津村記久子のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
ネタバレ書評本、ブックレビュー、ブックガイド。
いろいろ読んできたけれど、この本ほど、作家のする読書の特異性を感じたものはなかったなあ。
第一章の「絵本と児童書」ではまだそれほど自分との違いを感じなかった。
それよりも最初の一冊が「デブの国ノッポの国」で、懐かし~とテンションが上がり、次の一冊に「マガーク少年探偵団」が来た時点で、この著者は私と大変読書の趣味が似通っていると錯覚してしまった。
その後も「図鑑が好き」の記載に激しく同意(わたしが幼稚園時代に一番好きだった本は動物図鑑)し、妖精事典や歳時記や哲学入門など、私の好きなジャンルの本がこれでもかと出てくる。
ついうっかり楽しい本だなあとへらへら読んでいたけれど、読み進むにつれ、著者が本から何かを吸収しようという、読書に対する集中力がすごいことに気づく。
本人は気楽に読んで、すぐ忘れるなんて書いているけれど、いやいや、絶対自分の血肉にして、作品に昇華させてるよ。
作家って、こんなふうに本を読むのか…と思い知る。
作家の書いた読書日記やレビューは今までも読んだことあるけれど、皆さんプロとして、本の紹介に徹しているわけですね。
で、なかでも津村さんは、紹介の仕方がハンパなく真面目で、要点に漏れなし。
どれだけ丁寧に読み込んでポイントを把握しているのか。
読者として読み、作家の眼で読む。
読者としての眼しか持たない私は、きっと少し損をしている。
そこはかとなく悲しい気持ちに襲われかけたけど、やっぱりこの本は面白い。
読書は全般に楽しい。
うん。これでいいではないか。
ちょうど未読のまま本棚にある本が紹介されていたので、明日からはそれを読もう。書評本、ブックレビュー、ブックガイド。
いろいろ読んできたけれど、この本ほど、作家のする読書の特異性を感じたものはなかったなあ。
第一章の「絵本と児童書」ではまだそれほど自分との違いを感じなかった。
それよりも最初の一冊が「デブの国ノッポの国」で、懐かし~とテンションが上がり、次の一冊に「マガーク少年探偵団」が来た時点で、この著者は私と大変読書の趣味が似通っていると錯覚してしまった。
その後も「図鑑が好き」の記載に激しく同意(わたしが幼稚園時代に一番好きだった本は動物図鑑)し、妖精事典や歳時記や哲学入門など、私の好きなジャンルの本がこれでもかと出てくる。
ついうっかり楽しい本だなあとへらへら読んでいたけれど、読み進むにつれ、著者が本から何かを吸収しようという、読書に対する集中力がすごいことに気づく。
本人は気楽に読んで、すぐ忘れるなんて書いているけれど、いやいや、絶対自分の血肉にして、作品に昇華させてるよ。
作家って、こんなふうに本を読むのか…と思い知る。
作家の書いた読書日記やレビューは今までも読んだことあるけれど、皆さんプロとして、本の紹介に徹しているわけですね。
で、なかでも津村さんは、紹介の仕方がハンパなく真面目で、要点に漏れなし。
どれだけ丁寧に読み込んでポイントを把握しているのか。
読者として読み、作家の眼で読む。
読者としての眼しか持たない私は、きっと少し損をしている。
そこはかとなく悲しい気持ちに襲われかけたけど、やっぱりこの本は面白い。
読書は全般に楽しい。
うん。これでいいではないか。
ちょうど未読のまま本棚にある本が紹介されていたので、明日からはそれを読もう。 -
Posted by ブクログ
ーーー大人は、さびしい。ーーー
中学三年生の日常。
まだ、大人ではない。
けれども、自分たちの主張は、ある。
大人の監視下で生きる子どもたちが、必死に抵抗している様に、やれ!やってしまえ!とエールを送りたくなる。
ヒロシの勇気に胸がふるふるした。
終わりかたも、とても好きだった。
IkEAに行きたくなる、自転車で。
ちなみに everything flows は 万物は流転する という意味。
すべてのものは常に移り変わってゆく。
すごくいいタイトルだ。
読んだ人にしかわからないわたしの好きな一節を書き起こしておきます。
