あらすじ
「リフレッシュ休暇をもらったが、もはや私にはリフレッシュする気力自体が残っていなかったのだった。」
入社希望の学生のSNSチェックに疲れ果てた会社員。代々続く母と娘の台所戦争。遅れても許せてしまうことが美点のロバによる配送サービス……。膨大な情報の摂取と判断に疲れてしまった現代人の生活に寄り添うやさしさと、明日を生きるための元気をくれるユーモア満載! 味気ない日々をゆるゆると肯定し、現代人の張りつめた心をゆるめる短編集。
「もう何もしたくないという切実な本音に寄り添ってくれる稀有な小説」――金原ひとみ
本屋大賞2位『水車小屋のネネ』、Xで何度もバズった芥川賞受賞作『ポトスライムの舟』など、
書店&SNSで話題を集める著者による、「脱力系」日常譚の真骨頂!
感情タグBEST3
Posted by ブクログ
カバー装画と挿絵が敬愛する木下晋也さんなのを見てこれは絶対に好きに違いないと思い購入したけど期待どおりだった。
その木下晋也さんの名作「ポテン生活」にも通ずる非日常的な日常が、自分自身の荒んだ日常に何かホッとしたものをくれます。でも「牢名主」と「フェリシティの面接」はちょっと不穏な気持ちになったな。
そして最後の「イン・ザ・シティ」は多分あの名曲のことだろうなと思っていたらやはりそうで嬉しかったな。
オススメです。
Posted by ブクログ
クソみたいな日常で生き延びる術を教えてくれる。具体的に何をどうするという話ではなく、自分と重ねて読み進め(驚くほど荒み具合に共感しつつ)て行き、ラストではまあ何とかやってくか、という気持ちになれる。最後に希望を与えてくれる、それがまた良い塩梅で。
あるいは、若者の無力さと希望(無力であるが故これから何にでもなれるというか)、澱んだ空気にスッと風が入るような。
本作もとても良かったです。
Posted by ブクログ
次は何を読もうかと、積読本たちをあれでもないこれでもないと10数ページ読んでは辞めてを繰り返して、壮大な長編小説も重い話も読む元気がないな、なんか気楽なのがいいな、と手に取った。
1話読んで、これだわ、ってなった。
全く劇的な事は起こらなくて、明るいわけでもないただ日常の生活を切り取ったようなゆるい空気感で、それでいてユーモアで心をほぐしてくれるような話たち。温かい梅昆布茶でも飲んでいるような感じで癒される。
8話あってそれぞれ20~50ページ弱なので読みやすい。
どれも良いけど特に好きだったのは以下3話
・レコーダー定置網漁
仕事で、SNSだとか膨大な量の情報に触れて疲れきってしまった女性が、2週間のリフレッシュ休暇中に、たまたま録画されたテレビ番組たちを見ながら、本当に少しずつ、回復していく様子を描いた話。
クイズ番組の「六歳の男性」って言い方でなんかふふっとして、靴下の毛玉取りのゆるさが良い。
週刊ムーンTV自分も見たい。
あとフライパン焼き鳥食べたい。
・粗食インスタグラム
読んでると落ち着く。
主人公がsad desk lunchを見て落ち着いているのと同じような感覚で、この話を読んでると落ち着く。
・イン・ザ・シティ
関係性がすごく良い。
サッパリしてて、でもちゃんと心があって。
青春。キヨもアサも加藤も、みんな幸せに生きていけますように。
この話たちは、活力みたいなものがないときでも寄り添ってくれる感じがする。元気づけてくれるじゃなくて、寄り添ってくれる。
ちょっとだけ前向きになれるみたいな、安心できるような本だった。
好き。
いつかまた読むかも。
Posted by ブクログ
現代生活手帖と粗食インスタグラムが好き。
特に粗食インスタグラムの、オプションが多いことがいや、という感覚は共感が強い。
あんまり料理をすることが好きではないのは、オプションが多すぎるからだと思う。最近、物事のルーティン化について、考えている。選ぶことを減らす。別に何でもかんでも減らしたいわけではなく、休日や自分の好きなことに選択のリソースを残すため。選びたいものを選ぶために、不必要には選ばない実験開催中。
Posted by ブクログ
私の好きな津村さん(とか言ってあまり読んだことない。でも好きな作家)。
