津村記久子のレビュー一覧
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大学進学の費用を母親が恋人のために使ってしまう。その時、妹が母親の恋人から虐待を受けていることを知り、高校を卒業したばかりの少女が妹を連れて自立しようと旅立つところから始まる。
この2人の少女と取り巻く人たちの人生を描かれているが、その中心にはいつも、ヨウムのネネがいる。
賢く可愛いヨウムのネネを世話をする?相手をする?遊んであげる?そんな感じで色々な人たちが関わってくる。
恵まれない家庭環境にいながら、たくさんの人たちに助けられて、たくさんの幸せを掴んでいく。
そして自分たちがもらったたくさんの助けを他の人たちにも与えようとする。
ネネの周りの温かい連鎖。とても素敵なお話でした。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ京都の大学舞台の、卒業手前の女の話。
同級生河北の彼女のアスミを泊め、河北は彼女が腕を傷付けていると告白し、適当なことしか返せないわたしにキレる。アスミの授業に代わりに出ることを頼まれ、そこでイノギと出会いノートを貸す。
一方わたしと一度だけ飲んだ穂峰が自殺したことを同級生吉崎から聞く。彼は行き場のない少年を匿って警察に捕まりかけたことがある。一方わたしが公務員の福祉課に就職したのは昔ニュースで見た行方不明になった男の子を探すため。
イノギと仲を徐々に深めるが、一緒にいるときに河北から電話がありアスミの腕を切ったという。わたしはイノギとともに救急車を呼ぶ。
イノギはわたしとセックスをした夜、中学の頃男に殴られたときのことを語る。わたしはイノギのことが好きであると悟る。
吉崎に連れられ穂峰の家に行き、彼が匿っていた少年を救う。
わたしは就職後祖母が亡くなったのを機にイノギに会いに行き、彼女が事件に遭ったとき武器にした自転車の鍵を探す。
腕を切った人でも事件に巻き込まれた人が主人公でもない。話の本線がずっと続くわけでもなく、何が本線なのかもずっと明かされることなく、イノギの事件は後半に急に描かれ、主人公が穂峰が匿った少年=昔ニュースで見た少年だと疑っている描写もなく、関係ない人物もたくさん出てくる(バイト先の巨根のヤスオカなど)不思議な構成。でもそれで個々人があらゆることに苦しんで生きているのが自然と伝わってくる。
関西弁の会話でユニークさも随所にあり、まるで本当に大学時代起きたことのように読める。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ震度4の地域であんな空気感だったろうか…?と、つまらないところに引っ掛かり、そうなると所々の誰の描写か分からない文章にもいちいち立ち止まってしまい、終盤はやたら時間が掛かって…それが星一つ減らした理由。
それ以外は好きな世界観でぐいぐい読んだ。
登場人物がそれぞれ傷を持ちながらも前向きで気持ちが良い。
そして律の賢さに色々学びを得るところがある。
余計な口出しをしない。でも無関心な訳ではないからこそ最終的に自習室を開くところに辿り着く。幼少期から常に色んな事を感じ取り、周りに感謝しながら成長した証だと感じる。受けた親切をきちんと血肉にしているのがいい。
そして姉夫婦。
このところ毒親が出てくる本が続いているのだが、一番いい形で逃げられたと思う。
18歳の決断としてはかなりハードなものだったが、良い大人に恵まれた幸運と、何より本人の覚悟が功を奏した。淡々とした描写ながら、暗闇の中を一歩一歩歩くその怖さと、それでもこの道を行くという覚悟が力強さを伴ってしっかり伝わる。
律が姉に感謝するように姉も律に感謝する場面がとても好きだ。
そして聡がまたいい。
こんなにもしっくりと支え合うパートナーと出会えたのは奇跡のようで必然だったと思う。
どなたかも感想に書いていたが、本当に朝ドラのような物語。
理想的な地方の物語でとても良かった。 -
