【感想・ネタバレ】100年予測のレビュー

あらすじ

「影のCIA」の異名をとる情報機関ストラトフォーのフリードマンが、21世紀に起こる政治・経済の危機、国家間の紛争などを地政学的見地から衝撃予測。世紀前半には中国は分裂の危機に瀕し、日本、トルコ、米国、ポーランドは世界戦争に向かう。荒唐無稽とも言える内容を読み解く地政学とは……。/掲出の書影は底本のものです

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Posted by ブクログ

21世紀はまだアメリカ時代の幕開け。
まだまだ始まったばかり。
世界大戦で疲弊したイギリスの海軍拠点を手に入れ、世界の海を支配したアメリカは、まだ青年期。地政学的にどこを見ても盤石。
よし、まだまだ米国株は買いですね。
しかし、ロシアについて大局で当たりまくってる。2009年に書かれたものだが、15年後の現在では。衝突がポーランドやバルト三国ではなく、ウクライナであったことが違うぐらい。資源輸出国としてロシアは力をつける。衝突は冷戦時よりも局所的で、アメリカは軍事支援のみ行い、ロシアを疲弊させる。
そしてロシアの自壊。これは時間の問題。

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2024年03月14日

Posted by ブクログ

このような本を読みたかった。2100年の世界を大胆に予想する野心作。1900年の日本人が今の日本を創造することだに出来なかったように、今後の世界が闇であることにワクワクが止まらない。
21世紀を未だ若いアメリカの世紀と位置づけ、今後はアメリカを中心に世界が回るとしている。確かにアメリカが世界の覇権を握ったのは早くて1945、遅くて1989であり、まだ百年も経っていない。価値間によって力を激らせるアメリカは移民によってこれからも活力を持つ。アメリカの基本的地政学戦略では北米大陸及び海洋を握ればよいのであり、分裂するイスラム世界などテロの脅威ではあっても安全保障の脅威ではないという指摘はうなづける。人口減少によってアメリカ式のライフスタイルが広まり、コンピュータが中心となる世界にも首肯するが、膨張する資本主義の行先はどうなるのか気になる。
その中で筆者は中国/日本/ロシア/トルコ/ポーランド/メキシコに注目する。
中国→経済成長の歪みに対抗できず自壊するとしているが本当にそうだろうか。人口減少により覇権は厳しいだろうが、地域大国としては残る気がするが、今後訪れる台湾危機で崩壊する読み?
ロシア→今回の露宇戦争で自壊するだろう。見事な予想。
日本→人口減少!アジアの国はどこも厳しいので相対的に地域大国化するのだろうか。中国と競り合うだろうが。
トルコ→今の調子でアメリカが中東を操縦している限り、地域大国は難しそう。
ポーランド→EUで主導権を握る展開はわかるが、それ以上は難しそう。
メキシコ→移民が国境線の変更を生むという指摘はかねてから思っていた。今世紀末に対立が起こるのは頷ける。

人口動態についての分析が弱いような気がした。確かにこの形で行けば面白いが、あくまで地政学的なものであり、現実はそうはいかないのではないか。
ただ今世紀の日本の課題は対中戦略であり、人口減少が続く中如何に東アジアで主導権を握り続けられるかである。日中韓台で少子化への根本的解決策を提示したものが地域大国となりそう。

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2022年09月23日

Posted by ブクログ

地政学で21世紀の100年を予測するという、たいへんにスリリングな本である。もちろん、神でない身には未来を正確に予測することなどできはしない。しかし、手持ちの学問的知識を動員すれば、アプローチできないでもないということを鮮やかに見せてくれた。

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2022年05月25日

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[大流の解明]ただでさえ予測が難しくなっている国際情勢の「100年先」を見透そうと試みた意欲作。分析と予言の狭間に位置するかのような予測が、想像力をかきたててくれること間違いなしの作品です。著者は、アメリカの軍や政府機関に向けた講義や情報提供を行っているジョージ・フリードマン。訳者は、『選択の科学』等の翻訳もされている櫻井祐子。原題は、『The Next 100 Years: A Forecast for the 21st Century』。


まずは予測の内容が読み物として純粋に面白い。21世紀においては日本・トルコ・ポーランド・メキシコが大国として浮上することなど、「マジか」とツッコミを半ば入れつつもついつい読み進めてしまいました。議論を促し、想像力をたくましくするために適した一冊ではないでしょうか。


著者が100年の予測を立てるに際して、地政学・人口動態・歴史・リアリズム的国際政治観・情報の不完全性などを基にしている点が印象的でした。国際情勢を考えるにあたり、こういった大きな枠組みがどのように影響を与えているか(もしくは与えていると考えられているか)を理解することができるかと。

〜従来の政治分析には、想像力が著しく欠落している。流れる雲が、いつまでもそこにあると考え、誰の目にも明らかな、強力な長期的変化に目を向けようとしないのだ。〜

本書を紹介してくれたMさん(ありがとう!!)には、何か100年後にも残りそうなものをお贈りします☆5つ

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2016年04月25日

Posted by ブクログ

地政学的な切り口だけをもって未来を予測することをナンセンスと決め付けるのは簡単。でも、現実って、かなりそういう部分に占められている。遠くの親戚より近くの他人が気になるのも地政学的。TVのニュースで近所・国内の事が多いのも地政学的。ああいう具体的なストーリーがあってのリスク管理なのかな。日本にもああした予測を考えている組織があるんだろうか。考え始めたらたらキリがないけど。世界地図片手にもう一度読みたいと思いました。

