津村記久子のレビュー一覧
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何十年にもわたる長い物語だったけれど、ページを進めるのが惜しいほどおもしろかった。ずっと理佐と律の2人の生活を見ていたくて、そんなに派手なことは起きていないのにその引力がすごかった。読み終わった今も、理佐と律は、ネネは、この2026年をどのように過ごしたのだろう、と気になっている。
そして同時に、これこそが私が津村記久子さんの小説を好きな理由かもしれないと思い出した。落ち着いた文体で描かれているのになぜか強く惹かれる。津村さんの他の作品ももっと手に取ってみよう。
「私はみんなの良心でできている」本当にそう。今の自分は決して私一人の力で成り立っているものじゃない。素敵な物語だった。 -
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ネタバレ十八の理佐が、まだ小さい妹の律と家を出なければいけなくなってしまって、それでもバイト先の知り合いに協力してもらったりして、水車小屋のある町で仕事と住むところを見つけて。
お金にも苦労するだろうし、この2人の将来はどうなってしまうのだろう、と思うのだけど、田舎で出会うとても温かい人たちの、お節介ではない程よい距離感での親切やらでとても幸せそうに感じる。そしてその親切が次の世代に回っていく。
そしてタイトルにもなるヨウムのネネ。賢すぎて、でも、その三十年か四十年を、ずっと律の近くでペットとしてではなくて、特別な立場で見守っていたような。とても素敵な物語だと思います。 -
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文庫本の内容紹介に「ユーモラスで抑制された文章」とあるが、まさにその通り。友人たちとルーブル美術館展を見に行った時、薄給で悩んでいるくせに、王家で使われていた豪華な嗅ぎ煙草入れを眺めながら、「これを機に嗅ぎ煙草を始めるのも良いかもしれない、いくらなのだろう」などと思案する主人公のナガセ。横暴な夫に我慢しかねて娘を連れてナガセの家に転がり込み、「正露丸」と書かれたナガセのユニクロのTシャツを着て、「あの男!」と怒って思わずちゃぶ台を叩き、あやまる友人のりつ子。ナガセの暮らしは楽ではないし、りつ子はこれから職を探し、一人で娘を育てていかなければならないのだが、悲壮感ではなく、ユーモアに包み、抑制して描くことで、人生の厳しさや希望が伝わってくる。併録の「十二月の窓辺」はもっとビターな感じだが、これも良かった。
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この本の感想を述べるには私は余りにも乏しい。
面白かった
感動した
どちらも違う気がするこの物語。
親に恵まれなかった姉妹が
家を出て、優しい人たちに囲まれながら生きていく。
こういう環境の姉妹って、どうにも選べる道が少なくて委ねる人生になりがちだけど、この2人には意志があった。
そして、必ずどうにかなるという根拠のない思い。
私はこういう物語がとても好きだ。
姉妹の人生がたくさんの人たちの善意で象られていき
一羽のヨウムとの交流で彩られていく40年の物語。
どんどん読みたいけど、ゆっくり読みたくて
気が向いた分だけ読める時間にこの本を読んだ。
文庫版あとがきにもあったけど
この後の何十年かの登場人物たちの人生に川の音が聞こえるほどの、平和が続くよう祈るような気持ちになった1冊だった。
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胸がぐっと熱くなるようなお話だった。
ネネかわいい。読み終わると、40年のネネとの思い出が蘇ってきて、自分の思い出のように感じた。ネネが私のそばにもいてほしい!と心から思う。
誰かに親切にしてあげること、あらゆる人々の良心でできあがっている理佐や律たち、それはすごくすてきだと思った。
私も藤沢先生くらいの歳になったけど、私も誰かに親切にしてあげたいと思うようになった。その気持ちは純粋なもので、別にやましいものではなく、そう思う。誰かの良心で、ある人が幸せに生きることができたら、それはとてもすてきなことだと思った。
あとがきにあるように、この本は私の良い友人でいてくれると思う。そう思いたい本に出会って、私は幸せだと思った。装丁がかわいい、部屋に飾りたい。 -
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この本を食べ物に例えると風邪の時に食べる手作りおじや。(いきなり本を食べ物に例えるなよという気もするが) これからの人生で絶対何度も読み返す物語だと確信している。
こんなに読んでいて安心する小説を読んだのは初めてかもしれない。大体のストーリーを言うと母の元から独立を決めた姉妹2人の独立の物語。心温まる話は他にもたくさんあると思うが、この物語がいいなと思うのは相手からの小さな良心をきちんと救って描写されている点にあると思う。
この物語には大きな事件や宝くじに当たるなどの大きな幸運はもたらされない。ただ淡々と日常が語られるのみだが、その日常の中にもこんなに自分は周りから気にかけられ、支えられているんだなと感じることができる。ご近所づきあいが煩わしいとされる昨今でも人とのつながりは大切だなと読んでいて気付かされる作品だと思う。
