津村記久子のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
とても面白かった。少しずつだいじに読んだ。
92編もの古典作品の読書解説というかエッセイかな?
有名作品ばかりだが、今までこんな本を読んできた、ではなく、難しそうとかタイトル聞いたことあるけど読んだことないとか若い頃一旦挫折した、などの理由で大人になってから津村さんが読んでみようと思った小説の感想本。
わ、わかるーー若い頃は意味がわからなすぎて途中脱落した本、有名だけど長すぎて今まで読んでない本などいっぱいあるもんね。「ギャツビーって誰?」わかるわーー。英文学の授業で部分的に読まされたけど結局誰だったんや…ていう代表格ですよね。
この中で私が読んだことある本は数本しかなかったが、私と同じ感想部分や、なるほど津村さんならではのそういう感想!と面白かったり、また未読のものは書いてくれている登場人物やあらすじ紹介が面白すぎていつか読んでみようと思うもの、津村さんの個人的な感情(なんやねん主人公のこいつムカつく!とか、タイトル詐欺やん!とか笑)が正直に溢れ出している文章など、津村さんの筆致が余すことなく爆発している。古典作品について電話や対面でおしゃべりしてくれてる感覚。
ただしさすがの芥川賞作家さん、本質的な部分を組み上げる部分は大変文学的な批評になっている。
そして古典の英米文学からロシア文学、SF、果ては山海経、君主論、金枝篇とかもあってジャンルが幅広く、私の好みでとても面白かった。
作品を読んだ気になってしまうけど、この中で私も読んでみようと思ったものに手を付けよう。
それにしても、金枝篇では、年末から正月にかけて年賀状も年賀メールも書かず金枝篇十数巻と格闘し命を吸われぼーっとしている、もはやこれは競技である、読むダンジョンである、もうやめとこうよフレイザー…と弱々しく制止しては無視されるばかり、とかあったり、仕事として本を読む、というのもまた大変そうだ笑 -
Posted by ブクログ
津村さんの人の描写がとてもいい。
会ったことないのに活字を追うだけで、
見た目も性格もありあり想像できてしまう登場人物たちに親近感を覚えた。
そして台風の中べちゃべちゃに濡れて、寒くて震えてついに足の感覚もなくて、無言で歩き続けるあの感覚が蘇ってきて。もうお願いだから早くお家着いてーという気持ちに(涙)
好きだったのはこのフレーズ
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「玄関についてレインコートを脱ぎ化粧落として床に座ったらわたしはしみじみ泣くだろう。そこにいることに、傘を刺さなくていいことに、屋根があることに。その涙を絶対に誰も笑うことはできない。」
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安易な考えを後悔しつつも、
当たり前のありがたさと、
壮絶な台風を乗り越え帰宅した自負が込められていてグッときた。
津村ワールド、好きだわーーー♡ -
Posted by ブクログ
ネタバレ登場人物が多いので、読み始めは新しい名前が出て来るたびに「うぅ~」と思いながら必死に頭に入れ、住宅地の地図を確かめ、の繰り返しで、一通り把握するまでは我慢(?)の読書ですが、津村記久子さんだもん、絶対楽しくなる、と思うと、このうじうじタイムも楽しいもんでして・・・
それにしても外からは見えない各家庭の抱える不安要素というか、”不幸”とよぶほどではないかもしれないけれど、当人の心には確実に影を落とすであろう様々な事情がうまく描かれていて、本当に津村さんはうまいな~と思わされます。私はやはり、子どもが関わってくると非常に辛くなるので、お母さんに好きな人ができるとネグレクト気味になる矢島家と、息子がどこかにひょこっと行ってしまわないように閉じ込めようとする三橋家については、読んでいて胸が苦しくなりました。子どもは子どもでも長谷川家の男の子は、自分が優位に立てると思った相手には攻撃的な口調になる馬鹿さに将来を案じるとともに、げんこつのひとつでもしてやりたくなりました(え、昭和?)。その姉の千里がまともでほっとしました。
