津村記久子のレビュー一覧

  • ポトスライムの舟

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    おそらく作者のエッセイをいくつか読んだ影響もあるかと思うが、「仕事」や「働く」という事柄に関する生々しさや切実さに胸を衝かれる。ここに書かれていることは「労働」という言葉の響きより、「働く」という言葉が合っているように感じる。
    ナガセは徐に一年かけて世界一周旅行の資金を貯め始めるが、些細な、または些細でなかったりする事情で順調に貯められかったりする。
    大きく何かが変わるわけではないけれど、憑かれたように働き詰めだった彼女にささやかな心情の変化が訪れ、また日常に戻っていく描写に自然と涙が流れた。
    十二月の窓辺は読んでいてずっと呼吸が浅くなっており、こういう上司、知っている…という覚えのある痛みを感じた。
    本文にある「千差万別の痛みやその他のことがある」という一文は転職を何度か繰り返した自分にとっては深く頷かせるものがあり、最後に退職を決断した主人公が職場の冷蔵庫のヨーグルト菌を死滅させる様は傑作だった、

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    2026年05月01日
  • とにかくうちに帰ります

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    津村さんの作品は少し読みにくい所があるが、読み始めると止まらずずっと読めてしまう。日常にいる色々な人が細かく書いていて面白い。
    とにかくうちに帰りますは、嵐の中ひたすらうちに帰ろうという人々の話。これもとても面白かった!

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    2026年04月29日
  • やりなおし世界文学(新潮文庫)

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    92作を紹介した本。これを読んで、読んでみたくなった本(ややこしい)が多い。ちゃんとメモしないと、これまた忘れる。

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    2026年04月25日
  • やりたいことは二度寝だけ

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    フラットな目線で自他を見ていて好感がもてました

    働く、働くことができる、ということは、自分の生活にぶしつけに干渉してくる世間や世界と渡り合うための、唯一の手段なのだった。

    わたしたちは、自分たちの定めた分相応を維持するために、どうしたって働くのである。

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    2026年04月25日
  • サキの忘れ物(新潮文庫)

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    津村節がうなる短編集。
    胸がほっこり暖かくなったり、ちょっとうすら寒くなったり、一遍一遍それぞれにいろんな読後感が味わえる。
    どれも味わい深かったけど、一番好きなのは表題作。
    いろんなことをあきらめざるをえなかった主人公の千春が、自分の好きなことをコツコツ確かめていく様子に、心から拍手を送りたい。

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    2026年04月22日
  • やりなおし世界文学(新潮文庫)

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    この一年、須賀敦子さん、梨木香歩さんの書評本を読んできた。
    須賀さんは書評というより、若いころの彼女に影響を与えた本についての思い出といった感じだったけれど。
    それで、今回は津村記久子の「世界文学」レビュー本である。

    須賀本、梨木本とはかなりカラーが違う。
    (正直、このお二方の本はどこか雰囲気が近く、時々ふとあれ?既視感がある、と思う瞬間があった。同じ本を取り上げているところもあるせいだろうか?)

    津村さんならではの要素として、筆頭に挙げられるのは「ダメっぷり」を愛でる姿勢。
    たとえば「ボヴァリー夫人」のエンマ、「カンディード」のパングロス先生、ドリアン・グレイらの、どうしょうもない登場人物たち。
    または救いのないようなひどい世界設定やストーリー展開。
    時には津村さんもたじろがされてしまうのだが、それでも作品の一つの場面、一つの言葉、あるいは著者の描写力にあっと思うような輝きを見出だしていく。
    「ギャツビーって誰?」とてらわずに言う、一見脱力系に見える津村さんのガイドにより、しかしたしかに見るべきものが何かがわかるのだ。
    自分もかつて読んだ作品も何作かあるが、どこからこんなことがわかったんだろう、もう一度読み直してみようかなあ、と思うことしきりである。

    もう一つ、津村さんならではだな、と思うのは本のチョイス。
    『カラマーゾフの兄弟』『トニオ・クレーゲル』『ゴドーを待ちながら』『夜と霧』『リア王』『マクベス』『赤と黒』『クリスマス・キャロル』『ジキルとハイド』『外套』『チャタレイ夫人の恋人』など、「定番」もあるのだが、海外のミステリ、SFが多く取り上げられているのが特徴的。

