津村記久子のレビュー一覧
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▼津村記久子さんの短編集。
収録作は
「レコーダー定置網漁」
「台所の停戦」
「現代生活手帖」
「牢名主」
「粗食インスタグラム」
「フェリシティの面接」
「メダカと猫と密室」
「イン・ザ・シティ」
▼津村さんはけっこう長く、もう15年くらいか、読ませていただいています。何といっても長編の最新作「水車小屋のネネ」が破格に素晴らしかったので、それとくらべちゃうとなんですが、この短編集は津村さんらしい息遣いの一冊。
▼津村さんの文章が好きなので、基本的にはなんでも其れなりには楽しめます。割と解決するのが難しい現代的な「気分」をつかもうとする作風な気もするので、当然ながら必然の結果として 「問 -
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中学生で、誰に対しても見た目だけでなく内面まで見ようとする人が、一体どれほどいるだろう。顔の印象や体格、声・髪など、一瞬で人を判別できる表層的な部分。思春期なんて、大抵そういうもので仲良くなるグループが決まっていたように思う。
主人公のヒロシは背が小さい中学3年生。絵を描くことが好きだが最近は気が進まず、面倒な受験も控えていて、家では一方的によく喋る母親が鬱陶しい。それでもヒロシは、クラスメイトの身に起こる不穏な出来事を解決しようと奔走する…
ヒロシのようなクラスメイトがいたら、中学生の頃の私は彼の人間性まで見ようとしていただろうか。小さくて地味な男子、くらいに思って、それだけで心の中で彼 -
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久しぶりに本を読んだ。本を読む気力が回復してきた。
でも、この本は気力充溢の話ではない。年収と世界一周ツアー163万が重なるところから物語が始まる。
ナガセという主人公は、なんだろう。節約して倹約しても、人がいい。離婚調停中の友達を助け、そのお子さんのお世話までしてしまう。
紫陽花の葉には毒がある。では、ポトスライムには?食べようという妄想をもつナガセが面白い。
いつのまにかナガセという女性に惹かれ、応援してしまう。
悪いことばかりじゃないよね、人生は。
こう書いているうちに、自分の中で、この小説への愛おしさが増してきたので、3→4へアップ! -
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ネタバレポトスライムの舟
ポトスライムは水だけで増えるうえに強い観葉植物だ。ほんとうは世界旅行でカヌーに乗りたい。そのためにお金も貯めた。
だけど、現実的には色々なことが起こり、そのたびに出費が嵩む。なので、さらに働く。そうすると、身近な友達に会う時間的余裕がなくなる。
ほんとうに自分を満たすものは何だろう。体調不良に悩まされながら働き続けることで満たされるのだろうか。
いや、そうではない。ナガセは、身近なポトスライムの水をかえてやるような、ありふれた足元の生活こそ大事にしたい。
今、ナガセの得たいものは、安定性の高いカヌーに乗って得られるのではなく、強く丈夫に、水だけでイキイキとしぶとく生きるポト -
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お仕事ものや、親子/人間関係ものといったおなじみの津村節の他、SFチックな「現代生活手帖」、まさかのクリスティもの「フェリシティの面接」が印象的。以下、自分用備忘メモ。
・レコーダー定置網漁
リフレッシュ休暇。靴下の毛玉取り。
・台所の停戦
「もうやめにしよう、と思った。これは受け継がない。冷蔵庫のことで傷付く子は私で最後にしよう。」
・現代生活手帖
いちばん好き、楽しかった。「捨て物ロボット」、利用者の外出中に家に入って、不必要なものをそっと持ち帰って処分してくれるロボット。一年契約で一万円。…ちょっと惹かれる。高性能っぽいデスクをこする操作を「しけた動作」と表現しちゃうところも好き -
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このところハマっている津村さんの作品。
表題作「サキの忘れ物」は心身ともに居場所が見つからなかった千春がバイト先である喫茶店の常連客が置き忘れた文庫本「サキ短編集」をきっかけに自分と自分の居場所を見つける事になる。
鬱屈とした生活から1人の清々しい女性に代わって行く様子が気持ちの良い読後感。
「隣のビル」は津村さんの得意分野なのだろうか、津村記久子作品を読み始めたきっかけの「十二月の窓辺」という作品も隣のビルとその中で働く人との交わりが描かれたいた。
自分の置かれたビルから隣のビルを眺望しそのビルとその中に生きる人々に思いを馳せ、自分の今と向き合う。
本作では自分のいるビルから隣のビルに飛び移 -
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隣人って不思議だ。あそこのおばあさんが亡くなったらしいとか、そこの旦那さんはどこそこに勤めているらしいとか。噂を聞けば近所ですれ違ったときの顔と聞いた情報をくっつけてみるが、それ以上の印象はなく特別な感情は湧かない人。
それでもたまに大喧嘩をしてる声が聞こえるとか、植えている植物の枝がこちらの敷地に突き出しているとか、前を通ると飼っている犬が吠えてくるとか。そんなちょっと嫌だけど、文句を言うほどのことでもない不満が積もっていたりする。なぜなら毎日すぐ近くで生活しているから。
近くで生活しているにも関わらず、ちゃんと顔を見て話したことは少ないから、そのちょっとした不満が隣人の印象の大部分を占め