津村記久子のレビュー一覧
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ネタバレポトスライムの舟
ポトスライムは水だけで増えるうえに強い観葉植物だ。ほんとうは世界旅行でカヌーに乗りたい。そのためにお金も貯めた。
だけど、現実的には色々なことが起こり、そのたびに出費が嵩む。なので、さらに働く。そうすると、身近な友達に会う時間的余裕がなくなる。
ほんとうに自分を満たすものは何だろう。体調不良に悩まされながら働き続けることで満たされるのだろうか。
いや、そうではない。ナガセは、身近なポトスライムの水をかえてやるような、ありふれた足元の生活こそ大事にしたい。
今、ナガセの得たいものは、安定性の高いカヌーに乗って得られるのではなく、強く丈夫に、水だけでイキイキとしぶとく生きるポト -
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お仕事ものや、親子/人間関係ものといったおなじみの津村節の他、SFチックな「現代生活手帖」、まさかのクリスティもの「フェリシティの面接」が印象的。以下、自分用備忘メモ。
・レコーダー定置網漁
リフレッシュ休暇。靴下の毛玉取り。
・台所の停戦
「もうやめにしよう、と思った。これは受け継がない。冷蔵庫のことで傷付く子は私で最後にしよう。」
・現代生活手帖
いちばん好き、楽しかった。「捨て物ロボット」、利用者の外出中に家に入って、不必要なものをそっと持ち帰って処分してくれるロボット。一年契約で一万円。…ちょっと惹かれる。高性能っぽいデスクをこする操作を「しけた動作」と表現しちゃうところも好き -
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このところハマっている津村さんの作品。
表題作「サキの忘れ物」は心身ともに居場所が見つからなかった千春がバイト先である喫茶店の常連客が置き忘れた文庫本「サキ短編集」をきっかけに自分と自分の居場所を見つける事になる。
鬱屈とした生活から1人の清々しい女性に代わって行く様子が気持ちの良い読後感。
「隣のビル」は津村さんの得意分野なのだろうか、津村記久子作品を読み始めたきっかけの「十二月の窓辺」という作品も隣のビルとその中で働く人との交わりが描かれたいた。
自分の置かれたビルから隣のビルを眺望しそのビルとその中に生きる人々に思いを馳せ、自分の今と向き合う。
本作では自分のいるビルから隣のビルに飛び移 -
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表題作の感想
・立ち上がりがゆっくり、じわじわな感じ。語り口がわりと淡々としてるからかな。
でもこのじじわくるのがまさに生活って感じがする。
・こうありたいという理想や目標とは別に、日々の生活で地味に金ばかりは使うことになる。この感覚はすごい共感する。結局目の前の生活に支配されてしまう。
・やはり主人公ナガセは、現状(非正規雇用、結婚していない)を人生に負けていると感じたいるのだろう。バリバリ働くでもなく、家庭を持つでもないことにコンプレックス??
体調を崩した時に働けなくなるかもという不安は、何者でもなくなる という不安に言い換えられる気がする。
・相手のため(ケアのため)にはお -
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隣人って不思議だ。あそこのおばあさんが亡くなったらしいとか、そこの旦那さんはどこそこに勤めているらしいとか。噂を聞けば近所ですれ違ったときの顔と聞いた情報をくっつけてみるが、それ以上の印象はなく特別な感情は湧かない人。
それでもたまに大喧嘩をしてる声が聞こえるとか、植えている植物の枝がこちらの敷地に突き出しているとか、前を通ると飼っている犬が吠えてくるとか。そんなちょっと嫌だけど、文句を言うほどのことでもない不満が積もっていたりする。なぜなら毎日すぐ近くで生活しているから。
近くで生活しているにも関わらず、ちゃんと顔を見て話したことは少ないから、そのちょっとした不満が隣人の印象の大部分を占め -
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途中まで「めっちゃ陰鬱としてるな、、、津村記久子ってこんなダウナーな感じやったか…?」とハッピーを求めていた私は若干面食らったが、2階で見守りが始まったくらいからハッピーがじんわり押し寄せてきてコレコレェ!の気持ち
松山さんは幸せになってほし〜、と書いてから思ったけど松山さんのこと勝手に幸せじゃない認定してる私ってなんなのか、でもフィリピンの彼女との話を最初にさらっと出されると否が応でも考えちゃうんだよなあ、難しい
劇的に何かが変わったり問題が一件落着めでたしめでたし、となるわけじゃないけど、それぞれが以前より少しだけ未来に体を向けられるようになる感じ、最近見るのリタイアした対岸の家事と似て