えるのだろうか、などと思う自分が情けなくなる。
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この巻は長編のスタート部分。
【突き飛ばし法師】製鉄の工程で川で砂鉄を採る者たちがなにかに転ばされ怪我する事件が続発。あきつ鬼を欲しがるガモウダイゴなる怪しい人物が出た。
【縁】父の蘆屋道延にガモウダイゴについて相談すると製鉄に関することを調べろ、そして守り刀をそれぞれ打ってもらうようにとのアドバイス。
【遣いの猫】守り刀を与えるに相応しいかどうか呂秀、律秀の為人を見るため猫型神様の瑞雲がやってきた。
【伊佐々王】巨大な鹿の姿をした伊佐々王をガモウダイゴが「この世の敵」として甦らせた。自然を体現する存在と言えるかもしれない。
【鵜飼と童子】伸び悩んでいる猿楽師の竹葉はある日見知らぬ童子と出会 -
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初めてのSF。非常に面白かった。これまではどんでん返しが待つミステリーなどを中心に読んできたため、楽しみ方が分かっていなかったが、表題にもなっている短編である夢見る葦笛を読んですぐ、SFの楽しみ方が分かった気がする。SFは世界観を楽しむものなんだと思う。
その世界に読者を入り込ませる表現力が見事で、次々と頭に像が浮かぶような文章であった。
また最初入り込むのが難しかったとしても、信じて読み進めるべきだ。「プテロス」がそうだったが、読み進めるうちに、当初イマイチしっくりこなかった表現が、だんだんとイメージができるようになる。
全てが傑作なこの短編集が初めて読むSFで良かった。 -
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ネタバレSF、まさしくSF!という感想をもった作品。
ジャレド・ダイヤモンドの「文明崩壊」を読んだことにより、長期的な環境変動と人類の危機に対して以前とは違う感覚を得た私には、この世界観が突き刺さる。
プルームの上昇は、(小説用に)タイムスケールをいじっているので本来は起きえないことだが、それでも地球環境の変動、遺伝子・環境の改変、予想外の連鎖を引き起こす改変手段、人間の思考を補助する人工知性体(AI)に制御不能に陥っている生物工学兵器、と現代(近未来)を暗示するようなストーリーではないか。
ホットプルーム上昇による海底面の上昇、それに伴う海水面の急激な上昇による陸域の大幅な減少。こういう人類滅亡 -
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ネタバレ感想
人間が作り出した装置に苦しみ、それと戦い、殺し合いながら、しかし何とか生きていく。
最後の一文、彼らは全力で生きた。それで十分じゃないか。これにこの本の全てが入っているように思えた。
あらすじ
青澄はツキソメを調べていくうちに、獣舟が人間の形に変異していることを知る。日本の上位組織のプロテウスは青澄に世界滅亡の情報を知らせ、ツキソメこそが人類の生き残りに必要な情報を持っている可能性があるという。
プロテウスと青澄どちらが早くツキソメにアクセスし、データを確保出来るのか?
結果的に終末世界が訪れ、ツキソメのデータが役立ったかどうかは不明。 -
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ネタバレ感想
SFだから当たり前だが、人間も変容し、高度な人工知能と自然が融合した独特の世界観。天変地異が起こっても人はやはり、土地争いと戦争に明け暮れるのかと思うと少しウンザリしてしまう。
人間が作り出したものに翻弄され、人間が歪み合う。人間のカルマのなれの果てを描いているよう。ありえるから怖い。
終盤は細かい話から一気に壮大な話へ、人類に第二の危機が生じる。
あらすじ
近未来、海底が260m隆起して、人々は土地の奪い合いを始めた。それぞれが連合国を形成し、そのうちに陸上民と海上民に分かれて人は生活するようになった。
青澄は陸上民で、海上民とのトラブルを解決する外交官だ。今回政府から、ツキソ