あらすじ
うちに帰りたい。切ないぐらいに、恋をするように、うちに帰りたい――。職場のおじさんに文房具を返してもらえない時。微妙な成績のフィギュアスケート選手を応援する時。そして、豪雨で交通手段を失った日、長い長い橋をわたって家に向かう時。それぞれの瞬間がはらむ悲哀と矜持、小さなぶつかり合いと結びつきを丹念に綴って、働き・悩み・歩き続ける人の共感を呼びさます六篇。
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Posted by ブクログ
津村記久子さんの小説を読むのはこれで3作目。面白かった。以前に読んだ作品の表紙や挿絵が『ポテン生活』でお馴染みの木下晋也さんだったのですが、本作も文字どおり『ポテン』なお仕事・生活の話を中心に、タイトル作の『とにかくうちに帰ります』でも人間ってなんかいいなと思わせてくれる素敵な話ばかりでした。
田上さんの
・どんな扱いを受けても自尊心は失わないこと。またそれを保っていると自分が納得できるように振る舞うこと。
・不誠実さには適度な不誠実さで応えてもいいけれど、誠実さに対しては全力を尽くすこと。
は自分も壁に貼って毎日復唱したい。
しばらく自分の中で津村記久子ブームが続きそうです。
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最近急にハマった津村記久子作品であるが、本作もとても良かった。表題作の「とにかくうちに帰ります」は兎に角家に帰りたい話で、本当にそれだけなんだけど、それだけの話をそれだけじゃなく書いている。小説が上手い。
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何気ない日常が最高に尊いんだということを、劇的な出来事との比較ではなくそこもまた何気ない日常のまま表現されていた。
何気ない日常が最高にありがたいと思っている人間なので、言語化してくれてありがとうという気持ちになりました。
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かなり好き。
イヤミス系が普段好きだけど、ミステリーとかじゃなく単に読むお話系だと、この人の作品かなり好きだと思った。
ふと目に止まって手に取ったけど、そのままやっぱりやめよってせずにレジに持って行った自分偉い。
よかった〜と思った。
タイトルから、とにかく残業とかも断り、人からの誘いを交わしまくって帰る話なのかな、と想像してて
最初の2つの話の雰囲気からも
そんな話が来るだろう、と想像しながら読んでいた。
そもそもこの最初の2つの話もめちゃくちゃに面白く好み
応援するスポーツチームが没落してしまいやすい浄之内さん、
勝手に失礼ながらそう思ってるから、最近気になるフィギュアスケート選手を言えない鳥飼さん、
いるいる、わかる、と心の中で笑っちゃう感じ
そんな中で、こういう人もいるよな〜と地味なイライラする人なども、リアルに描かれていて、
自分の日常も愛おしくなる。
そのあとのとにかくうちに帰りますは、
また全然違って、本当に、とにかく、帰る。
雨の描写がまたリアルで鬼気迫るほどで、
なんだかもう自分まで傘をさしたくなる。雨の日をすごした気分になるほどのめり込める。
全体的に出てくる登場人物が憎めなくて、良い奴で、
続きを読みたくなる。この人達の日常をまだあと少し見たい、と別れが名残惜しくなる。
Posted by ブクログ
お仕事小説。オンやオフのちょっとした出来事が静かに物語に紡がれていく。作者の腕。派手な出来事はないけれどみんなちゃんと働いて生きているなあと感じられる。そんな短編連作の後の表題作。大雨という非常事態ではあるけれど、それでもただ職場から家に帰るだけなのに絶望寸前までドキドキさせられた。おみごと!