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2015年08月18日

Posted by ブクログ

2009年に出版された2100年くらいまでの世界を予測した「未来の歴史預言書」と言える本。「影のCIA」と呼ばれる情報機関の分析だけあって、ロシアのクリミア併合などをピタリと当てる。予測は必ずほとんど当たらないだろうが、そのアプローチの仕方は知っておけば世界の動きが良くわかります。

内容もほどよくストーリー仕立てになっており、地政学的な推測の流れがウンチク臭くないのて読みやすく、そのストーリー描写もリアル(ありえそう)なのでまるで映画を見てるように未来が想像できます。

その100年はなかなか衝撃的で、以下はネタバレなので、ストーリーを楽しみにしている人は読まない方がいいかもしれません。

問題は、ここの事象より、どういう原則があって歴史が作られてきたか、とそれを踏まえてどう考えるかです。

この本の存在によって、2050年の日米開戦や諸々の戦争が避けられことを願うばかりです。

そのストーリーとは、ざっくりとは以下の通りです。

2020年代に資源紛争に介入してきたアメリカと冷戦を交えたロシアは軍事支出耐えきれず空中分解。中国も権力闘争で分裂。

ロシア、中国の二超大国が分裂してポッカリ空いた力の穴をポーランド、トルコ、日本の周辺国か勢力圏に収めようとする。アメリカはその取り組みを温かく見守る。

そして大国にのし上がり東欧の盟主になるポーランド、オスマン帝国の再来とも言えるヨーロッパ、中東、北アフリカ、中央アジアに領土と勢力圏を持つ世界帝国のトルコ、分裂した中国に次々に出現した親日的国家に数多くの企業が進出しまたその中国の親日的国家からの移民により人工問題を解決し経済的繁栄をきわめる日本という3つの国が台頭する。

それに並行して様々な技術革新か行われ、とくにアメリカと日本は宇宙開発で世界をリードする。アメリカあらたな宇宙軍事システムを構築し、日本も様々な観測衛星を打ち上げる。

しばらくして、日本はアメリカの宇宙軍事システムに監視されているのを快く思わないようになり、アメリカは日本の打ち上げる民間の衛星がアメリカ宇宙軍の通信の傍受してるのではないかと疑い始める。

また地上では気がつけば、トルコと日本がアジアを束ねる超大国になろうとしており、アメリカは不安を隠せなくなる。

この雰囲気を察知した日本とトルコでは反米感情が高まり、ついには日本とトルコは同盟する。この動きはアメリカを刺激し、アメリカは日本、トルコにより圧力をかける。

一方ヨーロッパはドイツとフランスは大国だが社会が衰退期に入り元気がない。そんな中で隣で成長著しいポーランドにドイツは危機感を募らすが行動を起こす元気はない。

アメリカはヨーロッパに自分を脅かす大国が出ないようにドイツとポーランドを刺激しないように同盟関係を維持するがどちらにも関わりすぎないようにする。が、トルコに圧力をかけたいアメリカは次第にポーランドに肩入れする。

2040年代後半には東欧やギリシャなどのバルカン半島を勢力圏に収めているポーランドがアメリカの支援を受けていることを、勢力圏が隣り合わせるトルコはより一層に危機感募らせ、バルカン半島はふたたび火薬庫になる。

宇宙は2020年代の中国、ロシア崩壊の混乱の収束後、イノベーションと宇宙開発を進めた結果、2040年頃には日米で分け合っている状態となる。アメリカは軍事衛星システムを完成させることで日本に圧力をかけ、日本とトルコは宇宙の利用(宇宙での権益?)や、軍事的な安全が脅かされていると感じる。

そして、日本はアメリカの宇宙軍事システムを停止させ、安全に宇宙を利用できるようにするため、日米開戦の世論がたかまる。

2050年夏、緊張が最高潮に達したバルカン半島でトルコとポーランド陣営で小規模な紛争が勃発。アメリカは紛争解決に奔走し、秋にはとりあえず収束する。日本は紛争に関与せず、とりあえずは平和が保たれる。

引き続きアメリカがヨーロッパに目を向けている2050年11月24日午後5時(アメリカ時間)に突如としてアメリカの宇宙軍事システムは日本の攻撃により破壊される。

多くのアメリカ人がフットボールを見ながらうたた寝している感謝祭の夕方を狙ったことと、またそのミサイルは月面に建設された民間施設に偽装された基地から静かに発射されたこと、アメリカの宇宙軍事システムが想定していない方法で行ったことで完全に奇襲となる。

こうやって、日本・トルコ同盟とアメリカ・ポーランド陣営同盟で宇宙軍事システムと地上の軍事システムをターゲットにした第三次世界大戦が始まる。

トルコは機甲歩兵でポーランド勢力圏をぐいぐいと攻め上がり、日本とアメリカは軍事ITシステムの拠点を超音速爆撃機とミサイル攻撃し合う。

ヨーロッパでは屈強な機甲歩兵に苦戦するポーランドを支援するだけの地上部隊をもはやアメリカは持っておらず、ポーランド陣営は機甲歩兵に必要な発電所や送電システムを破壊しながら撤退を繰り返す。

ポーランドが押され気味になっている中、ドイツにはトルコから参戦の誘いがある。トルコは戦後ポーランドから勢力圏を勝ち取ったとしても維持しきる体力が無いので、ギリシャより北の旧ポーランド陣営の領土をドイツに譲るという条件を付けた。この破格の手土産は、ポーランドの脅威から国を守りたいドイツに渡りに船でアメリカとの若干の関係悪化を承知で受諾。ドイツは日本・トルコ連合側に参戦し、ポーランドに進攻する。

