【感想・ネタバレ】浮遊霊ブラジルのレビュー

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Posted by ブクログ

これこれ!
私が津村さんに期待する小説はまさにこの本、という感じの短編集だった。

地獄の奇想天外なおもしろさ。
中年のなかよし女性二人が事故に遭い、同時に死ぬ。
小説家だった私は物語地獄に、親友のかよちゃんはおしゃべり地獄に。
地獄では担当の鬼が一人に一人つき、それぞれの業に応じた「地獄タスク」をこなさなければならない。
鬼の方にも配属される地獄に「栄転」「左遷」があり、家庭生活では配偶者の不倫にも悩まされる。
奇想天外なのだか、意外と所帯じみているのかなんだかわからない可笑しさ。

「運命」は構成のたくみさに驚く。
主人公の「運命」とは、最悪の状況なのに、それにまったく気づかない赤の他人に道を聞かれてしまう、というもの。
人生の中の驚くほど多様な場面なのに、いつもいつも、そういうめぐり合わせになってしまう。
それぞれの場面は、いったいそれはどんな状況なのだ、と思わず突っ込みを入れたくなるようなもの。
さすが作家というのか、すさまじい想像力。

表題作「浮遊霊ブラジル」も面白い。
妻に先立たれた高齢男性、三田が主人公なのだが、初めての海外旅行を町内会でしようと話し合う。
アラン島に行くことになったところで、しかし彼は頓死するのだが、その思いが残り、浮遊霊となってしまう。
三田は浮遊霊として、なんとかアラン島に渡ろうと画策する。
人間ならぬ力を身につけたはずなのに、ちっとも思い通りにはいかなず、小市民的な振る舞いになっているのに何とも言えない可笑しさがある。

「給水塔と亀」は、気持ちがしんどくなったとき、読み返したい作品。

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2024年05月19日

Posted by ブクログ

111108さんに教えていただいて早速読む。
全編に渡ってとぼけたユーモアが漂っているけれど、ふいに人生の真理をつくような一文があったりするのが癖になる。どうやってこんないい意味で変な小説思いつくんだろう!
特に『地獄』『浮遊霊ブラジル 』が好きだけど、『運命』のラストの「何もかもが、簡単にいくわけはないだろう。それでも幸多からんことを。」という文章も、不甲斐ない人生を勇気づけてくれるようで心に残った。
津村さんのこのヘンテコな世界観の物語、もっといろいろ読んでみたい。

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2023年12月23日

Posted by ブクログ

面白かった〜!
現実じゃありえないことでも、何か妙なリアリティ?があって好き。
【地獄】が面白すぎる笑
読んでる分には笑っちゃうような世界なのに、ちゃんと"地獄の苦しみ"が存在してて良い笑

タイトルにもなってる【浮遊霊ブラジル】
こちらも好き。女湯へのこだわりが好き笑
終わり方もちょっと儚くて好き。
私は死んだら誰に憑依して何処を目指そうかなあ…笑
何処ってよりも、自分じゃ出来なかった体験とかもいいかも?

いやはや面白かった…!!
ブクトモ様におすすめしてもらった、独特な世界観の1冊!
最高でした\( ´ω` )/
ありがとうございました(*´ω`*)♪

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2022年08月31日

Posted by ブクログ

ネタバレ

久々に津村記久子。いや~それにしても彼女の小説はブレないなぁ。純文学系を中心に多くの賞を受賞してからも、津村節は津村節なのである。安心して読める。

冒頭2作のような日常物はいうに及ばず、後半収録されている死後の世界とか地獄の様相とかいう非日常を描いた作品においても、津村フィルターといえばいいのか、独特の視点と切り口で世界を展開しているのが良い。俺はとても好きだが、合わない人もいるんだろうなぁ、個性的だし。

一番好きなのは一番最初に収録されている「給水塔と亀」、定年退職したおっさんの所謂「第2の人生」の始まりを描いた短編なんだが、俺もこういう気負わない定年後を迎えたいなぁ、と痛切なあこがれを描いてしまうのだ。