Posted by ブクログ
「なんかわかるなぁ」となる登場人物や状況が多く、会社での何気ない場面などリアルだった。
個人的には表題のお話がとくに好きで、天気が荒れている日の帰り道の心情はいたく共感した。
Posted by ブクログ
会社にはいろいろなタイプの人間がいるものだ。この小説に登場する人物たちは、ほんとに『こういう人いるなあ』と思えた。
『職場の作法』という短編には、社内で仕事を受ける立場の女性社員と依頼する側とのやり取りが面白い、また誰も興味がない自慢話を延々と話し続ける上司がいる。人の文房具を黙ってパクリ、それを忘れてしまう人、インフルエンザで職場が閉鎖の危機になる際の立ち回り方の個人差があること…思い当たる節があるようなことが多く、非常に面白かった。
そして表題の『とにかく家にかえります』は、豪雨で帰宅困難な最悪な日に会社から帰る際に起こる予想外なアクシデントの数々。バスが来ない…道路は浸水して通行不可能…備蓄している防災食を食べようと思いついたり、あまり話したことない職場の同僚とコンビニでバッタリ会ってしまい、雨具や食料を分け合う際の気まずさ…細かい描写が目に浮かぶ。僕も駅からはバス通勤なので、雨天時にはダイヤが乱れたりほんと苦労することもあるので、主人公のイライラする感情には同感したなあ。
大きな事件が起こるわけではなく他愛ない日常が描かれるだけだが、『あるある!』ということがたくさん記された小説です。津村さん、会社のOLの日常を書かせたら天才だなぁ。
Posted by ブクログ
嫌な感じで頼まれた仕事は先延ばしにするとか、取引先のFAX番号が分からずオフィスを大捜索するとか、マイナーなフィギュアスケート選手を応援するとか、ものすごくささいな日常の出来事が大切に描写される短編集。
こういう小さなことの積み重ねでできている日々の、ちょっとした面白い出来事やひっかかりを楽しみながら生きていくのっていいよなあと、自分の生活が少し愛おしくなる。津村さんどんどん好きになってきたな、もっといろいろ読みたい。
必ず何かはっとさせられる文章がある津村作品、今回の心に残る一文は、田上さんがノートに書いていた仕事への心構えである「どんな扱いを受けても自尊心は失わないこと。またそれを保ってると自分が納得できるように振舞うこと」。
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「津村記久子さんの作品を集中して(といっても3冊)読んでみよう」の二冊目。
4つの短編によって成る「職場の作法」と、「バリローチェのフアン・カルロス・モリーナ」と、表題作が収められた作品です。
「職場の作法」は津村さんお得意のお仕事小説。まぁ見事なまでに会社内の人や人物関係や、仕事のやり方などが詳細に表現されています。「ブラックボックス」では、仕事における田上さんの自らの自尊心を守る仕事のやり方に拍手。「ハラスメント、ネグレクト」では、空気を読めない上司あるあるに、大いにうなずいた。「ブラックホール」では、これまた人の机にある文具を勝手に持っていっちゃうおじちゃん社員のあるあるにうなずき、「小規模なパンデミック」では、「次の日に出社すると、だれだれが休んでいた。病欠らしい。詳しいことは訊かないけれども、インフルエンザだろう。」という文章が繰り返し出てきて、社内のインフルエンザ蔓延を語っており、もうこのセンスに参りましたという感じ。ありきたりな言い方ですが、お仕事小説で津村さんの右に出る人はいないんじゃないでしょうか。本当に、誰もが経験しているような、なんてことないと思うようなこと、ちょっと心が動いたくらいで忘れちゃうことを言語化することに長けていらっしゃる。
そして、「バリローチェのフアン・カルロス・モリーナ」。主人公がたまたま目にしたフィギュアスケート選手が気になり、その人についての情報を追っていく日常。といっても、熱狂的なファンとか、それこそ「推し活」とはちょっと違った感じで、なんなら保護者的な立場でその選手の情報を追っているのが、また面白い。会社の先輩である浄之内さんはマイナスの作用を持っていて(というか、そう主人公が怪しんでいる)、応援した選手はことごとく怪我などに見舞われるし、応援したチームの優勝はほど遠い、というところなんて津村センス発動以外の何物でもない。私もミシェル・クワンが好きだったし、アレクセイ・ヤグディンやフィリップ・キャンデロロも見ていたけど、クワンが尻もちをついて銅メダルだったというオリンピックについては、全然記憶がないので、私のフィギュアスケート好きも、熱したり冷めたりだったんだなと、自分とちょっと重ねて読めたところもよかったです。今は、多分に漏れず、坂本花織さんが好きです(オリンピックがんばって欲しい!)。
「とにかくうちに帰ります」は、埋立洲で働いたり、塾に行ったりしていた4人が、豪雨による交通機関の乱れのせいで、徒歩で橋を渡って本土まで帰還し、そこからなんとか公共交通機関に乗れるまでのことを描いた作品。こう説明するとたったそれだけのあらすじなのに、なぜかすごく面白い。同じ会社の先輩後輩である、ハラとオニキリ、会社員のサカキと小学生のミツグ。なんていい人たちなんだ。うちに帰れてそのうちに屋根があって、雨がしのげるってなんて幸せなことなんだ。
感想が短いわりにすごく良かったことをどう伝えたらよいのやら。
本作の感想もこう締めたい。「津村記久子すごい」。
Posted by ブクログ
津村記久子さんって、凄すぎるの一言。
私は表題作の「とにかくうちに帰ります」よりも、「職場の作法」と「バリローチェのファン・カルロス・モリーナ」が好きでした。
鳥飼さんの心の呟き、日々思いながら仕事してることに共感しまくりで。
そうそう、そんなふうに思ってる!