2052年ついにアメリカの反撃が始まる。破壊されたアメリカの宇宙軍事システムから集めたデータや予備の設備をかき集めてあらたな情報システムを構築したアメリカはポーランドで戦闘中のトルコ・ドイツ連合軍と中国大陸で戦闘中の日本に大規模な反撃を行い地上軍と発電システムを壊滅させる。

戦場に近いドイツは壊滅し、日ト独連合は地上戦を続けられなくなる。ここでアメリカは窮鼠猫を噛むごとく、日ト独連合が核兵器を使用することを恐れて、講和会議を開催。

アジアでの日本、韓国、中国のバランスをとり、ポーランドとトルコの勢力均衡を維持したいアメリカは曖昧な講和条件で戦争を収束させる。

日本とトルコの勢力圏は若干縮小し、空いたスペースにはアメリカの勢力圏下になり技術支援を受けた中国が駐留。ポーランドは勢力圏を大幅に拡大したが、トルコとの地上戦で多くの死者を出し、あらたな勢力圏も荒廃していたため、後味の悪い勝利に。日本は戦争による被害は宇宙の施設や破壊された施設の職員や防衛関係者に止められまた民間の都市も打撃を受けないが、人口問題が解決しないという代償を負う。

その戦後2080年ごろになるとメキシコがアメリカを越え、いよいよアメリカはメキシコに取って代わられようとしていることに気づき、関係が悪くなる。

そのころのアメリカ南部ではメキシコ系の住民が多数を占めるようになりもはやアメリカかメキシコか分からなくなる。

人口が過剰になって移民を締め出したくなったアメリカはメキシコと対立。対米感情が高まり、経済的、軍事的にもアメリカを上回るほどに成長したメキシコは、2100年、ついに世界頂上決戦を挑み、開戦する。

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2015年02月01日

Posted by ブクログ

地政学的な予測本。
序章に書いてある手法の説明がわかりやすく、この本が単なるSF本ではない、信頼性の高い本であることを教えてくれる。そこには、
地政学的な予測はチェスに似ており、国家の行動はチェスの指し手と同じように非常に合理的である。無限の選択肢がありそうで、実は打てる手はかなり限定されている。
「統治行為とは、ほとんどの場合必要かつ論理的な次の一手を実行に移すことに過ぎない。」つまり、誰が指導者になるとか、指導者が何をするとかではない。戦前の日本は、資源の問題から海外へ行くしかなかったし、ヒトラーのドイツはベルサイユ条約の賠償金の問題からフランスなどに出ていくしかなかった。日本にヒトラー的な指導者がいなかったのは、そういうことだろう。

こういう手法で21世紀を描く。
面白い。そうなりそう。
ウクライナ問題はその通りになったし。

日本は宇宙で「真珠湾攻撃」をして、また負けるって。

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2014年11月23日

Posted by ブクログ

とても面白かった。2023年の時点でのロシアの振る舞いまではよく言い当てている。中国は自己崩壊に向かうだろうか?日本はアメリカと袂を分つのか?あまりに遠い将来予想を信じる必要はないが、世界のブレーンがこうしたシナリオを真剣に描いて政策に落とし込んでいるのだとしたら、自分たちはどう動くべきなのか真剣に向き合わないとならないだろう。

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2023年05月07日

Posted by ブクログ

地政学的観点から今後100年に政治・経済に対してどのような動きが見られるかを考察した本である。

総じて著者がアメリカ人のためアメリカを中心とした論述が多いが理にかなっている点も多くあり、現代の世界を見ても既にアメリカ中心に世界が動いている事から、概ね間違っているとは言い難い。

また各国の過去の動向から、未来を推察するという流れが多いため、各国がどのように成り立ってきたかを知るいい機会になった

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2021年03月22日

Posted by ブクログ

ネタバレ

【感想】
歴史好きな人や世界情勢が気になる人はもちろん、想像力を豊かにしたい人や合理性を失わずに大胆な発想をしたい人にオススメの一冊。
温故知新とはこういうことかなと思う。

表紙カバーや目次だけ見ると、
「2050年日本、トルコ、アメリカ、ポーランドが宇宙で戦争」
やら、「2100年メキシコvsアメリカ」
などと書いてあり、一見SFモノかな、と思ってしまうような書きぶり。
ある意味、この感覚がこの本の価値だ。
100年と少し前、
1900年の大英帝国が世界を支配している時代、ロンドンにいたら、今のこの世界を想像できただろうか。
20年後にドイツが一回戦争に負けて、その後もう一度ヨーロッパを支配しかけるけど、また負ける。
さらにその後、アメリカとソ連がヨーロッパを二分し、にらみ合いが続く。
米ソのにらみ合いが終わったら、しばらくしてテロの脅威にさらされる。

1900年に生きていた人が、2000年までの100年間の出来事を知ったら、SFと思うかもしれない。

何が起きてもおかしくない。
そんな未来100年間を、論理性を尊重しつつ描かれている。
小説と言われてもおかしくないストーリーだが、読んでいると歴史と照らし合わせて、何か妙に納得してしまう。

