津村記久子のレビュー一覧

  • 現代生活独習ノート

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    津村さんの粒のそろった短編集。特筆すべき事件も起こらず日々の生活の側面に若干の奇妙さを交えて淡々と進んでいく物語群。津村さんらしい文章に満ち溢れてて読んでて飽きがこない。

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    2025年10月28日
  • 水車小屋のネネ

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    久々に単行本で480Pと長めの話しでしたが、最後まで飽きずに読めました。
    特に大きな事件や問題が起こる訳ではなく、ただ淡々と日常に起きている身の回りの困難を、周りの人達の優しさで、みんなで乗り越えていく40年の人生のお話しだったと思いました。
    私達の身の回りでも起こっているだろう、シングル家庭の大変さに着目して、優しさの連鎖と言いますか、もらった優しさのリレーと言いますか、無意識ではなく、意識的に関わっていくことで、みんなで協力してその問題に取り組んでいく。その中で、自然とヨウムのネネの周りに集まって出来た関係性。
    「自分の子供でもない限り、人間はそこにいる子供を大人になるまで見届けられると思

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    2025年10月27日
  • やりたいことは二度寝だけ

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    あとがきにあった、「どうでもいいことを誰かと話したい時に読んでほしい」というのがしっくり来る、脱力系等身大エッセイ
    甲子園の高校球児たちの神聖さの話よかったなあ
    メモは裏紙に取るのがちょうどいいってところと、今までみたいに気ままに過ごせればいいのに、30歳を超えてくるとその維持も難しいていうのに激しく頷いた

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    2025年10月27日
  • ポトスライムの舟

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    文庫本に収録されていた2作品の感想を記します。
    ○ポトスライムの舟
    社会の波に揉まれて傷ついた人たちに向けた作品だと思いました。最後まで優しい雰囲気の文体で物語が進んでいたのでストレスなく作品を楽しむことができました。
    作品の雰囲気を維持するためだと思いますが、主人公の過去のことは最後までわかりません。

    ○十二月の窓辺
    パワハラに悩む主人公が退職するまでの心情が生々しく描かれています。つらい気持ちになりましたが一気に読みました。理解力不足のため、通り魔の正体に納得していません。時間をおいて再読しようと思います。

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    2025年10月26日
  • つまらない住宅地のすべての家

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    群像劇のため登場人物がよくわからなくなりがちだが、冒頭に宅地構成と人物の説明があり読みやすかった。

    登場人物はみなどこにでもいそうだけどちょっと癖があり、でもその考え方、感情もわかるなと思い違和感なく読めた。

    著者の作品は初めてだったが他にも読みたいと思った。

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    2025年10月22日
  • この世にたやすい仕事はない

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    この世にたやすい仕事はないのだなあ…。働かないといきてけないもんなあ。それにしても味のある職場ばかりで、読んでいて楽しかったです。ポスターを貼る仕事って、そんなのある?と思いましたが、妙な緊張感もとても良い。

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    2025年10月22日
  • アレグリアとは仕事はできない

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    物事をこんな角度で見ている人がいて、でも頑張って生きているんだなあと励まされる。キャラそれぞれ、周りの人から見たら怪訝に思うことも、本人目線で見ると共感できてしまう。自分の鬱憤も自分らしさと思って拒絶しないようにしたい。

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    2025年10月21日
  • 水車小屋のネネ

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    これは「姉と妹」だから成り立った話だよなぁとつくづく思う。他の組み合わせだったらおそらくもっと早くふたりだけの生活は終了しただろう。
    まわりの大人たちも、おしつけがましくなく見守っている感じが大変好ましく、特に律の担任の藤沢先生が毅然としていて愛情深く印象的だった。
    姉の理佐と後に夫となる聡が少しずつ距離を縮めていく様子、特に第二話のラストは本当に美しかった。
    家族でなくても、自分以外のひとの良心によって自分が形成されていく、というテーマを信じたくなる作品だった。

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    2025年10月20日
  • 現代生活独習ノート