私だけじゃないんや。
そうそう、そんなオッさん居てる!
なんかタイミング悪いというか、憑いてるというか…
そんな人居てるよね…
こんな取るに足らない、友達にLINEするほどのことでもない、モヤモヤしたものを言葉にしてくれてありがとう。
それだけで、救われた気がします。
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鳥飼早智子というOL目線と短編集。
営業社員の依頼の仕方によって書類を仕上げる期限を調整する田上さん、わざわざ人の席まで来て噂話をしたいくせに人の話は聞かない北脇部長、人は良いんだけどおおらか過ぎるのか借りた文房具を返し忘れる定年間際の間宮さん、応援してるスポーツ選手やチームが成績不振に陥る浄之内さん。
OLの日常って感じで面白い。田辺聖子さん好きな人は好きだと思う。
最後の『とにかくうちに帰ります』は大雨で洲にある会社からどうにか家に帰る話。オフィスを出るのが遅れたために駅からの巡回バスは運休してしまい、橋を歩いて渡る羽目になった人たち。専業主婦なもんで雨の日は外に出なくて済むんですが、雨で服が張り付く感じとか、とにかくうちに帰りたいと思いつつ歩を進める感じとか思い出しました。お勤めの方々、学生さん、お疲れ様です。
職場の作法
『ブラックボックス』
『ハラスメント、ネグレクト』
『ブラックホール』
『小規模なパンデミック』
『バリローチェのフアン・カルロス・モリーナ』
『とにかくうちに帰ります』
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この本も、ここが面白い!とか、このフレーズが最高!というのがあるわけではない(というより全体が良い)のだが、いつもながら癖になる面白さ。ほんとにたいしたことは起きないのだが、それでも読み進めてしまう。おばあちゃんの家にある、流行ってないけど不思議と飽きのこない、定番のおやつみたいな気持ちで読んでいる。
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日常の中のなんでもない出来事が気持ちよく言語化されています。いつも語り手が少し冷めているのが読みやすくて好きです。どんなメンタルのときでも読めます。
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私が津村作品を好きなのは、西加奈子さんの言う通り、津村記久子が「取るに足らない、とされていること」に目を向けてくれるからなのだと思う。本当は「どうでもいい」なんて一蹴できることじゃないのに、なんか周りに流されてどうでもいいよね〜と笑えてしまう、気持ちに蓋をしてしまう私の、心の奥に触れるような、そんな表現・着眼点が散りばめられている。私も津村作品のみんなみたいに、軽やかさと真面目さでもって、自分にとって大切だったり重要な瞬間を受け入れたり乗りこなしたりしたいと思う。
あとは津村作品の女性の飄々としていたり淡々としていたりするところが好き。恋愛に生きてないところも良いな。あとワードセンスがあるとこも最高だと思う。「当落線上ギリギリのセンス」と「いまだかつてない文字の使用例」をいってる感じだ。「同僚の性交(を目撃)」とかおもろすぎる文字列。
津村記久子作品を読むと、ニヤッとしたりホッとしたり薄っすら切なくなったり寂しくなったりする。それが過剰じゃなくて適量な感じ。私は多分この人の小説と、この先もしばらく一緒に生きていきたいなとおもっている。
Posted by ブクログ
私も家に帰りたかった。
豪雨にあったとき、ひたすらどうやったら家に帰れるか考えて結局今の家族がいる家じゃなくて元の家族がいる実家にたどり着けた。両親とすごい雨の音を聞いているとき不安だったけど屋根がある、家があるって安心する、って思った。
Posted by ブクログ
職場を舞台にした短編集。
「いるいる!こんな人!」と、嵐の中の職場から自宅への帰宅大作戦。
なんで津村先生は、こんなに日常を拾うのが上手いのだろうか。
今回は会社を舞台にした短編集。
特別大きな事件は起こらない。
無くした万年筆が予想通りのおじさん社員の机に入っていたとか、嫌な対応をしてくる営業マンに地味〜な復讐をする現場を見たとか…。
何が面白いって、津村先生の感受性と表現。
大雨の中で登場人物が、もうグッシャグシャになって家が恋しいと表現する言葉。
『うちに帰りたい。切ないぐらいに、恋をするように、うちに帰りたい』
もう共感でしかない。
大雨に降られて、服もグシャグシャで寒くて歩くのも億劫で…