ぶっ飛びすぎず、でもなんだか不思議な空間になっている。読み終えて、心が軽くなるような、ならないような。地に足がついてるような、いや少し浮いているような。
「台所の停戦」「牢名主」「イン・ザ・シティ」など、悪人とまで言えないかもしれないが確実に自分を削り取ってくる相手、の解像度が高く描かれている。けれど全編通して共通するのは優しさだった。
なんかね、ユーモアが優しい。津村さんの書く職場の話が好きだ。また、主人公たちが低体温だが人間臭くて愛しい。お友達になりたい。
Posted by ブクログ
津村さんの粒のそろった短編集。特筆すべき事件も起こらず日々の生活の側面に若干の奇妙さを交えて淡々と進んでいく物語群。津村さんらしい文章に満ち溢れてて読んでて飽きがこない。
Posted by ブクログ
短編集。好きだ、この方の、地に足のついたユーモア。淡々とした語り口のまま気づくとふわっとおかしな事が起きている。本作はいずれの話も、ものすごくニッチな設定下での人間の心理を細かく描いていて、それが面白おかしい。
レコーダー定置網漁
まず、帯の情報番組を自動録画するレコーダーを定置網になぞらえて、録画される番組の情報を魚にとらえるところがユニーク。メンタルをやられて家で何をする気も起きない主人公が、毎日ひとつだけ定置網漁にかかる情報を摂取し、やがてその情報に誘発されるように日常の活動ができるようになる話。
台所の停戦
女3代の家の、冷蔵庫でのテリトリー争い。親の悪いところを引き継ぎたくないと、娘だった時分を思い返しながら決心する母親。娘にイライラを小出しにしちゃう母親の心の描写がリアルで面白い。
現代生活手帖
近未来のパラレルワールド的な世界観。星新一のショートショートを彷彿とさせる内容。くすっと面白いし、クリエイティブ。
牢名主
モラハラ・メンヘラ、洗脳者のような人(A群)に付け込まれつきまとわれる関係性にある人(B群)たちのコミュニティ。脱A群を目指すも、A群のつきまといを「ソフトランディング」するすべを教えると言っているリーダーがなんだか胡散臭い。架空の現象?症状?なのだろうけれども人間関係や会話が現実にありえそう。
粗食インスタグラム
全く映えない食事写真をインスタで見ると癒されるという主人公の女。自らの粗食もアップするようになる。発想が面白い。
フェリシティの面接
急にアガサ・クリスティみたいな短編。
メダカと猫と密室
休日出勤したのに身勝手な同僚のせいで3時間の待ち時間が発生した、というシチュエーションで始まる人間ドラマ(?)。シチュエーションコメディとか、コントドラマみたい。登場人物たちの駆け引きが面白い。
イン・ザ・シティ
中学生たちの終わらない日々。どんな青春小説よりも青春ぽい鈍い輝き。けだるさと無気力さ、妙なことにハマってこだわるところ、家族について薄っすら居心地の悪さや許せなさを抱えているところ、近くにいる同級生の大人な面を発見してドッキリするところ、素直な感想を持つところ。中学生だなぁ。「自分たちにはいくらでも時間がある。だからきっと通り過ぎていくものたちのどれかは、手になじんで輝いてくれるだろう」。永遠の未来が目の前にある。
あとがきも解説もなくスパッと終わる気持ちが良い短編集だった。
Posted by ブクログ
仕事が立て込んできたり、なんとなく人間関係に疲れたときに、つい手に取りたくなってしまう津村記久子。もはや、自分にとっての漢方薬のようなものだと思っている。
本作に収録されている8つの短編はいずれも、疲弊感や閉塞感を抱えた登場人物がメインで描かれている。情報社会に、家族関係に、職場に、それぞれがそれぞれの人生で一様に疲れている。そしてもちろん、それを読んでいる僕も疲れている。「エモい」よりはもっと低温でやさぐれ気味な、でもどこか心地よい“負の共感”を求めて読み進めた。
『レコーダー定置網漁』『粗食インスタグラム』『メダカと猫と密室』は、それぞれ津村らしさ溢れる、気だるいユーモアに安定感がある。テレビのレコーダーにたまたま録画された番組にハマり、靴下の毛玉取りに夢中になり、粗食ばかりの哀愁漂うインスタを投稿し続け、会社の資料室でメダカをこっそりと飼う主人公たち。それぞれが見出した小さな楽しみは、いつの間にか疲弊した自分へのケアと化していく。
