上田早夕里のレビュー一覧

  • リリエンタールの末裔

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    短篇集。

    * リリエンタールの末裔
    空を飛ぶことを夢見て、たくさん働いてお金を貯めてグライダーを買うお話。裏のテーマは差別とかそういう感じのもの。リリエンタールとはハンググライダーの考案者。

    * マグネフィオ
    事故でなくなった人の心の動きを可視化したいという話。恋愛もの。ちょっと純粋すぎるかも。別に磁性化流体を使わなくてもディスプレイでも良いじゃんと思わないこともない。

    * ナイト・ブルーの記録
    海洋無人探査機を脳インタフェースで操縦しますよ。探査機を使っていたら、自分の手足のように感じてきましたよ。という話。

    * 幻のクロノメーター
    天文学と時計職人の話。途中から宇宙生物?らしきもの

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    2014年01月07日
  • リリエンタールの末裔

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    頭の中にサッと青いイメージが広がるSF短編集。

    1本目は、差別が黙認される窮屈な社会の中まっすぐに空を目指し、力強く未来の希望を見つめる表題作。最初はファンタジー色が強いのかな?と思い、取っつきづらく感じたけれど、世界観に明確なビジョンがあってすんなりと話に入り込めた。

    2本目は、人工感覚データの取引も目前となった時代、主観的感覚の価値が揺らぎ始めることが予感されるからこそ、苦しみも悲しみも全て手放すまいとする話。登場人物はみんな、自分の思うとおりに生きて、十分に欲張って…それなのに全然満たされていないように見えるのが、辛かった。
    そんな感覚でさえも、かけがえのない大切なものとして抱きしめ

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    2013年11月28日
  • 華竜の宮(上)

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    初めての世界観、聞きなれない言葉の数々、頭の中で映像化しながら進みました。とんでもない世界の話なのに、いちいち心に引っかかるのは、どうしてなんだろうなぁ。特に陸上民の「iプローブ」が気に入りました。これって常に自分の中にいるもう一人の自分。アイデンティティーなんじゃないかな?なんて引っかかるわけです。人間の欲とか自己実現とか生き方とか、盛りだくさんで書ききれないけど、ストーリーも下巻でどうなってしまうのか、先は気になるのに遅読です。自分の処理速度が、R.Rやナンシーくらい凄かったらいいんだけど。

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    2013年09月03日
  • リリエンタールの末裔

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    テーマは可視化、ないしは具現化かな、と、読みしなにはおもっていた。

    民族の誇りを内包した背中の鉤腕をフルに利用した飛翔。脳の機能障害を補完するためにうみだされた、水盤上に脳波で描かれる磁石の花を見せる装置。無人探査機の触覚と感覚を超えて身体的にシンクロした科学者。天体と同レベルの精度でときを刻む時計を世に送り出す職人の生涯。

    繊細で美しい機械を媒介に、感情や思い、願いを増幅させる人間たち。その具現化がここで追い求められたテーマであり、その中心を担うのが人間の叡智たる科学でありマシンであろう、そんなふうに読み進めていた。

    すべてを読み終えて振り返ると、それら、物語のど真ん中に据えられたはず

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    2013年07月14日
  • リリエンタールの末裔

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    久しぶりにSFを読みました。かつ、上田さんの作品は初めてです。

    裏表紙の解説に載っているように、人間と科学技術の関係性、在り方について書かれた短編集で、考えさせられました。どの作品も論理的に組み立てられていて読みやすかったです。登場人物も、技術やモノづくりに熱心に関わっており、興味深く面白い作品集でした。

    次は表題作「リリエンタールの末裔」の舞台となった長編『華竜の宮』を読んでみたいと思います。

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    2013年06月30日
  • リリエンタールの末裔

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    ―――彼は空への憧れを決して忘れなかった。
    長篇『華竜の宮』の世界の片隅で夢を叶えようとした少年の信念と勇気を描く表題作ほか
    18世紀ロンドンにて航海用時計の開発に挑むジョン・ハリソンの周囲に起きた不思議を描く書き下ろし中篇「幻のクロノメーター」など
    人間と技術の関係を問い直す傑作SF4篇。