ーーー自分が世界地図なら、どのぐらいの大きさの島が消えたのだろうと思いながら、サドルに乗ってペダルを踏む。きっとオーストラリアぐらいだ。それが大きいのか小さいのかはわからないし、話して参考になることを言ってくれるような相手もいない。
でもべつに誰かに言いたいとも思わなかった。ただ、ずっと自分はその空白を待ち続けるだろう、とヒロシは確信しながら、少しペダルを踏む力を強くした。ーーー -
Posted by ブクログ
いずれも表題作ではない2作を収録した本作は、大事なひとのために祈る青年(高校生と大学生)を好意的に描いています。
そう書くと、いかにも主人公らしい人物像を思い浮かべるかもしれませんが、そこは津村さんの作品ですから・・・独特の悩みを抱えてます。
そう書くと、いかにも純文学らしい人物像を思い浮かべるかもしれませんが、そこは津村さんの作品ですから・・・独特の笑いを味わえます。
村上春樹氏の言う「小確幸」(小さいけれども確かな幸せ)にも通ずる、細やかだけれども確かな幸せ(「細確幸」?)を感じれる2作でした。
個人的に、それぞれの作品で感じ入った一節は以下のとおりです。
「うっさいボケ帰れ」
(「サイガサマのウィッカーマン」)
「そして正座してちゃぶ台の上で書店の袋からガイドと参考書を出した今、凝視しているのは目のくらむような肉料理の写真ばかりだ。(中略)作朗の羨望を煽る。前にまやちゃんの部屋かどこかで見せてもらったフランス料理の本には、特に何の感慨も抱かなかったというのに」。
(「バイアブランカの地層と少女」) -
Posted by ブクログ
今までに読んだ津村さんの本は、割と薄めで、そんなに大きな事件が起こるわけでもなく、淡々とOLとかの生活を書いてるという印象でした。
なので、今回本屋でこれを見つけて、結構厚かったので「あの調子の内容でこの厚さ……。読み続けられるかな」なんて心配してしまいました。
結局は淡々、というよりは結構ヒロシの周りで色々あって、続きが気になって一日で読んでしまいましたが。
大阪の、イケアのあるところをマップで確認したら、巻頭に載ってる地図と同じ地域を見つけられて嬉しくなりました。めがね橋、本当にあるんだあ。
最初は、今の若い作家さんたちがよく書く「スクールカースト」を描いた感じなのかと思いましたが、ヒロシは確かにヒエラルキーの下の方ではありそうだけど、こと更にそれを気にするわけでもなく生活しているのがとてもよかった。
津村さんの、人の名前を漢字で表すのとカタカナで表すのは、どういう違いがあるのかなあ。
あと、今回はヤザワのセリフに「」がないのも、なんか意味があるのかなあ。
そこまで読み取れなくて残念。 -
Posted by ブクログ
招待客の旅行の日程など関係なく人は結婚するし、結婚式の日取りに関係なく人は死ぬ。本作の主人公ヨシノは、ひとり旅でもしようと旅行会社に申し込んだその日に、しばらく疎遠だった学生時代の友人から連絡があり、結婚式と披露宴への出席ばかりかスピーチと二次会の幹事まで頼まれる。断れなくて、段取りに奔走。ついに当日を迎えたら、これから披露宴というときに会社の常務から電話。ヨシノの上司の父親が亡くなったから、直ちに来いと。社員18名の会社は良くも悪くも家族的で、誰かが亡くなれば必ず全員で通夜の手伝い。なぜ本葬ではないのかといえば、18名の会社は平日昼間に会社を閉めるわけにいかないから。
表題作の『婚礼、葬礼、その他』は、これまで人を呼びつけた記憶がない、常に腰の低いOLヨシノが、こんなふうに踏んだり蹴ったりな目に遭います。婚礼葬礼両方の様子も面白ければ、その他の部分はもっと面白い。当日の朝に寝坊して食事できなかった。だけど披露宴でご馳走にありつけるからいいやと思っていたのに、飲まず食わずで通夜の手伝いに行かねばならなくなり、ヨシノは腹ペコ。人が幸せでも不幸でも腹は減るもの。
もうひとつ収録されている『冷たい十字路』は、地下鉄の駅に降りる道に面した十字路が舞台。通勤通学の自転車が無尽蔵に走るこの十字路は危険なことこの上ない。ある日起きた高校生同士の衝突事故。その目撃者や、この十字路を校区に持つ学校の教師、十字路前にあるスーパーで働くパート女性などの話で構成されています。人間模様の描き方が丁寧でこれまた面白い。
