津村記久子のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
タイトルの『浮遊霊ブラジル』?何だこれ?
これはいったいどんな物語何だろう?と興味を惹かれ手に取った。
表紙の絵がタイトルに負けず劣らずでうどんの海に夜空の月のかわりにすだち?
その下には地獄の鬼が女性の足を引っ張っている。タイトルの字のまわりも最初餃子?と思ったけど耳っぽい。
「流行る芝居は外題から」という【ことわざ】もあるように読む前からバロメーターがぐんぐん上がっていく。
肝心の中身はというと、また風変わりな短編が7編。
最初はおとなしい感じの話だけど徐々にボルテージが上がり最期は天にも昇ってしまうかんじだ。
死後の世界を面白おかしく扱っていたりとうどん屋から外国、地獄へと自由で多彩な内容。
『給水塔と亀』
定年を迎え帰郷した男の新生活を淡々と描く。
特に何が起きるということもない新生活の始まり。最後のベランダでビールを飲みながら外を眺めるシーン、寂しさやくたびれた感はなく、むしろ新生活への期待や明るさを感じさせられる話。ビール、ビールとビールのことしか考えられなくなってしまう描写、津村さんは本当におっさんの気持ちが良く分かる。
「亀」の意味は亀のように残りの人生ゆっくり
歩もう? それとも残された者同士仲良くしよう?
『地獄』
これまでの常識を覆した地獄。
こんな地獄なら行ってもいいかも、これって地獄なの?なんて思わせる面白い地獄。
鬼がやけに人間臭かったり、地獄のネーミングにも思わず笑ってしまう。
最後のはあれ恩返しなの?
あれはあれで、やっぱり地獄だよね。
『運命』
「やたらと○○を訊かれやすい」という運命の女性の話。
何故彼女がそんな運命を追ってしまったのか、その原因となった話がまた面白い。
でもこの運命はちょっと嫌だな。
『浮遊霊ブラジル』
私は一番この話に興味を惹かれた。
初の海外旅行を目前に病死してしまった老人の話。
いろいろな人に取り憑きながらアイルランドへ向かうのだけど何故か他の国へ行ったりと、ふわふわしながら自分も浮遊霊になったような気にさせられる。
人に取り憑く呪文や取り憑く(吸い込まれる)描写を想像すると思わず笑ってしまう。(異世界ものみたい)
生まれて初めての海外旅行行きたかったんだろうなぁ、そして女湯も!
めまぐるしく変わる世界観、既知の想像を超える世界、どこへ連れていかれるか分からない、【津村ワールド】体験する価値ありです。
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Posted by ブクログ
卒業間近の大学生の日常の話
心の中にわだかまるものを抱えた女性同士が出会う
最初は何の話かわからず、全体像がつかめない
所々に主人公の諦めやら、今の状況を受け入れてる感じで話が進む
他者を力で制圧する
男性と女性、大人と子ども
力の強いものが弱いものを侵す
弱者の抗いの哀しみを
まるで
傾いて暗くなり翳りゆく部屋のような雰囲気で描きだされてるような作品だと思った
終わり方も、なんだか物語を創っていますという感じかない
自然体がよかった
津村記久子の今の作風では性的な描写が全然ないので、そういう表現があまりすきではない作家さんなんだと認識していたけど、初期の作品は結構それがあるのかな
性的な描写があって尖っている印象を受けた
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Posted by ブクログ
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「控えめに言って、
どっちもくそ」
現社長か過激な二番手か
両陣営の醜聞合戦、
囲い込み工作……
代表選挙をめぐる
ドタバタ社内政治コメディ
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今回は本当に100分で読めるか、
時計を見てから読み始めました。
ちゃんと100分以内に読めました!