なお、2014年頃に発行された本。

【要約】
・21世紀開始時点で、アメリカは驚くほど強力。中国や日本などに比べても、かなり強い。重要なのは世界の海洋を支配していること。
・アメリカの戦略として、対テロ戦争において、イスラム世界が混沌としていれば、アメリカの勝ち。(地域大国が出没しなければ良い)
・人口爆発の終焉→人口減少とコンピューターが新しい世界を作る
・次の紛争の火種は、中国、日本、旧ソ連、トルコ、メキシコ
・中国は世界的国家になることはない。(過去の日本の経済成長が、理想的な資本主義による成長ではなく、銀行システム、郵便局、その他政治的要素によるものだったのと同じように。)2020年頃アメリカは中国の挑戦を受ける→中国は政治的崩壊で分裂
・2020年を過ぎた頃ロシアは資源輸出国として生まれ変わり、各方面へ進出→ロシアの自壊で終焉
・中国、ロシアの崩壊→アメリカと同盟を組んだ、日本、トルコ、ポーランドが大陸の空白地帯に進出
・2040年、勢力が拡がりすぎた日本、トルコに対してアメリカは締め付けを強くする。宇宙戦争の気配。
・アメリカ、ポーランド対日本、トルコ。宇宙を制していたアメリカの勝ち。
・アメリカの黄金期
・メキシコが経済的に発展。メキシコはアメリカに大量の移民も有してアメリカへの影響力も有しており、アメリカに挑戦する。


【気付き】
・この世界、前提が帝国主義で成り立っていることを、未来予測という形で忘れないようにしてくれる。

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2020年08月26日

Posted by ブクログ

文字通り、100年後の未来を予測した一冊。

今後、対ロ封じのためにポーランド、トルコ、日本が力を伸ばし、それらはアメリカの対戦した後、最終的にはアメリカの隣国のメキシコが力を伸ばすという新説は面白かった。
しかし、今後大国が戦争するということに(たとえ限定的であったとしても)リアリティが感じられなかった。

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2019年06月17日

Posted by ブクログ

ネタバレ

全体に非常に示唆に富む。
想像的であり、かつリアルである。
時間、空間の軸に対する理解が多層的。

P107
次の地政学的大地震が起こる場所はどこか?
①環太平洋地域
②ソ連崩壊後のユーラシア
③ヨーロッパの枠組み
④イスラム世界
⑤アメリカとメキシコ

2020年
中国、ロシアの分裂

アメリカの一国強国体制は続く
→アメリカに脅威を与える国は限られている。
日本、トルコ、メキシコである。P232まとめ
日本はシーレーンの確保のため、海軍力(宇宙含む)を強化する。
トルコは経済成長に伴い、拡張的になる。
もともと地理的要衝に位置し、ロシアの弱体化、イスラムの混乱に乗じて、指導的イスラム強国として勢力拡大。
それに対するプレーヤーとしてポーランドがある。
ポーランドはロシアの弱体化に伴い東方に緩衝地帯を求め進出する。(ドイツ、ロシアの双方から攻められるという積年の懸念を解消するため)
しかし、南からは不安定なバルカン地域に影響力を拡大したトルコが迫る。
アメリカはトルコの勢力拡大を好ましく思わず、対抗馬としてのポーランドを支援。

また、お決まりの自決主義と民主主義的価値観の原則を持ち出して、日本とトルコを国家主権を脅かし人権を侵害する存在に仕立てあげるだろう。P251

その他気になる考察
①20世紀の世界大戦は大量の銃器、自動車、戦車、戦艦、戦闘機を使用し、生産能力勝負の総力戦だった。
しかし、21世紀は核兵器の登場と、精度の向上で、一撃で強烈なダメージを与えられるようになった。
これは、アメリカが進める衛星と超音速ミサイルを活用した攻撃体制でさらに高まる。
その点で、軍事攻撃に必要な労働力は少なくなり、むしろ科学者、技術者が重要になる。

しかし、領土の占領はいまだに多大な労働力を必要とする。これは軍ではなく警察の仕事に近い。敵と良民を区別する文化的理解が必要とされる。この仕事は今より簡単になることはなく、今後も大国の弱点となるだろう。P270

②技術が雇用を奪うという予測は、これまでも繰り返し立てられてきた。だが、そのたびに正反対のことが起こっている。
2060年頃からは失業率の上昇が見られる。


気になるキーワード
P275 ラグランジュ点
2つの天体からの重力が安定する場所。地球と月のラグランジュ点は宇宙ステーションの候補地とされ、宇宙の地政学的に重要。

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2018年03月24日

Posted by ブクログ

ネタバレ

こういう国際情勢分析・予測の類は好きなので、面白く読みました。
分析は鋭く、中国・ロシアにおいては見事に的中しているケースを実際に目の当たりにしています。
これらから先 20、30年の予測については完全に将来予測ですが、一見して信じがたい分析が行われています。曰く、トルコと日本がユーラシアの支配権を強め、アメリカと対立し、最終的には米日、米土戦争が起こるというもの。この分析についてはいろいろと抜け落ちている要素を感じて突っ込みたくなりますが、分析自体は論理的で非常に面白い。

それ以降は戦争計画から実際の戦争に至る予測が続きますが、かなりSF小説的内容になっており、私は興味を失いました。(国際情勢分析を知りたいのであってSF小説が読みたいわけではないので)

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2017年09月05日

Posted by ブクログ

ネタバレ

予測の前提としてアメリカの超大国としての地位が続く、更に強くなるというところから始まっている。太平洋、大西洋二つの大洋に面し、双方を支配しているというのはわかるが、その支配が今後100年続くかというと疑問もある。

