津村記久子のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
このところハマっている津村さんの作品。
表題作「サキの忘れ物」は心身ともに居場所が見つからなかった千春がバイト先である喫茶店の常連客が置き忘れた文庫本「サキ短編集」をきっかけに自分と自分の居場所を見つける事になる。
鬱屈とした生活から1人の清々しい女性に代わって行く様子が気持ちの良い読後感。
「隣のビル」は津村さんの得意分野なのだろうか、津村記久子作品を読み始めたきっかけの「十二月の窓辺」という作品も隣のビルとその中で働く人との交わりが描かれたいた。
自分の置かれたビルから隣のビルを眺望しそのビルとその中に生きる人々に思いを馳せ、自分の今と向き合う。
本作では自分のいるビルから隣のビルに飛び移りそこで出会った人との交わりから今の自分を見つめ直しこれからの道を探る勇気を得る。 -
Posted by ブクログ
隣人って不思議だ。あそこのおばあさんが亡くなったらしいとか、そこの旦那さんはどこそこに勤めているらしいとか。噂を聞けば近所ですれ違ったときの顔と聞いた情報をくっつけてみるが、それ以上の印象はなく特別な感情は湧かない人。
それでもたまに大喧嘩をしてる声が聞こえるとか、植えている植物の枝がこちらの敷地に突き出しているとか、前を通ると飼っている犬が吠えてくるとか。そんなちょっと嫌だけど、文句を言うほどのことでもない不満が積もっていたりする。なぜなら毎日すぐ近くで生活しているから。
近くで生活しているにも関わらず、ちゃんと顔を見て話したことは少ないから、そのちょっとした不満が隣人の印象の大部分を占めてしまう。
だから各家庭の内情を知らずとも、本作の登場人物たちのように、変化の少ない町に住んでいるというだけで「つまらない住宅地の人たち」とひと括りにできたりする。
しかしそんな隣人たちと共に、本作のように逃亡犯から身を守るために交代で見張りをするというのは、少し楽しそうで羨ましく思った。
短い時間でも同じ目的のために集まれば、食事したりゲームしたりしながら話をする。話をすれば自然と各家庭の内情もうっすら見えてくる。そうすれば抱いていた不満も「まぁしょうがないか」と思えたり、やんわりと指摘したりできる。
人間関係の問題の多くはコミュニケーション不足が原因だと言うが、一理ある。隣人は全くの他人ではなく、何か問題が起きれば互いに影響が及ぶほど近くで生活している人だから、尚さらコミュニケーションが重要になる。いざとなれば助け合おうと思えるくらいの距離感でいるのが一番よい気がする。
私は小さい頃マンションに住んでいた。隣は中年夫婦。いつすれ違ってもしずかな笑顔をたずさえて挨拶をしてくれる人たちだった。余計な話はお互いせず、ただそれだけの関係だった。
わが家は私が小学生のときに違う町に引っ越して、それ以来あの隣人と20年近く会っていない。それでもあのマンションでの生活を思い出すとき、隣人のことも思い出すことがある。元気だろうか、まだあそこでしずかに暮らしているのだろうか。この心の距離感はやはり全くの他人ではないと感じる。
本作は子ども達が大活躍していてとてもよかった。
恵一や亮介、ゆづきや千里、博喜。一人一人の行動によって、この町の長らく動かなかった歯車がようやくかみ合って動き出した。将来この町を出ていく子もいるだろうが、隣人たちにとってはいつまでも大切な町の一員であり続ける気がする。
最後に私の本作の読み方を紹介すると、あまりに登場人物が多かったため、名前と特徴をメモしながら読み進めた。始めに地図と人物紹介が載っているが、それだけでは混乱してしまう自信があったので(笑)
「丸川亮太/父:母と別居中。父にうんざりしてる息子。料理が上手くしっかり者の父。」
みたいな。
ストーリーのなかで分かりやすく特徴が書き分けられていたため、メモをせずとも訳が分からなくなることはないが、たまに誰これ?となることはあるので書いていてよかったと思う。参考まで。 -
Posted by ブクログ
途中まで「めっちゃ陰鬱としてるな、、、津村記久子ってこんなダウナーな感じやったか…?」とハッピーを求めていた私は若干面食らったが、2階で見守りが始まったくらいからハッピーがじんわり押し寄せてきてコレコレェ!の気持ち
松山さんは幸せになってほし〜、と書いてから思ったけど松山さんのこと勝手に幸せじゃない認定してる私ってなんなのか、でもフィリピンの彼女との話を最初にさらっと出されると否が応でも考えちゃうんだよなあ、難しい
劇的に何かが変わったり問題が一件落着めでたしめでたし、となるわけじゃないけど、それぞれが以前より少しだけ未来に体を向けられるようになる感じ、最近見るのリタイアした対岸の家事と似てるようで読後感(向こうはドラマだが)が違うのは、その変化が相互作用的に起こってるからだろうか
対岸の方はフラストレーションがすごいのにその後のカタルシスがあまりにも微弱なんだよなあ、なんも解決してなくね?的な
こっちでは人と人が問題そのものに触れ合うわけではなくても世間話とかちょっとだけ隣のことを意識する、という関わりを通してゆっくり物事が動き始めるみたいなのが良かったのかもしれない
しかしまあただでさえ登場人物が多いのに、Aから見たら娘さんなのがBから見たら妙齢のおばさんだったりするので名前から人物をロードするのに時間のかかる作品だった、最初に脳内で適当に役者の顔を当てはめといた方が読みやすそう