ある程度インフラが揃ってて、家賃が安い急行の止まらない私鉄沿線で、気候がおだやかな地域で、第2の人生を目立たず、でも自分的には充足して過ごすこと。これって素晴らしいリタイヤじゃないかと思うんだが。

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2021年01月21日

Posted by ブクログ

どのお話も不思議な世界観で面白かった。
今まで読んだ津村さんの本では2番目に好きかな。

「アイトール・ベラスコの新しい妻」で、小学生の頃のことを思い出した。
「忽那さんと一緒に帰ってあげて」と言う先生。
その辺のくだり。
私も小学生のある時、恐らく今で言う発達障害の子の隣の席に、ずっとなってた。
別にその子と仲良くもないけど、先生に言わせたら「面倒見がいいから」隣なんだそうだ。
私としては、やっぱり仲の良い子の隣になりたいし、面倒見るなんて面倒な事はしたくない。
そもそも末っ子で絶対に面倒見の良いタイプではないし。
正直泣きたかった事を、先生は知らないだろうな。
(30年以上前の、小学生の頃の話なので、大目に見ていただきたい。)
いや、ほんとに。
先生の名前も、今では思い出せません。
奴らのことを忘れることを選んだ主人公と一緒だなと思った。

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2021年01月05日

Posted by ブクログ

作者の作品評を見るにつけ、必ずこの作者の本読んでみたいと思っていた。念願の初読。そしてやはり最高に面白い。 七つの短編から成っているのだけど、どれも面白い。仕事を辞めて故郷で一人暮らしを始める男とか、ウンチクうどん親父にキレる地味で大人しい女子を見てる男とか、どこの世界にもいるマウント取りたがる面倒臭い女とそれにいじめられる地味女に気づくフツー女子とか、地獄で鬼の面倒みるおしゃべりおばちゃん達とか、なんだか道を聞かれちゃう男子とか、認識出来ない顔のある学生とか、そして、表題作の人に憑いてナントカ外国にいく幽霊とか。こうして並べると、面白いのか?って思ってしまいそうだが、普通の文章で何事もなかったかのように書いてあり、最高に体に染みてくる。スゴイ‼︎

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2020年04月19日

Posted by ブクログ

ちょっと不器用とか、ちょっと人生うまく立ち回れないとか、そういう人の生活を描くのが抜群だなあ。
と津村記久子さんを読んだあとはいつも思い、まるっと自分も許された感が広がる。

「うどん屋のジェンダー、またはコルネさん」
「地獄」
「個性」
が特に好き。


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2024年03月29日

Posted by ブクログ

ネタバレ

様々な人生のドラマを描いた7つの短編集。
特に『地獄』が好みで何度も笑ってしまった。「物語消費しすぎ地獄」だなんて、物語を食い散らかす人生もいいじゃないと思えてしまった。
でも地獄のタスクを見ていると、それぞれに合わせた地獄が待ち受けているので精神力を削ってくるのが分かる。重要なページを破られた小説を読まされるだとか、鬼に恋愛相談をされるくだりは本当に面白くて。業が深い。

表題作の『浮遊霊ブラジル』は良い話だった。
自らの執着を捨てて自らの成仏を目指すという幽霊目線の話だが、成仏するために必死で人に取り憑いて乗り移ろうとする姿が滑稽で悲しくて。死んでからこんな苦労をしていたら。一発で成仏したいよと思ってしまう。

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2023年03月11日

Posted by ブクログ

あなたは、〈地獄〉がどんなところか知っていますか?

悪いことをした人は、死んだら〈地獄〉に落ちる。だから、良い行いをしましょう。幼い頃からそんな教えの元に生きてこられた方は多いと思います。改めて思えば、刑罰というものが定められて、犯罪抑止という考え方が存在する、私たちの社会の有り様の原点がここにあるようにも感じます。

では、そんな〈地獄〉とはそもそもどんなところなのでしょうか?あなたは、見たことがあるでしょうか?まあ、そんな突飛な質問をしても、はい、見てきました。苦しんできましたという人もいないでしょう。ただ、〈地獄〉という言葉の先にある一つのイメージというものはあるように思います。私は幼い頃にお寺の軒下に掲げられている”地獄絵図”を見たことが未だに強く頭の中に焼き付いています。元々古くなってところどころ禿げたその絵は余計に恐怖感を煽ります。針の山、血の池、そして賽の河原で苦しむ人たち。音のしない絵の中から、人々のおどろおどろしい叫びが聞こえてきそうなその絵は私の中に強く焼き付き、しばらく夜中に一人でトイレに行けないという恐怖に苛まれる日々を送りました。