そんないつもの津村節に加え、『現代生活手帖』にはやや突飛なSF的な面白さが、『イン・ザ・シティ』では青春小説のような甘酸っぱい爽快感が盛り込まれていて、これまでとはまた違う読後感が新鮮だった。
一方で、『台所の停戦』『牢名主』『フェリシティの面接』は、やや陰りのあるテーマを扱いながら、背中に氷を当てられるような不穏なユーモアが描かれている。暗いながらも闇に沈むわけではなく、病んでいるわけでもない。重いテーマでありながら暗くなりすぎずに、希望を仄めかしながら書き通す筆致はさすがだなと思う。
津村作品に通底してあるのは、「働きたくない、非課税で5億円欲しい」というような気だるさと脱力感。本気じゃないけど、ちょっと本気で、馬鹿馬鹿しいけど、ワンチャンそうあってほしいーーそんな自虐のようなユーモアを武器に、生きづらい社会と対峙していく主人公たち。効能はよくわからないが、なんとなく彼女たちに気力を分けてもらえたような気がするところが、僕がこの本を「漢方薬」だと感じる所以だ。西洋医学では解明されない滋養がここにある。
疲れがちな社会において、心を守る方法は人によって異なる。本書でも、登場人物がそれぞれのやり方で、ストレスばかりの社会に対処しながら生きている。まるでコーピング事例集のような短編集だとすら言えると思う。
コーピングリストは人によって様々だ。上司からの電話を投げ出して資料室に閉じこもってもいいし、妄想上の街づくりやスケートボードに興じるのもいい。『現代生活手帖』なんてカタログを枕元に置いて毎晩読み耽るのも、立派なコーピング足り得る。
そんな物語の端々から、僕も心の守り方や肩の力の抜き方を「独習」していけたらいいなと思う。漫然とした抑圧への対処方法は、誰かに教えてもらうものでも、誰かのコピーで済むものでもない。自分に合ったやり方を模索し、自分の機嫌をとりながら、自分を上手にあやして生きていく。そんな「独り」の生き方を、押し付けがましくなく学ばせてくれる良書だと感じた。
Posted by ブクログ
▼津村記久子さんの短編集。
収録作は
「レコーダー定置網漁」
「台所の停戦」
「現代生活手帖」
「牢名主」
「粗食インスタグラム」
「フェリシティの面接」
「メダカと猫と密室」
「イン・ザ・シティ」
▼津村さんはけっこう長く、もう15年くらいか、読ませていただいています。何といっても長編の最新作「水車小屋のネネ」が破格に素晴らしかったので、それとくらべちゃうとなんですが、この短編集は津村さんらしい息遣いの一冊。
▼津村さんの文章が好きなので、基本的にはなんでも其れなりには楽しめます。割と解決するのが難しい現代的な「気分」をつかもうとする作風な気もするので、当然ながら必然の結果として 「問題提起はわくわくするが、小説としての終わり方はカタルシス満載というわけにもいかない」 ということも多いです。特に短編。
なんですが、どれも津村さんらしい言い回しが面白く。
▼「牢名主」は人間関係を「食べる側」「食べられる側」に分けて考えた上で、「食べられる側」にまた生じる支配関係の萌芽を描く・・・・というと重いですが、描写はオモシロイ。印象に残りました。
▼「イン・ザ・シティ」が、確か、架空の国?町?の地図や設定を作る中学生の話で、人間関係のナイーブさと語り口のドライさが、「津村記久子節」だなあと思いました。「エヴリシング・フロウズ」だったか、津村さんの「ネネ」に至る道のりを感じさせる素敵な短編でした。
▼津村さんと、短編。で、言うと、個人的には「浮遊霊ブラジル」が圧倒的な第1位。突き抜けたオモシロサ。未読の方々には是非お勧めしたい。「駅前で100冊くらい無料で配りたい一冊」です。
Posted by ブクログ
津村さん節が強烈で、この角度のユーモアを深掘りする作家さんはなかなかいないと思うので新しい読書体験ができました。
気持ちが晴れやかな日と憂鬱な日が目まぐるしく変わっていくのも別に悪いことではないんだなと感じることができました。
Posted by ブクログ
