津村記久子のレビュー一覧
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津村さんの短編集。
高校中退後カフェで働く、自己肯定感の低い千春が、席にサキの短編集を忘れていった女性客との淡いつながりを機に、一歩歩みを進めていく「サキの忘れ物」。
これは本好きの琴線に触れる作品であることは言を俟たない。
「ペチュニアフォールを知る二十の名所」「喫茶店の周波数」あたりは、なんとなく森絵都さんの『できない相談』を思い出した。
そういえば、本書の帯に森さんがコメントを寄せている。
「行列」も面白い。
人々が期待しながら、何時間も行列になって待っている。
その詳細がリアルに描かれていくのだけれど、何の行列かは、最後まで読者には明かされない。
まあ、カフカなんかと比べれば、不 -
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ネタバレもともとジャンルとして「お仕事小説」が好きなのと、タイトルが自分の持論ズバリそのままだったので思わず手に取った。
主人公は自己肯定感が低く、仕事を評価されても素直に受け取れない。また、仕事にのめり込むと生活に事情を来すほどになってしまい、一つの仕事を長く続けられない。
新卒で働き始めた職場を辞した後、さまざまな短期の仕事に就くも、どの仕事にものめり込みすぎてしまう。
仕事にのめり込んでしまうというのは時給労働であれば無駄だが、自分で事業をするのであれば大きな強みになる。この女性はどちらかというと個人事業主のほうが向いているのではないかと感じた。 -
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緩やかに気怠く過ぎる8月の気配に懐かしくなる。でもこの街には澱みのようなもののほうが多い。「宿題の写しを集める」という中学生にとっては致命的な問題でもある1つのミッションが中心に据えられながらも、その周縁にある「大人の事情」はなかなかに複雑かつ子どもにとってはグロテスクですらある。当の本人たちの心情がそれほど詳細に劇的に語られる訳ではないから淡々と読めてしまうけど、やっぱりだいぶしんどい家庭が多かった。セキコの家庭はひとまずは持ち堪えた感があるけど、室田・片山家はどうだろう。
登場人物の中学生たちの、どこか達観し諦観しているからこそできるような飄々とした振る舞いと、表紙の絵柄とが相まって、ほ -
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私が津村作品を好きなのは、西加奈子さんの言う通り、津村記久子が「取るに足らない、とされていること」に目を向けてくれるからなのだと思う。本当は「どうでもいい」なんて一蹴できることじゃないのに、なんか周りに流されてどうでもいいよね〜と笑えてしまう、気持ちに蓋をしてしまう私の、心の奥に触れるような、そんな表現・着眼点が散りばめられている。私も津村作品のみんなみたいに、軽やかさと真面目さでもって、自分にとって大切だったり重要な瞬間を受け入れたり乗りこなしたりしたいと思う。
あとは津村作品の女性の飄々としていたり淡々としていたりするところが好き。恋愛に生きてないところも良いな。あとワードセンスがあると -
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職場を舞台にした短編集。
「いるいる!こんな人!」と、嵐の中の職場から自宅への帰宅大作戦。
なんで津村先生は、こんなに日常を拾うのが上手いのだろうか。
今回は会社を舞台にした短編集。
特別大きな事件は起こらない。
無くした万年筆が予想通りのおじさん社員の机に入っていたとか、嫌な対応をしてくる営業マンに地味〜な復讐をする現場を見たとか…。
何が面白いって、津村先生の感受性と表現。
大雨の中で登場人物が、もうグッシャグシャになって家が恋しいと表現する言葉。
『うちに帰りたい。切ないぐらいに、恋をするように、うちに帰りたい』
もう共感でしかない。
大雨に降られて、服もグシャグシャで寒くて歩くのも億