あらすじ
うちに帰りたい。切ないぐらいに、恋をするように、うちに帰りたい――。職場のおじさんに文房具を返してもらえない時。微妙な成績のフィギュアスケート選手を応援する時。そして、豪雨で交通手段を失った日、長い長い橋をわたって家に向かう時。それぞれの瞬間がはらむ悲哀と矜持、小さなぶつかり合いと結びつきを丹念に綴って、働き・悩み・歩き続ける人の共感を呼びさます六篇。
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Posted by ブクログ
かなり好き。
イヤミス系が普段好きだけど、ミステリーとかじゃなく単に読むお話系だと、この人の作品かなり好きだと思った。
ふと目に止まって手に取ったけど、そのままやっぱりやめよってせずにレジに持って行った自分偉い。
よかった〜と思った。
タイトルから、とにかく残業とかも断り、人からの誘いを交わしまくって帰る話なのかな、と想像してて
最初の2つの話の雰囲気からも
そんな話が来るだろう、と想像しながら読んでいた。
そもそもこの最初の2つの話もめちゃくちゃに面白く好み
応援するスポーツチームが没落してしまいやすい浄之内さん、
勝手に失礼ながらそう思ってるから、最近気になるフィギュアスケート選手を言えない鳥飼さん、
いるいる、わかる、と心の中で笑っちゃう感じ
そんな中で、こういう人もいるよな〜と地味なイライラする人なども、リアルに描かれていて、
自分の日常も愛おしくなる。
そのあとのとにかくうちに帰りますは、
また全然違って、本当に、とにかく、帰る。
雨の描写がまたリアルで鬼気迫るほどで、
なんだかもう自分まで傘をさしたくなる。雨の日をすごした気分になるほどのめり込める。
全体的に出てくる登場人物が憎めなくて、良い奴で、
続きを読みたくなる。この人達の日常をまだあと少し見たい、と別れが名残惜しくなる。
Posted by ブクログ
お仕事小説。オンやオフのちょっとした出来事が静かに物語に紡がれていく。作者の腕。派手な出来事はないけれどみんなちゃんと働いて生きているなあと感じられる。そんな短編連作の後の表題作。大雨という非常事態ではあるけれど、それでもただ職場から家に帰るだけなのに絶望寸前までドキドキさせられた。おみごと!
Posted by ブクログ
「なんかわかるなぁ」となる登場人物や状況が多く、会社での何気ない場面などリアルだった。
個人的には表題のお話がとくに好きで、天気が荒れている日の帰り道の心情はいたく共感した。
Posted by ブクログ
会社にはいろいろなタイプの人間がいるものだ。この小説に登場する人物たちは、ほんとに『こういう人いるなあ』と思えた。
『職場の作法』という短編には、社内で仕事を受ける立場の女性社員と依頼する側とのやり取りが面白い、また誰も興味がない自慢話を延々と話し続ける上司がいる。人の文房具を黙ってパクリ、それを忘れてしまう人、インフルエンザで職場が閉鎖の危機になる際の立ち回り方の個人差があること…思い当たる節があるようなことが多く、非常に面白かった。
そして表題の『とにかく家にかえります』は、豪雨で帰宅困難な最悪な日に会社から帰る際に起こる予想外なアクシデントの数々。バスが来ない…道路は浸水して通行不可能…備蓄している防災食を食べようと思いついたり、あまり話したことない職場の同僚とコンビニでバッタリ会ってしまい、雨具や食料を分け合う際の気まずさ…細かい描写が目に浮かぶ。僕も駅からはバス通勤なので、雨天時にはダイヤが乱れたりほんと苦労することもあるので、主人公のイライラする感情には同感したなあ。
大きな事件が起こるわけではなく他愛ない日常が描かれるだけだが、『あるある!』ということがたくさん記された小説です。津村さん、会社のOLの日常を書かせたら天才だなぁ。
Posted by ブクログ
嫌な感じで頼まれた仕事は先延ばしにするとか、取引先のFAX番号が分からずオフィスを大捜索するとか、マイナーなフィギュアスケート選手を応援するとか、ものすごくささいな日常の出来事が大切に描写される短編集。
こういう小さなことの積み重ねでできている日々の、ちょっとした面白い出来事やひっかかりを楽しみながら生きていくのっていいよなあと、自分の生活が少し愛おしくなる。津村さんどんどん好きになってきたな、もっといろいろ読みたい。
必ず何かはっとさせられる文章がある津村作品、今回の心に残る一文は、田上さんがノートに書いていた仕事への心構えである「どんな扱いを受けても自尊心は失わないこと。またそれを保ってると自分が納得できるように振舞うこと」。
Posted by ブクログ
津村記久子さんって、凄すぎるの一言。
私は表題作の「とにかくうちに帰ります」よりも、「職場の作法」と「バリローチェのファン・カルロス・モリーナ」が好きでした。
鳥飼さんの心の呟き、日々思いながら仕事してることに共感しまくりで。
そうそう、そんなふうに思ってる!
