津村記久子のレビュー一覧
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随分前に放映された井ノ原快彦主演のドラマの原作だというので手にしたが、推理小説のように登場人物が多く、見開きの「住宅地地図」の10軒の住人紹介を確認しながら読み進めた。刑務所から脱獄中の36歳の女が彼らの住宅に近づいていく過程と、それぞれに抱えている家庭事情と秘密を絡ませながら、どうなるのかハラハラしたが、ほっとできるエンディングになっていて良かった。今までは疎遠だった家同士の関係が、だんだんにほぐれていくのは、孤独がちな現代社会に希望を灯すようだ。タイトルでもある「つまらない住宅地」の住人たちの人生が、平凡でつまらないと思っていても、実はさまざまな思いや感情が詰まっていることを、他者と関わる
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〔サキの忘れもの〕一冊のサキが示した他人とのいびつではないつながり方を。
〔王国〕幼子は彼女だけの王国を持つ。
〔ペチュニアフォールを知る二十の名所〕町の名はペチュニアフォールその過去は二十地点を巡ればわかる。
〔喫茶店の周波数〕居合わせた客のおしゃべりたまたまに周波数合い聞こえてくるが。
〔Sさんの再訪〕日記帳読み返したら出てくるはみんなSさん誰が誰やら。
〔行列〕あのあれをタダで見られる行列は十二時間の人間模様。
〔河川敷のガゼル〕河川敷ある日ガゼルが迷い来て。
〔真夜中をさまようゲームブック〕雨の夜行くあてなくしひたすらに町をさまようゲームブックで。
〔隣のビル〕入り口がどこかわからぬ謎 -
Posted by ブクログ
『ポストライムの舟』が大好きなので、ハードル上げ過ぎて読んでしまってこの星数ですが、読み終わるのが寂しくなる作品でした。
第一話は『幽霊たち』(P・オースター)っぽさが強く、全体として「監視・監視される」感じが強い。
でもおそらくは著者が言いたいことは、「生きづらさ」のような「働きづらさ」だと思う。
・好感は持てる。でもその下には何か、とんでもない頑なさが潜んでいるのではないかと思わせる。
・藤子さんの首の角度と、黒目がちな目の輝きは、完全に私の精神的な硬直を見透かしているようだった。
・私が感じていた、あの老婦人の厄介さに関して、おそらくはそういう負の要素をまったく受け取らないであろう社長 -
Posted by ブクログ
レビュー3人目にして評価は2.9、単行本は3.8
高価な単行本は「津村記久子」で売れ、安価な文庫本は「文学案内」で手に取られたのかと短絡的に察してしまうが、そうなのであれば評価の差は妥当である
津村記久子が好き、さらには彼女と同世代で同じ属性の文学好きに最も刺さる仕様だと思う
好きな本の紹介ではなく、仕事として読んだ本の感想を綴っているようだ
それぞれテンションの違いや言葉遣いによって書いた時の筆の進み具合が察せられ、違った楽しみ方をしてしまったかもしれないし狙い通りに読めたのかもしれない
紹介されているのは未読作品だらけであったが、読んでみようと思ったものは一つもない。読んだつもり -
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聞いたことはあるけど読んだことがない、だけどいつか読みたい、そんな古典的名作92作を作者が語るかのように綴る文学案内。
本はたくさん読むけど、いわゆる古典と呼ばれるものはほとんど読んでないな〜。ここに掲載された92作も、恥ずかしながらタイトルすら知らないものが多々あるし、タイトルだけは知っているけど映画とかを見て読んだ気になっているものも。
津村さんの普段使いの言葉で語られる解説がまた面白く、これも読みたい、あれも読みたいってなるんだけど、こんなに深く読み込めなくて、結局わかんね〜で終わりそうな自分が情けない。
とりあえず3作品だけはチェックして、読むことにしました。そのうちね。 -
Posted by ブクログ
8編の短編集。どれも楽しく読めました。
前半3遍は、作中人物がエッセイを書いているような不思議な作風。ちょっと長めのショートショート?って感じでもあります。
4編目以降は小説感が出てきます。
気に入ったのは5編目「粗食インスタグラム」と7編目「メダカと猫と密室」。どちらもお仕事小説。津村紀久子さんのお仕事小説は共感する事や気付かされる事が多く、“同志“を見つけたようで嬉しくなります。私も仕事相手については余計な情報入れたくないし、仕事がスムーズであれば善人か悪人か問わないです。でもついつい感情が働いちゃいますよね。
ラストは「イン・ザ・シティ」。The Jamの名曲ですね。読み終わった後すぐ