津村記久子のレビュー一覧
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短編が2つ収録。表紙のイメージや語りの軽快さから軽く読める感じの話なのかな?と思って読み進めるけど、意外とそうでもない。
<アレグリアとは仕事はできない>
文句を垂れながらも、なぜだかうまくやっていく主人公は、同著者のほかの小説同様健在。ややバイオレンスな傾向はあるかもしれないが。
バイオレンスなだけに、もう一人の中心人物「トチノ」は主人公とは対照的。蹴りを食らわせるも大慌てで足跡を消す主人公「ミノベ」と、突然ケーブルをぶった斬る「トチノ」。
「だからどうしてそれを口に出してくれなかったんですか。」(p.89)の言葉はもっともだし、私自身そう心がけているつもりではいる。しかし、「ミノベ -
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「人間と機械は違うでしょう」
「同じですよ」
アレグリアというコピー機は大事なところで動かなくなる。
機械に本気で腹を立てる女子社員の主人公と、
いつも涼しい顔でおだやかな先輩と、
アレグリアを通じて恋する修理屋とその他いろいろ。
一台の機械をはさんでここまで人間関係を克明に描けるのか。見せかけじゃない。本気で生きている人間の感情が動いているからずっと読んでしまうし緊迫したシーンとくだらないシーンのメリハリがわし掴んで離さない。
同時収録の「地下鉄の叙事詩」は
正直退屈だと思った。さいしょ。
でも痴漢された女子高生の章を読んで、これは
「それでも僕はやってない」ばりに映画にできる、と思っ -
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ネタバレ表題作が特に面白かった。
津村さんの小説の中でも好きなタイプの話。
友人の結婚式の当日に、上司の父親の通夜に行かなくてはならなくなり結婚式をキャンセルして……というストーリー。小さな会社に勤める立場の会社員のままならなさが、真面目なんだけれどユーモア混じりに描かれている。
通常、身内でもなければ「結婚式>葬式」だろうと思うが、社員18人しかいなくて、しかも全員参加が余儀なくされている状況なら断れるのかどうか……、と本人でなくても真剣に悩むところだろうと、フィクションながら気の毒に思う。
参列した通夜での人間関係や、キャンセルした結婚式に出席している大学時代の友人達が、それぞれ個性的なキャラクタ -
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本書には、「婚礼、葬礼、その他」と「冷たい十字路」の短編2作品が所収されている。
「婚礼、葬礼、その他」は、1日の間に、友人の婚礼(2次会の幹事を依頼されている)と会社の上司の父の葬儀が重なってしまって、さあ大変、という状況での主人公の行動や、人間観察、人間関係の機微、そこでの主人公の心の移ろいが描写されている。
一方、「冷たい十字路」では、自転車通学の高校生達による傍若無人な自転車の乗り方から起こるべくして起こった事故を題材に、その事故の周辺の人びとの生活や思いなどが粛々と綴られた作品。
いままで、津村さんの作品では、どちらかというと20歳代後半から30歳代の働いている女性達を主人公に -
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住宅街の路地10軒の家の住人たち、それぞれの背景と生活模様があるが、近所づきあいは乏しく表面的な付き合いばかり。
刑務所を脱獄した女性の目撃情報、ニュースから夜間に交代で見張りを行うこととなる。これがきっかけで団結心、よりそれぞれが少しずつつながりを見つけ出していく。
近所づきあいは意識したことがなく、隣近所の住人たちの顔も名前もわからない。落とし物を拾って届けてくれたり、上の階で水漏れがあると差支えない範囲でできることを行う。
ある意味特殊な関係であり、唯一の頼りになることもあると振り返る。
登場人物が多くて、冒頭の「住宅地地図」を何度も確認しながら読み進めた。読み進めると人となりと温か