津村記久子のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
この本を食べ物に例えると風邪の時に食べる手作りおじや。(いきなり本を食べ物に例えるなよという気もするが) これからの人生で絶対何度も読み返す物語だと確信している。
こんなに読んでいて安心する小説を読んだのは初めてかもしれない。大体のストーリーを言うと母の元から独立を決めた姉妹2人の独立の物語。心温まる話は他にもたくさんあると思うが、この物語がいいなと思うのは相手からの小さな良心をきちんと救って描写されている点にあると思う。
この物語には大きな事件や宝くじに当たるなどの大きな幸運はもたらされない。ただ淡々と日常が語られるのみだが、その日常の中にもこんなに自分は周りから気にかけられ、支えられているんだなと感じることができる。ご近所づきあいが煩わしいとされる昨今でも人とのつながりは大切だなと読んでいて気付かされる作品だと思う。
また、物語に描かれていない余白を残すのが上手いと感じた。10年ごとに区切られて物語は進んでいくが、描かれていない間登場人物はどんな暮らしで何を考えていたんだろうと読みながら想像するのが楽しかった。
孤独を感じて辛い人にぜひおすすめしたい一冊。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ登場人物がみんなよくて…
それぞれが皆大変な状況なのに、ごく自然に人を思いやり、恵まれている・ありがたい、と大切な人への感謝を忘れない、心の余裕と豊かさがある。そして、その思いやりを惜しげもなく当たり前のように他者に循環させていく、素敵な世界。人にやさしく、温かく接することの麗しさたるや…
津村さん、初めて読みました。
「本書が誰かの良い友人になることを願っています。」と、誰も取りこぼさない、最後まで優しいところもグッときた。
私は本屋さんで平積みされているのをきっかけにこの本や津村さんに出会ったが、ちょうどもう少しで読み終わるというタイミングで西加奈子さんが出版区の本ツイに出演されており、この本や津村さんを絶賛されていて、ああ西さんもお好きなんだと嬉しくなった。
とくに好きなところ記録。
「この人がこんな様子なら、自分のこれからだって何とかなるだろう、と常に律に思わせてきたおおらかな姉の姿は、律が8歳だった頃と少しも変わっていなかった。」
-
Posted by ブクログ
ネタバレ読み終わって、小説の世界から出てくるのが名残惜しかった。今年読んだ中で1番好きな作品。余韻がまだ胸に響いている。
大阪のBook’n Boothという書店で開催された著者のトークショー・サイン会で購入した一冊。ご本人のお話を間近で聞いて、サインもしてもらった特別な本になった。
1人で立って生きていくことの心細さと良さの描き方のうまさといったら。心細くも自分の人生を生きていく人たちが、周りにいる人たちと関わり合いながら時に見えない形で互いをちょっとだけ励ましたり、いたわったり、あるいは疎ましがったりしながら生活していくことをただ肯定する話、というか。
主軸となる3人の人物だけ、名前がカタカナ表記なのが、銀河鉄道の夜のようなファンタジーな風味をつけていて、物語全体に優しい雰囲気をもたらしている気がした。
話の中でしょっちゅう出てくる地下トンネル通路は、大阪住みなら思い浮かぶ場所がある。スカイビルに続いてた昔のあの通路。今はグラングリーンが出きて、少し様子が変わってしまったが、おかげで大雨の夜の不思議な渡しのシーンは映像が頭にはっきりと浮かんだ。舞台となる椿ビルディングも、なんとなくスカイビルや大阪第1ビルとか第2ビルとかを混ぜ合わせた感じがする。
進学塾の講師がたびたび「こんなところで働く人間になってはいけない。」と塾生たちに言う。
その「こんなところで働く人たち」とは毎日を生きる私たちで、その1人1人の描写が温かい。
大雨でビルから出られなくなった人たちの関係性が
少し変化する部分の描写は本当に素晴らしくて、あぁ、こういう感じあるよなぁ、と本当に読むのが楽しかった。この本は地の文も大阪のイントネーションで読んだのだけれど、このへんの人間関係のあり方は大阪的なのだろうか、他の地方の人にはリアリティがないと感じられるのだろうか、とも思った。
ともかくとても幸せな読書体験だった。
-
Posted by ブクログ
「ネネ」はヨウムという鳥の名前。50年は生きるという。お蕎麦屋さんの裏の水車小屋で飼われていて、そば粉ひきの番の仕事もしている。水車を使って、蕎麦の実をそば粉に挽く。蕎麦の実が少なくなってきたら、「からっぽ」っと言って、補給のタイミングを教えるのがネネの仕事。3歳児くらいの知能があるそうで、とても賢い。高校を卒業した理佐が妹の律を連れて、この蕎麦屋で給仕兼鳥の世話係として働くためにやってくる。それから40年に渡る、ネネと理佐と律、ネネと彼女たちの周りの人々の物語り。
この本のよかったところ
・装丁と挿絵 ・ネネが水車小屋にいるところ
・ネネのおしゃべり ・朝ドラみたいなほのぼの感