私だけじゃないんや。
そうそう、そんなオッさん居てる!
なんかタイミング悪いというか、憑いてるというか…
そんな人居てるよね…
こんな取るに足らない、友達にLINEするほどのことでもない、モヤモヤしたものを言葉にしてくれてありがとう。
それだけで、救われた気がします。
Posted by ブクログ
鳥飼早智子というOL目線と短編集。
営業社員の依頼の仕方によって書類を仕上げる期限を調整する田上さん、わざわざ人の席まで来て噂話をしたいくせに人の話は聞かない北脇部長、人は良いんだけどおおらか過ぎるのか借りた文房具を返し忘れる定年間際の間宮さん、応援してるスポーツ選手やチームが成績不振に陥る浄之内さん。
OLの日常って感じで面白い。田辺聖子さん好きな人は好きだと思う。
最後の『とにかくうちに帰ります』は大雨で洲にある会社からどうにか家に帰る話。オフィスを出るのが遅れたために駅からの巡回バスは運休してしまい、橋を歩いて渡る羽目になった人たち。専業主婦なもんで雨の日は外に出なくて済むんですが、雨で服が張り付く感じとか、とにかくうちに帰りたいと思いつつ歩を進める感じとか思い出しました。お勤めの方々、学生さん、お疲れ様です。
職場の作法
『ブラックボックス』
『ハラスメント、ネグレクト』
『ブラックホール』
『小規模なパンデミック』
『バリローチェのフアン・カルロス・モリーナ』
『とにかくうちに帰ります』
Posted by ブクログ
この本も、ここが面白い!とか、このフレーズが最高!というのがあるわけではない(というより全体が良い)のだが、いつもながら癖になる面白さ。ほんとにたいしたことは起きないのだが、それでも読み進めてしまう。おばあちゃんの家にある、流行ってないけど不思議と飽きのこない、定番のおやつみたいな気持ちで読んでいる。
Posted by ブクログ
日常の中のなんでもない出来事が気持ちよく言語化されています。いつも語り手が少し冷めているのが読みやすくて好きです。どんなメンタルのときでも読めます。
Posted by ブクログ
私が津村作品を好きなのは、西加奈子さんの言う通り、津村記久子が「取るに足らない、とされていること」に目を向けてくれるからなのだと思う。本当は「どうでもいい」なんて一蹴できることじゃないのに、なんか周りに流されてどうでもいいよね〜と笑えてしまう、気持ちに蓋をしてしまう私の、心の奥に触れるような、そんな表現・着眼点が散りばめられている。私も津村作品のみんなみたいに、軽やかさと真面目さでもって、自分にとって大切だったり重要な瞬間を受け入れたり乗りこなしたりしたいと思う。
あとは津村作品の女性の飄々としていたり淡々としていたりするところが好き。恋愛に生きてないところも良いな。あとワードセンスがあるとこも最高だと思う。「当落線上ギリギリのセンス」と「いまだかつてない文字の使用例」をいってる感じだ。「同僚の性交(を目撃)」とかおもろすぎる文字列。
津村記久子作品を読むと、ニヤッとしたりホッとしたり薄っすら切なくなったり寂しくなったりする。それが過剰じゃなくて適量な感じ。私は多分この人の小説と、この先もしばらく一緒に生きていきたいなとおもっている。
Posted by ブクログ
私も家に帰りたかった。
豪雨にあったとき、ひたすらどうやったら家に帰れるか考えて結局今の家族がいる家じゃなくて元の家族がいる実家にたどり着けた。両親とすごい雨の音を聞いているとき不安だったけど屋根がある、家があるって安心する、って思った。
Posted by ブクログ
職場を舞台にした短編集。
「いるいる!こんな人!」と、嵐の中の職場から自宅への帰宅大作戦。
なんで津村先生は、こんなに日常を拾うのが上手いのだろうか。
今回は会社を舞台にした短編集。
特別大きな事件は起こらない。
