あらすじ
「ぼくたちは、ずっと友だちだったんだよ」
放浪癖のある父に連れられ、転居を繰り返す岬。山の中学校で出逢った賢彦との3日間の邂逅と別離。時空を超える、みずみずしい物語
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Posted by ブクログ
すごくいいはなしだった。
タイトルや表紙の球体関節人形から、初期の自動人形とかが出てくるファンタジーを想像して読んだら、全然違った。
放浪癖のある父と共に色々なところを転々とする主人公。
目立たないよう、疎まれないよう、周りを観察して、上手く立ち回る術が身についている。
他人と深く関わることをしない岬が、あるとき訪れた山あいの町の古ぼけた学校で、気になるふたりの少年に出会う。
他の作品だと、書き方がちょっと卑屈すぎたり、自意識過剰だったりで読みづらいときがあるんだけど、今回はさらりとしていて読みやすく、美しい文章だった。
最後の、手紙からの流れがぐっとくる。手紙がはさんである本って最強アイテムだな…
そしてお父さんがとにかくかっこいい。大人のお父さんも、少年のお父さんも素敵。
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表紙の少年の人形に惹かれてジャケ買い。
放浪癖のある父のせいで引っ越しと転校を繰り返す主人公の少年「岬」。引っ越し先で出逢った「賢彦」という不思議な少年との3日間の物語。
長野まゆみ作品は、宮沢賢治の世界観を彷彿とさせる。檸檬水、鬼胡桃の印鑑、ガラスの笛。
物語の中にさりげなく登場する綺麗な物に心癒される。
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表紙の少年がたまらなく、イイ!!(笑)
物語自体も、少年たちの友情の切なさと、時間軸の移り変わりの不思議さが心地好かったです。
天議やTV-cityのような近未来が舞台のお話も好きですが、新学期やこの作品のような日本の古き佳き時代が舞台のものも非常に好きです。
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放浪癖のある父親に連れられ転校を繰り返す主人公。ある山間の町で、幻の湖で神隠しに遭ったという少年に出逢うのだった。
透明感溢れる文章は長野まゆみ独特ですな。神隠しに遭った少年、幻の湖、鬼胡桃の印鑑、硝子の笛、ひとつひとつの要素が重なり綺羅綺羅と輝きます。ただ単なる幻想譚でなく、最後に腑に落ちるようになる展開が面白かったです。
Posted by ブクログ
美しい言葉、美しいカラー写真。
紙質も普通の文庫と違い、眼と感触、いろいろ楽しめる本。
個々の短編と思いきや、ひとつのストーリー。
ラスト、梓の真相は今思えば不思議だが全く気づかず。
だからこそ、とても胸にじんわり迫る。
飄々とした大人の父が、少年時代は少し不器用で完璧では無い面がとても愛おしくなる。
まゆみ氏の少年はとても血気盛んな少年と、幽霊みたいな少年に分かれていて、
幽霊みたいな少年が本当に幽霊だったという、こんなしっくり納得できる話もない(笑)
上海少年で読んだ秀逸な短編を、丹精にもういちど見せられたような、贅沢な気分になれた。
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「体温とか、肌合いって、ことなんだよね」
その地の人との馴れ合いを嫌うように引越しを繰り返す父。父について転校を繰り返す岬が出逢った北浦と白水。彼らの関係、白水の秘密、そして父の放浪癖の理由。美しい写真と共に楽しめるファンタジーです。
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文庫としては高めですがカラーの写真が入っているので致し方ないかと。でも写真も素敵なのでおすすめ。
長野さんで家族ものといえば兄弟話が多いですが父子ものもいいなぁ、というお話。
Posted by ブクログ
温もりが、本を通じて感じられるよう。あたたかいのに切なくて、最後の数文を読んだあと、身の回りの音が遠ざかるように感じます。ナゼだか、宮崎駿に映像化して欲しいと思った。うるんでしまった。
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ハードカバーのイラストの表紙よりこの人形の方が好き
セリフの「」内の言葉が、で終わりがちな頃
岬が父と引っ越した先の中学は父が通っている学校だった
さまよえる湖
静岡に七年ごとに山間の杉林の中に現れ、十日ほどで消える幻の池がある
読み返して、理解できるところもあって解決してる方だと思う
口笛か指笛、互いを呼び出すひとつの檸檬水の空き瓶から作った笛、車の警笛、濃霧を告げる笛、一度だけ澄んだ笛の音
墓前に小さな硝子を埋めた
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久々の長野さんはやっぱり好みだった。
霧に紛れて場所が錯綜し、少年時代のお父さんとその友達に出会う話。
そして、お父さんに代わってその想いを消化させてゆく。
時に長野さんは凝りすぎてしまうときがあるけれど、この作品はお見事。
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独特の雰囲気が素敵な長野まゆみさんの作品。
要所要所のふしぎな感覚、父と息子の会話、賢彦と北浦、あの笛の音。いろいろなパーツが組み合わさって、ものすごくやわらかな、きれいな作品になったと思う。
なによりところどころの写真と詩と説明が美しいと思えた。
Posted by ブクログ
高校二年生の頃、
はじめて読んだ長野まゆみ作品。
透明感のある文章に、独特の雰囲気が印象的で、
それでいてなんともいえない居心地の悪さをかんじました。
「ここにある」ようでいて「どこにもない」、
漠然とした不安定な感覚。
それは多分、この作品の持つノスタルジアのせい。
懐かしいような気がするのだけれど、
その懐かしさは実体験に基づいていないから実体が無くて。
そしたら今自分が感じている「懐かしさ」は誰の感情?