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    短編集。好きだ、この方の、地に足のついたユーモア。淡々とした語り口のまま気づくとふわっとおかしな事が起きている。本作はいずれの話も、ものすごくニッチな設定下での人間の心理を細かく描いていて、それが面白おかしい。

    レコーダー定置網漁
    まず、帯の情報番組を自動録画するレコーダーを定置網になぞらえて、録画される番組の情報を魚にとらえるところがユニーク。メンタルをやられて家で何をする気も起きない主人公が、毎日ひとつだけ定置網漁にかかる情報を摂取し、やがてその情報に誘発されるように日常の活動ができるようになる話。

    台所の停戦
    女3代の家の、冷蔵庫でのテリトリー争い。親の悪いところを引き継ぎたくないと

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    2025年10月16日
  • 水車小屋のネネ

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    姉の結婚のときには、相手の家族の事件絡みで何かしらドラマがあったはず。そこは書いて欲しかった。
    一緒に何十年も過ごせる動物はそうそういない。いつの思い出にもネネがいることが愛おしい。ただ、いくら頭のいいヨウムと言っても、意味の通る会話はできないのではないかと思う。ネネとの会話は少し盛りすぎな感じがした。
    ところどころ、すんなり一文が入って来ないことがあり戻って読み返した。主語がわかりにくいというか。
    全体的にゆったりと丁寧に描写され、初めの方は懐かしい田舎の風景が浮かんだ。SNSの刺激に慣れているような日々に心地の良い本だった。

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    2025年10月16日
  • 浮遊霊ブラジル

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    じわじわ面白い短編集。
    ニヤッと笑える話があったり、居心地の悪い気分になったり、色んな気持ちが味わえて、背表紙の薄さの割にお得感(?)があった。
    「地獄」が特に好き。この話だけでも読んで欲しい。面白いから!!

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    2025年10月10日
  • 水車小屋のネネ

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    年の離れた姉妹、理佐と律を中心とした長編小説。
    物語は5話に分かれており、それぞれ10年の間隔があいている。1話では18歳と8歳だった理佐と律も5話(エピローグ)では58歳と48歳になっており、大河小説といった趣があった。

    圧巻は第1話だと思う。理佐の決意にはただただ驚嘆するしかなかった。まだまだ序盤にもかかわらず、姉妹、特に姉には幸せになってほしいと願う。

    全話を通して、何かしら困難を抱えた人たちが登場し、周りの人たちの親切や思いやりに支えられてって話が続く。
    津村紀久子さんの作品にしては、毒を吐く人もおらず、登場人物はみな良い人たちばかりだ。
    子どもの頃、シニカルでエキセントリックだっ

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    2025年10月09日
  • この世にたやすい仕事はない

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    現実にはあり得なさそうで、でもやっぱり私が知らないだけであるのかもしれない仕事の話が面白かった。奇妙な世界観、不思議な空気感に包まれているお話。
    難しい仕事にあえて取り掛かるのも生きているということ、確かにその通りだけど逃げ出したくなる時もある。その時々で自分なりに目の前の仕事と向き合ってやっていくしかないのだろうな、と思った。

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    2025年10月09日
  • 現代生活独習ノート

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    仕事が立て込んできたり、なんとなく人間関係に疲れたときに、つい手に取りたくなってしまう津村記久子。もはや、自分にとっての漢方薬のようなものだと思っている。

    本作に収録されている8つの短編はいずれも、疲弊感や閉塞感を抱えた登場人物がメインで描かれている。情報社会に、家族関係に、職場に、それぞれがそれぞれの人生で一様に疲れている。そしてもちろん、それを読んでいる僕も疲れている。「エモい」よりはもっと低温でやさぐれ気味な、でもどこか心地よい“負の共感”を求めて読み進めた。

    『レコーダー定置網漁』『粗食インスタグラム』『メダカと猫と密室』は、それぞれ津村らしさ溢れる、気だるいユーモアに安定感がある

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    2025年10月09日
  • エヴリシング・フロウズ

