あらすじ
※本書は、角川書店単行本『リラと戦禍の風』を文庫化した作品となります。重複購入にご注意ください。
第一次世界大戦下、両親を亡くしたポーランド人の少女リラは、不死の魔物である「伯爵」と館で暮らしていた。護衛のドイツ人兵士イェルクと共に、ヨーロッパ中で起こる悲劇を目の当たりにした彼女は、伯爵の力を借りて祖国を助ける計画を立てる。一方、イェルクもまた人類を救うため、大きな決断をする――。
なぜ人は争いを繰り返し、生きるのか。愚かで愛おしい人類の歴史と業を描き切る、重量級エンターテインメント長編。
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Posted by ブクログ
不思議な話だった。
実際の戦争をベースにしているのに、魔物の目を通しているせいか、ベタベタした残虐さはない。
視点がよく変わるのに、精一杯生きたひとたちだから、ひとりひとりに引き込まれる。
毎回、もっともっと長編で書いてもらえないかなあ、と思ってしまう。
読み終えたくなかったなあ。
Posted by ブクログ
幼いリラが言う。
「戦禍の風は、子供や大人の区別なくあらゆる人間を怪物に変える」
物語は第一次世界大戦の西部戦線、ドイツ軍の塹壕の中で無常感に蝕まれていたイェルクを、シルヴェストリ伯爵が拾う、リラという少女の護衛役とするために。
“国”とはいったいなんだろう。
どんな状態であっても、国の人のことを第一に考える……時には敵対する国の人を必要以上に憎んでまで。
必ずしも“戦争”という特殊な事態の中だけではなく、常日頃に思いがけなく顔を出す。
そして「経済」……人の世に巣作る魔物とは……
魔物以上に残酷な人間たちを救うために、イェルクたちは動き出す。
その手段が諜報活動って、俗人っぽく“魔物”らしくないところが現実的。
やがて戦いは止む、
でもまたさらに酷い戦いが始まる。
「人間であるとは、どういうことなのか」
魔物を通じて考える……
Posted by ブクログ
昨年からちょっとずつ読み進めて、1月に読み終えてたのに感想書かずに放置状態。
第一次世界大戦中、床屋さんから従軍し、死の淵で怪しきものに出会い半分人で亡くなったドイツ人のお兄さんが、人でありながら妖に育てられたポーランド人の少女の護衛となりやがて本物の妖になる。
世界史知識が中学生レベルで止まってるものの、色々あの時代興味深いわ。
更にその妖ことシルヴェストリ伯爵が妖になったきっかけがワラキアの串刺し公ヴラド3世とか、なんというかほんと個人的にご縁を感じます。(結局その辺りの歴史が好きなんだなあという。皆川博子先生とか、佐藤亜紀先生とか)
2023年3冊目。
Posted by ブクログ
戦争をファンタジーで描いた物語。
途中まではどう落とし込むのか分からなかったけど、ちゃんと終わってた‥
解説のメタファが指しているものが分からない。
それにしてもあんなにたくさんの資料を元に書いたの作家さんほんとに凄い。普通に読んだら何年もかかりそうなので必要な部分だけ読んだのだろうけど…
Posted by ブクログ
「『人間である』とは、どういうことなのか。おそらく人間は、常にそれを己自身に向かって問い続けていなければ、容易に、人でないものに変わってしまうのだ」
かのワラキア公ヴラド3世の血を受けて、不死となった「伯爵」以下の魔物の目を通して描かれる、第一次大戦。庶民の窮乏など知ったことかで、戦争の継続を選ぶドイツの上層部には歴史と分かっていても怒りが募るが、2022年4月現在、似たようなことがリアルタイムで起きてるからなあ。ヒロインのリラが伯爵に、「私たち、美味しいパンと寝床があれば、それだけ充分なのに」と言うのだが、これはもちろん「どうして」と続く。ホントにどうしてなんだろうね。
Posted by ブクログ
この小説には魂を半分に分けられた若い男が登場する。
片方は戦地で実体に宿って戦闘に明け暮れ、もう片方は戦争とは縁遠い古城で魔物によってつくられた「虚体」という器に宿り少女の護衛をつとめる。
まだ読んでいる途中だが、色々考えてしまった。