津村記久子さん、3つ目。この前に読んだ「とにかく家に帰ります」が好きすぎて、それよりは好きが低め。「牢名主」が怖すぎたかな?あと、ワタシが食いしん坊なので「粗食インスタグラム」も「う〜ん…」でした。「レコーダー定置網漁」「現代生活手帳」は好き。前者の、心が疲れ切った時の派手ではないきっかけでゆる〜く無理せず文字通り少しずつ気持ちがほぐせていく様子の書き方がとても上手い。
Posted by ブクログ
著者の『この世にたやすい仕事はない』と同じ空気感のある短編集。
仕事や人間関係などの疲れとか日常の細かなあるあるにスポットを当てるのが上手いな〜
ロバの配達員が可愛い。そんな突飛なのも出てきてクスッと笑えてゆるっと気楽に読めた。
粗食インスタグラムの最後に出てくるご飯を無性に食べたくなって真似して食べた。
Posted by ブクログ
現代の生活になぞらえているのに、ちょっと不思議な生活を描いた短編集
出かけている間にいらないものをなくしてくれるロボットサービス興味あるわ。。自分にとって必要なものを選んでくれるってすごい。大事にしていると思ってたものも実は不用ってことはありそうだなー
自分の生活にあてはめるとどうかな?と当たり前を違う視点から見てもらうような気持ちになった
Posted by ブクログ
仕事に疲れていると読みたくなるのが津村記久子作品 1作目から疲れた心に染み入る…津村作品の登場人物とはお茶を飲みながら愚痴を溢したくなる
2作目の台所の停戦も好きな作品だ よしながふみの愛すべき娘たちが好きな人はきっと好きだと思う 母親から引き継いだもの、子に引き継ぎたくないもの
Posted by ブクログ
お仕事ものや、親子/人間関係ものといったおなじみの津村節の他、SFチックな「現代生活手帖」、まさかのクリスティもの「フェリシティの面接」が印象的。以下、自分用備忘メモ。
・レコーダー定置網漁
リフレッシュ休暇。靴下の毛玉取り。
・台所の停戦
「もうやめにしよう、と思った。これは受け継がない。冷蔵庫のことで傷付く子は私で最後にしよう。」
・現代生活手帖
いちばん好き、楽しかった。「捨て物ロボット」、利用者の外出中に家に入って、不必要なものをそっと持ち帰って処分してくれるロボット。一年契約で一万円。…ちょっと惹かれる。高性能っぽいデスクをこする操作を「しけた動作」と表現しちゃうところも好き。SFチックと言ったが、SF畑の人はこうは書かないと思うんだよな。
・牢名主
これも好きだった。アドリアナとバーブラね…。
・粗食インスタグラム
マカオとゴルフのくだりに笑った。
・フェリシティの面接
わかる人には一発でわかるのであろうが、私はパイン氏で「あら」と思っただけで、あとで調べてやっとその正体を知った。
・メダカと猫と密室
はじめから終わりまで仕事が嫌になることばかりだけど、それでもどこかおかしみと救いがあるところが本当に津村さんすごいよな。
・イン・ザ・シティ
若者へのエールのような。
Posted by ブクログ
8編の短編集。どれも楽しく読めました。
前半3遍は、作中人物がエッセイを書いているような不思議な作風。ちょっと長めのショートショート?って感じでもあります。
4編目以降は小説感が出てきます。
気に入ったのは5編目「粗食インスタグラム」と7編目「メダカと猫と密室」。どちらもお仕事小説。津村紀久子さんのお仕事小説は共感する事や気付かされる事が多く、“同志“を見つけたようで嬉しくなります。私も仕事相手については余計な情報入れたくないし、仕事がスムーズであれば善人か悪人か問わないです。でもついつい感情が働いちゃいますよね。
ラストは「イン・ザ・シティ」。The Jamの名曲ですね。読み終わった後すぐにYouTubeで再生しました。エンディングテーマのようでいい感じです。
気に入った一節
コアラとかうらやましいですよね、と言ってしまう。
「ユーカリしか食べられないらしいけど、逆に言うとユーカリだけ食べてればいいってことでしょう」
「何食べようとか思わずにすみますもんね」
(「粗食インスタグラム」)
Posted by ブクログ
人生は選択の連続だ。しかも、今の世では選択しなかった人生を、簡単に覗き見ることができるのである。比べていいことも、ほとんどない。サンプルは上から下まで幾らでもあるのだから。とても疲れる。