・ネネがつなげる人々の縁 -
Posted by ブクログ
ネタバレ身勝手な母親たちから逃げて独立した18歳の姉・山下理佐と8歳の妹・律。山間の蕎麦屋の水車小屋で石臼の管理をしているネネを始め、周囲の人々に助けられ、姉妹は新しい生活をスタートする。2024年本屋大賞第2位。
ネネにかかるとなんでもシンプルに。
聞いたまま見たままを返してくる含みのないネネの言葉は、自分を俯瞰して見るのに良いようで、理佐や律だけでなく、水車小屋を訪れた多くの人を助けてきた。余計な気使いなく、かっこつけずに話せる相手がほしい時ってある。
ごたごたを深堀りしないスタイルが良かった。
律をいじめた母の婚約者のあれこれや、守の死など、どーんと落ち込んでしまうシーンは具に描かれない。ほどよく消化された段階まで時間を進めて提供されるので、一貫して柔らかくて優しい作品の雰囲気が味わえる。
守さんの死を乗り越えた浪子さんだけでなく、他の登場人物たちも苦悩や不安を抱えていただろう。カットされているとご都合主義に映るかも知れないが、これは引き算の美学って感じでよかった。
この世界観が沁みる。
このシーンがめちゃくちゃ感動した!っていうのではなく、段々とこの作品の空気と自分の周囲の空気が馴染んできて、じわじわと心の中に台詞が効いてくる感じ。ふとした所でじんときたりした。人の優しさやあったかさがじんわり心を解してくる。それがとても良かった。 -
Posted by ブクログ
初読みの津村記久子さん。1981年から10年ごとに物語が進み、40年という長い時間を描く構成に、読み始めから期待が膨らむ。母親とのつらい生活から逃れ、家を出た18歳の理佐と8歳の律。二人がたどり着いたのは、山深い場所にあるそば屋だった。そこで出会うのが、水車小屋で暮らすヨウムの「ネネ」。そば屋の守と浪子、絵描きの杉子など、二人を温かく見守る人たちとの出会いによって、新たな生活が少しずつ形づくられていく。
10年、さらに10年と時が流れ、理佐と律を取り巻く人々も変化していく。幼かった律が大人になり、今度は困難を抱える研司を支える姿が印象に残った。かつて自分が多くの人に助けられたからこそ、今度は自分が誰かを支える。そんな優しさのつながりが、世代を越えて受け継がれていくところにぬくもりを感じる。
人は歳を重ね、仕事や暮らしも変わっていく。それでも、人と人とのつながりや大切にしてきた思いは残っていく。そして、その穏やかな世界の中心には、いつもネネがいる。
40年という時間を登場人物たちと一緒に過ごしたような読後感。日常を描いているのに、どこか特別な世界に触れたようでもある。読み終えたとき、じんわりと幸せな気持ちと充足感が広がった。初読みの津村記久子さん。素敵な作品との出会いになった。 -
Posted by ブクログ
苦しい読書だった。読んでいる間は家族の悪夢を見る程。「まともな家」の子どもではない側の人間なので、登場人物たちの苦しみをダイレクトにくらった。ダメージをくらうということは、この物語には問題のある家庭が抱えた、共通する核心が描かれているのだと思う。楽しくはないが優れた読み物だと感じた。
読み進めていく内に果たして「まともな家」など存在するのか?という疑問が表出してきた。
意識的にか無意識的にか、おかしなことがあっても気付かぬフリをする子どもや親にとっては「まとも」なのかもしれない。でも「まともじゃない」と気付いて確信してしまったら最後。後戻りはできないんだろうと感じた。
思春期特有の、という感想や解説を見るたびに苦しくなる。私もいい大人だが、現在進行形で家族のことで苦しんでいる。ある一定期間の苦しみのように完結させられること自体に、苦い思いが込み上げてくる。
仕事をし社会を知り親も完璧でないことを理解しつつも、鈍麻させた感受性と言葉で縛りつけてくる親の手から逃れる上手い手は未だに見出せない。距離を保とうとしても家族というだけで踏込んでくる。
自分の意志や決断に介入してくる相手から逃れるために、ある種、本を読んでいる節があるのだが、この本は逆に対峙させてくる。
しんどくはあるが、しんどい思いをしているのは自分の家庭だけではないと勇気付けられもする。
しんどさだけに絡めとられず、一見くだらない物事や美味しい食べ物、ささやかな楽しみに気を紛らせながら日々を淡々と生きていきたいと思った。
-
Posted by ブクログ
久しぶりに当たりの本に出会えた
40年に渡るしゃべれる鳥ネネと小3から親元を離れて姉と新天地で生きていく律のストーリー
律が中年になるまでに色んな人達と出会って別れて
の事件らしい事件も起きないんだけど
なーんかほっこりする朝ドラを読んでるような小説
ネネは、ヨウムと言う鳥で寿命も40年とか
カラスは7年と聞いていたから、かなりの長寿の
鳥になるんだろう
ネネがこの小説の要になるキャラだけども読んでいくに従い感情移入してしまう
40年のロングな時代背景なので、その時々の文化も違うところがまた興味をそそる
また、ネネが音楽?が好きなので、洋楽の色々な
曲だったり、洋画の作品が垣間見れるところが、
この小説の要になるんだと感じた