長野まゆみのレビュー一覧
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夢のような、ノスタルジックな、お菓子たち
昭和34年から54年まで。ひとりの少女の誕生から成人までと、その時代を彩るお菓子を中心にした文化史を詳細に描いた、まるでエッセイのような小説。
私は生まれていない時代のことですが、夢のようにおいしそうなお菓子たちの話がなぜかノスタルジックです。
これは、昭和のこの時代だかこそ成立する話であって、現代で書こうとすると、とても難しいのではないかと思う。なぜなら、お菓子もそうだけれど、今の時代というのは、あまりにモノ・情報に溢れていて、ひとつのサブカルチャーを共有することすら難しいから。
長野まゆみの作品は、いつも印象的な食べ物に彩られていま -
Posted by ブクログ
高校二年生の頃、
はじめて読んだ長野まゆみ作品。
透明感のある文章に、独特の雰囲気が印象的で、
それでいてなんともいえない居心地の悪さをかんじました。
「ここにある」ようでいて「どこにもない」、
漠然とした不安定な感覚。
それは多分、この作品の持つノスタルジアのせい。
懐かしいような気がするのだけれど、
その懐かしさは実体験に基づいていないから実体が無くて。
そしたら今自分が感じている「懐かしさ」は誰の感情?
とそれが不気味に思えてしまう故の不安定。
考える文章、ではなく、感じる文章、というものもあるのだと、
気付かされた読書体験でした。 -
Posted by ブクログ
本作は『よろづ春夏冬中』の「雨師(うし)」とリンクしている。
よろづ・・・は短編集であって、BLをニオワセル作品も
あるにはあったけど、不思議な話も含まれていて
中でも「雨師」はお気に入りだった。
祖父の残した古屋に住む市村兄弟。
奇妙な兄弟ではあるが、弟君の方がすっとぼけている。
梨木香歩さんの「家守綺譚」の主人公のような感じ。
不可思議な状況を「まぁ~いいか」と受け入れてしまう。
そこで雨漏り診断士と名乗る知らない男と出会うのだが
この男こそ、本作の主人公?というより黒幕のあめふらし。
あめふらしとは、タマシイを捕らえる事を
生業とするモノのことである。
この