ブレイディみかこのレビュー一覧
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良書。「はじめに」に書かれている一文にまずハートを射抜かれた。
「そんなわけで、よく理解できない事柄に出会ったときに人類がせねばならないことを、いまこそわたしもしなければならない、と思った。勉強である。」(p.7)
それまで移民を積極的とまでは言えなくても、近隣住人として受け入れていた(ように見える)労働者階級がなぜブレグジットに賛成票を投じたのか。自分の夫も含めて。そんな著者の切実な問いと答えが本書。
知的にスリリングな謎解きだし、イギリスとアメリカの違いも「欧米」と安易に一括りにするのは控えようとおもうくらいに明確だし、知らなかったイギリスの社会と文化を鮮やかに紹介してくれているし、ネオ -
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イギリスで保育士をしている日本人女性が見た日本。日英の育児比較的な軽いタッチの本かと思いきや、なかなかディープな本だった。ただ、ヨーロッパに住んでいないと、書いてあることに実感がわかないかも知れない。
イギリスと日本の貧困層の違いがとても興味深かった。著者本人曰く、学問が無いそうだが、観察したものや経験からの洞察は鋭い。特になるほどと思ったのは、若者と政治。若年層は選挙に行かないので政治に最も見放されていると著者は考える。また、日本では権利と義務がセットになっていて、義務を果たさないものに権利は無い。英国では権利は国民のもの、義務は国家のもの。日本ではその両方を持つのは国民で、国家と国民の役割 -
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現状の保育園事情からも日本は世界の先進国より随分遅れているし、保育園のみならず、幼児教育のこと、子供の権利のことを真剣に考えられていなかったことにただただ驚く。保育園にただ子供を預けられればいいという話ではない。 実際に自分がいくつも保活で保育園を見学して、狭い、汚い、交通量が多い立地など、小さい子供を預けるのに躊躇する保育園がいくつかあったことを思い出す。しかしどこにも受からなければ、その躊躇したところにも預けざる負えなかったかもしれない。実際にそういうことも起きているのが日本の現状でもある。
本当におかしい。子供は未来なのに。
子供の権利、保育士という命を預かる専門職の待遇改善など早急に -
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昨年は「保育園落ちた‥」のブログや、新規保育園の計画中止のニュースで「待機児童問題」という言葉を何度も聞いた。
だけど「待機児童」の何が問題なのか?本当には分かっていなかった‥問題は、保育そのもの。安心して「保育」を受けられなければ、親は働くことができない。もちろんそれは二人であろうがシングルだろうが、すべての「親」のこと‥。どんな職場であれ必ず「親」がいる。考えてみれば保育の問題は、働く人=この国に暮らすすべての人にとっての問題なのだ。いやいや‥日本、大丈夫だろうか?
この本はこどもが身近にいる、いないに関わらず、行政や政治家には課題図書にしてもらいたいし、なるべく多くの人(特に若者)が読ん -
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イギリス在住の保育士でライターの「フレディみかこ」氏が、2015年・日本滞在時の取材をもとに書いた最新著。友だちに教えてもらって読みました。
的確な日本の現状に対する分析、これからの日本を考える上でもとても示唆的な内容をもった本だと思います。
特に印象に残ったのは、「ミクロ(地べた)」を「マクロ(政治)」に持ち込むという視点。当事者の実態(誰かがきちんと代弁すること含めて)があり、具体的に改善するための政策(政治)が大事であることを改めて考えました。どう伝えられるか、その観点を大事にしたいと思いました。
保育に対するイギリスと日本考え方の違いなどもよくわかりました。一億総中流に関す -
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「2016年2月の東京を記録する」ために本書は書かれた。
自分のことを「地べたの保育士」で「無学な人間」とおっしゃる、在英のブレイディみかこさん。もとより何らかの「日本の問題点」を探り出し突破口を見つけるなんて、大それたことは想定していない、と。
けれど、この本にはその「大それたこと」に関するヒントがたくさん詰まっている気がしてならない。自分の身の回りのこと、ミクロ(地べた)とマクロ(政治)は直結している。繋がり、声をあげよう。動こう。「実際に自分の目で見たものだけを信用する」ジャック・ロンドンを紹介し、自分もそうありたいとの著者の決意を尊敬し、共感する。今の日本(と世界)を理解するための必読 -
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続編、息子(僕)自身と母ちゃん(筆者)の文章が相変わらずクール。筆者の社会を覗く透徹した目と文章がとても心地よく、Emotionalなところとうまくバランスが取れていて非常に読みやすい。するする読めるんだけど、内容的には結構重い話が多くてイギリスの貧困、移民、人種差別、階級断絶、ブレグジットといった内容が息子の学校生活との絡みから語られており、どこの国も違いはあれど問題山積みなんだなぁと気付かされる。確か筆者がまだこんなにバカ売れする前、本人曰くの底辺保育士時代のコラムを昔どこかで読んだことがある気がするのだが、そのころから平易な言葉でイギリスの問題を下から語っていて非常に印象に残っている。も
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「他者の靴を履く」という表現が使われるエンパシーについて、色々な視点から考察した1冊。アカデミックなようで、かつ著者のお子さんの話など、身近な事例も織り交ぜられていて、面白かった。
エンパシーとシンパシーの違いは、「気持ち」の問題なのか、あとから会得できる能力なのかであること。
エンパシーは他者の立場に立って物事を考えることだが、それが行き過ぎると他者に自分を明け渡すことになる。だからこそ、アナキズムに言われるような、自分が自分である自由を追求する姿勢と共存する必要がある。
エンパシーの身につけ方は、幼児期までに遡り、色々な人や本の中の登場人物の気持ちを、「この人はどういう考えで、こういう行 -
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短編集。筆者のあとがきと一緒になってしまうが、どの話も労働と負債(何が"負債"になるかは各短編で異なる)について書かれている。
考えたこともなかったが、言われてみれば私が働いている理由も、家や車のローンやら負債に満ち溢れている。生きているだけで、負債を抱えてるということか。言葉にすると結構嫌な響きだが、普段、負債のことは忘れている。
督促を仕事としている女性は、「督促は正義と暴力」と考えていた。貸したものを催促することは正しいが、一方で、正義のもと振りかざされる暴力という見方も確かにできる。私も借りたものは返すべき、返さない者は底辺だと思っている。
しかし、返さない側から -
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イギリスで起こった占拠事件を元に書かれた物語。
イギリスには移民問題や経済格差があると同作者の別作品でなんとなく知ってはいたが、この事件については知らなかったので色々考えさせられた。
家賃が高騰し、庶民が普通の家に住めなくなっているが、誰も住んでおらず手付かずの住居が沢山ある状況で、何もしてくれない行政。
当事者と周りの支援者との温度差や、当事者の訴えが当事者達の手の届かないところで大きくなっていく様子などリアルに感じた。
日本でも同じような問題が起きる(既に起きてる?)のではないかと思った。
本作の内容と関係ないが表紙のジェイドのイラストは本文の「ふくよか」「赤毛」といった表現からするとち