また、物語に描かれていない余白を残すのが上手いと感じた。10年ごとに区切られて物語は進んでいくが、描かれていない間登場人物はどんな暮らしで何を考えていたんだろうと読みながら想像するのが楽しかった。
孤独を感じて辛い人にぜひおすすめしたい一冊。 -
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ネタバレ登場人物がみんなよくて…
それぞれが皆大変な状況なのに、ごく自然に人を思いやり、恵まれている・ありがたい、と大切な人への感謝を忘れない、心の余裕と豊かさがある。そして、その思いやりを惜しげもなく当たり前のように他者に循環させていく、素敵な世界。人にやさしく、温かく接することの麗しさたるや…
津村さん、初めて読みました。
「本書が誰かの良い友人になることを願っています。」と、誰も取りこぼさない、最後まで優しいところもグッときた。
私は本屋さんで平積みされているのをきっかけにこの本や津村さんに出会ったが、ちょうどもう少しで読み終わるというタイミングで西加奈子さんが出版区の本ツイに出演されており、この本や津村さんを絶賛されていて、ああ西さんもお好きなんだと嬉しくなった。
とくに好きなところ記録。
「この人がこんな様子なら、自分のこれからだって何とかなるだろう、と常に律に思わせてきたおおらかな姉の姿は、律が8歳だった頃と少しも変わっていなかった。」
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ネタバレ読み終わって、小説の世界から出てくるのが名残惜しかった。今年読んだ中で1番好きな作品。余韻がまだ胸に響いている。
大阪のBook’n Boothという書店で開催された著者のトークショー・サイン会で購入した一冊。ご本人のお話を間近で聞いて、サインもしてもらった特別な本になった。
1人で立って生きていくことの心細さと良さの描き方のうまさといったら。心細くも自分の人生を生きていく人たちが、周りにいる人たちと関わり合いながら時に見えない形で互いをちょっとだけ励ましたり、いたわったり、あるいは疎ましがったりしながら生活していくことをただ肯定する話、というか。
主軸となる3人の人物だけ、名前がカタカナ表記なのが、銀河鉄道の夜のようなファンタジーな風味をつけていて、物語全体に優しい雰囲気をもたらしている気がした。
話の中でしょっちゅう出てくる地下トンネル通路は、大阪住みなら思い浮かぶ場所がある。スカイビルに続いてた昔のあの通路。今はグラングリーンが出きて、少し様子が変わってしまったが、おかげで大雨の夜の不思議な渡しのシーンは映像が頭にはっきりと浮かんだ。舞台となる椿ビルディングも、なんとなくスカイビルや大阪第1ビルとか第2ビルとかを混ぜ合わせた感じがする。
進学塾の講師がたびたび「こんなところで働く人間になってはいけない。」と塾生たちに言う。
その「こんなところで働く人たち」とは毎日を生きる私たちで、その1人1人の描写が温かい。
大雨でビルから出られなくなった人たちの関係性が
少し変化する部分の描写は本当に素晴らしくて、あぁ、こういう感じあるよなぁ、と本当に読むのが楽しかった。この本は地の文も大阪のイントネーションで読んだのだけれど、このへんの人間関係のあり方は大阪的なのだろうか、他の地方の人にはリアリティがないと感じられるのだろうか、とも思った。
ともかくとても幸せな読書体験だった。
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「ネネ」はヨウムという鳥の名前。50年は生きるという。お蕎麦屋さんの裏の水車小屋で飼われていて、そば粉ひきの番の仕事もしている。水車を使って、蕎麦の実をそば粉に挽く。蕎麦の実が少なくなってきたら、「からっぽ」っと言って、補給のタイミングを教えるのがネネの仕事。3歳児くらいの知能があるそうで、とても賢い。高校を卒業した理佐が妹の律を連れて、この蕎麦屋で給仕兼鳥の世話係として働くためにやってくる。それから40年に渡る、ネネと理佐と律、ネネと彼女たちの周りの人々の物語り。
この本のよかったところ
・装丁と挿絵 ・ネネが水車小屋にいるところ
・ネネのおしゃべり ・朝ドラみたいなほのぼの感
・ネネがつなげる人々の縁 -
Posted by ブクログ
ネタバレ身勝手な母親たちから逃げて独立した18歳の姉・山下理佐と8歳の妹・律。山間の蕎麦屋の水車小屋で石臼の管理をしているネネを始め、周囲の人々に助けられ、姉妹は新しい生活をスタートする。2024年本屋大賞第2位。
ネネにかかるとなんでもシンプルに。
聞いたまま見たままを返してくる含みのないネネの言葉は、自分を俯瞰して見るのに良いようで、理佐や律だけでなく、水車小屋を訪れた多くの人を助けてきた。余計な気使いなく、かっこつけずに話せる相手がほしい時ってある。
ごたごたを深堀りしないスタイルが良かった。
律をいじめた母の婚約者のあれこれや、守の死など、どーんと落ち込んでしまうシーンは具に描かれない。ほどよく消化された段階まで時間を進めて提供されるので、一貫して柔らかくて優しい作品の雰囲気が味わえる。
守さんの死を乗り越えた浪子さんだけでなく、他の登場人物たちも苦悩や不安を抱えていただろう。カットされているとご都合主義に映るかも知れないが、これは引き算の美学って感じでよかった。
この世界観が沁みる。
このシーンがめちゃくちゃ感動した!っていうのではなく、段々とこの作品の空気と自分の周囲の空気が馴染んできて、じわじわと心の中に台詞が効いてくる感じ。ふとした所でじんときたりした。人の優しさやあったかさがじんわり心を解してくる。それがとても良かった。