第1章 成功に貢献することが最大のモチベーション
たしかにネットフリックスは極端な例かもしれない。だがスタートアップから巨大ビジネスまで、どんな企業も優れた適応力を身につけなければ生きていけない。新たな市場需要を先読みし、大きなビジネスチャンスや新しいテクノロジーをものにする能力がなければ、ライバル企業にイノベーションで先を越されてしまう。私はネットフリックスをやめてから、世界中の企業にコンサルティングを行っている。ジェイ・ウォルター・トンプソンなどの有力企業をはじめ、ワービー・パーカーやハブスポット、インドのハイク・メッセンジャーのような成長著しい新興企業、創業間もないスタートアップなど、多種多様な企業にコンサルティングを提供するうちに、企業をとり巻く競争環境を、より幅広い視点からはっきりととらえられるようになった。
■基本的な行動規範
●マネジャーは自分のチームだけでなく会社全体がとりくむべき仕事と課題を、チームメンバーにオープンにはっきりと継続的に伝える。
●徹底的に正直になる。同僚や上司、経営陣に対して、時を逃さず、できれば面と向かって、ありのままを話す。
●事実に基づくしっかりした意見をもち、徹底的に議論し検証する。
●自分の正しさを証明するためではなく、顧客と会社を第一に考えて行動する。
●採用に関わるマネジャーは、チームが将来成功できるように、適正なスキルを備えハイパフォーマーをすべてのポストに確実に配置する。
するとリードはいったのだ。「僕らが本当に働きたいと思えるような会社をつくれたらいいと思わない?」
この言葉に興味をそそられた。私がピュアに参画したのは、人事制度が敷かれたあとだった。今回は構想段階から参加できるという考えに惹かれた。私は聞いた。
「もしそれをやったとして、最高の会社ができたかどうかを、どうやって判断するの?」
「そうだな、この会社の問題をこの会社の同僚と解決したいと思いながら、毎日会社に来たくなる」と彼は答えた。
その考え方が気に入った。リードはこのひと言で、人が仕事に何を求めるかをズバリ表した。それは、職場にやってきて適正な人材がそろったチームと信頼し尊敬する同僚たちと力を合わせ、一心不乱にすばらしい仕事ができることだ。
このとき私たちは最初の重要な気づきを得る。それは、最高の結果を出せる人だけが会社に残っていたということだ。したがって経営陣が従業員のためにできる最善のことは、一緒に働く同僚にハイパフォーマーだけを採用することだと学んだ。これはテーブルサッカーの台を設置したり、無料で寿司を提供したり、莫大な契約ボーナスやストックオプションを与えたりするよりずっと優れた従業員特典だ。優秀な同僚と、明確な目的意識、達成すべき成果の周知徹底―この組み合わせが、パワフルな組織の秘訣である。
■まとめ
・チームが最高の成果を挙げられるのは、メンバー全員が最終目標を理解し、その目標に到達するために、思うままに創造性を発揮して問題解決にとりくめるときだ。
・チームのやる気を最大に高めるのは、優れたチームメンバーが、つまり、ともに切磋琢磨しながらすばらしい仕事ができるメンバーがそろっていることだ。
・経営者の最も重要な仕事は、ともに切磋琢磨しながらすばらしい仕事ができるハイパフォーマーだけをチームにとりそろえることだ。
・無駄な方針、手順、ルール、承認をできる限り排除しよう。トップダウンの指揮統制方式はスピードと機動性の妨げになる。
・たえず実験を繰り返し、できる限り無駄ををそぎ落とそう。方針や手順を廃止したあとで必要とわかったら、元に戻せばいい。製品やサービスの改善に努めるのと同様、文化にもたえず磨きをかけよう。
第2章 従業員一人ひとりが事業を理解する
新入社員大学では、本題に入る前に参加者に念を押した。「今日は自分から働きかけなければ何も学べません。質問をしなければ、答えは得られないわよ」。今から思えば、これがネットフリックスの初期の成功の布石だった。このひと言で、あらゆるレベルの従業員が、自分に期待されている行動についてであれ、経営陣の下した決定についてであれ、誰に対しても遠慮なく説明を求めることを許されたのだ。従業員がよりよい情報や知識を得ただけでなく、やがて社内全体に好奇心の文化が生まれた。そして従業員の鋭い質問が重要な発見につながることも多かった。
■まとめ
・どんなレベルの従業員も、自分とチームの任務だけでなく、事業全体のしくみや会社が抱える課題、競争環境などを大局的に理解することを望み、必要としている。
・事業のしくみを正しく理解することが、何よりも大切な学習だ。それはどんな「従業員の能力開発」研修よりもためになるし、おもしろい。この知識が高い業績と生涯にわたる学習の起爆剤になる。
