津村記久子のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
世界文学の名作ばかり、というセレクションではない。勿論カラマーゾフもボヴァリー夫人も出てくるが、児童文学やSF、ミステリーも結構ふんだんに盛り込まれているので、多様な本好きに訴えるものがあるはず。
基本褒めるが前提の書評でそこはプロの筆なのでどれもこれも面白そうに感じ手に取りたくなってしまうが、よく読めば著者自身がはまった本とそれ程でもなかった本は何となくわかってくる。問題は自分自身と津村記久子の好みの違いがどの辺にあるか、これがなかなか判定が難しいところで、津村記久子の著作が好きでも読む本の好みまでが一致するとは限らない。既読の本の評があればまずそれを読んでみる、あるいは好きな作家がいればその人のどの作品が選ばれているか、その辺りで何となく探っていくしか無い。 -
Posted by ブクログ
大学進学の費用を母親が恋人のために使ってしまう。その時、妹が母親の恋人から虐待を受けていることを知り、高校を卒業したばかりの少女が妹を連れて自立しようと旅立つところから始まる。
この2人の少女と取り巻く人たちの人生を描かれているが、その中心にはいつも、ヨウムのネネがいる。
賢く可愛いヨウムのネネを世話をする?相手をする?遊んであげる?そんな感じで色々な人たちが関わってくる。
恵まれない家庭環境にいながら、たくさんの人たちに助けられて、たくさんの幸せを掴んでいく。
そして自分たちがもらったたくさんの助けを他の人たちにも与えようとする。
ネネの周りの温かい連鎖。とても素敵なお話でした。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ京都の大学舞台の、卒業手前の女の話。
同級生河北の彼女のアスミを泊め、河北は彼女が腕を傷付けていると告白し、適当なことしか返せないわたしにキレる。アスミの授業に代わりに出ることを頼まれ、そこでイノギと出会いノートを貸す。
一方わたしと一度だけ飲んだ穂峰が自殺したことを同級生吉崎から聞く。彼は行き場のない少年を匿って警察に捕まりかけたことがある。一方わたしが公務員の福祉課に就職したのは昔ニュースで見た行方不明になった男の子を探すため。
イノギと仲を徐々に深めるが、一緒にいるときに河北から電話がありアスミの腕を切ったという。わたしはイノギとともに救急車を呼ぶ。
イノギはわたしとセックスをした夜、中学の頃男に殴られたときのことを語る。わたしはイノギのことが好きであると悟る。
吉崎に連れられ穂峰の家に行き、彼が匿っていた少年を救う。
わたしは就職後祖母が亡くなったのを機にイノギに会いに行き、彼女が事件に遭ったとき武器にした自転車の鍵を探す。
腕を切った人でも事件に巻き込まれた人が主人公でもない。話の本線がずっと続くわけでもなく、何が本線なのかもずっと明かされることなく、イノギの事件は後半に急に描かれ、主人公が穂峰が匿った少年=昔ニュースで見た少年だと疑っている描写もなく、関係ない人物もたくさん出てくる(バイト先の巨根のヤスオカなど)不思議な構成。でもそれで個々人があらゆることに苦しんで生きているのが自然と伝わってくる。
関西弁の会話でユニークさも随所にあり、まるで本当に大学時代起きたことのように読める。 -
Posted by ブクログ
身の丈に合わない難しすぎる本にようやく踏ん切りをつけて、楽しみのための読書として手に取った。全8遍の短編集で、タイトルの通り現代生活の一コマをいろいろなタッチで描く作品が並ぶ。不思議なSF調のものもあれば、翻訳文学的な口調のものも。
私は最初のレコーダー定置網漁、がすごく気に入った。苦行のような読書から解放された喜びもあってか、毎ページ滋味深く愉しみながら読んだ。
主人公は会社で入社希望の学生のSNSチェックをくる日もくる日も続け情報の洪水に疲れ切ってしまった会社員。
疲れすぎて何もできず、横になって延々とインスタをスワイプし続けてしまうことがある。見終わると不毛感と自己嫌悪でさらに疲れてしまうあの感じ。
それが続きに続いて動けないくらい疲れてしまった主人公が少しずつ少しずつ回復していく様子をユーモアと冷静な目で綴った話だった。
SNSの中の、盛り、映えを意識した、他人の目を意識して演出されまくった情報の嵐の中にいると、その人たちの「わたしを見て」「これが正解」という強い気に当てられて精神的に疲れることがある。
普通に別にいけてもないけど自分の実感をベースにした生活に戻ってくるまでの様子が栄養のあるスープのようにじんわりと効いた。
粗食インスタグラム、メダカと猫と密室、もよかった。
津村記久子は大阪出身の人で、同じ大阪人としての思い込みかもしれないけれど、何か格好つけること、自分の生活の美しさを発信していく文化に対する、照れというか、気恥ずかしさという感覚がある気がする。そこから出てくるユーモアや批評を汲み取れるかどうかでこの作品の滋味を味わえるかどうかが変わってくるのではないかと思った。