【感想・ネタバレ】上海灯蛾のレビュー

あらすじ

1934年上海。「魔都」と呼ばれるほど繁栄と悪徳を誇るこの地に成功を夢見て渡ってきた日本人の青年・吾郷次郎。租界で商売をする彼のもとに、原田ユキヱという謎めいた女から極上の阿片と芥子の種が持ちこまれる。次郎は上海の裏社会を支配する青幇の一員・楊直に渡りをつけ、阿片ビジネスへ手を染めていく。やがて第二次上海事変が勃発。関東軍と青幇の暗闘が激化し、日本人であることを隠して裏社会の階段を上る次郎は窮地に陥る。軍靴の響き絶えぬ大陸で、阿片売買による莫大な富と栄耀に群がり、燃え尽きていった男たちの物語。

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Posted by ブクログ

上田早夕里『上海灯蛾』双葉文庫。

初読みの作家。非常に読み応えのある1934年の上海租界を舞台にした歴史ノワール小説だった。

日本帝国陸軍が中国に侵攻し、満州国を建国し、さらに中国本土で支配を強めようとしていた時代。日本陸軍も中国軍も共に阿片で得た利益を軍事費に回そうと躍起になっていた。その隙間を埋めるかのように青幇をはじめとする有象無象が阿片の利益に蟻のように群がる。

阿片という麻薬に人生を翻弄される日本人と中国人。所詮、長い歴史の中では僅か一瞬の出来事であるが、バタフライ・エフェクトの如く未来を少しだけ変えたのかも知れない。

日本人はロシアのウクライナ侵攻を非難しているが、かつては軍部に支配された日本も中国をはじめとするアジア諸国に侵攻していたことを忘れてはいけない。さらに悪いことに、日本は侵攻した国で人体実験や略奪や凌辱、阿片の売買など悪行の数々を行なっていたのだ。

本作ではそんな時代背景の中、中国の秘密結社である青幇に取り込まれた日本人青年の数奇な運命が描かれる。


1934年の上海。成功を夢見て日本からこの地に渡って来た青年の吾郷次郎は共同租界で小さな雑貨店を営んでいた。ある日、原田ユキヱと名乗る謎の女性が次郎の店を訪ねて来て、阿片煙膏と芥子の種を売りたいと持ち掛けた。

次郎は伝手を辿り、阿片煙膏と芥子の種の取引きを行おうと上海を支配する青幇の一員である楊直に渡りを付けるが、これを切っ掛けに裏社会の奥深くへと踏み込んでいく。

芥子の栽培を巡り、次郎は楊直に取り立てられ、義兄弟の契を結び、黄基龍という中国名を貰う。次郎は芥子畑の管理を任され、原田ユキヱが持ち込んだ『最』という最高品質の芥子の種は青幇に莫大な利益をもたらし、楊直は組織の幹部に取り立てられる。

本体価格1,100円
★★★★★

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2025年03月27日

Posted by ブクログ

ネタバレ

最後まで読み終わってから最初の数ページを読み直すと楊直の人となりがわかった後なので、この遺体を流すシーンに最初と全く違う印象を受ける。

「魔都」という響きに相応しい世界を見ることができるし、何故このタイトルなんだろうと思っていたが途中でそこに触れるような描写(次郎がそう思う)シーンがある。
そして楊直がとても魅力的。

0
2025年10月04日

Posted by ブクログ

当時の魔都上海とは勿論街並みは変化しているものの、上海には実際に行ったことがあり、イメージし易い環境で読破できたが、当時の日中の関係性をより理解した上であれば、より能動的に愉しむことが出来たかもしれない。

0
2025年05月11日

Posted by ブクログ

ネタバレ

<目次>
序章上海1945
第1章阿片の園ー上海1934
第2章田
第3章栄華
第4章交戦
第5章鵬翼
第6章詭道の果て
終章夢と枯骨
後記

2023/3単行本発行
2025/3/15第1刷(文庫)

P94(上海に戻る日本人の男が教えてくれた)
都会には、いいことばかりあるわけではない。
だが、未知の世界への渇望を抱いているなら、
思い切って心を解き放てと。

著者、上海三部作の第3弾。
この本の新聞広告を見て、3冊購入し順に読んで
いったもの。第1・生物兵器・感染症、
第2・和平工作、第3・麻薬取引
上海の旧フランス租界に住んでいたからわかる。
魔都というが、その感覚が。
怨念や情念が残っていて、人をひきずりこむ。

<覚書>
上海自然科学研究所
徐フイ区岳陽道320号、に今も現存
1931設立
霞飛路⇒今のワイ海中道
愛多利亜路⇒今の延安東路
上海租界
南京条約1842年にて
1870~日本人の進出、パスポート不要、最大10万人
共同租界の日本人居住区あり

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2025年05月03日

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