    メモ代わりに、今後読んでみたいと思う本を書き出しておく。

    ・ケネス・グレーアム『たのしい川べ』
    ・オースティン『ノーサンガー・アビー』
    ・マン『トニオ・クレーゲル ヴェニスに死す』
    ・ウルフ『灯台へ』
    ・アラン『幸福論』(2回目!早く読むべし)
    ・ラファイエット夫人『クレーヴの奥方』
    ・バラード『ハイ・ライズ』
    ・『山海経』
    ・シュテュンブケ『鼻行類』
    ・フレイザー『金枝篇』

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    2026年04月19日
  • やりなおし世界文学(新潮文庫)

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    ネタバレ

    世界に名だたる文学作品が紹介されていますが、私はほとんど読んだことのない
    作品ばかりでした。この本の著者はどれも一通り読んだ上で、かなり偏った感想と
    端折ったダイジェストを書いているわけですが、超入門ブックガイドとして
    自分の興味のある作品の箇所だけ読むこともできますし、最初から最後まで
    じっくり読んでもよいかと思います。

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    2026年04月17日
  • 現代生活独習ノート

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    生活に疲れた人たちを描いた短編集。
    津村さんってなんでこんなに世の中を解像度高く見られるんだろう。
    自分がモヤモヤと考えていたことがドンピシャで書かれていて、そうそう!と共感しながら読みました。

    どの話も面白かったですが、特に『粗食インスタグラム』と『イン・ザ・シティ』という話が良かったです。

    『粗食インスタグラム』は「食べる以前に選ぶのがしんどい」という、何を食べるか決めることに疲れてしまった主人公の話です。
    主人公は自分の貧しい食生活の写真を撮って保存していきます。
    選択と決断にも結構な心理的コストがかかるんですよね…疲れてると毎日何を食べていいのか分からなくなる気持ちがよく分かります。
    あと、写真や絵のない字だけのメニューを嫌だと思うのも(これも地味にストレス…)。

    『イン・ザ・シティ』は、主人公の中学生キヨが、架空の地図上の国の地理的条件や人口、産業、特産物などを決めて、週に1回の他のクラスとの家庭科の合同授業の時間にアサに話すという物語です。二人の女子の友情がとても良い。家庭の鬱屈やままならない日々を架空の国をつくることで束の間忘れられるのです。

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    2026年04月11日
  • エヴリシング・フロウズ

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    初めて読んだ作家さん。書き方がかなり独特。内容、情報が盛り沢山な上に、登場人物が全て苗字表記なので、まず男女が分からない。しかも関西弁なのでますます読みにくい。
    ただこういった信念みたいなものを決めつけないような小説があってもいいかもしれない。行動と思いは確かに同じではないと思うし、これは、最後の総評で納得した。何気ない日常生活の中に、派手ではないがでも、かなりの事件が潜んでいることはよくあると思うし、それを描くと、こうなるのかもしれない。

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    2026年04月10日
  • 二度寝とは、遠くにありて想うもの

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    初めての作家さんでした。
    文章のリズムがよく面白くて「クスッ」を通り越し「プププー!」って声にだして笑ってしまったエッセイ本。
    4部構成になっており、津村記久子さんが展覧会について書く「素人展覧会(第一部)」は、作家さんが絵画や展覧会について書いているエッセイが好きな私には、思いがけなく出会えた感。
    中に、平成26年開催のターナー展(神戸市立美術館)についてあり、今年ターナー展来るじゃん!(国立西洋美術館)って嬉しくなりました。ぜひ、津村さんの感じたターナーを感じたい!
    また、いちいちグッズ紹介をしてるのも面白。

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    2026年04月06日
  • 二度寝とは、遠くにありて想うもの

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    「君は永遠にそいつらより若い」を読んだ後にエッセイを読んだので、思考の端々にホリガイを感じて、確かにあの小説を書いた人だと思った。
    自分と近い感覚がたくさんあった。何かを祈ること、「味わい深い」を好きな形容詞にしていること、ロールモデルが持てなくて動物に行き着くところ。けれどもコミュニケーションへの姿勢は全然違って、友達関係に労を惜しまないと書ける人は強いと思った。
    エッセイを読んでエッセイを書きたくなったのは初めてだった。それだけで、この本に出会えてよかったと思う。