・経営陣と従業員のコミュニケーションは、本当の意味で双方向でなくてはならない。リーダーが質問や提案を歓迎し、気軽に意見をいい合える雰囲気づくりに努めれば努めるほど、レベルにかかわらずすべての従業員が、驚くようなアイデアやひらめきを与えてくれる。
・部下が何もわかっていないように思えたら、それはたぶん、知るべき情報を知らされていないからだ。必要な情報を与えよう。
・あなたが従業員に事業の現況や問題点を―よかろうが悪かろうが伝えなければ、彼らはほかからその情報を得るだろう。そしてその情報はたいていまちがっている。
・コミュニケーションの仕事に終わりはない。1年、一四半期、1か月、1週に一度行うだけの仕事ではない。円滑なコミュニケーションは競争優位を支える。
第3章 人はうそやごまかしを嫌う
ネットフリックスの経営陣はあの手この手で、正直な姿勢を率先して示した。その一環として、チームミーティングで「スタート・ストップ・コンティニュー」と呼ばれるエクササイズを行った。各人が誰か一人の同僚に対して、始めてほしいことを1つ、やめてほしいことを1つ、とてもうまくやっていて続けてほしいことを1つ伝えるのだ。私たち経営陣は透明性の価値を固く信じていたから、経営会議でみずからこれを行った。そしてそれぞれが自分のチームに戻り、経営会議の「スタート・ストップ・コンティニュー」で誰がどんなことをいわれたかを全員に話して聞かせた。そうするうちに、オープンな姿勢が大切だという認識が、社内中にさざ波のように広がっていった。
■まとめ
・従業員は事業や自分の業績について、ありのままの真実を告げられても対処できる。彼らが聞く必要があり、聞きたいと強く願っているのは、ありのままの真実なのだ。
・正直に、適切なタイミングで、面と向かって気になる点を伝えることに勝る問題解決法はない。
・徹底的に正直な姿勢は、緊張を和らげ、陰口に歯止めをかけ、理解と尊敬を深める。
・徹底的に正直な姿勢は、胸にしまわれていた反対意見をあぶり出す。そうした意見は重要な発見につながることも多い。
・部下の仕事ぶりに問題があるとき、それを本人に直接ありのままに伝えなければ、マネジャーやほかのチームメンバーがミスをカバーするはめになり、不当な負担を強いられる。
・話し方に気を配ろう。リーダーは批判的なフィードバックの伝え方を練習し、具体的で、建設的で、善意が伝わるような方法で話そう。
・同僚同士でフィードバックを送り合えるシステムをつくろう。ネットフリックスでもシステムをつくり、年に一度のフィードバック・デイを設けて、全員が送りたい相手にコメントを送っている。
・みずから模範を示し、まちがいを率直に認めよう。また、自分が何をもとに決定を下したのか、どこでまちがったのかを説明しよう。そうすれば部下は上司と真っ向から対立する考えや意見であっても率直に話してくれる。
第4章 議論を活発にする
カルチャーデックでは、ネットフリックスが採用し昇進させる人材に求める重要な資質として、「優れた判断力」を挙げた。曖昧な状況で適切な決定を下し、問題の原因に深く切り込み、戦略的に考え、その考えを明確に表明する能力だ。このスキルを磨くには、こうしたオープンで活発な議論に参加するのが一番だ。また私たちが求めるもう一つの重要な資質、「勇気」を磨く機会にもなる。自分の意見に耳を傾けてもらえ、自分にも貢献ができるとわかれば、思い切って発言できるものだ。
スティーブ・マクレンドンはオープンな議論の利点について、もう一つすばらしい指摘をしてくれた。多くのマネジャーが扱いに悩む若者たち(あの厄介なミレニアル世代)は、こうした透明性や、自由に質問できる機会を好むのだという。
■まとめ
・経営判断をめぐる白熱したオープンな議論に参加するのは、チームにとってスリリングな体験だ。チムは分析力を最大限に発揮してこれに応えるだろう。
・議論のルールを明確に定めておこう。参加者はしっかりした主張をもち、その根拠を提示できるようにしておく。憶測ではなく事実に基づいた議論を展開すること。
・参加者はお互いの見解や議論されている問題について、憶測するのではなく、直接説明を求めよう。
・議論では私心をもたず、必要とあれば自分の主張を捨て、議論に負けたことを率直に認めよう。
・議論を企画しよう。参加者に人前で意見を表明させる。舞台上で行ってもいい。逆の立場から議論させ、自分の主張の穴を見つけさせるのもいいだろう。十分な準備をしてのぞむフォーマルな議論が、画期的な発見につながることもある。
