津村記久子のレビュー一覧
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レビュー3人目にして評価は2.9、単行本は3.8
高価な単行本は「津村記久子」で売れ、安価な文庫本は「文学案内」で手に取られたのかと短絡的に察してしまうが、そうなのであれば評価の差は妥当である
津村記久子が好き、さらには彼女と同世代で同じ属性の文学好きに最も刺さる仕様だと思う
好きな本の紹介ではなく、仕事として読んだ本の感想を綴っているようだ
それぞれテンションの違いや言葉遣いによって書いた時の筆の進み具合が察せられ、違った楽しみ方をしてしまったかもしれないし狙い通りに読めたのかもしれない
紹介されているのは未読作品だらけであったが、読んでみようと思ったものは一つもない。読んだつもり -
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聞いたことはあるけど読んだことがない、だけどいつか読みたい、そんな古典的名作92作を作者が語るかのように綴る文学案内。
本はたくさん読むけど、いわゆる古典と呼ばれるものはほとんど読んでないな〜。ここに掲載された92作も、恥ずかしながらタイトルすら知らないものが多々あるし、タイトルだけは知っているけど映画とかを見て読んだ気になっているものも。
津村さんの普段使いの言葉で語られる解説がまた面白く、これも読みたい、あれも読みたいってなるんだけど、こんなに深く読み込めなくて、結局わかんね〜で終わりそうな自分が情けない。
とりあえず3作品だけはチェックして、読むことにしました。そのうちね。 -
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8編の短編集。どれも楽しく読めました。
前半3遍は、作中人物がエッセイを書いているような不思議な作風。ちょっと長めのショートショート?って感じでもあります。
4編目以降は小説感が出てきます。
気に入ったのは5編目「粗食インスタグラム」と7編目「メダカと猫と密室」。どちらもお仕事小説。津村紀久子さんのお仕事小説は共感する事や気付かされる事が多く、“同志“を見つけたようで嬉しくなります。私も仕事相手については余計な情報入れたくないし、仕事がスムーズであれば善人か悪人か問わないです。でもついつい感情が働いちゃいますよね。
ラストは「イン・ザ・シティ」。The Jamの名曲ですね。読み終わった後すぐ -
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「世界一周クルーズという目標」と「自分の年収」を等号で並べた時、人生はそこから逸脱する事なく小さな幸せと小さな不幸の抑揚の中で流されていく。安月給だが浪費もしない。老朽化した家や夫婦関係、それぞれにスッキリしない不安を抱えながら、それでも働くしかなく、課題は先延ばしになりながら生きていく。
水だけで育つポトス。根を張らず、土台(会社・家庭・共同体)を持たず、非正規雇用で最低限の“水(収入)”さえあれば生命を保つ。それぞれがその葉のように川の中を舟となり流されていく。カヌーがシングルの方が気楽で安定するという発想は、誰かと生きる方が不安定になることの暗示だろうか。また、クルーズは未来への希望と -
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ポトスライムの舟、十二月の窓辺の2篇からなる本作。2篇は主人公も舞台も異なるが、上司からパワハラを受けている・受けていた主人公という共通項がある。
現在進行系でパワハラを受けている女性が主人公の「十二月の窓辺」は、読むほどに自分が仕事が一番辛かったときの喉に何かが詰まるような思いや、冷や汗をかきながら必死に追いつこうとするも、誰も助けてくれない状況を如実に思い出し、とても辛くなった。
過去にパワハラを受けていた女性が主人公の「ポトスライムの舟」は、工場や友人のカフェ、パソコン教室で働きながら、世界一周旅行のための貯金を始めるところから始まる。未来に希望を持とうとする姿がまぶしく見えたが、そん -
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ネタバレうーん、
けっこう大変な人生なのに
淡々としてるんだよな。
小説読む時は心が動くことを楽しみにしてるんだけど、
描写が淡白であまり心が動かなかった。
登場人物が多い割に、1人1人のエピソードがうすいからかな。
誰の視点で語られてるのか頭の切り替えが必要だった。
1人1人のキャラクターの特徴が掴みきれず、
東日本大震災やコロナにど時事ネタも満載。
いきなり律の恋愛が入ってきたのもクエスチョンだった。
理不尽な大人にもっと怒ってもいいし、
一方でなぜ大人たちは律やりさわや1人の人として接するようなおおらかさのようなものを持っていたのか。
いまいちピンとこなかった。
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毒親から離れ、蕎麦屋で働く姉とその妹と蕎麦を挽く水車小屋に住むヨウムのネネを巡る物語。
じんわりと心が暖かくなるような小説でした。初めの頃の、姉妹の母と婚約者の様子は本当に腹が立ったし、特に妹の律への仕打ちは胸が痛かったです。結果的にみんな、どこかで傷つけられたせいで、足るを知るというか、今ある環境や周囲の人たちに感謝して幸せを感じていて、人ってすごいなと思いました。ただその過程でとても傷ついたことは事実で、自分も、子どもや、家族や、友達や、周囲の人に何ができるのか考えさせられました。ネネ、いいなぁ。なんだか鳥とは思えず、1人の登場人物として読みました。 -
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人生は選択の連続だ。しかも、今の世では選択しなかった人生を、簡単に覗き見ることができるのである。比べていいことも、ほとんどない。サンプルは上から下まで幾らでもあるのだから。とても疲れる。
では、良いとされていることをすればよいのかというと、これまた大変である。憧れの生活スタイルもたくさん明示される。しかし、正しいことをし続けるのは、とてもエネルギーが必要になる。
そうなると正しい方を選び、行い続ける、というのはとてもとても疲れるということになる。だから、しょぼくてもしけててもつまらなくても、これでいいというのはひとつの解決法だろう。「台所の停戦」の私や、「牢名主」の鶴丸が心に決めたように、他人