しかし、〈地獄〉に行ってそこがどんなところか見てきたという人がいない以上、それはその絵を描いた人の勝手な思い込み、勝手な想像に過ぎないとも言えます。そもそも〈地獄〉なんてあるのかな?という考え方自体当然にあり得ますし、また例え〈地獄〉があったとしても、それがどんなものかは本来は百人いれば百通りのイメージが浮かび上がるものだとも言えます。

さて、ここにそんな誰も経験したことのない〈地獄〉での日々をサラッと当たり前のことのように描いていく作品があります。『地獄は、かなり忙しい』、『一日に四〇〇ページのノルマを課せられる』読書の日々…と私たちが〈地獄〉に思い描く絵柄とは全く違ったイメージが描かれていくこの作品。それは、津村記久子さんが独特な筆致の中に自由のままに描いていく、奇妙奇天烈、摩訶不思議、前古未曾有な物語です。

七つの短編から構成されたこの作品。短編間に繋がりは全くありませんが、兎にも角にも個性的、というより個性的すぎる短編揃いです。では、そんな七つの短編の中から表題作でもある〈浮遊霊ブラジル〉の冒頭をいつもの さてさて流でご紹介しましょう。

『私はどうしてもアラン諸島に行きたかった』という七十二歳の主人公の『私』。しかし、『自宅で心不全で倒れているところを、ヘルパーの大園さんに発見され』『灰にされてしま』います。『妻のフキ江が亡くなって』五年の歳月が経ち、『特に思い残すこともなくフキ江のもとに行く予定』だったものの『この数か月の間に』『町内会で旅行に行こうという案が持ち上が』り、『アイルランドのアラン諸島に行先が決ま』りました。そして、『それから三週間後に、私は亡くなった』という展開となった一方で『思ったよりアラン諸島に行きたかった』『私』は『幽霊として現世にとどまることになってしま』います。『交通費もいらなくなったことだし、一人でもアラン諸島に行けるのではないか』と思ったものの電車も飛行機も『私をすり抜けてしま』い、『生前に徒歩で行けた範囲までしか浮遊できないということに気が付いた』『私』。一方で、『気晴らしに女湯に行ってみた』ものの、『風呂に入っている』のは、『同い年ぐらいかそれ以上の年のおばあさんなので、二、三回で行くのをやめ』てしまいます。そんな中、『町内会の』『副会長の仲井さんの耳元で』旅行に行くよう言い続けるようになった『私』に、ある時『不思議なことが起こ』ります。それは、『掃除機に吸い込まれるごみはこんな気持ちなんじゃないか』という体験でした。そして、『浮遊霊の私は、思わぬきっかけから、人に憑りつくという技術を身に付けた』のでした。『仲井さんに憑りつくことで』、『電車やバスなどの交通機関を利用できるようになった』『私』の『行ける場所は増え』ました。一方で、『二人羽織のような状態なので、仲井さんに私の言葉は届かな』いという状態。しかし、当初面白がっていたものの『だんだん仲井さんの生活にも飽きてきた』『私』は、『仲井さんからの乗り換えを考えるようになっ』ていきます。そして、『人から人へと乗り換える方法』を模索する『私』は…と続く表題作〈浮遊霊ブラジル〉。まさかの『浮遊霊』が主人公となる奇想天外な展開に当初は戸惑ったものの、あまりに絶妙に繰り広げられるその物語にすっかり夢中にさせられる傑作短編だと思いました。

“死にたい。死んでるけど。ユーモラスで優しい世界にたゆたう人々“と内容紹介にうたわれる七つの短編からなるこの作品。〈給水塔と亀〉、〈アイトール・ベラスコの新しい妻〉といったどこか不思議な短編タイトルが気になるところです。どれも一癖二癖感じる読み味ですが、その中から気に入った三編についてその内容をご紹介したいと思います。

・〈うどん屋のジェンダー、またはコルネさん〉: 『人はうどんが好きだし、私もうどんが好きだ』という主人公が通う人気のうどん屋は初めての客に事細かに接客をする『店主がこってりしている』店です。そんな店にコルネさんという客が通っていますが、ある時『あんたこの店初めて?』と訊く店主に何故か『初めてです』と告げたコルネさん。さて、その理由は如何に?