では、良いとされていることをすればよいのかというと、これまた大変である。憧れの生活スタイルもたくさん明示される。しかし、正しいことをし続けるのは、とてもエネルギーが必要になる。
そうなると正しい方を選び、行い続ける、というのはとてもとても疲れるということになる。だから、しょぼくてもしけててもつまらなくても、これでいいというのはひとつの解決法だろう。「台所の停戦」の私や、「牢名主」の鶴丸が心に決めたように、他人に何かを押し付けて自我を保つよりはずっといいと、私も思うのだった。
それにしても、ロバの配達さんはいいですね。配送の利用者が増えると思う。日本郵便、起死回生のアイデアとなりうるんじゃないのかしら。
Posted by ブクログ
『群像』に掲載された8短編集。レコーダー定置網漁、台所の停戦、現代生活手帖、牢名主、粗食インスタグラム、フェリシティの面接、メダカと猫と密室、イン・ザ・シティ。
普通に仕事があって、仕事や対人関係やSNSに疲れて、料理の気力もない、でもそれなりに頑張る姿に共感します。端々に、なるほど、そう考えてもいいんですかという応援。
Posted by ブクログ
短篇集。選択するという行為に割とストレスを感じる自分‥‥「粗食インスタグラム」に慰められた気がした。最後の「イン・ザ・シティ」の3人のその後を知りたくなった(そういえばThe Jamもトリオだった)。
Posted by ブクログ
「ポトスライムの舟」から時々読んでいる津村記久子さん、相変わらずの独特感。
その中でも「現代生活手帖」は読みやすくおもしろかった。恐らく作家さん自身のファンタジー的な願望とか反映してるのではないかと思う。
それぞれまったく違った話の短編集
現代生活とあるけど、
現実からほんの少しズレる話が多く、
それをユーモア溢れる描写で表現しているため、読者側は理解するのに時間がかかる印象になるんだと、実感。
Posted by ブクログ
「この世にたやすい仕事はない」や「とにかくうちに帰ります」を読んだ時も思ったのだけど、現代日本人の多くが、疲れはててどこに向かっているのかわからなくなった虚しい毎日を、マウントをとってみたり、回避してみたり、空想に逃避してみたりしながらなんとか生き延びていることを突きつけられて、わりとしんどい。
生きる喜びなんて感じられないくらい、子供から大人まで毎日毎日疲れ切っている。
週休2日ノー残業を実現するために昼休みにカロリーゼリーを啜りながらPCを叩き、帰宅してからは疲れ果てて動けず、休日は一日中眠りこける日々に矛盾を感じる方にオススメです。
Posted by ブクログ
会社や家庭、学校などを舞台に〝面倒臭い〟日常がユーモラス、かつシニカルに描かれる8編。〝あるある〟満載で、近未来SF、ミステリー風など意表を突く設定の話もあって楽しめる。思わずふっと笑える作品群の中、特に可笑しかったのは「粗食インスタグラム」と「メダカと猫と密室」。
Posted by ブクログ
「水車小屋のネネ」に続いて、津村さんの本2冊目でした。
メダカと猫と密室が一番心に残りました。
私にとって短編は、話に入り込む前に終わってしまう感があり、なかなか難しいのが正直なところです。
Posted by ブクログ
お話の進め方の妙技に乗せられて楽々と各編の結末に導かれました。
書き出し(落語で言えば「枕」)の話題から知らぬ間に本筋に巻き込まれます。あたかも、さざ波に漂ううちに気がつくと沖へ運ばれていたかのようです。カチッとした文体の向こう側に(良い意味で)脱力した地平が広がっています。
この文庫本の帯には「のんびりいこうよ、現代人!」と書かれています。休日にソファやカウチで(お行儀悪く)寝転びながら読んでいただくのも良いかな、と思います。
短編の気軽さと、グデっとしたユーモアに日頃のお疲れもほぐれることでしょう♡
本にフィルムを掛けて売られていた(わたしが行った本屋さんだけ?)ので、内容には触れませんが、ひとつだけ。
最初のお話『レコーダー定置網漁』で、SNSに「ベージュのリップの人はAIの顔認識で六十代と判定されたので実質六十代」って書かれていたって話、本当なのかな? どうでも良いけど気になりましたw