100年の予測は唯一の超大国アメリカに挑む、時代により移り変わる地域覇権国の興亡を通して描かれる。

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2017年09月01日

Posted by ブクログ

このような本があることを知ってはいたのですが、ある本を読んでいて初めて題名を知りました。あの有名なフリードマン氏が書かれた本の訳本が、2009年に単行本で発行されたものが文庫化されたものです。

私が興味を持っている「地政学」を駆使して、全世界の今後100年間にわたる予測を行っています。気になった所に付箋を貼りながら読むのですが、本が付箋で一杯になりました。凄い本でした。

21世紀もアメリカが世界一であり続けるのが結論ですが、それに挑戦する国として、日本がトルコと同盟を組んで挑み敗北するというストーリーが印象的でした。

つい数年前までは大国化すると騒がれていた、中国、インド、ブラジル、ロシアは難しいようですね。ロシアの衰退に代わって欧州で成長するのは、現時点で一人勝ちしているドイツではなく、ポーランドというのが驚きでした。

また、メキシコが経済大国化して、アメリカとの事実上の国境が北上して、かつてのメキシコ領土に迫る、という考え方も面白かったです。この本は、すでに続編が二冊も出されているようです。これからそれらを読むのが楽しみです。

以下は気になったポイントです。

・アメリカへの次なる挑戦者は中国とは言い難い、理由として、1)孤立した国であり領土を拡大できない、2)海軍国ではない、3)本質的に不安定、内陸部の国民は貧困のまま(p21)

・世紀半ばに他の強国が台頭する、日本、トルコ、ポーランドである(p22)

・宇宙で発電した電力をマイクロ波に変換して地上に送信するという、戦争前に開発された構想が、来たる世界大戦中に試作から実用化へ移行する(p23)

・統一ヨーロッパが実現しなかった理由は、英仏海峡である。最初はスペイン、続いてフランス、最後にドイツが大陸の支配に成功したが、統一できなかった。(p43)

・イスラム教徒が多数派を占める旧ソ連共和国(アゼルバイジャン、ウズベキスタン、トルクメニスタン、キルギスタン、カザフスタン)は、ソ連が崩壊するといきなり独立した。(p63)

・出生率の低下と平均余命の延びの鈍化により、人口増加は終わらざるとえない(p93)

・ロシアにとって冷戦後の世界が本当の意味で終焉を迎えたのは、2004年12-1月にかけて、ウクライナでオレンジ革命が起きた時)p115)

・インドネシアとパキスタン以外に、主要イスラム系国民国家は3つある、人口8000万人のエジプト、7100万のトルコ、6500万人のエジプト(p126)

・過去50年で約4倍に増えたメキシコの人口は、今後50年間で安定する、人口減少に悩まされることなく労働力が確保できるのが強味(p132)

・中国を地政学的に見た場合、島国である、他の地域から事実上隔離されている(p141)

・中国政府が拠り所にしているのは、1)国家を運営する巨大な官僚機構、2)共産党の意思を執行する軍事安全保障機構(p152)

・ロシアは2000年ころに戦略を転換した、1世紀に渡って取り組んできた工業開発に見切りをつけて、エネルギー資源を中心とする資源輸出国となった(p163)

・アメリカで220周年前から続いている周期の信頼性が高いとすると、現在は1980年のレーガン選出に始まった第五期の真っただ中、このパターンは2030年頃まで存続する、2032年の選挙で決定的な転換がなされるだろう(p195)

・社会保障制度が退職年齢を65歳と設定したとき、平均余命は61歳だった。その平均年齢の延長が年金制度の収支計算を変えてしまった(p201)

・2040年代までに、アメリカは、日本・トルコ・ポーランドと同盟を組んでいるが、日米間には著しい利害の不一致が生じている、アメリカは韓国(統一朝鮮)および中国の政府と手を組んでいる(p220)

・アメリカは金のかかる非効率的な従来の戦略を放棄して、その代りに、極超音速無人機のシステムを構築する(p253)

・20世紀に戦争を戦うには、何千人もの爆撃手と何百万丁ものライフル銃が必要だった、21世紀には、この数分の1で戦えるようになり、総力戦の終わりを告げる(p268)

・21世紀の制海権は、外航艦隊よりも敵艦を識別し、狙う事のできる宇宙システムに依存するようになる(p275)

・21世紀の戦争にとっての電力は、20世紀の戦争にとっての石油に相当する(p303)

・2050年代の戦争中に、新しいシステムの本格利用が始まるだろう、2060年代の宇宙発電計画を通じて、宇宙発電は日常生活の一部分となる(p327)

・貧しい国から富める方への人口移動は起こるが逆は無い。メキシコとの政治的境界は変化していないが、文化的境界は北方に移動している(p336)

・社会的、政治的危機が起きる2030年ころまでにロボット技術の実用化に向けた試験が行われて商業化の準備が整うだろう、2030年のロボットは、1975年ころのコンピュータだろう(p338)