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身の丈に合わない難しすぎる本にようやく踏ん切りをつけて、楽しみのための読書として手に取った。全8遍の短編集で、タイトルの通り現代生活の一コマをいろいろなタッチで描く作品が並ぶ。不思議なSF調のものもあれば、翻訳文学的な口調のものも。
私は最初のレコーダー定置網漁、がすごく気に入った。苦行のような読書から解放された喜びもあってか、毎ページ滋味深く愉しみながら読んだ。
主人公は会社で入社希望の学生のSNSチェックをくる日もくる日も続け情報の洪水に疲れ切ってしまった会社員。
疲れすぎて何もできず、横になって延々とインスタをスワイプし続けてしまうことがある。見終わると不毛感と自己嫌悪でさらに疲れてしまうあの感じ。
それが続きに続いて動けないくらい疲れてしまった主人公が少しずつ少しずつ回復していく様子をユーモアと冷静な目で綴った話だった。
SNSの中の、盛り、映えを意識した、他人の目を意識して演出されまくった情報の嵐の中にいると、その人たちの「わたしを見て」「これが正解」という強い気に当てられて精神的に疲れることがある。
普通に別にいけてもないけど自分の実感をベースにした生活に戻ってくるまでの様子が栄養のあるスープのようにじんわりと効いた。
粗食インスタグラム、メダカと猫と密室、もよかった。
津村記久子は大阪出身の人で、同じ大阪人としての思い込みかもしれないけれど、何か格好つけること、自分の生活の美しさを発信していく文化に対する、照れというか、気恥ずかしさという感覚がある気がする。そこから出てくるユーモアや批評を汲み取れるかどうかでこの作品の滋味を味わえるかどうかが変わってくるのではないかと思った。
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もっと海外文学を読みたいけど、何から読んだらいいのか…と思い、手に取った作品。
津村さんが、今まで読んでこなかった作品を読んで、その感想をまとめています。
主に海外文学が紹介されています。
登場人物たちの心情や人生を丁寧に読み解き、深く感動したり楽しんでいる津村さんの書評がとても良い。
時に「知らんがな」とツッコミながら肩肘張らずに読んでいる様に、あーこんな風な感想を持っても良いんだなぁとホッと安心させてくれます。
F・W・クロフツのミステリ『樽』について「樽萌えの小説」と評したり、ボリス・ヴィアンの恋愛小説『日々の泡』について「働きたくないという気持ちを書いた小説」と評する津村さんの感性が面白くてとても好きだ。
恥ずかしながら、紹介されてる作品はほとんど読んだことなかったです。
読んだことのある作品がもっとあれば、より楽しめたんだろうなぁ。
紹介されている作品を読んだ後に津村さんの書評と自分の感想とを比べてみたい…!という欲がフツフツと湧いてきます。なので、読みやすそうなものから少しずつ読んでいきたいです。 -
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高校時代の友達にすすめられて、この本を手に取りました。
かなり分厚くて、読み終えられるか少し不安だったのですが、主人公姉妹が生きた時代と自分の年齢が近くて、親近感を覚えながらするすると読み進められました。
辛い環境で育った子どもを描いた小説はこれまでも何冊か読んできましたが、この本は終始穏やかで、温かさを感じられるところに救われました。淡々とした語り口のおかげで、状況を少し離れたところから見ているような感覚もありました。
登場人物たちの暮らしを10年ごとに追っていくスタイルが面白くて、後半は「あの人は今どうしているだろう」とワクワクしながらページをめくっていました。
水車小屋にいる「ネネ」という鳥を中心に、まわりの人たちの暮らしが少しずつ変化していく様子を読んでいると、人生は派手な出来事がなくても、日々の一つ一つに意味があって、人とのつながりに支えられているのだと改めて感じました。それぞれの人生のドラマが少しずつ重なり合って、社会ができているんだなという気づきもありました。
津村記久子さんの作品はこれが初めてでしたが、すすめてくれた友達が他の作品も読んでほしいと言っていたので、また手に取ってみたいと思います。