たぶん60〜70分ぐらい。
本書に登場する社之杜社には、
四年に一度、代表を選出する社内選挙がある。
それぞれ派閥があり、決選投票に辿り着けなかった派閥の票をとりこむために、あれやこれやと手を変え品を変えた騒動が起こる。
個人的には面白かったです。
何度も登場するうどんも良くて。
ただ、うどんを好きなだけじゃダメなのか。
経営って好きだけじゃダメで。
必死なんだけど滑稽で、
生活がかかってると思うと笑えなくて、不穏。
サクッと読み切りたくて、
ちょっとだけうーんて気持ちになりたくて、
うどん好きな人にはぜひ読んで欲しいです!笑 -
Posted by ブクログ
▼津村記久子さんの短編集。
収録作は
「レコーダー定置網漁」
「台所の停戦」
「現代生活手帖」
「牢名主」
「粗食インスタグラム」
「フェリシティの面接」
「メダカと猫と密室」
「イン・ザ・シティ」
▼津村さんはけっこう長く、もう15年くらいか、読ませていただいています。何といっても長編の最新作「水車小屋のネネ」が破格に素晴らしかったので、それとくらべちゃうとなんですが、この短編集は津村さんらしい息遣いの一冊。
▼津村さんの文章が好きなので、基本的にはなんでも其れなりには楽しめます。割と解決するのが難しい現代的な「気分」をつかもうとする作風な気もするので、当然ながら必然の結果として 「問題提起はわくわくするが、小説としての終わり方はカタルシス満載というわけにもいかない」 ということも多いです。特に短編。
なんですが、どれも津村さんらしい言い回しが面白く。
▼「牢名主」は人間関係を「食べる側」「食べられる側」に分けて考えた上で、「食べられる側」にまた生じる支配関係の萌芽を描く・・・・というと重いですが、描写はオモシロイ。印象に残りました。
▼「イン・ザ・シティ」が、確か、架空の国?町?の地図や設定を作る中学生の話で、人間関係のナイーブさと語り口のドライさが、「津村記久子節」だなあと思いました。「エヴリシング・フロウズ」だったか、津村さんの「ネネ」に至る道のりを感じさせる素敵な短編でした。
▼津村さんと、短編。で、言うと、個人的には「浮遊霊ブラジル」が圧倒的な第1位。突き抜けたオモシロサ。未読の方々には是非お勧めしたい。「駅前で100冊くらい無料で配りたい一冊」です。 -
Posted by ブクログ
中学生で、誰に対しても見た目だけでなく内面まで見ようとする人が、一体どれほどいるだろう。顔の印象や体格、声・髪など、一瞬で人を判別できる表層的な部分。思春期なんて、大抵そういうもので仲良くなるグループが決まっていたように思う。
主人公のヒロシは背が小さい中学3年生。絵を描くことが好きだが最近は気が進まず、面倒な受験も控えていて、家では一方的によく喋る母親が鬱陶しい。それでもヒロシは、クラスメイトの身に起こる不穏な出来事を解決しようと奔走する…
ヒロシのようなクラスメイトがいたら、中学生の頃の私は彼の人間性まで見ようとしていただろうか。小さくて地味な男子、くらいに思って、それだけで心の中で彼を見下していそうだと、自分の嫌な部分を思い出した。
そしてそんな自分も、クラスメイトに見た目で多くを判断される、あの思春期特有の空気感に、居心地の悪さを感じていたことを思い出した。
ヒロシ自身は中学生という年頃を「何もかもが不確かだ」と捉えている。何も考えずにひたすら好きな絵に没頭していた小学生のときと比べ、不確かだと。
これには強く共感した。中学生なんて、後にも先にも一番不確かな時期だった。
周りのクラスメイトとの関係性も、親や先生への信頼も、自分の将来への展望も、自分の気持ちさえも。何もかも不確かで寄る辺なく、いくら考えても分からないことだらけだった。確かな何かが欲しくて、でもどうしたらいいのか分からなくて、もがいていた。
大人になっても不確かなことは多いけれど、そういうことに対してどう接したらいいのかは分かるようになった。それが、今は考えないという選択にしろ、勉強して知識を身に付けて対処するという選択にしろ。こういう時はこう、というのが少しずつ分かってくるようになって、中学生の頃より随分と楽になった。
私にとって中学時代は、そういう自分の頼りなさのせいで辛い時期だったが、それに比べてヒロシはなんとも頼りがいがある…!
