津村記久子のレビュー一覧
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津村さんは『水車小屋のネネ』が良かったので、こちらを購入した。読み始めて3週間程と何度も挫折しかけた。逆コの字の住宅地に10軒の住宅と24人の住人。冒頭に住宅地地図と住人全員の名前が掲載されていて、住人が登場する度に何度も見返した。住人達はまともな人達がおらず、訳あり家族が多く、暗い気持ちにさせられる。暴れる子供を隔離して縛りつけようとする夫婦、少女を誘拐しようと企てる独身男性、何やら曰く付きで金持ちとなった家族、等々。
これが脱獄した女性受刑者のニュースで、住人達が嫌々ながら交代で見張り番をする事に。纏まりが無い住宅地で唐突な提案が受け入れられてしまう。この展開も予想外。親が出ない家は子供が -
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津村さんの小説が好きなので読んでみた。
まず、津村さんが文章を書くことが苦手だと書いていることに驚く。小説家が文章を書くことと、学校の授業で作文を書くことは「あまり変わりはありません。」(P8)それでも書くのは「「それが仕事だから」と説明するよりほかはありません。」(P9)
こんな芥川賞作家がいるだろうか。他にも色々な賞を受賞していて、コンスタントに作品を発表し、長編も短編もエッセイも書き、ドラマ化されたこともある、デビュー20年(この本がでた時は17年だけど)の作家なら、一流と言って良く、大いに威張っても誰も文句は言えないのだが、とことん謙虚であるのが津村さんらしいというか、そこが好きだなと -
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お話の進め方の妙技に乗せられて楽々と各編の結末に導かれました。
書き出し(落語で言えば「枕」)の話題から知らぬ間に本筋に巻き込まれます。あたかも、さざ波に漂ううちに気がつくと沖へ運ばれていたかのようです。カチッとした文体の向こう側に(良い意味で)脱力した地平が広がっています。
この文庫本の帯には「のんびりいこうよ、現代人!」と書かれています。休日にソファやカウチで(お行儀悪く)寝転びながら読んでいただくのも良いかな、と思います。
短編の気軽さと、グデっとしたユーモアに日頃のお疲れもほぐれることでしょう♡
本にフィルムを掛けて売られていた(わたしが行った本屋さんだけ?)ので、内容 -
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とにかく登場人物が多い?
10軒分なので...
最初のページの
住宅地の見取り図、登場人物の紹介が ありがたかった
視点が変わるたび、それそれの家庭の事情も 描かれていて
なかなかの事情
自警によって
疎遠だったご近所付き合いが
すこーしづつ動きだしていく
脱獄犯含め
関係ないかと思いきや
実は まあまあ絡み合っていて
ここ繋がって.?
はっ!ここも繋がったー!
級密で小さなパズルのピースがはまっていくような感覚 は、とても面白かった
それぞれの家庭の事情は
かなり重いのだけど
脱獄犯の自警の関わり合いで
なんとなくゆる~っとほどけていく過程が
初めて読むタイプの小説で新鮮でした
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ありそうな、なさそうな、お仕事が5個出てきておもしろかった。最後の森の小屋での仕事やってみたい。仕事の説明が多くて退屈なとこもあったけど、結論が良かったので最後まで読めてよかった!今の自分と重なる部分も多かった。どんな仕事もなにかしら大変だし、自分の好きな仕事、がんばってやろう!となった。やらない理由を探してたってしょうがないよね。励まされた。
アナウンスの言葉考える先輩(江里口さん)の上司は何故違和感を覚えていたのか、アナウンスの有無で店がオープンしたり閉店したりのくだりは回収がなかったので気になる。もやもや
出てくるおかきが美味しそう。食べたい。 -
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読んでばっかりよりは書いたほうがいいし、書いてばっかりよりは読んだほうがいいです。読んでばっかりだと、単なる読書家になってしまうというのはおわかりだと思いますが、(でも読書家でいるのは本当にすばらしいことですよ)、書いてばっかりでも、自分の慣れた文章の書き方、ものの考え方、内容の展開のさせ方にこり固まってしまって、あまり良くないように思います。
また、書いてばかりで他の人の文章を読まないと、自分だけがものすごくいいことを言っていて、自分だけが上手だという気分になりやすいという罠があるようにも思います。そのぐらい、文章を書くということは、書いてくれる人に対して優しい、誰にでも開かれた趣味だと私 -
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津村記久子さん初見。短編集。
恥ずかしながらこれまで存じ上げず、世界観も作風も何もわからないのであくまでこの本だけの感想をと思いましたが
うーん…言語化しにくいです…
わざと誇張されているわけではないはずなのに、人間社会で拭いきれないグロテスク、狡さ、隠した本音(秘密)、憶測による歪曲、自己中心性、流されやすさ…不意にザラリとしたところに触れて、驚きと嫌な気分が少しずつ少しずつ混ざるような もやもやした感覚が、読んでいる間ずっと傍にいた感じがします。文庫うしろの紹介文やカバー絵が爽やかなだけに「あれ?」と言う気持ちで頁をめくっていました。
そんな作品群のなかで、人との出逢いによって何かに気づき -
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ネタバレ活気がなく、不便で、つまらない住宅地。そこの住人も変わり映えのない日常を送っているが、単調ながらも小さなデコボコはある。
ある日、逃走犯をきっかけにそれぞれの日常のデコボコが干渉しあって大きな波を生んでいく、そんな物語である。
最終的にすべてのデコボコがぴったりハマる感覚が爽快だった。
ある地域の一区画の住人がまるっと登場人物なので読む方もけっこう大変だけど、そんな彼らのいろいろな想い・行動のパズルを完成させた津村さん、すごすぎる。
この小説を読んで印象に残ったのは2つ。
ひとつは、千里の祖母の覚悟と孤独。
逃走犯の事件をきっかけに、人とのつながりを新たに生んだ人、閉鎖的で暗い未来から抜 -
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路地に面したご近所さんたちの話し。
登場人物が多くて、最初に書いてある地図と、そこに住む人たちの詳細を何度も見直しながら読み進めた。
登場人物が丁寧に描かれている。
自分の家のお隣さんにはお隣さんの、全くつまらなくない人生と事情がある。
当然のことなんだけど、しばしば見失っている感覚。
たまたま起こったきっかけから、近所の人と関わりを持ち、あるいは、持たざるを得なくなり、繋がる。
繋がることで、思いもよらぬ自分の家族の思いを知ったりする。
人は、人と繋がることでしか知り得ないこともあるんだろうなあ。
でも、自分には難しいかもしれない。
繋がるって、ちょっと怖い。