・〈地獄〉: 『私と同級生のかよちゃんは、温泉に行った帰りのバス事故で、同じ日に死んでしまった』という衝撃の展開。そんな『私とかよちゃん』は『地獄』に来てしまいました。『地獄は、かなり忙しい』という『私』は、『起床から就寝までに、一日最低三回は殺され』るなど、『試練の日々』を送ります。そんな中『別の地獄』にいるかよちゃんと偶然に再会をはたします。

・〈浮遊霊ブラジル〉: 『どうしてもアラン諸島に行きたかった』という『私』ですが、心不全により死んでしまいます。そして、『アラン諸島に行きた』いという強い思いが勝ち『幽霊として現世にとどまることになっ』た『私』ですが、色々なものを『すり抜けてしま』い、移動もままなりません。そんな中、町内会の『副会長の仲井さん』に取り憑いたことをきっかけに人に取り憑くことの可能性を見出します。

上記で取り上げた三編のうちの二編は、なんとまさかの死後の世界がさらっと当たり前のように描かれていきます。この当たり前さがなんとも強烈です。天国と地獄というのは分かりやすい死後の世界の対になるイメージです。私は幼い頃にお寺に飾られていた”地獄絵図”に強い衝撃を受けました。針の山、血の海、そして賽の河原という阿鼻叫喚の世界、それが私の中に染み込んで抜けない〈地獄〉のイメージです。〈地獄〉という短編タイトルから、私にはやはりこのイメージが頭に浮かびました。しかし、津村さんの描く〈地獄〉とはそんなある意味で通俗っぽい〈地獄〉とは全く異なる世界をそこに描き出します。それが、『「その人に合った地獄」とか「その人らしい地獄」を提供するというポリシーが、地獄運営側にはある』という考え方の先にあるものでした。『地獄運営側』という発想自体、いかにも現代社会的です。”地獄絵図”をかつて描いた人には発想さえ浮かばないと思います。ただ、現代社会に生きる私たちからすると、さもありなんという考え方でもあります。そして、そんな『地獄運営側』が『私』に課した『その人らしい地獄』が、小説を読むというものでした。いかにもこの作品を読んでいる本好きの読者を念頭にした発想です。しかし、ここは〈地獄〉です。主人公の『私』は『一日に四〇〇ページのノルマを課せられ』ます。一方で、さてさては五〇〇ページまでは一日で読み切りますので、この『ノルマ』はへっちゃらです。でも、次が強烈です。『すべての本の最後の数ページが破かれていた。それをわかった上で読まされたのだった』というこれこそ本好きに対しての一番の試練です。生前、小説家だったという『私』は、『最後がわからないのはつらい』と苦しみます。『ミステリーなどを読まされた場合は、犯人が絶対にわからないようなところから破かれていた』となると、あなただって耐えられないでしょう?このような感じで〈地獄〉が描かれていく中に、いつしか私が幼い頃に恐怖した”地獄絵図”が上書きされていくのを感じました。人によって思い描く〈地獄〉は当然に変化する、なるほどなと思いました。