    長編SF「華龍の宮」を書いた上田 早夕里の短編集

    表題作の爽やかな雰囲気好きやなー読んでて澄みきった空気吸ってるような感じやった。

    人の心を「見る」装置にまつわる「マグネフィオ」は一転切ない雰囲気やったな。
    白乙一が好きな人にはいい感じやと思う。話の構成とかアイデアが似てる。

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    2012年12月30日
  • リリエンタールの末裔

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    大規模海面上昇以後、リ・クリティシャス。睡蓮の花が水面の上でまるで咲いているように構築された海上都市、ノトゥン・フル。その上空を風を探し、上空気流に乗り、グライダーで自由を摑んだ鳥のように大空に向かい両翼を広げ滑空する様は、青年チャムの信念と勇気がどこまでもどこまでも続いている青という青の中で尊厳であり美麗である。
    大空に憧れを抱く者、大空に思いを馳せる者、全てリリエンタールの末裔である

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    2012年10月05日
  • リリエンタールの末裔

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    全編が技術をテーマにしている作品です。
    表題の「リリエンタールの末裔」では、主人公は多くの理不尽な困難にあう立場にあるものの、それでも悩みながら苦しみながら、でも最後には笑って進むだろうと感じた作品でした。
    爽やかな読後感のもののほか、テーマである技術に対して考えさせられるものもあるのでぜひ読んでみてください。

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    2012年08月02日
  • リリエンタールの末裔

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    今まで、読む機会を逸していた作者の作品で、華竜の宮の評判が良いのは分かっていたが、読めていなかったので、こちらが初読になった。同じ世界観で描かれた表題作は、長編を読んでいなくても素直に読むことができ、良くある、分かっている人にしか分からないという狭隘な世界でなく、単独作品として十分に楽しめる。その他の作品もSFの体裁を取りながら、人間が主役で、そのために世界観を構築しているので、実に読みやすい。テーマは技術と人間との関係で、近い将来、人と機械の在り方が融合に近づいていくであろう世界で、それでも人間は人間なのだという話が良い。他の作品も読みたくなったのは久しぶりである。

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    2012年07月27日
  • 成層圏の墓標

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    ・化石屋の少女と夜の影
    ・ヒトに潜むもの
    ・封じられた明日
    ・成層圏の墓標
    ・車夫と三匹の妖狐
    ・龍たちの裔、星を呑む
    ・天窓(書下ろし)
    ・地球をめぐる祖母の回想、あるいは遺言
    ・ゾンビはなぜ笑う
    ・南洋の河太郎(書下ろし)
    SF全10編。久しぶりの上田早夕里。  
    どの作品も面白く読んだが、 
    どこか切なく、悲しみがにじむファンタジーとして完結している。
    南洋の河太郎だけは続編が読みたいと思った。

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    2025年11月28日
  • 魚舟・獣舟

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    著者初読。パイセン本。

    上田早夕里『魚舟・獣舟』は、ページをめくるたびに“生き物としての人間”が静かに姿を現してくる、深い余韻を残す短編集だった。どの物語も独立した世界を持ちながら、共通して流れているのは、変わりゆく環境とそこに必死に生を繋ごうとする人々の確かな息づかいだ。

    表題作「魚舟・獣舟」では、異形の存在と共に生きる海上民の姿が印象的で、未知の生命に抱く畏れと敬意が見事に交錯する。変容していく世界へ向き合う彼らの姿に、読者は“適応して生きる”という言葉の重さを思い知らされる。一方でそこには、厳しい現実を越えてなお、未来を切り拓こうとするしなやかな希望が宿っている。

    「くさびらの道」

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    2025年11月18日
  • 上海灯蛾

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    最後まで読み終わってから最初の数ページを読み直すと楊直の人となりがわかった後なので、この遺体を流すシーンに最初と全く違う印象を受ける。

    「魔都」という響きに相応しい世界を見ることができるし、何故このタイトルなんだろうと思っていたが途中でそこに触れるような描写(次郎がそう思う)シーンがある。
    そして楊直がとても魅力的。

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    2025年10月04日
  • 成層圏の墓標

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    様々なタイプの10作品を収めた短篇集。基本的にはSFだが、バリバリのジャンル小説ではなくて、肩肘張らずに読めるタイプの作品だ。
    初出は6篇がアンソロジーシリーズ「異形コレクション」、中国の「春節SF祭り(科幻春晩)」とアンソロジー『地球へのSF』から1篇ずつ、そして2篇が書き下ろしだ。アンソロジーに収録された作品が多いので、作者の熱心なファンだと既読が多いかもしれない。
    どれも愉しく読めたが、「封じられた明日」、「車夫と三匹の妖狐」、「ヒトに潜むもの」がもろにツボだった。