無くした万年筆が予想通りのおじさん社員の机に入っていたとか、嫌な対応をしてくる営業マンに地味〜な復讐をする現場を見たとか…。
何が面白いって、津村先生の感受性と表現。
大雨の中で登場人物が、もうグッシャグシャになって家が恋しいと表現する言葉。
『うちに帰りたい。切ないぐらいに、恋をするように、うちに帰りたい』
もう共感でしかない。
大雨に降られて、服もグシャグシャで寒くて歩くのも億劫で…
そんな中で思い出す家。
部屋に帰れるなら何でもする!笑
やっぱり津村先生、大好き!!笑
Posted by ブクログ
同じ会社に属していても、事務職と営業職に、役員と平社員に、なんなら正社員とパートに、差はある。役職者だとか売上を持ってるとか、それは確かに事実としてそうなだけで、だからといって事務職を無碍に扱っていいわけではない。無碍に扱われている事務職員の苛立ち。徒党を組んだとて扱いが変わるわけでもなく、愚痴をこぼしたとて仕事が減るわけでもなく。だからといって転職するほどのことでもなく、むしろ、同じ事務職で転職したとてという想像もつく。共感なんて簡単には使いたくないが、あれ、この主人公、自分かもと思った瞬間はある。
Posted by ブクログ
息子が小6なので、子供が心配でハラハラする。携帯でお母さんに連絡してやって…!と思う。
フィギュアスケートは、ちょうど話題の時期にかなりハマってキャンデロロが大々好きだったので、名前が出てきて嬉しかった〜
この選手も、実在だと思って調べてしまった
Posted by ブクログ
めちゃくちゃよかった
はじめの話はあまり集中して読めなかったので覚えてないけど、2本目と表題作はかなりよかった。
こういう日常を切り取ったような小説がもっと読みたいと思った
表題作はかなりくるものがあって、
日常における非日常なんだけど、でも誰にでもあるような日が映し出されててすごく好き
この本を読んでる間に母が家に帰ってきたり、
亡くなったりと色々あった。
亡くなったのは先週で、明日が通夜で明後日が葬儀。
介護を通して父や兄妹との確執があり、いまだにその尾を引き摺ったまま。
兎にも角にも穏やかな気持ちで見送りたいとただそれだけなのに。
お母さんへ
家族は色々ありまだこれからも色々起こりそうですが、なんとかやっていきます。
父は、最後の日をまだ引き摺っていて縁を切ると言ったきりですがなんとかやっていきます。
とにかく見送るね。
たくさんの人が見送りに来てくれるのでしっかりします。
なので安心してね。
今までありがとう。これからもありがとう。
愛してるよ。
Posted by ブクログ
帰路、「早く帰りたい、早く帰りたい」
と無意識につぶやいている事がよくある
(心の中でね)
なのに、ド◯ールなどに寄り道してしまう矛盾…
きっと帰りたい場所というのは、家とは限らないのだろう
それぞれがその時、心穏やかでいられる場所なのかも知れない
「とにかくうちに帰ります」
表題作のこちら、
豪雨により交通手段を失った人々が、ずぶ濡れになりながら、ひたすら家に帰ろうとする話。
ただそれだけ。
最初は全く物語に入り込めず、ただ文字を追うだけだったのが、いつの間にか惹き込まれている自分に気付く。
主な登場人物は、会社の同僚ペアと、小学生男子と会社員男性のペア。
きっと読者は、この4人のどこかに自分を見つけ共感していく。
「職場の作法」
こちらは職場での日常を、主人公・鳥飼の視点で描いていく。
特別な事は何も起こらない。
鳥飼が社内の人々を観察する目は鋭く、的確にその人物を表している。
それがまたクスッ笑えるのだ。
「バリローチェのフアン・カルロス・モリーナ」
こちらは「職場の作法」と同じ登場人物だが、ちょっとマイナーなフィギュアスケート選手を密かに応援している話。
これまた絶妙な観察眼で笑わせてくれる。