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    2026年04月06日
  • 君は永遠にそいつらより若い

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    ネタバレ

    衝動を描くのがうまい作家だと思った。どうしてそうしたのか分からないけれどもそうした、という行動の描き方。大学時代の、利益でもなんでもないのになぜか付き合って不利益を被る、あの感じ。読んでいて自分の過去を思い出した。
    最後にホリガイが男の子を助ける場面は、ただの衝動ではなくて、大切にできなかった誰かの代わりに誰かを助けようとする意志のようなものだった。この作者にとって、それが大事なことなのだと思う。
    イノギさんとホリガイの関係については、まだうまく言葉にならない。ならないこと自体が、自分にとってのこの本の意味なのかもしれない。

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    2026年04月02日
  • 現代生活独習ノート

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    襟を正して読むのではなく、ソファに転がってダラっとしながら読むような、脱力系の短編集。
    どこかありそうなネタの数々は、冒頭は不思議な感じで始まるものの、いつの間にか本編に引き込まれていく。
    全編通して、頑張らなくて良いんだよ的なメッセージを感じた。

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    2026年03月30日
  • まともな家の子供はいない

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    ちょうど本作を読む前に畑野智美さんの『14歳までの犯罪』を読んだので、それぞれの対比が興味深かったです。うちもまさに子どもが14歳のときが一番家族の断絶感がすごかったのでそれも少し思い出していました。

    親(大人)の方も子どもに対する覚悟が求められているんだろうな。

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    2026年03月28日
  • 現代生活独習ノート

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    88点「いいだろ八百円ぐらい、と私はメーカーに問い、メーカーも私に無言で問うている、という攻防が、この二年続いている。」

    短編が8本あって、毎日寝る前に1本ずつ読むのに適している。衝撃的な展開もなく、心を大きく揺さぶる展開もなく、にも関わらず読ませる文章が淡々と配置されているのは流石というしかない。

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    2026年03月09日
  • この世にたやすい仕事はない

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    どの仕事も一生懸命やっていて、エライ!
    おかきの仕事はなかなか大変そうで、でもすごくおかきが食べたくなった!

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    2026年02月26日
  • 浮遊霊ブラジル

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    不思議な読後感の短編集

    うどん屋のジェンダー、またはコルネさん
    アイトール・ベラスコの新しい妻
    個性
    浮遊霊ブラジル
    が好きでした。

    運命はちょっとよくわからなかったので再読します。

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    2026年02月21日
  • ポトスライムの舟

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    限界会社員小説。
    パワハラで前職を退職し、単純作業をする現職に勤めるナガセが、掲示板に貼り出されたピースボートと思われる世界一周旅行のポスターを見て、自分の年収と同じ163万円を貯金しようとする話。友達と遊びに行っても、友達を助けてもずっとその交通費や食費を計算し続けるという、馬鹿らしいようで、現代っぽくて切実な感じが胸に来る。どこか現実との接触の実感が乏しい感じがよく出ている。2009年芥川賞受賞。
    併録されている「12月の窓辺」は、著者もインタビューで答えていたが、パワハラにあった職場の実体験に基づく話。読んでて辛くなるが、どこか滑稽さもある。どこか憧れともゲームの背景のやうな非現実とも思われた、休憩室の窓から見える兎我野タワーでの、ある出来事を目撃してしまうあたりの展開はすごい。
    両方とも救いのある終わり方なのに読後寂しい気持ちになる。※オーディブル

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    2026年02月21日
  • やりなおし世界文学(新潮文庫)

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    着眼点がユニークで文章も小気味良く、書評で笑ってしまうなんて新鮮だった。文学作品をテーマにしたエッセイと言ってもいいのかも。
    紹介されているどの本も読みたくなってしまうので、その都度本書は中断することになり、なかなか読み進まないのがたまにキズ!

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    2026年02月15日
  • 君は永遠にそいつらより若い

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    デビュー作だからかraw power感がすごい。エモいではなくEMOだなあと思いました。

    吉崎くんのバンドTシャツもいちいちツボでした。

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    2026年02月14日