とそれが不気味に思えてしまう故の不安定。
考える文章、ではなく、感じる文章、というものもあるのだと、
気付かされた読書体験でした。
Posted by ブクログ
ちょっとわざとらしいまでの宮沢賢治風の文体とか、途中に織り交ぜられるイメージボードのような詩、写真はさておき。ストーリー自体は奇をてらわない、ノスタルジックで美しい作品だと思います。タイトルの意味は最後までわからないまま…。お父さんがとても素敵です。
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放浪癖のある父のせいで各地を転々として過ごしてる少年・岬が
たどり着いた山間の町で出逢った小柄な少年・賢彦。
岬が通うことになった中学で賢彦は神隠しにあった子として避けられていた。
わずか3日間の出会いと別れ。
少年って、本当にわずかな時間で大人になってしまうんだな・・・
親子の関係も会話もすごくステキ。
美しい言葉で紡がれた懐かしい匂いのする奇妙な物語。
最後がすごく切なかった。
Posted by ブクログ
初めて読んだのは、恐らく中学生の頃。
「さまよえる湖」にとても惹かれた覚えがある。
単行本は角川書店だったのに、文春文庫で発売。大人の事情??
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主人公の少年の描写がとっても心地よい。わしにとって長野作品というのは、ストーリーよりも作品の醸し出す雰囲気とか文体とかを楽しむ本である。その点ではこの本は十分楽しめた。表紙の少年の人形もいいし、常套漢字でないものが並ぶ文字の並びだとか、植物や鳥が違和感なくされりと説明されているところが好き。ちょいと図鑑でも開いてみようかという気分になる。
Posted by ブクログ
この方の作品にしてはとても素直に読める物語だった。
仲の良い父と息子という構図も少し珍しい気がする。
物語も登場人物も特にひねくれたところがなく、全体を通して家族愛とか、優しい友情とか、そんなものが素直に感じられる作品だった。
ところで物語とタイトルがいまいち結びつかない。
もうちょっと違う感じの話をイメージしていただけに、腑に落ちない感じ。
Posted by ブクログ
放浪癖のある父と一緒に各地を点々とする岬が訪れた町でであった不思議な少年との物語
不思議だなぁ~と読み進めながら、
あ、そうか、そういうことか!
って答えがなんとなく見えたとたん視界が開けるような、
そんな小説でした。
まだ残っているのに、
最初に戻って読み返そうかなと反則技を使うところでした。
これで勘違いだったらお恥ずかしいはなしでしたよね(笑)
岬が垣間見れた父の理由。
息子だから思春期ながらも理解できて納得したやろうけど、
私だったら、それは自分で判断することであって、
巻き込まないでって反発しちゃいそうでした。
Posted by ブクログ
ところどころに直接話とは関係ないような写真が挿入されていて、そこに惹かれて買ってみました。
…ってゆーか鳥がね、好きなんです。五位鷺の写真にやられたといっても過言ではありません(苦笑)
話自体も幻想的で、謎めいていて、それでも今回はきちんと結末があって良かったです。
不思議な世界観が好きな方はぜひ。
Posted by ブクログ
丁度今頃の季節のお話で良い読書でした。
このお話での時間の流れ、たった3日なんだ…もっと長い気がしていたけれど。
岬と同い年の梓は、今現在の岬の父親である梓とは違う性質で、あれから彼に何が?と思ってしまいました。
切ないお話でした。
Posted by ブクログ
不思議な感覚の読み物でした。
何がどうなっているやらはよくわかんないけど
なんとなく納得してしまう、
そんな摩訶不思議なストーリー。
気張って読まなくていいので、
サラリとしたものを所望しているときに有効。
ただ「ぢ」は「じ」でいいぢゃねーの。
(`皿´)ウゼーと思っちまった。
Posted by ブクログ
放浪癖のある父親のせいで転校を繰り返す岬。引っ越してきた山間の町で、小柄な少年賢彦に出会う。賢彦は二年前幻の湖で神隠しに遭い、二年前と変わらぬ姿で戻ってきたとか。そのせいでクラスで浮いてしまっていた。
まず、表紙のお人形さんの眸に惹きつけられて、表紙買いしました。美少年さんです。
長野まゆみさんの描かれる少年はきっと、岬も賢彦も透明感のある少年なのでしょう。
鬼胡桃の印鑑、檸檬水の空き瓶を溶かして作った笛……
古い机の中とかに入っているのを見つけたくなるような小物がいちいち可愛いです。
父親の過去の友人と、息子である岬が邂逅します。
短い時間でも、もう会えなくても岬は賢彦と友人になり、そしてすべて霧の向こうに消えていく。父親にとっても、岬にとっても心に残った気持ちは、ふとした時、振り返りたくなるようなものだと思います。決して忘れない淡い思い出です。
最後に消えてしまった街のように、幻想的な雰囲気の小説でした。
Posted by ブクログ
放浪癖のある父に連れられて引越しを繰り返す岬は、転校先の学校で不思議な少年に出会う――。物語全体を包むファンタジー的なこの雰囲気が好き。淡々としてて透明なのに冷たくない。タイトルと内容がうまくリンクしていない気もするけど。