長野まゆみのレビュー一覧
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ネタバレ長野まゆみさんの作品、初期よりも後期のほうがすっかり好みになってしまいました。
こちらもしみじみよかった。
戦中戦後の家族の記憶は現実と幻想が入り交じって、長野ワールドのきらめきや爽やかさと、戦争の仄暗さが同居してました。
風景描写、生きている時代も居住区域からも知らない風景の筈なのに目に浮かぶような鮮やかさです。
あまりの「思い出話」ぽさに何度も、私小説かな?と思い、いや長野さんのご兄弟はお兄さんでなく妹さんだったはず…と我に返りました。
「八月六日上々天氣」もだったけど、淡々としているほうが胸に迫るものがあります。かといって深刻じゃないからすごい
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前作を読んでから1年半が経ってしまったので諸々の関係値がうろ覚えに…それでも新しく登場した有沢くんのおかげで楽しむことができました。
そこそこ本を読んでいる自負のある自分でもほとんど1~2Pに1回くらいの頻度で「なんて読むんだこれ…」って単語だったり「どういう意味だこれ…」って単語が出てくる。時代が違うこともさることながら、綺麗な日本語だな、と素直に感服してしまう言葉がこの本には確かに残っている気がしました。昔の自分だったらその一言一言を嬉々として調べては、知ることそのものを楽しんでたんだろうけど、今はどうも億劫に感じてしまってよくないですね…。 -
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古本屋で題名に惹かれて読み始めました。
元々猫に関係する話なのだろうな、と思って読んでいましたが、読み進めるうちに雰囲気が変わっていき「これが、、あれなのか?」と訝しみ始めました。
別に僕はこの手の本が嫌いなわけではなく、全く触れてこなかった分野なものだけに少し警戒していたのです。何に警戒したのかはわかりませんが。
ただ物語に用いられる言葉や雰囲気がとても官能的なのはずっと感じており、それらにとても魅力を感じました。登場する家屋の描写もとても好みでした。
また、言葉の意味合いを含めて色々勉強になったのも確かです...。
改めて一通り読んだ自分を文字で表してみると、一郎とほとんど同じ道を辿っ -
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男性同士の恋愛要素があると小耳に挟んで読書したのだが、思っていた数倍官能的だった。
猫ってそっちの猫ね〜!やられた〜!
物語に登場する4兄弟の妖艶な魅力に虜にされると同時に、1度踏み入れたら抜け出せないドラッグのような危うさも感じた。
世界観にこだわっているのか建物の内装描写がとても丁寧。
特に4兄弟が暮らす《猫飼亭》は浮世離れしていて、その馴染みのなさが魅力的だと思った。
物語がオムニバスなだけあって、猫飼亭に訪れる猫は多い。自由気ままに生きるその様はまるで生き物の猫のようで純愛が好きな私は少々物足りなさを感じたが、最後に物語序盤で登場した2人の恋路が読めて満足した。
新品の傘を渡 -
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ネタバレ大学の学費を貯めるために地図収集館で働く孤児のリュス。淡々と倹しい生活をしていたけれど、ある時から様々な女性が彼に絡んできて…というお話。
長野さんの世界なので、ミロナの街や、地図や道具、食べものなどのひとつひとつの小物はクラシカルで登場人物たちもどこか外国のような佇まいで好きです。
リュスが女性たちに翻弄されているかと思いきや、接触にも淡々と反応を返すリュスに女性たちのほうが翻弄されている気がしました。
全てが整えられたお芝居だったわけですが、結果的に男女関係で深まらなくて良かったね…という相手もいました。
ダナエの正体だけびっくりしたけれど、確かに似合わないメイクしてるって描写あったもん -
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何が本当か、もしかして全てが嘘なのか…とふわふわしてしまう短編集でした。
始めは嘘でも、ついてる人が本当だと思っていたらそれは本当になるのかも?本当のことを知ってる人が居なくなったりしたら余計に、嘘だとわからなくなる。
それでも、誰も傷付かなかったのなら良いかも、と思えます。
文庫で再読しました。
ユリヒコとマリヒコの「シャンゼリゼで」、記憶喪失のイオコンダの少しずつ明らかになっていく過去「伊皿子の犬とパンと種」が特に好きでした。
長野まゆみさん作風かなり変わったな…と思いましたが、年齢が上がった幻想小説なこちらも好きです。うっすら黒長野。 -
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長野まゆみさんの、エッセイ含む作品の中でも異色だと思う、デパートについてのあれこれ。
「昭和四十年代前半に小学校低学年」の長野さんはわたしの母(昭和三十四年生まれ)と同世代だろうので、母もこんな少女時代を送ったのか…となんだか妙な気分です。
バリバリ都会っ子の長野さんと、地方の田舎住みの母とでは意味する都会もデパートも違うでしょうけど。
何度か読んでいる本書、その度に新鮮な面白さがあります。
今回はデパートという存在の移り変わりが心に残りました。この、時代の流れに染まらないしスピードにも合わせない(悪く言えば取り残されている)のがいいけど、でもそれじゃ生きていけるのか?というところ。
刊行さ -
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匂わせのおすすめとして名前が上がっていたから読んでみた。これは匂わせというよりもダイレクトにそれだった。最近のBLと呼ばれるものはよく読む方ではあるけど、これが耽美の世界感か〜。BLとは似て非なるもののような気がする。その家を訪れた瞬間から、非現実の空間に迷い込んでしまったような感覚で、話に出てきた4人の男性たちもそんな感じだったんだろうな。猫にされるって言うんだから、つまりそういうことなんだろうけども、どっちがどっちかすらも、華美で妖艶な雰囲気の文章で見事にぼやかされていた。隠喩が直接的な表現もあったけれど、その手のシーンはそんなになかったから特に違和感もなく読めたなあ。最後の2人の話、空気
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最初、これはBLですか?と思いましたが、多分、違います。なかなかの謎掛け?謎解き?小説です。最後に、全ての謎が明かされていきます。
大学進学のために、上京し部屋探しをする鳥貝一弥。都内の賃貸は高く、予算に合う部屋はかなりの難あり物件。そんな時、学食で男子寮の斡旋をしてくれると…あれよあれよという間に、その寮で食事を作って泊まることに。夜中にも不思議な事があったが、翌日には、ここに棲むことに決めた。
そして、荷物を送る手配をしに一度実家に帰って。そこにも、男子寮のメンバー1人がいて…。
一弥は、高校入試の時に、自分が養子だと知ったが、特に気にも留めていなかった。
それが、この男子寮との出会い