さて、こんな人たちが住む、一見「つまらなそう」な住宅地にちょっとした事件が。なんと刑務所から脱走した犯罪者が、近づいてきているというのです。どうやらその受刑者、出身が近くの町らしい。そして、罪は横領らしい。横領した金には一切手を付けていなかったという記述で、もう、なんかある、と思います。(そりゃそうだ、小説だから。)
それでこの逃亡犯をこの住宅地のみんなで見張ろうと丸川さんが提案するのですが、それもちょっと変だし、見張る場所に自宅の二階を快く提供する笠原夫妻もちょっと変だし、見張るのに邪魔な木を剪定するために隣の大柳さんに依頼して大柳さんもそれを引き受けるのもちょっと変だし、そもそも夜中の見張りに駆り出されて、みんな「はいはい」となるのもちょっと変だし、もうなんだか私の感覚からするとみんなちょっと変で、でもそのちょっと変と思う私がちょっと変なんじゃないかと思ったりして、結局、つまり、とても面白い小説でした。人と人のつながりってこうやって生まれるんだ、と、まるで自分がひきこもって社会とのつながりが一切ないような感想を持ってしまいました。
えぇ、こんなところでつながっちゃう?!という人間関係で、それが功を奏して(?)、何かと不安な家庭環境や不穏な空気を醸し出す住民をも全てひっくるめて丸く納まっちゃうんです。そう、つまらない住宅地のすべての家に光が差し込むというかなんというか。この逃亡犯事件がなかったら、犯罪や犯罪もどきを犯しそうだった人も丸く納まっちゃうんです。人生って、意外とほんのちょっとのことで大きくこれから歩む道が変わったりするもんだとしみじみ思いました。
木内昇さんの解説で、山崎さんが矢島さんとこのみづきに常に敬語であることに「胸を打たれる」と表現していて、いや、本当にそうだな、と読み終わってそのことがじわじわと心に広がりました。そして木内さん曰く、この温かいエンディングは「この世の中を生きていくうえで不可欠な広い視野を、他者との関わりを経て、それぞれが手に入れたから」という気がすると。ホント、それ。解説者はすごいな~。
横領で刑務所に入っていて脱走した、このお話の起点となった日置昭子が、なぜ横領した金に手をつけなかったかは、意外にも深い事情ではなかったですが、彼女のおかげでこの住宅地の全ての家に変化があったわけです。化学反応のようでした。
いやぁ、読めば読むほど津村記久子さんという作家を尊敬します。どの作品も、すごく面白い。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ理佐も律も、一生消えない傷をつけられたのに。でも彼女たちには、悲劇のヒロインぶる余裕なんてなくて、1日1日の食べ物のことを考えながら、必死に生きた。手を差し伸べた大人たちの優しさを、彼女たちは独り占めせずに、次の世代へ繋いでいく。思いやりや優しさって、地道に、ちゃんと世界をよくしていくのだと、久々に感じられたような気がする。
「しばらくの間、自分という人間がおらず、何もしなくていいように感じることを気分良く思いながら、律は去っていった守さんや杉子さんや、この場にいない藤沢先生のことを思い出していた。
むしろ彼らや、ここにいる人たちの良心の集合こそが自分なのだという気がした。」
人に振り回されないようにとか、自分軸を大事にとか、自分の力で乗り切れとか、気付いたらそんな風な考え方が当たり前になっていた。自分の手で全てを掴み取らなければと思っていたし、メソメソしている人を見ると、貴方の努力が足りないからでしょうと決めつけていた。
でもこの本を読んで、私だって色んな人たちの良心で成り立っているということに気付いた。今まで出会った人たちの優しさが、私をここまで生かしていることを、なぜこんなにも忘れていたのだろうか。
ずっとこの世界を覗いていたかった…北澤さんの絵も素敵で、挿絵集も購入。とにかく蕎麦が食べたい。
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Posted by ブクログ
津村さんの初期作品、意外と初めて読んだ。やっぱり津村作品は良い。
『ポトスライムの舟』
働いて得たお金で世界一周するのを選択肢として持つこと。食べられない観葉植物を、お金をかけずに工夫して育てること。できる範囲で友達を助けること。