そして、表題作の〈浮遊霊ブラジル〉では、『幽霊として現世にとどまることになっ』た『私』視点の物語が描かれていきます。『幽霊』となった主人公が描かれる作品というと、私が読んできた中では加納朋子さん「ささらさや」が強く印象に残っています。”まだ新婚ホヤホヤって言ってもいいくらいの可愛い奥さんと、首もすわらない赤ん坊を残して”、”俺は気がついたら死んでいた”と、まさかの交通事故に遭遇して”俺”が死んでしまうところから始まる物語は、切なさを感じる結末を見るとても優しい物語でした。死者が『幽霊』となってこの世に残るという考え方の先には、このイメージが私には強くあります。1990年に大ヒットしたアメリカ映画「ゴースト」もこれと似た世界観でした。一方で津村さんはそんな『幽霊』のイメージをこれまた鮮やかに突き崩します。七十二歳で亡くなった『私』は、『幽霊』というものがなんでも『すり抜け』てしまうことに気付きます。そんな『私』がそれを逆手に赴いたのが『女湯』でした。しかし、『風呂に入っているのがだいたい自分と同い年ぐらいかそれ以上の年のおばあさんなので、二、三回で行くのをやめた』と残念な結果に終わった『私』は、あきらめきれず『より若い女性の集まる女湯を探』そうとしますがインターネットが使えないというオチ。そんな中で『スーパー銭湯に行けばいいんだ!』と思いつく『私』…と展開する物語は、これまた私が抱いていた『幽霊』の概念を大きく突き崩すものです。人が『幽霊』になったからといって急に神妙になったり、恨み辛みばかりの思いでいるのではなく、俗っぽさもあるんだということを描いていくこの物語。津村さんの筆にかかると『幽霊』もたじたじだなあ、と改めて感心させられました。

『酸から身を守るために、きょうだいたちの中ほどにもぐりこんで、私はほとんど彼らに挟まれたまま好き放題に翻弄されて進んだ』、『私と同級生のかよちゃんは、温泉に行った帰りのバス事故で、同じ日に死んでしまった』、そして『葬式や何やがあった後、私は灰にされてしまった』と、当たり前のことのように書かれた文章が、よくよく考えると疑問符がつきまくるという中に展開していくこの作品。ひたすらに真面目に徹した文体の中に、いやここ笑いどころでしょう?というツッコミ感のある設定が自然に組み込まれている摩訶不思議感。シュールといった安っぽい言葉で言い表せない独特な世界観の中に展開される七つのかっ飛んだ物語からなるこの作品。あまりの掴みどころのなさに、読中不安に苛ませそうにもなるこの作品。

それこそが面白い、それこそが楽しみどころ、そしてそれこそが津村さんの何よりもの魅力!そんな風に感じたインパクト最大級の作品でした。

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2022年07月13日

Posted by ブクログ

やっぱりおもしろい。
大したことは起こらないし、オチもとくにない。でも、おもしろい。著者の人間観察の目の付け所がわたしにはとてもおもしろいし、それを文章で読むのがまたおもしろい。
「地獄」を電車内で読んでしまい、おもしろくて声出そうになった。かよちゃんのしゃべりがたまらん。

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2021年11月30日

Posted by ブクログ

表題作の『浮遊霊ブラジル』の他、『給水塔と亀』『運命』『地獄』『個性』などを収録した短編集。
この中で私の一推しは何と言っても『地獄』です。

この短編集全体で言うと、すごく好きなのとそうでもないのがあったので星4評価ですが、『地獄』は満星!面白くてずっと笑いながら読みました。

生前、ドラマや映画、ドキュメンタリーやスポーツなど、虚実の物語を消費しすぎた罪で物語消費しすぎ地獄に堕ちた主人公。同じバス事故で死んで喋り過ぎ地獄に堕ちた友人と、担当の鬼についてLINEでやりとりしたり、どこか暢気な地獄での暮らし。

隣の席の喋り好きの女同士の会話を、ずっと聞いているかのような面白さ。
コロナでなかなか人と会ってお喋りできない昨今、一服の清涼剤となりました。

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2021年01月22日

Posted by ブクログ

個人的には津村小説の中ではリアリティに重きをおいたものが好みなので、本作はやや外れてしまう。聞いたこともない海外の地名やサッカー選手がやたらと出てくるのはご愛嬌。

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2020年09月12日

Posted by ブクログ

読感はわりと軽くふわふわとしてるけどしっかり読ませる。たわいもないといえばたわいもないお話なのだけど、生きてるのも死んでるのも存外たわいないといえばたわいないのでこれはとてもよい短編集です。

