津村記久子のレビュー一覧

  • 浮遊霊ブラジル

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    ちょっと不器用とか、ちょっと人生うまく立ち回れないとか、そういう人の生活を描くのが抜群だなあ。
    と津村記久子さんを読んだあとはいつも思い、まるっと自分も許された感が広がる。

    「うどん屋のジェンダー、またはコルネさん」
    「地獄」
    「個性」
    が特に好き。


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    2024年03月29日
  • 子どもお悩み相談会 作家7人の迷回答

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    文章には人柄が出るということがわかった。それぞれの作者(何人かの本は読んだことがあるけど)の素性は一切わからないけど、質問に答えていく回答文自体が自己紹介をしているようだった。
    そして、私が普段よく思っていることが、忠実に言語化されていて勝手に爽快な自分を味わった。


    個人的には、「人と人とが関係を結ぶときは、もしかしたら美点によってかもしれない。けれどその関係を深めていくのは、美点ではなく欠点なのではなかろうか。また、私たちが人間くささを感じるのは、どういうわけだか美点ではなく欠点である。」

    「私は今現在『早めに終わらせ、夏休み最後まで何度も見直す派』なのだが、もちろんそんなことは言わな

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    2024年03月18日
  • 二度寝とは、遠くにありて想うもの

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    ◆ 明日などないぜ編みまくれ。

    ◆わたしならあたふたする。掛け値なしに。

    ◆ 「パイクエイジ」をライブで聴ける日が来るとは思っていなかった。自分は、女であれ男であれ、どんな主人公の小説を書いている時にも、必ずあのやりきれなさと怒りを通過してきた人間について書いている、と思う。「自分には助けられなかった」ことが疾走していく。それとどうしても折り合いが付けられないから、ただもう歌うしかない。その様子には、個人的な二者関係を超えた、人間と世界との軋轢が凝縮されている。そういう視点を提示してくれる表現はとても少ない。

    ◆ 時計は四時半を指していた。誰かが、早朝と真夜中の間のこの時間に、わたしをよ

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    2024年03月16日
  • とにかくうちに帰ります

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    同じ会社に属していても、事務職と営業職に、役員と平社員に、なんなら正社員とパートに、差はある。役職者だとか売上を持ってるとか、それは確かに事実としてそうなだけで、だからといって事務職を無碍に扱っていいわけではない。無碍に扱われている事務職員の苛立ち。徒党を組んだとて扱いが変わるわけでもなく、愚痴をこぼしたとて仕事が減るわけでもなく。だからといって転職するほどのことでもなく、むしろ、同じ事務職で転職したとてという想像もつく。共感なんて簡単には使いたくないが、あれ、この主人公、自分かもと思った瞬間はある。

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    2024年03月09日
  • やりたいことは二度寝だけ

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    『ポトスライムの舟』で知った津村記久子さんのエッセイ集
    独特の視点と語り口調で、ふとした瞬間に手に取りたくなる作品
    特にお気に入りなのは
    「いっそ妖精ということで」
    →日常生活でたまに出会うびっくりするような人や現象はもうそういう妖精がいるんだということにしとこ?という大胆な諦め方が気持ちいいし、実際そう思うといろいろなことを流せるように思う

    「何者なのだアレックス【「毎日スペイン語 エリのドキドキ☆スペイン留学」の感想】」
    →語学の勉強あるあるのその設定無理じゃない?という会話例へのツッコミ集

    「数珠のようなものと弟」
    →津村記久子さんの弟さんとのお話。弟さんと弟さんの勤め先の入居者さん

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    2024年03月04日
  • とにかくうちに帰ります

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    息子が小6なので、子供が心配でハラハラする。携帯でお母さんに連絡してやって…!と思う。
    フィギュアスケートは、ちょうど話題の時期にかなりハマってキャンデロロが大々好きだったので、名前が出てきて嬉しかった〜

    この選手も、実在だと思って調べてしまった

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    2024年03月01日
  • サキの忘れ物(新潮文庫)

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    いやぁ、またまた津村ワールド 楽しめた
    まったくつながらない短編9つ。

