上田早夕里のレビュー一覧
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ネタバレ文句なしに、読書の快楽を味わわせてくれた中編集でした!感想長いぞ!
表題作「リリエンタールの末裔」は、至福の長編「華竜の宮」の前日譚。半生をかけて、翼を手に入れることを望んだ青年は、いつか宇宙へゆく技術の一端を担うことになるのか。彼の人生の先には大きな災厄が待っているのだけれど、まだその予兆は遠く、希望の予感を残す好編。
「マグネフィオ」。なんだか梶尾真治のクロノスを思い出した。SFと恋愛って、なかなか相性が難しいと思うんだけど、クロノスも本作も成功例のひとつだと思う(最高傑作は当然「夏への扉」) 。
恋した女性は自分の親友を選び、決して自分を選びなおすことはなかった…。まあそれだけの話な -
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ネタバレ短篇集。
* リリエンタールの末裔
空を飛ぶことを夢見て、たくさん働いてお金を貯めてグライダーを買うお話。裏のテーマは差別とかそういう感じのもの。リリエンタールとはハンググライダーの考案者。
* マグネフィオ
事故でなくなった人の心の動きを可視化したいという話。恋愛もの。ちょっと純粋すぎるかも。別に磁性化流体を使わなくてもディスプレイでも良いじゃんと思わないこともない。
* ナイト・ブルーの記録
海洋無人探査機を脳インタフェースで操縦しますよ。探査機を使っていたら、自分の手足のように感じてきましたよ。という話。
* 幻のクロノメーター
天文学と時計職人の話。途中から宇宙生物?らしきもの -
Posted by ブクログ
ネタバレ頭の中にサッと青いイメージが広がるSF短編集。
1本目は、差別が黙認される窮屈な社会の中まっすぐに空を目指し、力強く未来の希望を見つめる表題作。最初はファンタジー色が強いのかな?と思い、取っつきづらく感じたけれど、世界観に明確なビジョンがあってすんなりと話に入り込めた。
2本目は、人工感覚データの取引も目前となった時代、主観的感覚の価値が揺らぎ始めることが予感されるからこそ、苦しみも悲しみも全て手放すまいとする話。登場人物はみんな、自分の思うとおりに生きて、十分に欲張って…それなのに全然満たされていないように見えるのが、辛かった。
そんな感覚でさえも、かけがえのない大切なものとして抱きしめ -
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テーマは可視化、ないしは具現化かな、と、読みしなにはおもっていた。
民族の誇りを内包した背中の鉤腕をフルに利用した飛翔。脳の機能障害を補完するためにうみだされた、水盤上に脳波で描かれる磁石の花を見せる装置。無人探査機の触覚と感覚を超えて身体的にシンクロした科学者。天体と同レベルの精度でときを刻む時計を世に送り出す職人の生涯。
繊細で美しい機械を媒介に、感情や思い、願いを増幅させる人間たち。その具現化がここで追い求められたテーマであり、その中心を担うのが人間の叡智たる科学でありマシンであろう、そんなふうに読み進めていた。
すべてを読み終えて振り返ると、それら、物語のど真ん中に据えられたはず -
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―――彼は空への憧れを決して忘れなかった。
長篇『華竜の宮』の世界の片隅で夢を叶えようとした少年の信念と勇気を描く表題作ほか
18世紀ロンドンにて航海用時計の開発に挑むジョン・ハリソンの周囲に起きた不思議を描く書き下ろし中篇「幻のクロノメーター」など
人間と技術の関係を問い直す傑作SF4篇。
長編SF「華龍の宮」を書いた上田 早夕里の短編集
表題作の爽やかな雰囲気好きやなー読んでて澄みきった空気吸ってるような感じやった。
人の心を「見る」装置にまつわる「マグネフィオ」は一転切ない雰囲気やったな。
白乙一が好きな人にはいい感じやと思う。話の構成とかアイデアが似てる。
人 -
Posted by ブクログ
今まで、読む機会を逸していた作者の作品で、華竜の宮の評判が良いのは分かっていたが、読めていなかったので、こちらが初読になった。同じ世界観で描かれた表題作は、長編を読んでいなくても素直に読むことができ、良くある、分かっている人にしか分からないという狭隘な世界でなく、単独作品として十分に楽しめる。その他の作品もSFの体裁を取りながら、人間が主役で、そのために世界観を構築しているので、実に読みやすい。テーマは技術と人間との関係で、近い将来、人と機械の在り方が融合に近づいていくであろう世界で、それでも人間は人間なのだという話が良い。他の作品も読みたくなったのは久しぶりである。
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ネタバレ著者初読。パイセン本。
上田早夕里『魚舟・獣舟』は、ページをめくるたびに“生き物としての人間”が静かに姿を現してくる、深い余韻を残す短編集だった。どの物語も独立した世界を持ちながら、共通して流れているのは、変わりゆく環境とそこに必死に生を繋ごうとする人々の確かな息づかいだ。
表題作「魚舟・獣舟」では、異形の存在と共に生きる海上民の姿が印象的で、未知の生命に抱く畏れと敬意が見事に交錯する。変容していく世界へ向き合う彼らの姿に、読者は“適応して生きる”という言葉の重さを思い知らされる。一方でそこには、厳しい現実を越えてなお、未来を切り拓こうとするしなやかな希望が宿っている。
「くさびらの道」 -
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幼いリラが言う。
「戦禍の風は、子供や大人の区別なくあらゆる人間を怪物に変える」
物語は第一次世界大戦の西部戦線、ドイツ軍の塹壕の中で無常感に蝕まれていたイェルクを、シルヴェストリ伯爵が拾う、リラという少女の護衛役とするために。
“国”とはいったいなんだろう。
どんな状態であっても、国の人のことを第一に考える……時には敵対する国の人を必要以上に憎んでまで。
必ずしも“戦争”という特殊な事態の中だけではなく、常日頃に思いがけなく顔を出す。
そして「経済」……人の世に巣作る魔物とは……
魔物以上に残酷な人間たちを救うために、イェルクたちは動き出す。
その手段が諜報活動って、俗人っぽく“魔物