ただのクラスメイト相手でも、困っていたら頭を巡らせて、どうにか助けようとするし、そもそもそうやって考えたり助けたりすることに迷いがない。面倒だと捉える様子も、「何で自分が…?」と考える隙もなく、行動する。
まだ世間のことを知らないなりに、そうやって行動できるなんてめちゃくちゃかっこいい。大人になったらよく分かる、ヒロシのかっこよさ…
ヒロシが高校に進学して、たとえ多くの友だちができなくてもモテなくても、自信を持ってそのまま成長してほしいと勝手ながら願ってしまう。
小説としては時折差し込まれる、ヒロシたちを描いた挿絵の効果もあってか、さまざまなことを思い出したり空想したりしながら読むのが楽しい作品だった。
また関西出身の私にとっては、登場人物たちの関西弁やノリも懐かしく、クスッと笑えるシーンが散りばめられていてよかった。 -
Posted by ブクログ
このところハマっている津村さんの作品。
表題作「サキの忘れ物」は心身ともに居場所が見つからなかった千春がバイト先である喫茶店の常連客が置き忘れた文庫本「サキ短編集」をきっかけに自分と自分の居場所を見つける事になる。
鬱屈とした生活から1人の清々しい女性に代わって行く様子が気持ちの良い読後感。
「隣のビル」は津村さんの得意分野なのだろうか、津村記久子作品を読み始めたきっかけの「十二月の窓辺」という作品も隣のビルとその中で働く人との交わりが描かれたいた。
自分の置かれたビルから隣のビルを眺望しそのビルとその中に生きる人々に思いを馳せ、自分の今と向き合う。
本作では自分のいるビルから隣のビルに飛び移りそこで出会った人との交わりから今の自分を見つめ直しこれからの道を探る勇気を得る。 -
Posted by ブクログ
隣人って不思議だ。あそこのおばあさんが亡くなったらしいとか、そこの旦那さんはどこそこに勤めているらしいとか。噂を聞けば近所ですれ違ったときの顔と聞いた情報をくっつけてみるが、それ以上の印象はなく特別な感情は湧かない人。
それでもたまに大喧嘩をしてる声が聞こえるとか、植えている植物の枝がこちらの敷地に突き出しているとか、前を通ると飼っている犬が吠えてくるとか。そんなちょっと嫌だけど、文句を言うほどのことでもない不満が積もっていたりする。なぜなら毎日すぐ近くで生活しているから。
近くで生活しているにも関わらず、ちゃんと顔を見て話したことは少ないから、そのちょっとした不満が隣人の印象の大部分を占めてしまう。
だから各家庭の内情を知らずとも、本作の登場人物たちのように、変化の少ない町に住んでいるというだけで「つまらない住宅地の人たち」とひと括りにできたりする。
しかしそんな隣人たちと共に、本作のように逃亡犯から身を守るために交代で見張りをするというのは、少し楽しそうで羨ましく思った。
短い時間でも同じ目的のために集まれば、食事したりゲームしたりしながら話をする。話をすれば自然と各家庭の内情もうっすら見えてくる。そうすれば抱いていた不満も「まぁしょうがないか」と思えたり、やんわりと指摘したりできる。
人間関係の問題の多くはコミュニケーション不足が原因だと言うが、一理ある。隣人は全くの他人ではなく、何か問題が起きれば互いに影響が及ぶほど近くで生活している人だから、尚さらコミュニケーションが重要になる。いざとなれば助け合おうと思えるくらいの距離感でいるのが一番よい気がする。
私は小さい頃マンションに住んでいた。隣は中年夫婦。いつすれ違ってもしずかな笑顔をたずさえて挨拶をしてくれる人たちだった。余計な話はお互いせず、ただそれだけの関係だった。
わが家は私が小学生のときに違う町に引っ越して、それ以来あの隣人と20年近く会っていない。それでもあのマンションでの生活を思い出すとき、隣人のことも思い出すことがある。元気だろうか、まだあそこでしずかに暮らしているのだろうか。この心の距離感はやはり全くの他人ではないと感じる。
本作は子ども達が大活躍していてとてもよかった。
恵一や亮介、ゆづきや千里、博喜。一人一人の行動によって、この町の長らく動かなかった歯車がようやくかみ合って動き出した。将来この町を出ていく子もいるだろうが、隣人たちにとってはいつまでも大切な町の一員であり続ける気がする。
最後に私の本作の読み方を紹介すると、あまりに登場人物が多かったため、名前と特徴をメモしながら読み進めた。始めに地図と人物紹介が載っているが、それだけでは混乱してしまう自信があったので(笑)
「丸川亮太/父:母と別居中。父にうんざりしてる息子。料理が上手くしっかり者の父。」
みたいな。
ストーリーのなかで分かりやすく特徴が書き分けられていたため、メモをせずとも訳が分からなくなることはないが、たまに誰これ?となることはあるので書いていてよかったと思う。参考まで。