    たやすくない日常にところどころやってくる、人からの小さな毒を払いつつ、聞こえなかったふりをしたり、流しながら、本当に小さなあたたかさを見つけたり、出会ったりの物語。どうも見つからないのもある(笑)

    表題の「サキの忘れ物」が一番よかった。

    「喫茶店の周波数」はタイトルが秀逸。ちょっと
    ”むらさきのスカートの女”の世界も思い出させる。
    「とにかくうちに帰ります」の懐かしの人を連想させる登場人物もちょろっと出てきて、にやにやしてしまった。
    「河川敷のガゼル」の少年も良かったなあ。まるで、理想的な親みたいだった。

    他にも「

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    2024年10月09日
  • 苦手から始める作文教室 ──文章が書けたらいいことはある?

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    数々の賞を受賞されている著者が記すエッセイテイストの作文指南書。フワリとした雰囲気の中に知を盛り込み、肩肘張らずに気楽に日常に作文を取り込むといいことあるよ、楽しいよと教示してくれる内容でした。
    何か書いてみようと思わせてくれる一冊です。

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    2024年02月09日
  • とにかくうちに帰ります

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    めちゃくちゃよかった
    はじめの話はあまり集中して読めなかったので覚えてないけど、2本目と表題作はかなりよかった。
    こういう日常を切り取ったような小説がもっと読みたいと思った

    表題作はかなりくるものがあって、
    日常における非日常なんだけど、でも誰にでもあるような日が映し出されててすごく好き



    この本を読んでる間に母が家に帰ってきたり、
    亡くなったりと色々あった。
    亡くなったのは先週で、明日が通夜で明後日が葬儀。
    介護を通して父や兄妹との確執があり、いまだにその尾を引き摺ったまま。
    兎にも角にも穏やかな気持ちで見送りたいとただそれだけなのに。

    お母さんへ
    家族は色々ありまだこれからも色々起

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    2024年02月08日
  • とにかくうちに帰ります

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    帰路、「早く帰りたい、早く帰りたい」
    と無意識につぶやいている事がよくある
    (心の中でね)
    なのに、ド◯ールなどに寄り道してしまう矛盾…

    きっと帰りたい場所というのは、家とは限らないのだろう
    それぞれがその時、心穏やかでいられる場所なのかも知れない



    「とにかくうちに帰ります」
    表題作のこちら、
    豪雨により交通手段を失った人々が、ずぶ濡れになりながら、ひたすら家に帰ろうとする話。
    ただそれだけ。
    最初は全く物語に入り込めず、ただ文字を追うだけだったのが、いつの間にか惹き込まれている自分に気付く。
    主な登場人物は、会社の同僚ペアと、小学生男子と会社員男性のペア。
    きっと読者は、この4人のど

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    2023年12月29日
  • ウエストウイング

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    ネタバレ

    老朽化した雑居ビルを舞台に、そこに通う人々のあれこれを書いた話だけれど、こういうテーマで想像する小説とは手触りが違った。
    トラブルが起きてもあくまでも地味で、湧き起こる興奮もなく、主人公三名はいつも頭の中で静かに考えるタイプだし、盛り上がりそうな場面でも作者は決して盛り上げる様子がない。最後まで何もない小説と言ったら語弊があるかもしれないけれど、あえて平静に描かれる日常は自分の日常にも近くて、無理なく馴染んでくる。これはとても高度なことが行われている気がする。
    ヒロシ視点の時は特に、ハッとするようなことが書いてあり、彼に教わることが沢山あった。まだ子どもだけれど大人の部分があって、それは両親が

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    2023年12月23日
  • 君は永遠にそいつらより若い

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    おかしみの中に悲しみのある、血の通ったユーモアだ
    題がとても好きです

    大学生という、羞恥をすてて、無意識で過ごしたほうが勝ち、みたいな時期をこうも自意識ばちばちに過ごしてしまっては、それはポチョムキンにもなるよなあ、と覚えがあります

    一度読んだだけではなんともまとめられないけど、とても好きな感じでした
    あと何度か読む

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    2023年11月11日
  • 君は永遠にそいつらより若い

