上田早夕里のレビュー一覧
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「オーシャンクロニクル」シリーズ、初の長編!
華流の宮です。上下巻まとめてのレビュー。
前にも書きましたが、舞台は25世紀の地球。
未来少年コナンみたいな、ウォーターワールドみたいな感じです。
が、読んでみると、これはプロットがガッチリ出来てる。
良くある「温暖化の影響により極地の氷が溶けて」なんてヌルいものじゃありません。
地殻変動により海溝が隆起。海面が260mも上昇した後の世界から物語スタートです!(リ・クリスティシャス)
そして50年後、地球深部からのアレで「プルームの冬」が訪れる。
これに人類はどう準備、対応するのか?って話です。
物語は、青澄の人工知性体「マキ」による”三人称 -
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地球環境の変化を経た未来の世界。大きな戦争を経て、人類も変化している。地上民と遺伝子を変え、海に生きる海上民。彼らは双子で産まれ、人と「魚舟」として共生する。海は資源豊富だが、戦争の爪痕がそこかしこに残り、彼らを苦しめている。
壮大なスケールと、ありそうでない設定をもとに書かれた物語。地上民の官僚でありながら官僚っぽくない青澄を中心に、国家の謀略や生物学的危機を乗り越えていく。語り手は彼のパートナーである人工知能で、この設定が下巻でよい仕事をする。語り口は少し重いけれど、ひとつひとつの描写が的確でイメージしやすく、ひとつの映画のようでとても面白い。
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初めて上田早夕里の作品を読んだ。海を舞台にした「オーシャンクロニクル・シリーズ」の第3弾。読むきっかけはハヤカワJAの新刊書というシンプルな理由。表紙の海の情景と、裏表紙の解説に書かれている「海上民」という言葉から、遥か昔のTVアニメ「海のトリトン」に近いのかなと思いつつ読み始めたら・・・見事にハマりました。設定もなんとなく似ている。トリトンの子供時代は陸上で育ち、出生の秘密を知ってから海上で生活し、友達のイルカ(ルカー、イル、カル、フィン)と行動を共にし、ポセイドン族と戦う等々。ちなみに、このアニメの原作は手塚治虫。
自由な海での生活と引き換えに、迫りくる大異変への怯え、その対策に奔走する -
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首を長くして待ったオーシャンクロニクル・シリーズの最新中短編集。短編三つと中編一つからなり、全編書下ろしである。すべて海上民と魚舟の視点から語られている。それらは、「華竜の宮」と「深紅の碑文」で描かれる時代の出来事となっている。そして短編「老人と人魚」では、名前こそ明かされないが長編に登場するある人物の最後が語られたりする。前述の2作品は、「日本沈没」や「デューン 砂の惑星」と比肩されることもあり、ぜひとも読むことをお勧めする。
そして圧巻は、中編「カレイドスコープ・キッス」だろう。海上民と地上民、海上民同士、人とアシスタント知性体(描写が少なめだが)の関係が上手く深く描かれている。最後 -
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下巻も読み応えがある世界でした。人の業は深い。
人類滅亡が避けられない未来がやってくるのを知りながらも、分断と闘争はなかなか止められないないというのが…血塗れの「深紅の碑文」という言葉が重くのしかかりました。
陸・海・空をそれぞれ、青澄・ザフィール・ユイという登場人物が中心になって描かれていました。
青澄は救援活動、ザフィールはラブカでの陸との闘争、ユイはアキーリ号を宇宙へ放つ、というそれぞれの闘いは悲しい結末や消息不明にもなったけど、それでも、アキーリ号出発は救いでした。青澄は脳内で見てたんだな…再読で、意識不明中だったのに気付きました。副脳凄い。
連作で続編も構想されているようなので楽しみ -
購入済み
独特の雰囲気がいい
魚舟獣舟から続く世界観に基づく独特の雰囲気がある作家。
この作品もその雰囲気を濃厚に持つ作品であるんが、終盤意外な展開もあって面白かった。
この作者の作品の中では最も面白い。
我々が「何物にも侵されない自分の心」「自由意志」と思い込んでいるものが、実はより上位の存在の道具に過ぎないのでは、
と考えさせらる作品であった。
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SFならではの話の壮大さに、肚の座った登場人物の仕事への意気込みを感じる掛け合い、多くのプレイヤーを動かしながら全体の調和を取る構成力、全てのレベルが高いと感じた1冊です。
ただでさえヤバくなってる地球が更にヤバくなる!(語彙力ゼロ)という状況となった下巻における序盤のハイライトは、理不尽だったり絶体絶命だったり、とにかく酷い状況に立ち向かおうとする人の気高さだったと思います。
登場する3者がそれぞれ3様の行動を取るものの、その行動はどこまでも自分のためではなく、所属するグループであったり、それ以上に人類全体であったりを想うがための行動。
限界の状況における職業倫理、あくまで誇り高くあろうと -
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ホントに面白いSF小説だった。これほど重厚で考えさせられるSFエンターテイメント大作を読ませてもらったのは久しぶり。
人類があと数十年で滅亡するかもしれないという状況で人々はどうやって生きるのか?
そんな究極の状態でも各国陣営は自分たちの利益をいかに守るか、そして自分たちがいかに生き延びるかということに汲々とする。
このお互いの腹の探り合いや政治的駆け引きの描写は行き詰まるものがある。
本書では日本はアメリカを中心とした国家連合ネジェスの中に含まれているが、いざという時にネジェスが本当に日本を救ってくれるかは分からないという状況。これは現在の日本の状況を皮肉的に描いているのだろう。
主 -
Posted by ブクログ
人類に壊滅的被害を与えたリ・クリティシャス後、海面が約250メートルも上がってしまった25世紀の地球が舞台。地球の地表の多くが海底に沈み、生き残った人間は、わずかに残った地表に暮らす陸上民と広大な海に暮らす海上民に分かれて暮らしていた。
海上に住む海上民は海上での生活に身体を適応させており、彼らは人間の遺伝子操作により生み出された「魚舟」と呼ばれる生物を海の上で人間が生活する空間として利用していた。
陸上民と海上民との対立やごく普通にAIを身体に埋め込んだ人間の生活、そして身体を遺伝子的に改造された海上民の魚舟での生活などが詳細に描かれており非常に面白い。将来あり得べき未来を今見てきたかのよ