2016年2月20日作成

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2016年06月19日

Posted by ブクログ

「影のCIA」と言われる情報機関の創始者が、今後100年の世界情勢の変化を地政学的見地から予測したものである。2009年に単行本で発刊され、今般文庫化された。
単行本発刊後まもなく本書を読んだときに最も印象に残ったのは、2020年代以降トルコとポーランドが存在感を大きく高め、2060年代にはメキシコが世界有数の大国になるということであった。因みに、米国は今後100年間覇権国であり続けるが、中国とロシアの影響力は大きく低下するという。いずれも、地政学的見地から論理的に予測した結論である。
単行本発刊後5年が経っており、本書の内容と現在の世界情勢を比較してみると、ロシアのウクライナへの介入は予測された通りであるが、nation stateの枠組みを超えるIslamic Stateの出現などのイスラム世界の混乱は予測の範囲を超えている。
しかし、本書の重要性は、予測が実際に的中するか否かというより、欧米の最先端の専門家が国際情勢を分析・予測するにあたり、どのようなアプローチをとり、どのような思考プロセスを辿るかを知ることである。
国際社会において主要プレーヤーとして戦うためには、相手の思考・作戦を読むことは不可欠であり、そのためにこそ価値ある書と思う。
(2010年1月単行本了)

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2016年01月11日

Posted by ブクログ

地政学に基づいて21世紀の世界を予想する試み。

有史以来争いの絶えない地域というのはあるもので、土地というのは有力な変数と言えるのかも知れません。正直トンデモ感の否めない記述もありますが「事実は小説よりも奇なり」、納得感のある部分を参考に自分のこれからのとるべき選択肢を考える材料にしたいと思います

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2015年02月19日

Posted by ブクログ

おもろい。ぶっとんでるけど、ありえなくない範囲と思ってしまった。
主題は未来予測だけど、やはり過去の分析から立ててるだけあって、いちアメリカ人から見た●●人観みたいなものもうかがい知れてすごく良かった。

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2014年09月22日

Posted by ブクログ

地政学と経済予測の本ではあるが、とても読みやすい。アメリカびいきな部分も多いような気もするが、作者曰く”こういう予測は当たらない”らしい。読み物としては、未来から近未来100年を振り返った書き方になっているのでSF的な読み方もできる。ロシアのウクライナ侵攻は必ずあってその後ロシアは衰退するとの記述があった。読んでいるときに実際に起こったのでびっくり。

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2014年08月31日

Posted by ブクログ

思ったより面白かった。
21世紀の100年間がどのようになるのかを
地政学的見地(これがよくわかりませんでしたが)
から予測する内容。
21世紀はアメリカの時代。第2次世界大戦やEUまでは
ヨーロッパの時代で、アメリカはまだ若くて粗暴な国。
そのアメリカに挑戦する国。挑戦させられる国が
かわるがわるでてくる。
まずはイスラム、まとまりがなく自壊していく。
その次はロシアと中国。現状の経済や技術に固執し
アメリカの技術にまけてしまう。また民族問題や
それを統制している機能が弱体しロシアと中国は
分裂する。
その分裂した中国とロシアの周辺を力に変えていく
日本とトルコとポーランドがアメリカとの関係の
なかで日本とトルコと(ドイツ)がまたアメリカと
戦争をおこす。その開戦の仕方や結末は第2次世界大戦
とほぼ同じ流れが起こっていて。。
最後には、アメリカのひざ元であるメキシコと
アメリカの対決になる。

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2014年08月24日

Posted by ブクログ

非常に興味深いです。
当然ながら、細かいところまで予測できるわけではありませんが、それでも、おおまかに「こんな風に推移するだろう」と言う予測が述べられています。
どのくらい、その予測が当たるかは、未来の人々の評価に依存するしか無いですが、大体のところは、当たりそうな気はしますねぇ。
気になるのは、日本の件。この予想のようなことにならないと良いんですが、何となく、この予想に近づいていくような気がしてなりません。

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2014年08月08日

Posted by ブクログ

ネタバレ

 題名道理の内容の本だった。地政学に基づいて語られる未来の予測は説得力のあるものだった。特に近い未来、2020年代についての内容は過去から現在への時の流れを考えると、とても説得力があった。
 読んでいて興味深く、面白かった。今後、新聞やニュースで国際情勢を知る時、この本のアでプローチの仕方で考えたり、この本の予測と比較していきたいと思う。

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2014年07月19日

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地政学の視点で今後の世界情勢を鋭く分析した本。2014年のクリミア紛争的中!と帯や表紙に書いてあるので、人によってはA・トフラー系の未来予測本だと誤読する可能性がある。しかし、この本の本質は、欧米人がどのような考えに基づいて、どのように振舞うのか、その思考回路を把握することにある。アメリカが世界をどのようにとらえ、どのように考えているのか、その一端を知るのにふさわしい本。

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2014年06月28日

Posted by ブクログ

数年前に買ったまま、途中で投げ出して暫く積んでいたが、タリバンが勝利してしまったアフガニスタンのことを考えながら2021年09月に手早く読み終えた。

トルコとポーランドの扱われ方が現在時点からみるとfunnyに思われる。日中関係は、あり得ないことではない一方で、中共がそこまで簡単に弱体化するか、あまり信じることができない。生きている間のニュースで、ポーランドかトルコ、あるいはその両方が重要な地政学的プレーヤーとして語られ出した時、改めてこの本の中盤以降を読み直すことになるかもしれない。しかしまだその時ではない。

2040-60sに世界戦争が宇宙を舞台にするだろう、と書かれている下りで、これが早川書房において翻訳されたことに少しだけ納得した。

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2021年09月25日

Posted by ブクログ

地政学としてどうなるかを予測した本。
アメリカ人が書いているからか、基本的にはアメリカに都合のいい予測になっている。
でも、20年先の予測も難しいわけだから、どれくらいあたるかは、よく分からないところ。
この本にある変化がありうるならアメリカが分裂してどこかの州が独立ってこともあっても、全然不思議ではない感じだ。

