津村記久子のレビュー一覧
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くまさんの本棚より、かわいいタイトルで以前から気になっていたが、書店で文庫化されたのを知り購入。
『水車小屋』自然の流れを力にかえる。
『ネネ』環境により何色にもなれる鳥の名前。モノマネ上手の鳥ヨウム(オウムの仲間)
ネネは水車小屋の中で蕎麦粉を挽く石臼の当番鳥
『からっぽ!』が愛らしい。そんなネネは人のように喋り、歌い、踊り、寄り添い、喜び、悲しみ、恐れ、励ます(擬人化されているわけでない)。
家出を決意した18歳理佐と8歳律の姉妹は、親の愛情を受けられず、川の音が聞こえる田舎町に暮らし始める。
そんな2人と1羽の物語は”良心”と”絆”の大切さをグイグイ書くわけじゃなく、日常の中に散り -
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母から短大の入学金の支払いするためのお金を継父に使われて、入学できないというネグレクトされた18歳の姉理佐と継父から身体的心理的暴力を受けた8歳の妹律が、全く知らない土地で周囲の人々の暖かさの中で成長していく30年以上に渡った物語。
今なら児相が介入してくる家庭だけれど、その前頃のどこか牧歌的な助け合いの大人たちがいたことによって二人は救われて貧しいながらも成長していく。
その二人の支えには大人もいたけれど、おしゃべりするヨウムーオウムじゃないーのネネとの会話と関係性が物語の主要な軸となる。ネネのかわいい会話に、とても辛い話もあるのだけれど、癒される。
姉妹を支える大人たちの魅力的なこと。そし -
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久しぶりに小説を読んだ。選んだのは、津村記久子さんの『ポトスライムの舟』。
映画『君は永遠にそいつらより若い』を観て以来、ずっと気になっていた作家さんだ。文芸評論家の三宅香帆さんもお薦めしていたので、「それならまずはデビュー作から」と手に取ってみた。のちに芥川賞受賞作だと知り、そういえば当時ニュースで見聞きした記憶がうっすらと蘇る。
慣れない関西弁に最初は少し戸惑ったものの、読み進めるうちに、それが逆に主人公・ナガセの思考をダイレクトに脳内へ届けてくれるような感覚に変わっていった。彼女の淡々とした日常の中に、自分も一緒に没入していくような心地よさ。
読み終えたとき、これはまさにあの映画と同 -
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1981年
8歳の律は、18歳の姉理佐と母の元を離れた。短大の入学費を流用され、男を選んだ母から逃れたかったのだ。
住み込みで働き始めた蕎麦屋の条件は、水舎小屋とヨウムのネネのお世話をすること。
賢い律と、とても賢いネネ。
この土地に暮らす二人、10年毎の生活の2021年までの物語。「人に恵まれ」と言う姉妹。
本当に。
小さな事件はあるも、血のつながらない人たちの関わりが暖かい。とは言え、その人たちも父子家庭であったり、一人暮らしを貫いた老女だったり。
本を読めること。音楽を楽しめること。
は、人間として大事だなあ。
近年、普通の小説にふつうに複雑な事情の家庭の話しがある。これはもうす -
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文章のテンポが独特で読み慣れないが、不思議な客観性を伴ったまま情景が浮かび上がってくる。
相容れない身内がいる一方、善意を与えてくれる他者がいる。
この話は後者にフォーカスしている光属性の作品だと思う。
律が自分を構成してできているものが、そういった善意の持ち寄りでできているとする心情が美しいがどこか複雑だ。
相手の重荷にならない程度に親切をすること、それが全て実っているかのような描写は続くがきっと実らないまま捨て置かれることもあったのではないかと推察する。両親のこと以降、大なり小なりの苦労を描きはするが、それ以外のざらつきがないのが綺麗すぎる感じがした。
どうにもならなかったものよりも、実っ -
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おそらく作者のエッセイをいくつか読んだ影響もあるかと思うが、「仕事」や「働く」という事柄に関する生々しさや切実さに胸を衝かれる。ここに書かれていることは「労働」という言葉の響きより、「働く」という言葉が合っているように感じる。
ナガセは徐に一年かけて世界一周旅行の資金を貯め始めるが、些細な、または些細でなかったりする事情で順調に貯められかったりする。
大きく何かが変わるわけではないけれど、憑かれたように働き詰めだった彼女にささやかな心情の変化が訪れ、また日常に戻っていく描写に自然と涙が流れた。
十二月の窓辺は読んでいてずっと呼吸が浅くなっており、こういう上司、知っている…という覚えのある痛みを -
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この一年、須賀敦子さん、梨木香歩さんの書評本を読んできた。
須賀さんは書評というより、若いころの彼女に影響を与えた本についての思い出といった感じだったけれど。
それで、今回は津村記久子の「世界文学」レビュー本である。
須賀本、梨木本とはかなりカラーが違う。
(正直、このお二方の本はどこか雰囲気が近く、時々ふとあれ?既視感がある、と思う瞬間があった。同じ本を取り上げているところもあるせいだろうか?)
津村さんならではの要素として、筆頭に挙げられるのは「ダメっぷり」を愛でる姿勢。
たとえば「ボヴァリー夫人」のエンマ、「カンディード」のパングロス先生、ドリアン・グレイらの、どうしょうもない登場人 -
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生活に疲れた人たちを描いた短編集。
津村さんってなんでこんなに世の中を解像度高く見られるんだろう。
自分がモヤモヤと考えていたことがドンピシャで書かれていて、そうそう!と共感しながら読みました。
どの話も面白かったですが、特に『粗食インスタグラム』と『イン・ザ・シティ』という話が良かったです。
『粗食インスタグラム』は「食べる以前に選ぶのがしんどい」という、何を食べるか決めることに疲れてしまった主人公の話です。
主人公は自分の貧しい食生活の写真を撮って保存していきます。
選択と決断にも結構な心理的コストがかかるんですよね…疲れてると毎日何を食べていいのか分からなくなる気持ちがよく分かります