・事実に見せかけたデータに注意しよう。優れた結論を得られるかどうかは、データの質にかかっている。人は自分の先入観を裏づけるようなデータに目をとめる傾向にある。厳格な科学的基準を満たすデータだけを採用しよう。
・議論は小集団で行うのが一番だ。誰もが遠慮なく発言できるし、黙っているととても目立つからだ。また大人数で行う場合より集団思考に陥りにくい。
第5章 未来の理想の会社を今からつくり始める
■まとめ
・敏捷さを保ち、変化にすばやく対応するために、将来必要になる人材をいま雇おう。
・「今から6か月後に高い業績を挙げるために、会社はどう変化していなくてはならないか」を定期的にじっくり考えよう。頭の中で映画をつくり、従業員がどこんな仕事をしていて、どんなツールやスキルをもっているのかを想像する。次に、その未来を実現するために必要な変革を今すぐ実行に移そう。
・人数を増やしても仕事の量や質が高まるとは限らない。人数は少なくても、優れたスキルをもつハイパフォーマーをとりそろえた方がよい場合が多い。
・マネジャーは成功しているスポーツチームを手本にしよう。スポーツチームはたえず新しい人材をスカウトし、布陣を入れ替えている。マネジャーの仕事はチームをつくることであって、家族を養うことではない。
・チームメンバーのなかには、会社がめざす未来に高業績を挙げられるような人材に成長しない人もいる。そうしたメンバーの能力開発に投資するのは会社の仕事ではない。製品と市場の開発が会社の仕事である。
・業績にとってベストだと思えば、社内の人材を開発・登用しよう。社外から採用した方がよければ、迷わずそうしよう。
・従業員一人ひとりが自分の能力開発に責任をもつのが理想的だ。これができれば、従業員と会社の双方に最適な成長が望める。
第6章 どの仕事にも優秀な人材を配置する
その意味で、従業員定着率はチームづくりや文化のよしあしを測る指標に適さないと、私は考える。たんに会社につなぎとめている従業員の数だけでなく、必要なスキルと経験を備えた人材の数を示す指標が必要だ。そんな人材を何人確保できているか?必要なスキルと経験をそなえた新しい人材を何人採用するつもりか?それに、交代させる必要のある人員を厳しく見きわめているか、その決定を効率的に行動に移しているかどうかも注意深く見守る必要がある。
■まとめ
・採用担当マネジャーの最も重要な仕事は、ハイパフォーマーを採用することだ。採用担当マネジャーは、率先して人材パイプラインを開発し、採用プロセスのあらゆる面で指導力を発揮するべきだ。リクルーターの指揮者は彼らである。
・時代を先取りできるチームや企業は、人材プールをつねに補充している。
・従業員定着率は、チームづくりの成功を測る指標として不適切だ。最もよい指標は、すべての職務に優れた人材を配置できているかどうかだ。
・ときには多大な貢献をした人材であっても解雇して、新しい業務のハイパフォーマーや異なるスキルをもつ人材を採用しなくてはならないことがある。
・ハイパフォーマーを採用するには、ボーナスやストックオプション、高額の給与、昇進の確約でさえ、決め手にならない。ほかのハイパフォーマーとチームを組んで学び合えること、仕事が楽しいと思えることが、最も強力な決め手となる。
・優れた人材を採用するとは、「A級プレーヤー」を採用することではない。チームのニーズに最も合致した人材を探すことだ。あるチームにとってのハイバフォーマーは、ほかのチームにとってはそうでないかもしれない。
・履歴書にとらわれてはいけない。工夫していろいろな場所で人材探しをしよう。職務歴を掘り下げよう。幅広い経験を検討し、基本的な問題解決能力に目を向けよう。
・面接を最初から最後まで、心に強く残る経験にしよう。面接するすべての候補者に、この会社に入りたいと思ってもらえるようにしよう。
・リクルーターは、どんなに専門的な事業であっても、そのしくみを周知しているビジネスパーソンでなくてはならない。採用プロセスに協力する、創意あふれる積極的なパートナーでなければならない。どんな人材が必要かをリクルーターにくわしく説明すれば、すばらしい見返りが得られる。
第7章 会社にもたらす価値をもとに報酬を決める
■まとめ
・どんな職務に必要なスキルや才能も、定型的な職務内容とは一致しない。また定型的な職務の給与データをもとにあらかじめオファーの水準を決めておくべきでない。
・給与調査の情報は現在の市場状況の後追いでしかないから、それだけをもとにオファー金額を決めるべきでない。
・事業の現状から考えて支払える金額だけでなく、その人材が将来もたらすかもしれない収益も考慮に入れよう。
・給与を市場水準の何パーセンタイルと決める代わりに、その分野のトップレベルの給与を支払うことを検討しよう。すべての職務でなくても、会社の成長のカギを握る職務だけでもいい。