結婚にこだわらず、手に届く範囲で楽しみを見出し、遊び心を持ってコツコツ働く。それでいいじゃないか、と少しも押し付けがましくなく言ってくるような一編で、すごく好きだった。
出てくる人みんなが普通の人で、それぞれ悩みもありながら日々を過ごしているのもいい。
『十二月の窓辺』
パワハラの描写がしっかりあり、津村作品にしてはいろいろな事件が起こる、メッセージ性の強い作品。
世界は狭く画一的なわけじゃない。この世には千差万別の痛みがあり、だからこそ今いる場所にこだわる必要はない、という結論は新鮮で、津村さんらしい。
今仕事の人間関係が辛い人は読むのがしんどいかもしれないけれど、読み終わる頃にはきっと心に涼しい風が吹くだろう小説。 -
Posted by ブクログ
92作品の世界文学を飲みの隣の席で「てかさーっこの主人公さー、ちょっとヤバいんだけど」って軽い感じで語りつつも、だがあってはならない事に対しては厳粛に非難する、1冊5.6ページで簡潔に語ってくれるそんな本です。
世界文学というと構えてしまって学校の教科書を読むような机と椅子に正座して読まなくてはという雰囲気があるけど津村さんの軽妙で率直な感想を聞くと何だかもう読んだ気になってしまう。
この中で実際に読んだ事があったのは恥ずかしながら5冊くらい、あらすじくらいなら知ってる程度なのは15冊くらいで他の作品は知らないものが多くてそんな作品でも面白く読めた。ただ全く知らないものは読んでもよく分からないものもあった。
特に印象に残ってるのは
⚪︎カミュ ペスト
「ペストを知った事、それを思い出す事、友情を知った事、それを思い出す事、愛情を知りそしてそれを思い出すことになるという事」という一文には人間が生きる意味が凝集されている。世界や人生から奪われ続ける不条理の中で思い出すことの価値が刻みつけられる
⚪︎カフカ 城
仕事が進まない、非常にシンプルでありがちなそのことに関するカフカの一家言が恐ろしい長い尺を持って全力で書き込まれている。仕事にまつわる普遍的な混沌の見本市のような作品である。
⚪︎ケイン 郵便配達は二度ベルを鳴らす
DQNの小説である。死語なのだがこの表現が一番しっくりくる。どうしてある種の人はあんなにまで訳がわからないのか。どうしてあんなにまで先のことを考えない動機不明の行動をするのか。それは「何も考えていない」からだ。線はなく点があるだけ。一貫性も文脈もなく、一瞬一瞬があるだけ。ちなみに郵便屋さんは一度も出てきません。
⚪︎フランクル 夜と霧
過酷なアウシュビッツ強制収容所にいながらも他人に思いやりのある言葉をかけたりパンを分けたりする人々が実際にいた事に関して、「どんなに全てを奪おうとしても与えられた環境の中でいかにふるまうかという人間としての最後の自由だけは奪えない」と語る。フランクルは妻がそこにいない状態で妻に思いを馳せて精神の中で妻と対話しながらも人は愛する誰かのことを思うだけで愛の中へと救われる、妻の生死はもはや関係なくただ妻のことを思っているという事が腕を掴む。
⚪︎ウィリアムズ 欲望という名の電車
情緒不安定なヒロインは例えるならおそ松くんのイヤミ。笑いの要素を含めて戯画化しないと描けないようなイタサを正面から取り扱いその根拠と末路を描く。なんなのだこのめんどくさい女は。しかし独特なようでいて誰もが知っているある種の女の人の典型であるようにも思える。
⚪︎ビアス 新編 悪魔の辞典
一人で居酒屋に入ってカウンターの隣の席の目つきの鋭いおっさんに話しかける、話しかけてしまう。この本を読むということは要するにビアスという果てしなく物の見方が厳しいオッサンに軽い気持ちで話しかけて、思った以上に絡まれてやばい帰りたいとなるけれどもかなりの高確率で的を射た事を言うので帰るに帰れない。
忍耐 美徳に偽装した小型の種類の絶望
礼儀正しい 最も歓迎すべき種類の偽善
愛国者 部分の利害の方が全体より大事だと考えている人、征服者の片棒を担ぐ人。
世界文学とはありとあらゆる人間のカタログ。実人生で出会う人の数は限られているが、一度本を開くと現実ではほとんど出くわすことのない極端な人に会うこともできるし平凡な人間の中に秘められた非凡さに目を見晴らされることも多い。人間の本質を鷲掴みにしているからこそ時代や文化の違い馴染みのない名前などの障壁を超えて私たちの日常にまで文学を引き寄せてくれている。
人間という生き物は面白い。