どちらの話も幸せとはいえないのに、最後はちょっぴり優しさを感じてほっとします。長い夜と心の隙間を埋めるのは、結婚式よりもめでたくはなく、葬式よりも重要ではないものかもしれないけれど、それでいいというヨシノの言葉が響いてきます。
しかしこれから披露宴というときに訃報が届いたら、結婚式<葬式は致し方のないことなのか。故人は一面識もない人だというのに。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ旅行する予定が、友人の結婚式の二次会幹事に選ばれ奮闘するものの、
当日になって会社の上司の親族のお葬式に駆り出されるヨシノ。
空腹に耐えるヨシノ、
お葬式会場のトイレのなかで、故人の愛人同士の罵り合いを聞きながら、電話で結婚式のスピーチを語るヨシノ。
他短編。
二つの高校と小学校がある町での
高校生同士の自転車事故。
小学校教師と事故を起こした高校生との過去の関係。
事故を起こした高校生に助けられたことがある小学生。
その小学生を娘に持つ働く母親。
自転車事故を目撃したOL。
事故についての手紙を作成することになった男子高生。
津村さんの登場人物たちは、みんな真面目だな。 -
Posted by ブクログ
短篇2つが収録されており、どちらも主人公が何かに対して祈ってる。
「サイガサマのウィッカーマン」
『エヴリシング・フロウズ』でもあったが、主人公が自分の圧倒的な無力さに傷付くシーンが印象的だった。
たとえどこかの大富豪であっても、自分ではどうにもならないことはあるだろう。ましてや、高校生の主人公が、家やお金の問題に苦しむ同級生の女性に何ができるというのか。
そんな主人公は、この小説に出てくる神「サイガサマ」の特徴でもある、「物事をあんまりよくわかっていない様子なのだが、とにかくできる範囲でやってみよう、という意識のようなもの」(p.135)を纏うようになる。冒頭から延々ととげとげしい主人公がお供え物を入れるシーンには、非常に心を打たれた。
「バイアブランカの地層と少女」
「自分が幸せだと感じたのは、その夜で何年ぶりだっただろうか。いや、下宿で豚汁に好きなだけごまをふりかけている時などはだいたいそう思っているのだが、そういう自力で何とかできることではなく誰かから幸せだと思わせてもらえること。恩寵のようなこと。」
恋愛の喜びを表現する素敵な文だなぁと思うけど、この小説の素敵なところは、そこではないことにすぐ気付くことになる。不器用で無礼な主人公の青春、そんなものに羨望なり美しさを見てしまうのは実際上よくないことかも知れないが、「恩寵のようなこと」以上に素敵なことが自分でない誰かに起こるように祈る美しさ。
人には人の領分があるし、限界もある。人のためにできることなんて大したものはなく、やるだけやって最後に残るのは祈ることくらい。そして、これは先日旅行に行った際、神社にお参りした時感じたことだけど、誰かのために祈るということは、実は非常に難しいことでもある。
人を思う気持ちから変わってゆくふたりの主人公が、忘れかけていたことを思い出させてくれた気がした。 -
Posted by ブクログ
私はもう主人公たちの親の年代ですが、中学生のセキコに感情移入しながら読み進めました。
すぐに仕事を辞めてくる父親、それを許す母親、要領の良い妹、イライラしているのは自分だけ……。
「心配しなくていいのよ」「情けない親だって思うわよ」とセキコの母親は耳触りの良い言葉だけを並べ立てるけれど何の解決にもなってないし、働きに出てもいない父親からいっぱしの父親ぶった上から目線の批判をされると反発もしたくなるというものです。
ちなみに、子供に親の性行為を見せるのは虐待にあたるんですよね。
表題作も、もう1つの『サバイブ』も、一見「まとも」に見える家庭でも様々な問題を抱えている……。
どちらもスッキリした結末ではなく、登場人物のある1人が言うとおり「まともな家庭なんてないもんなのか」と再認識するだけで読後感は決して良いとは言えません。
ですが、セキコの苛立ちを「反抗期w」などと笑い飛ばさず、彼女たち思春期の少年少女の気持ちと真正面から向き合う事は大切なんだろうな、と考えさせられました。