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    他の方も書かれているが、タイトルが圧倒的に素晴らしい。そして、タイトルの意味もわからぬままダラダラと読み進める、大学時代のダラダラとしたやるせない日々の物語りはなかなか面白い。本題はなかなか提示されない。
    「雨のように降ってくるトラブルを、僕たちは夢中になって拾い集め、ポケットに詰め込んだ。」
    たまたま並行して読んでる関係のない小説の一節だが、そんな無意味にも見えるけど愛おしい日々。だけどそんな日々のトラブルの中に、雷のような悪意が潜んでいた。
    かつてはやり過ごすしかなかった理不尽な悪意に対し、今でも解決出来るかは判らないけれど、それでも前向きに進んでいく、そんな主人公に寄り添いたくなる小説で

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    2023年10月22日
  • 君は永遠にそいつらより若い

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    初めは全体が掴めず進まなかった。

    淡々とユーモアもあり、しんどいストーリーも受け入れられる。

    相手を受け入れる。

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    2023年08月27日
  • 苦手から始める作文教室 ──文章が書けたらいいことはある?

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    楽しく読めた。文章を書く事や本を読む事について、日常の中で力まずに取り組みたい。まず、メモを取ろう。

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    2023年09月19日
  • アレグリアとは仕事はできない

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    ネタバレ

    表題作は1ページ目から面白かった。アレグリアを罵倒する言葉のバリエーションの豊かさに笑ってしまった。
    まともにコピーもできないなんて、文句の一つも言いたくなるのは分かる。分かるけど、あまりに細かいのでそうイライラせかせかするなよと言いたくなってくる。そこへ来て先輩の冷ややかな一言で凍えそうになった!
    たった二年とはいえ一緒に仕事をしてきた二人の仲が、こんな機械ひとつで亀裂が入るのは悲しかった。仲直りできて良かったけれどもう一緒に仕事をすることはないのが切ない。
    ただの複合機の話なのになんでこんなに面白いんだろうと不思議だった。

    二作目は電車の痴漢の話で気持ちが沈んだ。
    人は見たいものしか見な

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    2023年08月23日
  • 枕元の本棚

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    ”第5章 このぐらい頭がよかったらなあ”の章で紹介されていた本はどれも読んでみたいと思う本ばかりだった。紹介されている本を読んだことがなくても、作者の独特な紹介や感想が面白かった。

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    2023年08月07日
  • ウエストウイング

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    あ、良かったな。これ三者の邂逅は出会いにまで繋がらずに終わるのか?と不安だったけどラストも良かったな。俺からするとこれは早熟な少年が主人公で彼の物語だったんだけど、読む人によって違うんだろな。うん。いいな津村記久子。こう言うのが読みたかったんだよ。すごく良かったな。ビルオーナーとしても思うところ沢山あったな。

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    2023年07月22日
  • アレグリアとは仕事はできない

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    うーん、なんというか津村記久子のいいところ無しでネガティヴな部分だけが際立った一冊かな。彼女の良さって世の中の窮屈さや生きづらさや会社での苦しさをベースにしながら、その中での人の気持ちの触れ合いとかを上手に描くとこかと思ってたんだけど、この本の二編にはそれがない。ひどい複合機で辛いだけ。地下鉄の中でみんな殺伐としてて辛いだけ。救いがないよ。特にアレグリアの方は過去プリンタの保守をやっていた自分としては全く感情移入出来ないし笑えもしなかった。地下鉄の方は言いたいことわかるし俺も尊大やら無礼な奴らには辛辣だけど、ここまでじゃないなあと冷めて読んでた。

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    2023年07月20日
  • 枕元の本棚

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    芥川賞作家の津村記久子さんが、独自の感性でセレクトした58冊の読書案内。

    津村記久子さんの本の紹介本、あるいは読書エッセイ。
    自分の思い出や感じたことに絡めて、この本はこういうところが好き。こういうところが面白い。こういうところが素晴らしいと紹介しているのがとても良いです。
    本当に好きな本なんだなぁと思えて、普段の趣味から外れた本でもぜひ読んでみたくなる。例えば、私はオリンピックやワールドカップ、WBCなどの時期でもほぼ中継やニュースを見ないくらい普段スポーツに関心がないのですが、「スポーツの本」の章を読んでいると何だかとても楽しそうに思えてきます。新しいものに興味が湧くのは、なんだかとって

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    2023年05月15日