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2020年01月31日

Posted by ブクログ

地政学的に予測した21世紀。

地理的な条件が国際関係や経済、軍事に影響を与えるという発想は納得できるが、「歴史は繰り返す」だけなのだろうか?
アメリカが大戦の主戦場から離れた位置にいることから、第三次世界大戦後も、第二次世界大戦後と同じような経済の黄金期を迎える―。
う~ん。
半分はそうかも、と思うけれど。
そうしてやってくる戦後の世界がいいものとはとても思えないのだ。

第三次世界大戦は、日本・トルコ連合国と、ポーランド・アメリカ(中国、韓国なども)の図式だそうだ。
まず前提として、中国やロシアが二〇年代には崩壊するらしいんだけれど、中国やロシアはそんなに簡単に崩壊するだろうか?
その隙をついて資源を求めてアジアに進出した日本とアメリカがぶつかる、ということらしい。
それより少子高齢化に苦しむ日本が、戦争をするような経済力が保てているのか?
主戦場が宇宙になっているというのは、ありうべきことだが、現在の日本の状況から考えても、とても太刀打ちできるとも思えない。

本自体はとても読みやすいのだが、一度本を置くとしばらく手に取る気がしなくて、ズルズル一か月もかかってしまった。
何か、読むと暗澹たる気持ちにさせられるから。

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2017年12月29日

Posted by ブクログ

地政学。

こういう大きい視点で見ると小さい争いにあくせくするのがバカバカしくなる。カウフマンが言っていたような歴史上の出来事に関する法則を探す学問、プリゴジンの言っていた意思決定の理論化の話、コンフリクトの原因が時間の感覚の違いであることなどを思い出す..

アメリカが地政学的有利にも関わらず憂鬱な心理状況である理由。
1 この乖離がアメリカの力がまだ発達しきっていないことを示している。
2 これがアメリカの途轍もない強さを露わにする。アメリカは不安を感じていたからこそ冷戦に途轍もない労力とエネルギーを傾けた。
政治指導者から技術者、軍人、インテリジェンスの幹部に至るまでアメリカ人の冷戦との戦い方は決して気軽でもなければ自信にも満ちていない。だからこそ冷戦に勝って驚いた。(恐るべき謙虚w)

アメリカは心理的に自信過剰と不安が奇妙に入り混じった状態、青年期の虚勢と絶望。アメリカはまだ16世紀ヨーロッパのような未開状態にある。文化はまだ形を形成しておらず意志力は強い。そして感情によって相矛盾する方向に突き動かされがち。

文化の三つの状態
未開:未開人は自分の村の慣行が自然法であり、異なる生活習慣を持つ人たちは取るに足らない状態で、救済するか破壊するかしかないと思っている。
退廃:この世に絶対的なものはないと皮肉っぽく考える。彼らが蔑むのは何かを信じる人。彼らには戦う価値のあるものなどない。

文明は文化の最も稀な状態。

文明人は頭の中で矛盾する二つの思想のバランスをとることができる。真実は確かに存在し、自分たちの文化がその真実に近いと信じている。だが同時に自分たちが誤っている可能性を留保している。確信と懐疑の組み合わせは本質的に不安定である。

文化は未開状態から文明状態を経たのち懐疑によって自己革新が揺らぐと退廃状態に陥る。文明人は相手を選ぶが効果的に戦う。
ヨーロッパはすでに退廃に入っておりアメリカは未だ未開。あらゆる未開文化がそうであるようにアメリカ人は自分たちだけに通用する道理のために戦う。

(発展経路は果たして一つだろうか)

アメリカの戦略目標および基本戦略は恐怖心。ローマ帝国も世界制覇を目指していたわけではなく、国の防衛を目指してその目標に取り組むうちに帝国になった。
恐怖心は和らぐたびに別の弱さと別の恐怖を生み出す。国家は持っているものを失う恐怖によって突き動かされる。恐怖という観点。

現在の国際システムはひどくバランスを崩した状態...アメリカが元来強力になりすぎたため、それ以外の諸国がアメリカの行動を制することができなくなった。国際システムは自ずと均衡に向かう傾向にある。バランスが失われた世界では絶対的な力を持つ大国の脅威にさらされた弱小国が、大国の力に対抗するため同盟を形成することが多い。アメリカがベトナムで敗北後に中国と手を組んだのも当時強力になりすぎていたソ連を制御するため。

だが現在は強力になりすぎたアメリカに対して反米同盟を組織することは難しい。アメリカと折り合いをつける方がずっと楽だ。(巨大アトラクタ的だ!)反米同盟は失敗すればアメリカの容赦ない行動にさらされるだろう。


矛盾:アメリカは一方で深い恨みを買い、恐れられてもいる。しかしその一方でここの国はアメリカとうまく付き合っていく方法を模索している。
この不均衡とアメリカを封じ込めようとする取り組みとが21世紀の世界のトレンド。アメリカ以外の国にとって危険な世紀。

地政学、誤りの許容範囲と呼ばれる重要指標。それぞれの国に誤りを犯す余地がどれほどあるか占う指標。国が直面する危機の種類、国がもつ近いの大きさ。

誤りの許容範囲が非常に小さい国-些細な失策が命取りになるという認識から外交政策の事細かな点までこだわる傾向にある。(イスラエル、パレスチナ)これに対して小国だが周りを敵に囲まれていないアイスランドには誤りを犯す余地がかなりある。アメリカも。