・契約ボーナスを与えると、入社の翌年に減給になったかのような印象を与えかねない。それより、トップパフォーマーに見合うだけの給与を支払う方がいい。
・報酬に関する情報を従業員と共有することで、給与に関してよりよい判断を下し、偏見を減らし、さまざまな業務の業績への貢献について正直に話し合うことができる。
第8章 円満な解雇の方法
■まとめ
・従業員は自分の才能と情熱が、会社のめざす将来に合っているかどうかを見きわめ、ほかの会社の方が自分に合っているのかどうかを判断できなくてはならない。
・従業員は自分の仕事ぶりに対する評価を頻繁に受ける必要がある。あなたが人事考課制度を廃止できる立場になかったとしても、従業員の業績について話し合うためのミーティングを頻繁に設けよう。
・人事考課を廃止することが可能であれば、試しにやってみよう!この制度のせいで膨大な時間が無駄になっているうえ、従業員は業績に関するリアルタイム情報が得られないことが多い。
・業績改善計画 (PIP)を、従業員の業務改善を助けるための真摯なとりくみにするか、さもなければ廃止してしまおう。
・解雇された従業員が会社を相手に訴訟を起こす可能性は、とくに業務上の課題について定期的に話し合いをもっていた場合は、ゼロに近い。
・従業員エンゲージメントにとらわれるのは的外れだ。やる気の高さと業績の高さの間に必ずしも相関性はない。また今の職務で高い業績を挙げていても、将来の職務で高い業績を挙げられる保証はない。
・人事決定を下すにあたって、私流のアルゴリズムを使ってほしい。「この従業員が情熱と才能をもっている仕事は、うちの会社が優れた人材を必要とする仕事なのか?」
・すべてのマネジャーは、優れたチームメンバーが他社でよい機会を見つけられるよう、積極的に支援してやれる。解雇はすばらしい結果を生むことがある。
・人事考課とチームづくりに関して、この柔軟な手法をとれば、当事者全員がよりよい結果を得られるだけでなく、チーム全体の業績向上にもつながることは明らかだ。
結論
重要なのは、段階的に実験を行うこと、そしてバリエーションを許容することだ。同じ手法でも、チームリーダーによってとり入れ方がちがうかもしれない。またチームやときには部全体が、独自の文化を維持しながら、共通の基本原則を導入することもできる。ジェシカがいってくれた言葉で、私のもう一つのお気に入りは、ネットフリックス文化が「社内全体に生きている」というものだ。エンジニアリングの文化は、マーケティングやロサンゼルスのコンテンツクリエーターの文化とはちがうが、つきつめてみれば全員が同じ基本原則をもとに団結しているのだ。
文化変容を成功させるもう一つのカギは、この先どんな挑戦や変化が待ち受けるのかを正直に伝えることだ。ある全社会議でリードが質問に答えていたとき、誰かが立ち上がっていった。「恐怖の文化にどう対処するかをそろそろ考えるべきだと思う」。これはドットコムブーム後の大不況のときのことで、従業員は解雇を恐れ、私たち経営陣もそれが現実に起こり得ることをはっきり伝えていた。立ち上がった男性は、その日早くに行ったブレゼンテーションで、ネットフリックスはプロダクトに小さな変更を加えるのではなく、大きな山を登るのだと主張した。リードはこの比喩に乗っかって、恐怖も捨てたもんじゃないかもしれないな、といった。K2のような巨大な山に挑むときは、酸素をもっていく必要さえある。だが登山中に嵐が来てベースキャンプに戻ったとしても、失敗者とは呼ばれない。私はこのたとえ話が気に入った。私たちが挫折の避けられない大きな挑戦に立ち向かっていることを、そしてすばらしい冒険をしていることを見事に表していたからだ。
自由と責任の文化をつくることによって確実に得られるものを一つ挙げるなら、前に踏み出そうとする人たちに勇気をもらえることだ。自分には力があり、自分のキャリアを自分でコントロールしていると感じれば、自信が湧いてくる。彼らが思い切って発言し、リスクをとり、失敗から立ち直り、大きな責任を引き受ける自信にあふれる様子に、あなたも驚かされるはずだ。組織の全員が自分の力を自覚したら、いったいどうなるか想像してほしい。誰もがよりよい判断をし、すばやく行動できるだろう。思いもしなかったアイデアが飛び出すだろう。また全員がお互いにより正直でオープンになったらどんなによい組織になるだろう。
従業員が力をもっていることを忘れてはいけない。あなたの仕事は、彼らに力を与えることではない。彼らの力を認め、時代遅れの方針、手続き、制度を廃止して、力を解放することだ。それさえ行えば、彼らはパワフルになる。