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    その後、ヒロシがどんな子に成長してるかなと思ったので続きが読めて良かった。
    中学生がいちばん大変だと思う。毎日学校に行くだけで偉い。

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    2025年09月30日
  • つまらない住宅地のすべての家

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    とにかく登場人物が多くて、海外長編ミステリーでも読んでるのか?という気持ちになった。
    しかも、苗字で出てくる時と下の名前で出てくる時とがあり、余計に混乱。
    だが、巻頭に登場人物達の名前が書き出されているので、それを何度も確認しながら読み進めていくと半分くらいでやっと顔と名前(?)が一致してくる感覚があった。

    ストーリー自体はあまり出会ったことのないシチュエーションで面白かったし、最初は登場人物のほとんどがうっすらと嫌な人で鬱々と読んでいたが、話が進むうちにその人たちが互いの交流を通して違う側面が見えてくるのも、人間味があっていいなと思った。

    元々好きな作家さんだったのもあり、数時間でサクサ

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    2025年09月26日
  • この世にたやすい仕事はない

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    前半は淡々と仕事をこなす主人公を通して少し怪しげな仕事を面白おかしく読んでいたけど、最後にかけて主人公の輪郭が濃くなっていくのが良かった。
    他人に寄り添うことが必須な感情労働ってほんと燃え尽きる瞬間あるよなぁ…と同じ畑で働く身としては考えさせられるものがあった。

    仕事は次々変わるけどスパッと関係が終わるのではなく別の仕事で繋がるところも嬉しかったり。

    今日転職活動が終了した身としてはこのタイミングで読めてよかったかな。

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    2025年09月22日
  • 浮遊霊ブラジル

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    タイトルの『浮遊霊ブラジル』?何だこれ?
    これはいったいどんな物語何だろう?と興味を惹かれ手に取った。
    表紙の絵がタイトルに負けず劣らずでうどんの海に夜空の月のかわりにすだち?
    その下には地獄の鬼が女性の足を引っ張っている。タイトルの字のまわりも最初餃子?と思ったけど耳っぽい。
    「流行る芝居は外題から」という【ことわざ】もあるように読む前からバロメーターがぐんぐん上がっていく。

    肝心の中身はというと、また風変わりな短編が7編。
    最初はおとなしい感じの話だけど徐々にボルテージが上がり最期は天にも昇ってしまうかんじだ。
    死後の世界を面白おかしく扱っていたりとうどん屋から外国、地獄へと自由で多彩な

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    2025年09月20日
  • ポトスライムの舟

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    津村さんの書く物語に出てくる女性は、一見無気力にもみえるのだけど、実際はそれなりに強くて、ちゃんと熱くて、かっこいいなと思う。
    しんしんと胸の奥で青く燃える炎。
    大きなことがあってもなくても、人生は流れてゆくのだと思う。

    そして友達や同僚との距離感がとてもいい。
    ナガトさんとランチしたい。
    私もタクシー代を貸してくれた会社の先輩にお茶とスコーンをおごって、一時期同居していた友人の娘にイチゴの苗を買ってやったりしたい。

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    2025年09月15日
  • ポトスライムの舟

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    今読んでいる”ポースケ”がこのポトスライムの舟の登場人物のその後の話で、しばらく読み進めたものの、ナガセの印象とポトスライムのクライマックスで感じた気持ちの感覚以外はあまり覚えておらず、一旦ポースケを置いて再読。
    ポースケの中心人物たちの若かりし日々の奮闘に、今かなり歳を重ねてから、必死だった若い時の自分も思い出し、ちょっと涙がでそうに。津村記久子さんの文体はたんたんとした中に硬質な熱みたいなものがあり、クライマックスにツンとこちらの胸を突いてきて、毎回やられてしまう。流行りの職業についてる人など1人も出てこなくて、ほんとに毎日毎日働いて暮らす普通の人たちを、変に美化したり、抽象化したり、何か

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    2025年09月13日