アメリカは世界に対して不用意に力を行使することが多い。愚かだからではなく、注意を払う必要がないから。注意を払っていると効率を落とす。無謀が許されるアメリカはときに他国に苦痛や破壊的被害をもたらす。それでも前進し、繁栄を続ける。

アメリカは常に過剰反応する。ある瞬間とてつもなく壊滅的に思われたことをバネに、果敢に問題を解決する。一般に新興国は過剰反応する。成熟した大国はうまくバランスをとることができる。衰退に向かう大国は一度失ったバランスを回復できない。

アメリカにとってはどの一つの関与も決定的に重要ではないが過剰反応する。だが相手国にとっては国を一変させるほどの力をもつ一大事。相手国はアメリカの行動の前に無気力を感じ、その無気力はどんな状況にあっても怒りをもたらす。怒りの矛先が向かう国、つまりアメリカが無敵でありしかも無関心であることがなおさら怒りを駆り立てる。

21世紀は自らの行動が招く結果に無頓着なアメリカと、そのアメリカに抵抗して怒りを向けるその諸国という構図。

アメリカの対テロ対策が終局に向かうにつれて、イスラム国家そのものがイスラム過激派に対する防御の最前線に。イスラム国家はアルカイダの究極のターゲット。アルカイダがイスラム教や西洋に対してどのような考え方を持っていようともイスラム国家はアルカイダに政治権力を引き渡すつもりは毛頭ない。むしろ国をあげて、つまり諜報、安全保障、軍事面での能力を結集して、アルカイダを潰しにかかるだろう。

アルカイダが破れさえすればアメリカは勝つ。イスラム世界が混迷して結束できなくなればアメリカは戦略目標を達成したことになる。

イスラム世界はかつてないほど分裂しておりそのことがこの時代に終止符をうつ。
トルコはイスラム世界における大国、再び対等しつつある。トルコの台頭はソ連崩壊による混乱ではなく、新しい力学の所産。怒りは歴史をつくらない。歴史を作るのは力。力は怒りによって強められることはあるが、地理、人口動態、科学技術、文化といったより根本に関わる現実的条件を拠り所とする。こうした条件の一つがアメリカの力を規定すると同時にアメリカの力が21世紀を規定する。

まとめ:20年前のソ連崩壊で冷戦時代は動きを抑えられていたイスラム地域が急激に不安定になった。アメリカの基本戦略(イスラム世界を混乱に陥れ、アメリカへの敵意を生み出す)

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2015年11月28日

Posted by ブクログ

「ジャンルはウソくさい予言書」だろうなと思いながら古本で購読。
国際関係に始まり、人口増減や地政学的観点からの大胆な予想があり、一読する価値はある本。

日本とトルコVSアメリカの宇宙戦争となった時点で、SFか?と困惑させる。

多いに納得させる点や、新しい視点を持つ材料になる点もあるが、しかし、経済学的観点が足りない気がする。

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2015年10月31日

Posted by ブクログ

表題の通り、今後100年の世界史を予測している。
本作の冒頭でも著者が記載している通り、Detailの部分は正確ではないかもしれないが、大筋では悪くない予測を与えると考えているという。
未来に発生する事象が何の制約条件もないのであれば、科学的な予測は不可能に思えるが、未来は過去という極めて強い拘束を受けるため、注意深く考察することにより、大筋は予測できるのであろう。
ちょうど、チェスの名手同士が対戦した時に、コマが盤上全て動くことはできても、最善手という意味では実はありうる手数はそれほど多くは無いという比喩が成り立つように。

ただし、どんな科学でも100年後は眉唾ものであると思われる。
例えば、日本のエネルギー予測を良く見受けられる(特に原子力!)。が、100年後となると誤差の影響が強く伝搬するためもはや何でもありになってしまう。
とすると、重要なのは直近の数十年(~50年)の挙動予測であると思う。

筆者は、ずば地政学的な意味では、アメリカが相変らずヘゲモニー的な地位を維持すると予測している。
ただし、対抗馬がありそれは(ロシアや中国ではなく)トルコと日本、時点でメキシコであると予想する。
なぜの核心部分は本書を読んでもらうとして、トルコはわかるとして、日本が出てくるのは日本人として誇らしいようで、ホントか。と自虐的になってしまう。
長期的な不況、歪んだエネルギー構造による国際的な競争力のなさ、人口減少、年齢構造による労働力の減少等、マイナス要素を挙げればキリがないが、プラス要素はパッと思いつかないし。

筆者のロジックは、アメリカは南米、ヨーロッパを軍事的に制圧できるがアジアまでは手をのばすことができない。かつ、中国、ロシアは歪んだ資本主義により自然と解体するので、そのスキに日本とトルコが台頭するしかないじゃん、というもの。

その後は、日本がアメリカに戦争をしかけるというシナリオを紹介しているが、なかなかあり得なさそうなシナリオだと思う。
日本の安全保障はどこの国にしてもらっているのだろうか。それを振りきって、自国で軍事力を持つ勇気がこの国にあるのだろうか。。集団的自衛権の憲法解釈でこんなに騒がれているのに。

いずれにせよ、将来の予測をするのは大変な努力をしなければならないし、将来、本書の正解がはっきりとわかるという点で著者のリスクは大きい。
それを承知で、このような大胆な本書を書き上げたのはやはり作者の力量があってこそなのだろう。
50年後にまた本書を読むとしよう。

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2014年07月10日

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