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    2025年08月04日
  • 成層圏の墓標

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    化石屋の少女と夜の影
    ヒトに潜むもの
    封じられた明日
    成層圏の墓標
    車夫と三匹の妖狐
    龍たちの裔、星を呑む
    天窓
    地球をめぐる祖母の回想、あるいは遺言
    ゾンビはなぜ笑う
    南洋の河太郎

    いつのながら、上田早友里さんの異端者物語は面白い。
    この短編集もどれをとっても外れなし。面白かった。

    お薦めはすべてですが、特にといえば
    「ゾンビはなぜ笑う」
    「南洋の河太郎」

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    2025年07月07日
  • 成層圏の墓標

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    読み応えのある小説でした。
    南洋の河太郎は河童をテーマにしたストーリーですが、リアルで説得力のある内容になってました。

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    2025年06月15日
  • リラと戦禍の風

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    幼いリラが言う。
    「戦禍の風は、子供や大人の区別なくあらゆる人間を怪物に変える」

    物語は第一次世界大戦の西部戦線、ドイツ軍の塹壕の中で無常感に蝕まれていたイェルクを、シルヴェストリ伯爵が拾う、リラという少女の護衛役とするために。

    “国”とはいったいなんだろう。
    どんな状態であっても、国の人のことを第一に考える……時には敵対する国の人を必要以上に憎んでまで。
    必ずしも“戦争”という特殊な事態の中だけではなく、常日頃に思いがけなく顔を出す。

    そして「経済」……人の世に巣作る魔物とは……

    魔物以上に残酷な人間たちを救うために、イェルクたちは動き出す。
    その手段が諜報活動って、俗人っぽく“魔物

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    2025年06月15日
  • 成層圏の墓標

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    中短編10作
    どこを切り取っても作者らしい解釈で、その世界観は唯一無二だろう
    単に悲観的なだけではなく、そこにある人情模様というか、ベタベタするわけじゃないけど突き放さない、絶望の中に光を探す、そういうところが好き

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    2025年06月12日
  • 上海灯蛾

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    当時の魔都上海とは勿論街並みは変化しているものの、上海には実際に行ったことがあり、イメージし易い環境で読破できたが、当時の日中の関係性をより理解した上であれば、より能動的に愉しむことが出来たかもしれない。

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    2025年05月11日
  • 上海灯蛾

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    ネタバレ

    <目次>
    序章上海1945
    第1章阿片の園ー上海1934
    第2章田
    第3章栄華
    第4章交戦
    第5章鵬翼
    第6章詭道の果て
    終章夢と枯骨
    後記

    2023/3単行本発行
    2025/3/15第1刷(文庫)

    P94(上海に戻る日本人の男が教えてくれた)
    都会には、いいことばかりあるわけではない。
    だが、未知の世界への渇望を抱いているなら、
    思い切って心を解き放てと。

    著者、上海三部作の第3弾。
    この本の新聞広告を見て、3冊購入し順に読んで
    いったもの。第1・生物兵器・感染症、
    第2・和平工作、第3・麻薬取引
    上海の旧フランス租界に住んでいたからわかる。
    魔都というが、その感覚が。
    怨念や情念が残

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    2025年05月03日
  • ヘーゼルの密書

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    ネタバレ

    <目次>
    序章上海1931
    第1章上海1939
    第2章榛の花
    第3章合議
    第4章ミッション1
    第5章ミッション2
    第6章ミッション3
    終章散花

    2021/1単行本出版
    2024/1/20第1版

    著者上海3部作の第2弾本。和平工作活動。
    第3弾の上海灯蛾の新聞広告を見て、著者のことを
    知り、上海3部作と著者本人が言っている小説の文庫を
    まとめて購入したもの。

    P133大陸に渡ってきた日本人の大半は内地にいた頃と
    同じ暮らし方をする。~中には「内地でやれないことを
    やる」という、野望に燃え、傍若無人に振る舞う者も
    少なくなかった。異文化に馴染もうとせず~

    P162国同士はともかく、末端にい

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    2025年04月28日