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2020年04月21日

Posted by ブクログ

『浮遊霊ブラジル』というタイトルがもう、惹きつけられるよね…
タイトルから感じられる通り、どの作品も奇妙だけど共感できる。

いくつかの作品では、読み始めた時点では年齢も性別もわからないが、スッと入り込むことができた。そこが面白い。

『うどん屋のジェンダー、またはコルネさん』が、津村さんのお仕事小説に近く、馴染みある感じだった。

どれも良かった。

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2020年01月25日

Posted by ブクログ

津村さんの作品は2作目なのだけど、「この世にたやすい仕事はない」より津村さんの世界にしっくりハマれた気がする!
長さもお話の軽さも丁度良くて読みやすかった。設定がとにかく面白くて、物語のなかの物語を考えちゃう。
私の地獄は何かな、とか、このあとはどうなったんだろう、とか。

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2020年01月11日

Posted by ブクログ

笑えたのは『地獄』。
良かったのは『給水塔と亀』『うどん屋のジェンダー、またはコルネさん』『運命』。
『給水塔と亀』は独身で定年退職した男が主人公で、定年退職きっかけで小学生のころに住んでいた町に戻ってくる。知り合いは誰もいないのに。色んなことに疑問をなげかけてくる管理人さんはちょっと面倒な人だ。前の住人は孤独死した女で亀を飼っていた。その亀を引き取ることにしたのはひとりぼっちじゃない確認、亀は万年生きるから? 給水塔は進路や仕事きっかけになる子供の頃の憧れの建造物でベランダにたった一脚しかない椅子を出してビールと水ナスで労う自分が海と一緒に見たもの。この小さな建物から海と給水塔が見えて、つながりのなにもない世界に楔が1つと、それから親の眠る寺の前の製麺所がもう1つの楔になるんだろう。こんな風でいいなぁとじんわりした。さすが津村記久子!

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2020年01月08日

Posted by ブクログ

実際のところは知らないけど津村記久子の人間観察具合が滲み出てると思った
ユーモア
初見の固有名詞が多くなってきてだんだんこんがらがった

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2022年10月28日

Posted by ブクログ

「私の落ちた地獄は、物語消費しすぎ地獄ということになると思う。飽食の罪というのがあるけれども、私は、飽・物語の罪で地獄にいるようだ。」
一緒に交通事故で死んでしまった友達と地獄でこなすノルマについて愚痴を言い合う、何歳でもどこにいてもなぜか道を尋ねられる、死ぬ直前に決まっていた海外旅行に未練がのこって幽霊になってしまう、などなど。ヘンテコでユーモラスな短篇集。力の抜け具合がとてもいいです

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2022年09月03日

Posted by ブクログ

ネタバレ

表題作がダントツで面白い。荒唐無稽な設定のラブストーリー。マテウス君も恋が叶うといいし、主人公にちょこっとアラン諸島観光させてあげたかった

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2022年01月01日

Posted by ブクログ

味わい深い短編集。最初の3作「給水塔と亀」「うどん屋のジェンダー、またはコルネさん」「アイトール・ベラスコの新しい妻」が、特によかった。

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2021年12月12日

Posted by ブクログ

表題作を含む7つの短編が収録。今までの津村作品とは異なる独特な作品集だと思います。それぞれの短編に対する評価は、分かれるように思いますが、個人的には、「給水塔と亀」がしっくりと読め、今までの津村作品を継承しているように感じました。

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2021年06月30日

Posted by ブクログ

p98 「運命」ほとんど立っていられないので、埃をかぶったメニューのサンプルが置かれているガラスケースに手を突いて、私はおいおい泣く。こんな気持ちなのに死なないのか。不思議だ。普通死ぬだろ。こんなにつらかったら。

p70「地獄」私自身もはっきりとは決め付けがたいのだが、私の落ちた地獄は、物語消費しすぎ地獄ということになると思う。
(中略)虚実両方の物語をすごい勢いでたのしんでいた。おまけに職業は小説家だった。とにかく、物語を食い散らかす人生だった。

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2021年06月19日

Posted by ブクログ

人間が家族や子供を必要とするのは、義務がなければあまりに人生を長く平たく感じるからだ。その単純さにやがて堪えられなくなるからだ。
(P.17)

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2020年11月13日

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