そんな中で思い出す家。
部屋に帰れるなら何でもする!笑
やっぱり津村先生、大好き!!笑
Posted by ブクログ
職場の作法が好き。
これが小説だよなって思う。
みんななんてことない顔してるけど、みんなそれぞれ色んなことを考えて、それぞれの人生がある。
それを教えてくれる。
バリローチェのフアン・カルロス・モリーナも好き。
え、これ何の話?って途中で何度か思うけど。
生きるってこういうことだよな、生活っていいなって思う。
とにかくうちに帰ります
このタイトルに惹かれてこの本を買ったけど、読むのに時間がかかってしまった。
雨に濡れて嫌な感じがリアルで、気持ちが重くなってしまった。
でも最後はほっこりしたいい気分になれた。
Posted by ブクログ
バリローチェのファン・カルロス・モリーナの話がお気に入り。
オフィスを舞台にした話も多くて、
めちゃくちゃありそうな、とりとめのない出来事ばかり。
当事者だったら気になって仕方ないのに、
小説として読むと、そのくだらなさにちょっと笑えてしまう。
ただ、現実逃避気味に読んでいると、
あまりにもリアルすぎて逆にしんどくなる瞬間もあって、
その行き来が不思議な読書体験だった。
特に印象に残ったのが、
タイトルにもなっている「とにかくうちに帰ります」。
台風の日、中洲にオフィスがある人たちが、
バスの運行状況に翻弄されながら、
洲と本土をつなぐ大橋を大雨の中歩いて渡る話。
それぞれの装備品が、とにかくリアルでぐっとくる。
レインコートなし、大きな傘だけのサラリーマン。
スーツに革靴、同行者は小学校高学年の男の子。
男の子は傘が壊れてしまって、サラリーマンが買い直してあげる。半袖短パン。
一方、女性は「雨の日のために」と取っておいた
おろしたてのレインブーツ。コンビニで買ったレインコートを二重に着て、ホットドリンクを4本、カイロ代わりに抱えている。
連れの男性は厚手のレインコートに、
嵐のため急遽店じまいになったコンビニで買った半額のカウンターフーズ。
カウンターフーズ袋3重にしてって頼んでたり、
ホットドリンク4本も袋4重にしてって頼んでたり、いやそれ以前に4本持って歩くの重いやろ!とか笑えるんだけど
備えていたもの、備えていなかったもの、
それぞれの装備の役立ち方に妙に胸を掴まれた。
「家に帰りたい」という気持ちに共感しすぎて、
外で読んでた自分も「帰りたいな……」ってなってしまった。笑
Posted by ブクログ
なんてことはないことが題材で、淡々と話が過ぎていく。だけど何故か気になる話ばかりでした。
登場人物たちの「こだわり」が感じられたからなのかなと思います。
Posted by ブクログ
「職場の作法」 では田上さんのお作法がなかなか厳しく、でも痛快。「とにかくうちに帰ります」はそれぞれ事情は違っても、やっぱりお家が一番だよねって思いながら、帰る家があることに改めて幸せを感じた。見知らぬ人同士の交錯が良かった。
Posted by ブクログ
読後感が いい。舌打ちしたくなることだって じたばたしたいときもある。けど どうしてか まぁいいかで 納得してページをめくってしまう。津村さんのアンテナって すごい!鳥飼さんの職場仲間 なんか好き。ハラもオニキリもサカキも 無事に帰れたことを祈ります(笑)
Posted by ブクログ
文体にはユーモアがあり、特に「職場の作法」で顕著だった。主人公鳥飼を取り囲む人物たちは一癖も二癖もあり、それがいい味を出している。
会社勤めの経験があれば、うんうんと頷けてしまうように、会社風景を細やかで丁寧に切り取り方をしている。
私も覚えがある。終業前5分、残業で夜遅くなる夕方。ひたすら思ったことが。「とにかく家に帰りたい」と。
Posted by ブクログ
すごく感動する出来事があるわけではなく、考えさせられるというわけでもなく、なんかこういうことあるなあとか、こういう人いるなあと思っているうちに読み終わった。
津村さん独特の突っ込みや少し後ろ向きなところが面白く思った。
Posted by ブクログ
表題作よりも鳥飼早智子が主人公の前半部分のほうが、なんとなく印象に残った。職場の人間関係を観察したという感じで、なんて事ない日常の記録だけれど、本当にこういう人がいると錯覚しそうになるくらい細部がしっかり書かれていた。
表題作を振り返ってみると、とにかく家に帰りたいというだけの話なのに何故だかよく理解できた。台風や何かで家に帰るのに苦労したこと、私自身にもあるし、そのときその場にいる人たちとの妙な仲間意識みたいなものが、普段と違う距離感にさせたりする。みんな無事に帰れてよかった。