長野まゆみのレビュー一覧
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すべてを語られてしまうほど退屈なことはない。
それは親切でも丁寧でもなく、ただ、無粋というものだ。
この世とあの世をわけなきゃいけないなんてことはなく、
あっちとこっち、ゆるゆると行き交い、交錯する。
しろとくろに分けろなんて、だれも決めていないのだから。
「私」は「弟」にくらべると、こっちに重心を置いて生きている。
それが、読者を安心させて、物語に深く入り込ませてくれる。
「弟」があれやこれや、正体不明の存在を引き寄せてしまうのは、彼がそういう存在も、あって当然と自然に受け容れているからだろう。
ただ、物語を楽しむだけでなく、いまは耳にすることもめっきり減った言葉や名称に触れられるこ -
Posted by ブクログ
登場人物を書き分けるということ。
ともすれば、だれの科白なのか迷子になってしまうようなカギ括弧なしのなか、当然のように彼女ら・彼らはわたしの目のまえに現れる。
ゆったり流れる時の狭間に(気を抜くとずっとおなじ時を刻んでしまっているような錯覚のなか)、だれがはじめたのか定かではない紐解きはすすむ。
ゆるゆると、時間やひとびとの関係性の糸はほぐれていく。時が満ちたみたいに。
余分な脂肪はひとつもないあっさりとした、それでいて暖かなお澄ましでも飲んだみたいな後味のよさ。
それと、はっきりとは語られない、好奇心をくすぐられるヒミツ。
(立彦のあれやこれやなど、ね)
不思議なこと満載なのに、日常の -
Posted by ブクログ
プラチナとミシェルという二人の少年の夜空旅。
プラチナは慎重派でおとなしめ,それに対してミシェルは直観的に物事を判断し自分の意見を突き通す。
喧嘩もするけどふたりは仲良し。
雷卵石,猫目石(キャッツアイ),蛋白石(オパール)に海王石(ネプチュナイト),黄水晶(シトロン),辰砂(ヴァーミリオン),etc…此処にある言葉は見慣れないものが多くて新鮮な響きがある。
その上,とても綺麗だ。
それに,鉛筆を握れば自分の行きたい場所を紙に勝手に描いてくれる,自動書記機(プランエシェット)なるものや,壁に取り付けてその蛇口をひねれば氷が出てくるものなど,不思議な道具も登場する。
長い長い夜の旅行