津村記久子さんの作品は初読み。
最初はピンとこない感じだったのが、気付くと惹き込まれ、もう一度パラパラと読み返していました。
大きく心を揺さぶられる作品ではないけれど、ありふれた毎日も悪くないな、って思える本でした。
Posted by ブクログ
なんてことはないことが題材で、淡々と話が過ぎていく。だけど何故か気になる話ばかりでした。
登場人物たちの「こだわり」が感じられたからなのかなと思います。
Posted by ブクログ
「職場の作法」 では田上さんのお作法がなかなか厳しく、でも痛快。「とにかくうちに帰ります」はそれぞれ事情は違っても、やっぱりお家が一番だよねって思いながら、帰る家があることに改めて幸せを感じた。見知らぬ人同士の交錯が良かった。
Posted by ブクログ
読後感が いい。舌打ちしたくなることだって じたばたしたいときもある。けど どうしてか まぁいいかで 納得してページをめくってしまう。津村さんのアンテナって すごい!鳥飼さんの職場仲間 なんか好き。ハラもオニキリもサカキも 無事に帰れたことを祈ります(笑)
Posted by ブクログ
文体にはユーモアがあり、特に「職場の作法」で顕著だった。主人公鳥飼を取り囲む人物たちは一癖も二癖もあり、それがいい味を出している。
会社勤めの経験があれば、うんうんと頷けてしまうように、会社風景を細やかで丁寧に切り取り方をしている。
私も覚えがある。終業前5分、残業で夜遅くなる夕方。ひたすら思ったことが。「とにかく家に帰りたい」と。
Posted by ブクログ
すごく感動する出来事があるわけではなく、考えさせられるというわけでもなく、なんかこういうことあるなあとか、こういう人いるなあと思っているうちに読み終わった。
津村さん独特の突っ込みや少し後ろ向きなところが面白く思った。
Posted by ブクログ
表題作よりも鳥飼早智子が主人公の前半部分のほうが、なんとなく印象に残った。職場の人間関係を観察したという感じで、なんて事ない日常の記録だけれど、本当にこういう人がいると錯覚しそうになるくらい細部がしっかり書かれていた。
表題作を振り返ってみると、とにかく家に帰りたいというだけの話なのに何故だかよく理解できた。台風や何かで家に帰るのに苦労したこと、私自身にもあるし、そのときその場にいる人たちとの妙な仲間意識みたいなものが、普段と違う距離感にさせたりする。みんな無事に帰れてよかった。
Posted by ブクログ
朝は小降りだった雨が昼過ぎには激しさを増して豪雨の状況になってきた。
退社しようと外に出たは良いが、橋の上では事故が発生したのも重なり交通網も乱れて帰宅するのも困難な状況になっていた。
バスは来ないし、ようやく来たバスは満員で乗れない。
大雨が降りしきる埋め立て洲に取り残された4人が主に取り上げられる。
自分の飲食のために買った空揚げや飲み物を分け与えたり、自分が二枚重ねで着ていたレインコートを一枚分けたり。
ようやく来たバスは満員で乗れなさそうだったが、何とか一人分を空けてもらって同行していた少年を乗せてやったり。
みんな、とにかくうちに帰りたいのに自分優先ではない。
Posted by ブクログ
前半の作品は、とにかく楽しそうな職場だった。
途中、エッセイ?実話なのかな?と錯覚するほど、リアルな話だったなー
何度かふふっと笑ってしまった。
後半は前半とは違い、過酷な状況でみんなが必死で帰る中、出会いもあったりして、寒い中、心温まる出来事もあってよかった。
あの晩、みんなの中で、少し何かが変わったのかな。
Posted by ブクログ
おもしろいんだけど、読みにくかった。
単行本は一日で読みきれる薄さなのに、ぜんぜん終わらなかった。
実在する固有名詞が結構でてくるので、誰かのブログかなと、錯覚してしまった。